2012年9月11日火曜日

ハンターさん 2回目

ご来店ありがとうございました。




ピッチング編

ピッチングに関しては着実に良くなっています。ただ、動き的にはやはり筋肉が筋トレで硬くなっている感じが非常にします。これは投打ともにです。このような場合、とにかく腕を振る、バットを振る事を繰り返せば、時間をかけて筋肉がほぐれて行き、しなやかな動きが出来るようになります。

ピッチングでは、クセとして、グラブとボールを割る時の両腕の動きが、前へならへのような腕の使い方になっている事が問題です。これは日本人にはよく見られる傾向で、前脚を上げた時の腕の形に原因が有る場合が多いです。この腕の使い方になると、重心点が前(腹側)に出すぎて、爪先体重になり、膝がつぶれ、大腿四頭筋が効いて、ハムストリングスの力が使いにくくなります。

スインガー、パンチャー、関係無く、割れ方が良い投手の例を集めてみましたので、参考にしてください。

クレイグ•キンブレル(パンチャー)
http://www.youtube.com/watch?v=aWO9kaaltdc&feature=plcp

アロルディス•チャップマン(パンチャー)
http://www.youtube.com/watch?v=cAlnLfkppm0&feature=plcp

チャーリー•ファーブッシュ(パンチャー)
http://www.youtube.com/watch?v=57HE3jtDpgg&feature=plcp

ラモン•ラミレス(パンチャー)
http://www.youtube.com/watch?v=TYJg6BUGo_M&feature=plcp

ジオ•ゴンザレス(スインガー)
http://www.youtube.com/watch?v=HWqoj-fT950&feature=plcp

イバン•ノヴァ(スインガー)
http://www.youtube.com/watch?v=pkaRElSbj-Q&feature=plcp


両腕の形が前へ倣えのようになり、爪先体重になり、膝がつぶれ、大腿四頭筋が効いて、ハムストリングスの力が使いにくくなっている状態を表しているのが下の写真です。膝の角度に注目してください。


一方、下の写真は良い例です。グラブが体に近い方が、踵寄りに重心が来るので、大腿四頭筋が効きにくく、股関節が割れやすいので、膝が潰れにくいのです。こうなると、ハムストリングスによる股関節伸展の力が使えます。


横から見た比較でも、股関節の割れ具合の違いが解ります。(写真はほとんど静止状態で再現した動きです。実際のフォームとは少し異なります。)

  腕の形が悪い例

   腕の形が良い例(割れる途中の形の2コマ目は特に実際とは異なります。)


腕の形の比較(良い例と悪い例)
※ただし脚を挙げた所で良い例の形になっている事が重要です。



良いフォームでも、センターカメラから見ると、膝がやや潰れているように見えますが、下の動画でチャップマンとキンブレルのフォームを斜めから映した冒頭のシーンに注目してください。後ろ脚に注目すると、非常に良い形になっている事が解ります。

アロルディス•チャップマン

クレイグ•キンブレル

たとえばダルビッシュ等はこのへんに問題が有る投手ですね。日本人には多いのですが、下の動画を見てください。


キンブレル、チャップマンと比べると、膝が一番曲がったところで、キンブレル等の場合、軸足よりお尻が背中側に有るのに対し、ダルビッシュの場合、軸足の真上にお尻が有ります。それだけ膝が潰れている証拠です。この場合、ハムストリングスが効いていないので、体重を支える力が弱く、重心もそれだけ低くなります。

図(膝が潰れている例と潰れていない例の比較)

ハンターさんについては、冒頭の動画でも、当日、撮影時に、この点を修正してもらいました。一球目が修正後で二球目が修正前です。撮影中の事ですので大きな変化は有りませんが、二球目はやはりやや重心が爪先寄りに来て、そのぶん後ろ脚の効きが弱く、体の芯からの力が使えていない事が解ります。

このあたりがハンターさんの最大のテーマで、それはストレッチなどで根本的な感覚から変えて行く必要が有ります。腸腰筋その場ステップと、その後の骨で立つ感覚の確認(踵での小刻みな足踏み等)を特に重視してください。(ただ、腸腰筋その場ステップは腰椎の前湾を伴うので、なれない間は腰に痛みが出たりする場合が有りますが、悪い動きをしているわけでは無いので、やり方が悪く無い限り、慣れれば何ともなくなります。)

ピッチングについては以上です。次はバッティング編です。


バッティング編

バッティングについては今回が初回と言う事で、基礎行程を終了したと言う状況です。ですので、細かいフォーム的な事よりも、今後の課題や方針について書きます。

良い点としては、骨格のアラインメントが良く、バランスが取れています。この点はピッチングにも通じるものが有ります。しかし、当日は軽い腰痛が有ったためか、バットがあまり振れていません。理由は腰痛だけでは無いと思います。投打共に、何かもう一つ「力を発揮する」と言う事に関して、エグ味が無く、淡白にアッサリと、ソツ無くまとまっている感じで終わってしまうところが有ります。その反面がクセが無いと言う長所でも有るのですが、短所としてはやはり躍動感とか瞬発力に欠ける面が有ると言う事になります。もっとクセが有っても「体を名一杯使って、思い切り振ろう」と言う意思が強く、また、それが楽しくてたまらない。そういう人のフォームは見れば解ります。それが絶対的に良いと言う事でも無いのですが、ある意味、それが野球の面白みを解っていると言う事でもあるのです。例えばタイプ云々は抜きにして、中村紀洋とか、イチローとか城島健司、中島裕之あたりの打撃や、イム•チャンヨンとか西口文也なんかのフォームを見てると、ネチッこいまでの執拗なスイングに対する執着心を感じますが、その辺がハンターさんのスイングからは感じられないと言う事です。構えを見ても、綺麗にまとまっていて、アッサリしていますが、そのへん気持ちがこもっている人の構えだと、もっと捻りが入っていたり、ヘッドが投手方向に入っていたり、スタンスが広く構えが低かったり、肘が高く挙っていたりと、良くも悪くもクセが出て来るものです。

つまり、まだ「バットを振る事の楽しさが感じられていない」スイングだと言う事です。そして、それを感じられるようになるためには、通常、かなりの数を振る必要が有ります。(ゴールデンエイジと呼ばれる子供の時に、遊びの中で簡単に掴んでしまう場合は多いと思います。)そして、また思い切り振らないと、それは感じられるようになりません。そして、それを感じられるようになることが打撃が上手くなるという事です。

これは、取り組み方で、変えられる部分も有ります。まず筋力トレーニングよりも、野球のスイング。それもフルスイングする事を繰り返す事、そして、フィジカルトレーニングでは、負荷を持ち上げるトレーニングよりも、自分で最大限の力を発揮して、スピードを発揮するトレーニング(もちろん、ダッシュがその典型です。)を重視する事です。持久力系のメニューは極力控えて(0で良いです。)その余力をスイングを含めた瞬発力のトレーニングに注ぎ込んでください。

そして、バッティングを上手くなろうとするためには、プロやメジャーの打者を良く見る事も重要です。良いものを見ないと、打撃の本当の面白さは解りません。下の動画のような凄いスイング、カッコいいパフォーマンスをどれだけ見たかが、上達と、そのためのモチベーションのカギになります。


それでは具体的に取り組むべきポイントを挙げていきます。

1)ストレッチと素振りの繰り返し

まず、ど真ん中から攻めていきましょう。この打法では、腸腰筋による骨盤の前傾と、ハムストリングスの力を使う事が最重要テーマです。

ですから、腸腰筋その場ステップ(反り系)と、股関節伸展リズムスクワット(アップダウン系)の黒人化トレーニング系と、素振りのセットを徹底して繰り返してください。なお、補助トレーニングとして、素振りの直前に座って割れ絞り体操を挟むと良いでしょう。

構えた状態から瞬発的に力を発揮する感覚、両足で地面を捉える感覚などが解るようになってくると思いますが、そのあたりがこの打法でもっとも基本的かつ重要なポイントです。

※)ただしこれらのストレッチでは腰椎の前湾を多用するので、特に慣れない内は腰が痛くなるなる可能性が有ります。ただ慣れて来ると免疫が着くような感じで痛くならないはずです。良い感じの筋肉痛ようなもので、長時間座る時に起こる、腰椎後湾に伴う腰痛よりは良いと思います。

2)巻き戻しの徹底

素振りは必ず巻き戻して終わるようにしてください。巻き戻しが起こらないと言う事はスイングに問題が有ったのだと考えてください。巻き戻しの動作はバットを斜め下に戻しながら、後ろ脚をホームベース方向に着地させるのが正しい動作です。

メカニズム的には写真のように、逆タスキライン(左肩から右腰に至る)がフォロースルーで引き伸ばされ(股関節伸展による反りを伴う)体の軸がホームベース方向に傾くので、その後、逆タスキラインの筋肉が収縮します。その動作は、バットを斜め下に振り下ろしながら、後ろ脚の股関節を屈曲させる動作になります。この時、体の軸がホームベース方向に傾いているため、後ろ脚が外れると、体はホームベース方向に倒れようとします。それを防ごうとして、後ろ脚がホームベース付近に着地して体重を支えます。これが正しい巻き戻しの動作です。


巻き戻しが起こらない時は以下のポイントを見直してください。

a)前脚に体重が乗らない

前脚に体重が乗らないと、スイングの回転に負けて前脚の膝が割れます。そうすると、フォロースルーで前脚を軸とした捻りが起こらないので、巻き戻しも起こりません。この場合、構えを見直してください。横から見て後ろ脚の方に上半身が傾いていないか、投手から見て、直立気味(クラウチング角度が足りない)構えになっていないか。このあたりを見直すと解決します。

b)ホームベース方向を見てバットを振っている

素振りではホームベース方向を見てスイングする人が多いのですが、そうすると肩の回転が小さくなり、フォローでの捻りが不足するので巻き戻しも小さくなります。素振りも実戦同様、投手方向を見て行うようにしてください。

c) 狭い場所で素振りをしている

(一般的な大人の場合)部屋の中などで素振りをする場合、普通の長さのバットだと、危険なので、それを体が感覚的に察知して、セーブをかけます。こういう場合、短いバットを振るのも良いでしょう。いずれにしても、完璧なスイングは一般的に思われているよりも広い面積を必要とします。

主に以上のポイントに注意すれば、少なからず巻き戻しは起こるでしょう。ただ、この動画くらいの躍動感が出て来なければ本物とは言えません。とは言え、現時点では毎スイング毎に巻き戻してからスイングを終える事が重要です。もちろん、意識的動作としてわざと巻き戻すのでは無く、伸張反射によって、勝手に巻き戻しが置きてしまうのでなければ意味が有りません。伸張反射によって起こるべき動作を意識的に起こしてしまうのは間違いです。「素振りは巻き戻して終わる」これが素振りの大きなポイントです。

3) 下半身の力を使う



ハイスピード動画や下の写真を見ると、ハンターさんのスイングではバットがミートポイントまで来たときの腰の回転が小さいですし、振り出しで、腰が少ししか回っていないのに、ヘッドが体から離れて、つまり手首のコックがほどけてしまっています。これは、体の回転の力が使えず、バットを腕で振っている状態を意味します。


模範的スイング(全て素振り)と比較してください。



これを改善して行くには、まず腸腰筋その場ステップ〜骨で立つ感覚の確認〜踵での小刻みな足踏み〜揺らぎ体操の手順で、ハムストリングスを効かせて立つ事を体得した上で、素振りをする際にもポイントが有ります。

揺らぎながらリズムを取り、前足踵の足踏みを止めて振る方法を当日練習しましたが、最後に前足踵が着地してから、フゥッと息を吐くくらいの間を取って(実際に息を吐く必要は有りません。)から振ってください。この時、リラックスして自分の体重を地面に落とし込むイメージを持つと、地に足が着いた状態になります。揺らぎから、この一拍の間を取って振ると、下半身の力が使いやすくなります。揺らぎで股関節がアイドリング状態になっている事の効果も有ります。また、ハムストリングスで立つ事が出来ておれば、そのぶん、腰の回転力も強くなります。

この体重が地面に落とし込まれる際、実際にも頭の高さがミリ単位で沈むと思います。リラックスしている事で各関節が体の重みを受けて、僅かに屈曲するからです。しかし自然に屈曲するのと意図的に屈曲するのは大きな違いですから、意識して沈み込む事は絶対にしないでください。

いずれにしても目に見えない程度の沈み込みが起こるのですが、と言う事はその後に反動で浮き上がろうとするアクションが起こります。この体が浮き上がって来る前に、沈み込みの底で始動出来ればベストです。素振りではそれが毎回で来ますが、実打、特に実戦においては、その辺が相手投手とのタイミングと言う事で、僅かな誤差が生じるのは止むを得ないところでしょう。


いずれにしても、揺らぎを利用する事、揺らいだ後、一拍の間を取って、地に足が着いてから始動する事を、1スイング毎に体に憶え込ませて行ってください。そして、最後は巻き戻しで終わると言う事です。

※)尚、骨で立つ感覚は、直立に近い状態でハムストリングスが効いている時に得られる感覚で、構えで腰を落として行くと、その感覚はほぼ無くなります。股関節、膝関節が屈曲している状態で骨で立つ事が出来ていると、ハムストリングスが体の負荷も受けて、もっと大きな力を発揮しているので、股関節伸展で強く地面を押す事になります。これが解ると「リラックスしつつ、自然に強く地面を押している感覚」が得られます。(股関節伸展は重力に逆らわない方向で力を発揮するので、リラックス出来るのです。)こうした感覚も、素振りの中はもちろん、揺らぎ構え作り体操などで掴んで行く事が重要です。

4)始動時のクセ

オートマチックステップの始動時には、個人的なクセが良く出ます。そして修正するのが難しいポイントである事も確かです。ハンターさんの場合、大きな問題となるクセは見られませんが、横からのハイスピードで見ると、始動時に僅かに後ろに体重移動していますね。これは本来は不必要な動作です。ただ、クセで起きる場合も有り、その場合、反応素振り(手を叩く音などに反応して振る)で、その動作が消える場合もあるので、ビデオなどで確認するのも一つの手段です。

下の動画は、その一例です。(反応素振りによる後ろへの体重移動の消失)


ただ、クセであるなら、この程度のクセはまだ良いのです。しかし、問題は意識してやっている場合で、塚口理論とは無関係のメジャーのオートマチックステップの打者には、後ろに体重移動する中でオートマチックステップで始動する例が多いのです。それは良く無い事ですから、必ず僅かな間で良いので、静止した状態から始動するようにしてください。

プリンス•フィルダーの場合、英語ブログの影響である可能性が有りますが、それでも後ろに体重移動してから始動するオートマチックステップになっていますね。(動画の0.28より横映し)http://www.youtube.com/watch?v=yiudGAx8W24&feature=plcp



打撃については、以上です。基本的には、今の所、黒人化トレーニングおよび、股関節の割れ絞りなどの基礎的ストレッチと、素振りの積み重ねが非常に重要な段階です。まず、骨で立つとか、股関節を割るとか、腸腰筋をストレッチした後に股関節で体が折れる感覚とか、そういった基礎的な感覚が掴めるようになってください。

それでは以上です。がんばってください。

2012年9月2日日曜日

9月2日 雑記

(1)ブライス•ハーパー

http://www.youtube.com/watch?v=VDO90w_kHU0&feature=plcp

話題のルーキーが今期 0.256 15HR と堂々の成績を残していますが、凄いホームランですね。最後の方に横から映したシーンが有りますが、所謂「割れ」の動作が大きく「深いトップ」を作り出しています。この動作などは、今の一般的な技術論だと「素晴らしい割れ、深くて大きなトップ」としか説明しようの無いと言うか、そうした理論を説明する際の格好のサンプルとなるでしょう。

しかし、この大きな「テークバック」がパンチャーとして始動した結果、下半身が力を無意識下で発揮した事による動作だと言う事は、実際にパンチャーに取り組んでみなければ解らないと思います。理論でも説明出来ますが、この感覚は実践を伴った方がより理解しやすいでしょうね。

ハーパーのフォームでも始動ポジションで後ろ脚股関節が割れているから、このような強い力が発揮出来るのです。この力の強さ、それをバットに伝達するしなやかな上半身の使い方。この二つが有ればこそ、これだけの打撃が出来るのですが、ある意味、そうした下半身の力に頼った打ち方で、その意味では若さ故と言うか、筋肉の若さと言う武器を如何無く有効に使ったスイングと言えるでしょう。

似たような魅力を感じさせるのが今期売り出し中の、エドウィン•エンカーナシオンですね。

http://www.youtube.com/watch?v=k6Yp7IuoImE&feature=plcp

この打者も、始動時に下半身の力を強力に発揮しています。脚上げ型の場合、始動時の力が強いと(前脚が既にフリーフットになっているぶん)投手方向へ横に押し出す力が(上に突き上げるよりも)強くなり、いわゆる「大きなトップ」を作るような動きになりやすいのです。この「パンチャーで大きなトップを作る動作」と「スインガーで大きなトップを作る動作」の違いは、これは理論よりも見慣れると解ります。(勿論、解りにくい場合も有りますが)

しかし、ハーパーのような、所謂「重心移動で打つ」タイプのフォームの打者が、このように明確にパンチャータイプのスイングをしているのは非常に興味深いものがあります。下記動画の冒頭でハーパーがトップからインパクトまでを再現しているシーンが有りますが、パンチャーの特徴を良く捉えていますね。

http://www.youtube.com/watch?v=TdeYm8XhlS8&feature=plcp

しかし、今期のナショナルズは凄いチームです。ざっと有名所だけでも見ていきましょう。

打者

ライアン•ジマーマン
ジェイソン•ワース
マイケル•モース
ダニー•エスピノザ
ブライス•ハーパー

投手

ジオ•ゴンザレス
ステファン•ストラスバーグ
ジョーダン•ジマーマン
エドウィン•ジャクソン
タイラー•クリッパード


現在80勝52敗で地区首位と言うのもうなずけます。