2017年6月26日月曜日

清宮幸太朗バッティング分析

 まずは動画で清宮のバッティングを見てみましょう。

動画1:清宮バッティング


 非常に柔軟で緩急対応も上手そうな間の取り方をしていますし、左右に打ち分ける技術も持っている。欠点など無い完璧なバッティングにも見えます。

 最大の長所から挙げましょう。画像1に見られるように後ろ脚股関節を割れた状態に保ったトップを作る事が出来るのが大きな長所で、これはプロレベルでも出来ていない選手が多い非凡な部分です。

画像1: 後ろ脚股関節を外旋位(割れた状態)に保ったトップ


 この形の意味は、前脚着地時に下半身が開いていない(回っていない)事を意味します。そのため、ここから下半身の回転力を最大限に発揮出来るし、遅い変化球にも我慢出来るのです。

 画像2の連続写真に見られるように脚を挙げてからトップを作るまでの動きは非常に素晴らしく、ココに清宮の非凡さがあると言えるでしょう。

画像2:清宮の「割れ」


 このへんの巧みさは巨人の阿部に似ていると言えます。画像3を見ると後脚を外旋位に保ちながら前脚を踏み込んで行き、着地後に鋭く内旋(絞る)させている事が解ります。

画像3:阿部慎之介


 この「後ろ脚股関節を外旋位に保ったトップ」が作れると着地後に一拍の間を作って変化球に対応する事が可能になります。そうなると俗に言う1,2の3の「の」が有るバッティングになるのです。これが清宮の巧みな緩急対応を可能にしています。

 ただ、清宮のバッティングには大きな欠点が一つ有ります。動画2を見てください。変化球に3球続けて空振りしています。そして全てのスイングに共通するのは「手首の返しが早い」と言う点です。つまり捏ねているのです。

動画2:清宮の空振り


 この傾向は素振りにも顕著に見られます。下の動画3を見ると素振りでも手首の返しが早い事が解りますね。

動画3:清宮の素振り(手首の捏ねが目立つ素振り)


 連続写真(画像4)を見ると解りますが、バットのヘッドが返っるのが早いですね。

画像4:清宮の素振り


 一方画像5は私の理論に則った素振りです。素振りでも手首を返さずにここまで両腕を伸ばしきる事が可能なのです。ちなみにこのスイングは最後まで両手で振り抜いています。

画像5:BPL理論実践者による素振り


 それではなぜ清宮は手首を捏ねてしまうのでしょうか。その原因は画像のように、スイングする前にバットヘッドをクイックイッと投手方向に入れたり戻したりする動きにあります。画像6はその連続写真です。

画像6:清宮のルーティーン


 この動きは試合の打席でも見られます。(動画4)

動画4:清宮のルーティーン


 この動きにより、スイングの前に手首、前腕部の筋肉がアクティブに働くようになります。その結果、実際のスイングでもそれらの筋肉が優位となるから、早い段階で手先の運動が先行し、結果として手首の返しが早くなってしまうのです。こうした現象を「手首を捏ねる」と言います。

 その意味において清宮に見習ってもらいたいのはロッテの平沢のバッティング(動画5)です。打つ前にバットを無駄に動かさないので、常に安定したトップの角度から手首を捏ねずに綺麗に返して振り抜いています。

動画5:平沢大河バッティング


 バッティングではバックスイングで手から動かすとフォワードスイングでも手から動き出します。ですから、打つ前に手は無駄に動かさないに越した事は無いのです。

 清宮がプロに入った時、どれだけ活躍出来るかはこの点がどれだけ修正されているか、あるいは修正されていない場合、どれだけ成績に影響するかにかかっていると言えるでしょう。


野球技術論


2017年6月5日月曜日

1章 二種類の打撃メカニズム(1)

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第 1 章 2種類の打撃メカニズム 

本質的な違い

 私は打撃メカニズムを「どのようなメカニズムによってバットを加速するための力を生み出しているか」という観点から 2つのタイプに分類しています。これら2種類のタイプは完全に異なるメカニズムを持っているため、その練習法、コツ、指導法もそれぞれ異なります。適応する道具や戦術でさえ異なるのです。そのため、あなたがどちらのタイプを採用しているのかを理解する事が重要になります。

 私は一方をパンチャータイプ他方をスインガータイプと名付けました。 動画 1-1(a)(b)はそれら二つのタイプの典型例を収録しています。ある特定の打者が、どちらのタイプを採用するかという事は、後天的な要素(その打者に影響を与えたスター選手や、その打者を教えたコーチなど)によって決まります。パンチャーの打者とスインガーの打者の間には決して先天的な違いはありません。なので貴方はそれらのメカニズムを学ぶ事によって今からでも打撃のメカニズムを変える事が出来ます。

動画1-1(a)


動画1-1(b)




 ではまず第一に、それら二つのタイプの根本となるメカニズム(バットの加速システム)を理解するための二つの実験を紹介したいと思います。

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(1) スインガータイプの実験 (動画 1-2)

動画1-2 スインガータイプの実験


画像1のようにリラックスして両腕を下げて自然体で立ってください。そ こから重心移動の勢いを利用して腰を回転させます。そうする事で遠心力に よって貴方の腕は体の周りで振られるでしょう。言い換えると、貴方は腕力 によって無理やり腕を振る必要は無いと言う事です。

画像 1: スインガータイプの実験


 以下はスインガータイプの打者の例です。(写真とは別):ハンク•アーロ ン、テッド•ウィリアムズ、ジョー•ディマジオ、ジョージ•ブレット、ウィリ ー•メイズ、ベーブ•ルース、ダリル•ストロベリー、エディー•マレー、ランデ ィー•バース、トニー•グウィン、ジョシュ•ハミルトン、ジョー•マウアー等

(写真)スインガータイプの打者


(2) パンチャータイプの実験 (動画 1-3)

動画1-3 パンチャータイプの実験


 画像 2 のように、ある程度重心の低いワイドで安定した構えをとり、トッ プハンドをトップの位置にセットします。次に、その構えから直接パンチを 打ちます。バックスイングや重心移動、割れなどの準備動作をとらずに瞬発 的に力を発揮してパンチを打ってください。爆発的に最大限の力を発揮する 事が大切です。下半身は意識的に動かすべきではありません。なぜなら手を 加速しようとすると下半身はオートマチックに動くからです。具体手に言う と重心移動や腰の回転は構えた位置から直接パンチを打とうとする事でオ ートマチックに発生します。

画像 2: パンチャータイプの実験


 以下はパンチャータイプの打者の例です。(写真とは別):マーク•マグ ワイア、デレック•ジーター、バリー•ボンズ、マイク•ピアザ、ホセ•カンセ コ、その他ほとんどの現役打者。

(写真)パンチャータイプの打者


 端的に言うと、スインガータイプは重心移動、腰の回転、そしてボトムハ ンドの引きを利用する打ち方です。一方、パンチャータイプは瞬発的かつ爆 発的な筋収縮とトップハンドの押しを利用する打ち方です。

画像3: スインガータイプはボトムハンドの引きを使う。(ベーブ•ルース、 ジョージ•ブレット)


画像4: パンチャータイプはトップハンドの押しを使う(ミゲル•カブレラ、 バリー•ボンズ)


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