2013年8月23日金曜日

ブラウンさん 2回目

ご来場ありがとうございました。




バッティングについて、パッと見で気になる点ですが。。

まず、捻りを強調した練習が多かったとは言え、ややヘッドが投手方向に入り過ぎています。特に、新聞紙打ちを見ていると、一般に言われる「ヘッドが投手方向に入り過ぎて、出て来ない」状態になってしまっています。この辺は微調整を加えた方が良いでしょう。

次に、やはり、最後に止まっている間が短いです。この辺は、もっとハムストリングスと腸腰筋についての感覚が良くなれば、出来るようになってくるでしょう。

今回、打撃について、特に重視しておこなったテーマは以下の通りです。

1)ハムストリングスと腸腰筋を使えるようにする。
2)グリップ(と捻り方)を良くする。
3)前軸が効いて、躍動感の有る巻き戻しが出来るようにする。

続きます。

事情により、更新が遅れていますが、少々お待ち下さい。

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打撃分析編

ケチをつけるのが仕事の一つである私ですが、欠点らしい欠点が無いので、困ってしまいます。今回は、他の皆さんに見てもらう意味で、良い所を挙げて見たいと思います。

1)トップ〜インパクト

軽いバットを使っているとは言え、前から来たボールを打つ中で、これだけの形が作れるのは、素晴らしいです。

2)ヒッチ

ヒッチの動きを練習するホウキスイングの中で、理想的なヒッチの動き、前脚の挙り方が出来ています。少しづつで良いので、この練習を行い、動きを身体に憶えさせてください。

3)捻りと、脊柱のS字カーブ

わりと大きく捻っているのに、脊柱のS字カーブ、とりわけ胸椎の後弯が維持されています。股割り体操で脊柱のS字カーブを作る練習を続けてください。

4)両肩がゼロポジションに入った構え

ボトムハンドで下から支え、トップハンドで上から掴むグリップと、そのための捻り方を練習しましたが、写真のように、両肩がゼロポジションになっている形が良いです。また、捻る時に体幹の面を捕手方向に向けてしまう人は、このアングルから見た時に、右のお尻が見えるのですが、それが見えていないのが、良い所です。つまり、肩甲骨のスライドで捻りを作れているということです。肩甲骨のストレッチ等を続け、この柔軟性を失わないようにしてください。

5)前軸

前軸を作る練習をしましたが、その中でも素晴らしい前軸のラインと両腕の伸びが作れています。この練習も少しづつ続けるようにしてください。

6)最短距離

それでいて、ショートストロークスイングをすると、理想的な最短距離の形が作れているところが、また心ニクいところです。(写真は1回目ですが)後ろが小さく、前の大きい理想的なスイングが出来る土壌が整っています。

7)フィニッシュ

写真は連続素振りながらも、フィニッシュでの両腕の形が非常にタイトで良い感じです。それでいて、充分に身体をねじりきれている。あくまでも、連続素振りでの中ですが、若い頃のアンドリュー・ジョーンズみたいなタイトかつ豪快なフィニッシュが出来ています。

8)始動からトップまでの動き

最も、クセの出やすいこのシーンにおいて、特にクセの無いのが羨ましい所です。上下逆回転の動きも小さいながらで来ており、前脚股関節を割った状態で着地しているのも良いところです。

9)巻き戻し

当初、不安の有った巻き戻しの動きも、ほぼ出来るようになりました。この動きを忘れないように、巻き戻して終わるということを常に心がけてください。動きとしては、バットを戻しながら、後ろ脚をホームベース側に踏み出す動きになります。

以上の、ように、形的には申し分無いブラウンさんですが、バッターとして見た場合、まだまだパワーが足りないです。

そして、また形としては確かに素晴らしいものが有りますが、オートマチックステップの本質部分である、基本メカニズムと言う観点から見ると、まだオートマチックステップ初心者に近い状態です。つまり、始動時の下半身の力が弱く、腕の力に頼らざるを得ない状態であるということです。逆に、その力が強ければ、形はもっと汚くても打てるくらいです。実際、そういうメジャーリーガーもいます。

下の動画は、全て大学での硬式プレーヤー、あるいは引退後すぐの人達ですが、始動時の力が比較的強い例を集めてみました。

状況的に考えて、既にブラウンさんくらいの形で振れているのあれば、パワーアップに舵を切っていい状態であると考えます。そして、また安心してGOサインが出せるケースです。もちろん、パワーとは上半身のバットを振る力だけでは無く、股関節の力も含めてです。そして、形を維持するためには、当日使用したソフトボールバットくらいのバットを使って練習しておけば、いつでも戻せるでしょう。

パワートレーニング法

パワートレーニングはテーマを持って行なう事が大切です。

まず、上半身ですが。。

1)振る力そのもの
これは、体幹の力を中心に考える必要があります。その意味で、短く重いバットを振る事が適しています。基本的な事として、重いバットを振る場合、構えの時間は短めにすることがポイントになります。

2)構えの力を付ける
これはトップ型の構えにとっては、特に重要です。ただ、やりすぎると筋肉が硬くなるので、その点に対するフォローを加えながら行なう必要があります。種目としては、マスコットバットの先端に重りを付けて、踵で足踏みしながらスクワットダウンする方法です。

3)ヘッドの重さに耐える力をつける
基本、どのバットも長くて先端が重い棒なので、普通に振るとどうしても理想のスイング軌道よりもヘッドが下がります。これを防ぐために、時にはトップバランスのマスコットバットを振る事も必要になります。この場合、特に構えは短い事が重要です。バットをクルッと回してから構える方法で振りましょう。

4)軽いバットを振る
上記、3つのトレーニングのフォローとして軽いバットを振る必要があります。少年野球用くらいで良いので、これを鋭く振って、スイングがスムーズになり、筋肉がほぐれてきたと感じるまで振って下さい。

5)ヒッチの動きを身体に憶えさせるホウキスイング
重いバットを振っている内に疎かになりやすいのが、このポイントです。スクワットダウンして体幹部操作の連動を効かせた構えから完全に静止してから、一気に振り抜きます。出来れば反応素振りで行ないたいところです。時々で良いので、この練習を行なって下さい。

次に、下半身ですが。。

1)スクワットダウンした状態からの力の発揮を憶える
これは、ハムストリングスと腸腰筋に深く関わって来るテーマです。方法としては、スクワットダウンして置きティーを打ったり素振りする方法と、事前にスクワットダウンした上で普通のスタンスで振る方法が有ります。いずれにしても、始動時の力に直結する問題なので、ブラウンさんにとっては非常に重要なポイントです。今回行なった股割り置きティーを見ると、やはりまだ始動時のパワーが弱いと感じます。腸腰筋その場ステップとスクワットの組み合わせ(6回+6回)と、セットでこうしたスイングを行なうと良いでしょう。

2)捻って後ろ脚股関節を割った状態からの力の発揮を憶える
捻って後ろ脚股関節を割り、さらにトップハンドの肘を張った構えからのスイングを繰り返す事で、身体の捕手サイドの力を強くすると同時に、やはり始動時の後ろ脚の力を強くする目的で行ないます。始動時の力は、やはり何と言っても後ろ脚がメインになりますから、これもまた重要なテーマです。

方法的には割れ絞り体操系のトレーニングとバットスイングの組み合わせで行ないます。もちろん、どちらか一方だけでも充分効果があります。バットを振る場合、捻りを強調した素振り、置きティー、あるいは巻き戻し連続素振りが適応します。

3)股関節の円運動をバットに連動させて揺らいでから打つ練習
股関節を鍛えた後、その動きを良くして、力を有効に使えるようにするための練習です。事前に腸腰筋その場ステップと揺らぎ体操を行なうと良いでしょう。バットはかなり軽いバットを使い、短く持って両手の間を僅かに離します。この状態から、揺らいで、止まってから振ります。出来れば置きティーで行ないたいメニューですが、素振りでも良いです。ただ、軽いバットで行なうようにしてください。

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だいたい、以上が行なってほしいパワートレーニングと、そのフォローです。なお、ブラウンさんを見て、特に身体のタイプとして、股関節の屈曲伸展よりも内転外転の力(脚を開いたり閉じたりする力)が強いか、あるいは、その動きを使いたがる傾向が有るように感じます。こうした特徴の人は良くいますが、概して始動時の下半身の力が弱い傾向にあります。そして、腰が回りにくい特徴が有るのも、共通する傾向です。一方で、四頭筋で体重を受けたがるクセは無い傾向に有るようです。ブラウンさんの他には、山下さんやホセレイエスJr君、JHETTさんも、このタイプです。しかし、トレーニングの結果として、始動時の力はかなり強くなりましたから、その点に関しては鍛える事で克服出来るのだと言う実感を得ています。ただ、似た部分が有るタイプだと言う事で、注目すると良いと思います。

上記のような事を感じるのは、股関節を割った時に「屈曲 外旋 外転」のうち、外転に依存する度合いが高いと感じられる点です。股関節を割るストレッチでは、もう少し爪先を閉じた感じで、膝の自動回旋を上手く使うと、大腿骨が外向きに回転し、股関節の外旋が大きく使えます。そうすると、骨盤が間に挟み込まれやすいので、股関節の屈曲も使いやすくなります。屈曲伸展系のトレーニング(つまり黒人化系トレーニング)を重視して行ないながらも、股割りなどのフォームも気をつけてみてください。



上記の写真では、もう少し膝の自動回旋が使えると、大腿骨が外向きに回転するので、股関節が外旋し、もっと骨盤が挟み込まれ、股関節が割れると思います。こうした感覚をストレッチの中で掴んで下さい。ただ、難しいのは、実際、打つ時は上記くらいの感じで足裏が地面に3点でついているくらいの方が良いと言う事です。この足裏のフィット感のまま、もっと割れるようにするためには、まだまだ股関節を割る練習が必要になると言う事です。

例えば、手を合わせて行なう股割り体操で、爪先を開かずに(脊柱のS字を度外視し)脊柱を思い切り前傾させてやると、骨盤が大腿骨の間に挟み込まれる感覚が良く解ると思います。

打撃については、以上です。

と、言いたい所ですが、重要な問題を書き忘れていました。きたろうさんの記事にも書いたのですが、揺らぎ〜打ちに行くときの「間」が無いということです。そのため全身の力が使い切れていません。

このアンドリュー・ジョーンズのような間が取れると、もっと下からの力が使えて、地中からの力がブワッと増幅されて全身がうねるようなスイングが出来るようになるでしょう。(1.40からのスイングに注目してください。)

投球分析編

ピッチングについても、形についてはよく出来ています。ただ、全ての動きが小さく、パワーも無い状態です。しかし、前脚側、グラブ腕側と言うのは、あまりパワーが無くても良いと思います。それよりも後ろ脚側、投球腕で生み出したパワーをロスしない事が第一ですから、形が良ければまずは良いです。その意味で、前脚側、グラブ腕側と言う事に着いては特に言う事はありません。

問題は、後ろ脚側と投球腕の可動域を拡大し、さらに力を付けると言う作業をしていく必要が有るということです。投球腕については腕を振る事や腕回し系、後ろ脚側については割れ絞り系と腸腰筋、ハムストリングス系が重要になります。

そこで、特にお奨めしたいトレーニングとして、ピッチャーズ・スパイラルダンスと言うのを紹介します。これは軽くやってウォーミングアップにするのも良いし、ハードにやってトレーニングにするのも良いです。


今のフォームでも、投球腕の動きの基本は出来ています。内旋してから肘から挙り、そして外旋しつつトップを経て、最大外旋の形を作りリリースに向かう。。これらの動き全て出来ていますが、基本的に動きが小さいです。(関節が名一杯動いていない。)


この一連の動きの中でポイントになるのは下の写真の二点で、つまり肘から上がってボールが下になる所と、いわゆる最大外旋の形を作る所です。ここで肩がしっかり入ってくれると大き腕の回るスローイングが出来ます。

このへんは、やはり外国人選手に限ります。このくらい肩が入ると、凄い球が投げられるでしょう。(デーブ・スチュワートとチャップマン)

なので、この形を作るためのストレッチは、非常に重要になります。そして、この形を作るためには後ろ脚の股関節を上手く使う事、またその力を引き出す事が大切になります。そして、その重要なテーマはもちろん、股関節の割れと絞り、そして腸腰筋とハムストリングスです。

このように、股関節の割れ絞りと投球腕の捻りは連動しています。ですから、肩甲骨や肩関節の柔軟性も、股関節の柔軟性も必要になります。そして、上記のピッチャーズスパイラルダンスでは、この写真の連動のメカニズムが実感出来ます。

そこで、特におすすめしたい練習方法が、下の動画の素振りとシャドーを組み合わせるというものです。

捻りを深く取る事で、後ろ脚の股関節が大きく割れ、タスキラインが引き伸ばされます。この状態からスイングすると、後ろ脚とトップハンドが強く使われる事になるので、この素振りとオートマチックステップのシャドーを組み合わせれば、強度と柔軟性を同時に鍛える事が出来ます。

ただ、スローイングのトレーニングとして打撃(特にパンチャータイプ)を取り入れる場合、バッティングでは、写真のように脇を閉める動き(肩関節の内転)を使うので、筋肉が緊張していれば、大胸筋や広背筋が硬化する可能性が有ります。


そのため、大胸筋や広背筋のストレッチは特に入念に行っておいてください。それについてはピッチングトレーニングの動画集に入っています。

ただ、バットスイングは筋トレなどと比べると、圧倒的に柔軟性を保つ、あるいは向上させる効果が高いです。

なので、バットスイング後に「腕を良く回す」と「大胸筋、広背筋をストレッチする」というセットで行うと良いでしょう。そしてもちろん、シャドーにはバットスイングの柔軟性を向上させる効果も期待出来ます。

右投げ、右打ちである事。そして、あまり時間が取れない事を考えると、この「素振りとシャドーの相乗効果」を活用しない手は有りません。

長くなりましたが、今回は以上です。