2017年10月19日木曜日

新打撃革命2

 パンチャースインガーの分類は良い悪いの分類では有りません。双方ともに完成されたメカニズムであるため、一方に徹している事が重要であり、中間的なメカニズムが良く無いのです。(画像1)

 画像2を見てください。前回の動画を見ても解るように、パンチャー=新型、スインガー=旧型と言う事が出来ます。しかし、例えば素人のクロールがオリンピック選手のバタフライより遅いのと同じで、下手なパンチャーよりも上手いスインガーの方が結果を残す事が出来るのは間違いありません。プロのスインガーとアマのパンチャーなら間違いなくプロのスインガーの方が「打撃が上手い」のです。

 仮に同じレベルの才能、身体条件が有る選手がそれぞれパンチャーとスインガーを採用したとして、成績を比較すると大体下記くらいの感じになると想像出来ます。

 パンチャー 打率0.330 本塁打50本
 スインガー 打率0.315 本塁打43本

 つまり、少しでも最善を尽くしたいのならパンチャーを採用するべきなのですが、スインガーだからといってそんなに不利になるわけでは有りません。この事をまず前提として理解してください。

 

2017年9月29日金曜日

新•打撃革命1

「バッティングの技術論は色々あるが基本は一つだ」等と良く言われますが、実際は違います。パソコンにMacとWindowsが有るように、打撃にも2つの全く異なるタイプが存在するのです。私はそれをパンチャータイプスインガータイプとそれぞれ名付けました。

 これらの技術は、根本的なメカニズムが異なるため、指導方法や練習方法、さらには戦術まで変わって来ます。ですから、指導者も選手も、この2つの違いを良く理解したうえで取り組む事が重要です。 



 動画を見ると解るように、パンチャー=新型、スインガー=旧型という図式が当てはまります。しかしだからといって必ずしもスインガーが劣っているとは限りません。この「パンチャー&スインガー分類法」は良い悪いの分類ではないのです。そうした事などについて次のページで説明します。

2017年6月26日月曜日

清宮幸太朗バッティング分析

 まずは動画で清宮のバッティングを見てみましょう。

動画1:清宮バッティング


 非常に柔軟で緩急対応も上手そうな間の取り方をしていますし、左右に打ち分ける技術も持っている。欠点など無い完璧なバッティングにも見えます。

 最大の長所から挙げましょう。画像1に見られるように後ろ脚股関節を割れた状態に保ったトップを作る事が出来るのが大きな長所で、これはプロレベルでも出来ていない選手が多い非凡な部分です。

画像1: 後ろ脚股関節を外旋位(割れた状態)に保ったトップ


 この形の意味は、前脚着地時に下半身が開いていない(回っていない)事を意味します。そのため、ここから下半身の回転力を最大限に発揮出来るし、遅い変化球にも我慢出来るのです。

 画像2の連続写真に見られるように脚を挙げてからトップを作るまでの動きは非常に素晴らしく、ココに清宮の非凡さがあると言えるでしょう。

画像2:清宮の「割れ」


 このへんの巧みさは巨人の阿部に似ていると言えます。画像3を見ると後脚を外旋位に保ちながら前脚を踏み込んで行き、着地後に鋭く内旋(絞る)させている事が解ります。

画像3:阿部慎之介


 この「後ろ脚股関節を外旋位に保ったトップ」が作れると着地後に一拍の間を作って変化球に対応する事が可能になります。そうなると俗に言う1,2の3の「の」が有るバッティングになるのです。これが清宮の巧みな緩急対応を可能にしています。

 ただ、清宮のバッティングには大きな欠点が一つ有ります。動画2を見てください。変化球に3球続けて空振りしています。そして全てのスイングに共通するのは「手首の返しが早い」と言う点です。つまり捏ねているのです。

動画2:清宮の空振り


 この傾向は素振りにも顕著に見られます。下の動画3を見ると素振りでも手首の返しが早い事が解りますね。

動画3:清宮の素振り(手首の捏ねが目立つ素振り)


 連続写真(画像4)を見ると解りますが、バットのヘッドが返っるのが早いですね。

画像4:清宮の素振り


 一方画像5は私の理論に則った素振りです。素振りでも手首を返さずにここまで両腕を伸ばしきる事が可能なのです。ちなみにこのスイングは最後まで両手で振り抜いています。

画像5:BPL理論実践者による素振り


 それではなぜ清宮は手首を捏ねてしまうのでしょうか。その原因は画像のように、スイングする前にバットヘッドをクイックイッと投手方向に入れたり戻したりする動きにあります。画像6はその連続写真です。

画像6:清宮のルーティーン


 この動きは試合の打席でも見られます。(動画4)

動画4:清宮のルーティーン


 この動きにより、スイングの前に手首、前腕部の筋肉がアクティブに働くようになります。その結果、実際のスイングでもそれらの筋肉が優位となるから、早い段階で手先の運動が先行し、結果として手首の返しが早くなってしまうのです。こうした現象を「手首を捏ねる」と言います。

 その意味において清宮に見習ってもらいたいのはロッテの平沢のバッティング(動画5)です。打つ前にバットを無駄に動かさないので、常に安定したトップの角度から手首を捏ねずに綺麗に返して振り抜いています。

動画5:平沢大河バッティング


 バッティングではバックスイングで手から動かすとフォワードスイングでも手から動き出します。ですから、打つ前に手は無駄に動かさないに越した事は無いのです。

 清宮がプロに入った時、どれだけ活躍出来るかはこの点がどれだけ修正されているか、あるいは修正されていない場合、どれだけ成績に影響するかにかかっていると言えるでしょう。


野球技術論


2017年6月5日月曜日

1章 二種類の打撃メカニズム(1)

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第 1 章 2種類の打撃メカニズム 

本質的な違い

 私は打撃メカニズムを「どのようなメカニズムによってバットを加速するための力を生み出しているか」という観点から 2つのタイプに分類しています。これら2種類のタイプは完全に異なるメカニズムを持っているため、その練習法、コツ、指導法もそれぞれ異なります。適応する道具や戦術でさえ異なるのです。そのため、あなたがどちらのタイプを採用しているのかを理解する事が重要になります。

 私は一方をパンチャータイプ他方をスインガータイプと名付けました。 動画 1-1(a)(b)はそれら二つのタイプの典型例を収録しています。ある特定の打者が、どちらのタイプを採用するかという事は、後天的な要素(その打者に影響を与えたスター選手や、その打者を教えたコーチなど)によって決まります。パンチャーの打者とスインガーの打者の間には決して先天的な違いはありません。なので貴方はそれらのメカニズムを学ぶ事によって今からでも打撃のメカニズムを変える事が出来ます。

動画1-1(a)


動画1-1(b)




 ではまず第一に、それら二つのタイプの根本となるメカニズム(バットの加速システム)を理解するための二つの実験を紹介したいと思います。

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(1) スインガータイプの実験 (動画 1-2)

動画1-2 スインガータイプの実験


画像1のようにリラックスして両腕を下げて自然体で立ってください。そ こから重心移動の勢いを利用して腰を回転させます。そうする事で遠心力に よって貴方の腕は体の周りで振られるでしょう。言い換えると、貴方は腕力 によって無理やり腕を振る必要は無いと言う事です。

画像 1: スインガータイプの実験


 以下はスインガータイプの打者の例です。(写真とは別):ハンク•アーロ ン、テッド•ウィリアムズ、ジョー•ディマジオ、ジョージ•ブレット、ウィリ ー•メイズ、ベーブ•ルース、ダリル•ストロベリー、エディー•マレー、ランデ ィー•バース、トニー•グウィン、ジョシュ•ハミルトン、ジョー•マウアー等

(写真)スインガータイプの打者


(2) パンチャータイプの実験 (動画 1-3)

動画1-3 パンチャータイプの実験


 画像 2 のように、ある程度重心の低いワイドで安定した構えをとり、トッ プハンドをトップの位置にセットします。次に、その構えから直接パンチを 打ちます。バックスイングや重心移動、割れなどの準備動作をとらずに瞬発 的に力を発揮してパンチを打ってください。爆発的に最大限の力を発揮する 事が大切です。下半身は意識的に動かすべきではありません。なぜなら手を 加速しようとすると下半身はオートマチックに動くからです。具体手に言う と重心移動や腰の回転は構えた位置から直接パンチを打とうとする事でオ ートマチックに発生します。

画像 2: パンチャータイプの実験


 以下はパンチャータイプの打者の例です。(写真とは別):マーク•マグ ワイア、デレック•ジーター、バリー•ボンズ、マイク•ピアザ、ホセ•カンセ コ、その他ほとんどの現役打者。

(写真)パンチャータイプの打者


 端的に言うと、スインガータイプは重心移動、腰の回転、そしてボトムハ ンドの引きを利用する打ち方です。一方、パンチャータイプは瞬発的かつ爆 発的な筋収縮とトップハンドの押しを利用する打ち方です。

画像3: スインガータイプはボトムハンドの引きを使う。(ベーブ•ルース、 ジョージ•ブレット)


画像4: パンチャータイプはトップハンドの押しを使う(ミゲル•カブレラ、 バリー•ボンズ)


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2017年2月15日水曜日

肩乗せ打法とは何か

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 肩乗せ打法とはBPL理論が2015年あたりから提唱している打ち方です。また、最近のMLBでも爆発的に普及しています。しかし、MLBで普及している肩乗せ打法と、私の提唱しているそれは全く同じではありません。まず下の動画を見てください。MLBで普及しているタイプの肩乗せ打法です。



 投球を待っている間、バットを肩に乗せていますが、そこから脚を挙げる時に、バットを持ち上げて肩から離しています。これを便宜上、不完全肩乗せ打法と言います。

 一方BPL理論に基づいた下の動画を見てください。肩に乗せた状態から直接バットを振り出しています。これを完全肩乗せ打法と言います。


  
 上記を念頭に置いて、以下の文章を読んでください。

 まず、そもそも何故、肩に乗せるのか。

 その理由は「腕が楽だから」です。

 この「腕が楽」というのは見落とされがちですが、非常に大きな打撃のファクターです。投球間隔の短い練習(特にティー打撃)よりも、試合でその意味が特に大きくなります。

 下の動画を見てください。打者は構えたまま長く待たされると腕が疲れて緊張して来るのでヘッドの走りが悪くなります。だから、大きなホームランというのは得てして構えが短い時に生まれます。そして良く打つ選手ほど、その辺を工夫しているものです。動画の打者たちが様々なルーティーンによって構えに入るタイミングを工夫している様を見てください。




 『肩に乗せる事によって腕が楽になるから、腕の筋肉がリラックス出来る。そのぶん、腕力に頼った打ち方にならずに、下半身、体幹の力を使ってバットを加速出来る。』これが肩乗せ打法のメリットです。

 しかし、肩乗せ打法と同じくらい楽にバットを構えられる打法がもう一つ存在します。それが落合博満の「神主打法」に代表される「バットを立てた構え」です。



 その逆に、下の写真のように、バットを寝かせた構えは非常に腕力を必要とします。



 これは実際に、下の写真のように自分でバットを持って比べてみると一目瞭然で解ります。



 それではバットを立てた構えと寝かせた構えでどちらが理想的なのでしょうか?

 結論から言うと、それは寝かせた構えです。

 主な理由は以下の2つです。

理由(1)フォーム上のメリット あらかじめトップの角度にバットを寝かせて構えておく事によって、前脚着地までの間の動きから無駄を省く事が出来る。


理由(2)解剖学上のメリット バットを寝かせて構える事によって前腕部が回内し、肩関節も内旋し、それに連動して肩甲骨、骨盤のポジショニングまで良くなる。また、グリップも前腕の回内と連動して自然にしまります。


 しかし、バットを寝かせた構えには一つ致命的な欠点があります。それが「腕に負担がかかる」というものです。これは下図のようなテコの原理によるものです。バットが横になってヘッドとグリップの間の水平距離が大きくなるほど、腕には負担がかかるのです。




 この、腕に負担がかかると言う(バットを寝かせた構えの)欠点を解消するために編み出されたのが肩乗せ打法、特に完全肩乗せ打法なのです。

(写真)完全肩乗せ打法の構えの実例

 肩に乗せる事によって、あらかじめトップの角度にバットをセットしつつも、腕の負担を最小限に(バットを立てた構えよりもさらに負担を小さくする)する事が可能になるのです。

 MLBではアンドリュー•マカッチェンとブライス•ハーパーが、この肩乗せ打法(不完全)を採用して大きく成績を向上させました。彼等の成功を目の当たりにしたMLBの他の打者たちもこぞって採用し始め、今ではMLBの相当数の打者が肩乗せ打法を使っています。


(※)マカッチェンは2017年から止めています。

 一方、日本ではほとんど流行る兆しがありません。強いて言えばホークスの松田宣浩が、MLBで流行る前から独自にやっていたぐらいで、その他には独立リーグなどでBPL理論の影響でやっていると思われる選手がチラホラいたりする程度です。


 
 なぜ日本で流行らないかというと、日本人にはバットを立てて構える打者が多いので、そもそも肩に乗せる必要性がほとんど無いからです。日本人にバットを立てた構えが多いのは、骨格形態の特徴に理由が有るのですが、その話についてはここでは省略します。



 ただ、バットを立てる構えは前述のようにメカニクス的にはバットを寝かせた構えに劣るので、その辺が日本人打者に限界をもたらしている一つの要因になっているのです。

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 BPL理論ではまず、その日本人特有の骨格形態から来る動きのクセを改善する事に着手します。それによってバットを寝かせた構えから打つ事を憶えてもらい、最終的に完全肩乗せ打法に移行するというアプローチが理想的です。



 ただし、そんな肩乗せ打法も、残念ながら完全無欠の打法であると言うわけではありません。バットを肩に乗せる事で、手や腕のポジショニングが解剖学的に理想的な位置から少し外れてしまうのです。そのぶん、メカニクス的には若干のデメリットが発生します。

 しかし、その僅かなデメリットを遥かにしのぐメリット、つまり「腕をリラックスさせられる」というメリットを得られる事に肩乗せ打法の意味が有るのです。

 前述しましたように、腕がリラックス出来れば、下半身、体幹の力を有効に使って腕を加速する事が出来ます。そして、それこそが打撃の中で、最も重要な要素の一つなのです。

 少し話しがそれますが、理論には上位の理論下位の理論が有ります。手の位置などの「形」が下位の理論であれば、体幹、下半身の力を有効に使うというのは上位の理論です。最上位の理論と言っても良いです。

 ですから、この最上位の理論に則っている限り、どんなフォーム(つまり形)でもそこそこ打ててしまうのです。そこから「フォームなど何でも良い」という意見も生まれるわけです。

 話を戻します。

 肩乗せ打法では、この最上位の理論を最優先させるために、下位の理論を少しだけないがしろにします。そこが弱点と言えば弱点です。

 ただし、BPL理論の代表的実践者である愛媛マンダリンパイレーツの林敬宏選手は「完全肩乗せにして飛距離が伸びた」と証言しています

(写真)林敬宏選手


 このように、弱点もある完全肩乗せ打法ですが、それだけに、その弱点をいかにして最小限に食い止めて出来る限り0に近づけるかという「取り組み方」の部分が非常に重要になります。 

 例えば肩に乗せない打ち方で素振りをする等が挙げられます。これはメカニクスや形の面を修正して理想に近づけるためのドリルです。肩乗せ打法を採用しても、肩に乗せない打法を自分の中で基本の形として常に練習しておかなければなりません。

 その他、特に完全肩乗せ打法で注意するべき点として、「バットを寝かせすぎない」という事が言えます。バットが寝過ぎると低めにバットを出す角度が作れないからです。



 取り組み始めは、バットを寝かさないと力が出にくい人が多いと思いますが、意識して練習してトップの角度で構えられるようにしていきましょう。(バットを寝かせると肘が上がるので、特に慣れないうちはその方がパワーが出ます。)

 スイングが始まる時のバットの角度は、だいたい下の写真のような感じです。ですので、この角度で構えるようにしてください。



 つまり、下の写真のような感じの構えです。この状態で肩に乗せると、完全肩乗せ打法の構えとしては理想的な角度になります。



 ところで、不完全肩乗せにも一つ大きな問題が有ります。

ブライス•ハーパーの不完全肩乗せ打法


 まず第一に、脚を挙げながらバットを持ち上げるという動作自体、毎回毎回微妙な誤差を生じさせる要因となりますし、また、動き始めで腕を動かし、その腕に(今まで0だった)バットの負荷が加わって来るので、そこで腕に力が入りやすく、やや腕に頼ったスイングになりやすいのです。

 例えばブライス•ハーパーは肩乗せ打法を採用して成績を大きく向上させましたが、ハマった時のスイングは肩乗せ以前の方が良いものでした。




 なので、不完全肩乗せもまた、デメリットを受け入れたうえで、それ以上のメリットを取りに行く打法なのです。

 私としては肩に乗せるのであれば圧倒的に、不完全では無く完全肩乗せをお勧めします。

 下の動画は前述の林敬宏選手がアメリカ独立リーグとの試合で「完全肩乗せ打法」によってホームランを打った時のものです。完全肩乗せ打法は既に高いレベルで結果を残している打法なのです。


 
 なお、完全肩乗せとは言っても、実際には肩に乗せた所から直接スイングがスタートするわけでは有りません。

 下の画像(こちらのページに掲載)で説明しましたように、パンチャーではバットを振ろうとした結果、無意識下で下半身が力を発揮して、ステップとテークバックがオートマチックに起こります。



 このオートマチックに起きるステップとテークバックの間にバットは肩から自然に離れて、トップの位置にまで(オートマチックに)引かれます。

(写真)完全肩乗せオートマチックステップ
 
 ただ、その感覚(スイングの前にバットが肩から離れる感覚)はバッターの中にはほぼ有りませんので、感覚的には肩に乗せた状態から直接バットを出している感じになります。それは不完全肩乗せ打法で意識的にバットを持ち上げるのとは全く異なる感覚なのですが、それについては実際に試してみるとすぐに解ると思います。

 なお、肩乗せ打法、特に完全肩乗せ打法は、筋力の弱い女性や子供、さらに御年配の草野球選手にとってはうってつけの打法とも言えます。少年野球で教えたり、デートでバッティングセンターに行った時に彼女に教えたりすると良いかもしれませんね。



 もちろん、お手軽なだけでは無く、トップの位置から無駄なくバットが出せるので、子供にそういうスイングを身につけさせる上でも、有効です。ただし子供に教える場合、並行して肩に乗せない打法での素振りなども行うようにしてください。でないと力がついて行きませんから。 

 また、理由については割合しますが、完全肩乗せオートマチックステップでの「素振り」は止めた方が良いでしょう。あくまでもボールを打つ時専用の打ち方という認識で取り組んでください。

 そろそろ、肩乗せ打法についてのお話を終えたいと思いますが、最後に、この打法は前述してきましたように「小さなデメリットを受け入れて大きなメリットを掴みに行く」という戦略に基づいた打法です。
 ですから、そこの所を理解して、デメリットを最小限にするために普段から肩に乗せない打法でのスイングも練習しておく事が非常に重要になります。
 肩乗せ打法、特に完全肩乗せ打法は、それ自体は非常にシンプルで簡単な打ち方です。しかし、その反面、(方に乗せない打法も練習する等)取り組み方自体は少々複雑になる部分があります。そこは試合で楽して最高の結果を出すために必要な労力として割り切って考えてほしいと思います。

 最後にもう一度肩乗せ打法の意味について強調しておきます。

 打撃において「腕がリラックスする事で下半身や体幹の力を有効に使ってヘッドを最大限に走らせる事が可能になる」というのは最上位の理論の一つです。少し考えれば解りますが、プロの一流投手の豪速球やキレッキレの変化球を相手にする時、腕の筋肉がバットの重さで緊張していて勝てるわけが無いのです。筋トレすれば良い?それも一つですが、相手もトレーニングするので、結局はイタチごっこで負荷の大きな打者が不利になってしまうでしょう。そこで、そうした問題を打撃から取り除くために生まれたのが(完全)肩乗せ打法なのです。

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2017年2月14日火曜日

BPL式バッティングでは下半身が使えない?

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http://bplosaka.blogspot.jp/2017/06/blog-post_10.html

 動画を見てください。これがBPLで主に教えている打ち方で、正確にはパンチャータイプのオートマチックステップと言えます。



 これらの動画を見て、衝撃を受けたという感想が有ると同時に、常に一定の割合で「下半身が使えていない」「(下半身を使えないので)上半身の筋肉が相当強く無いと出来ない」という感想を頂きます。はたしてどうなのでしょうか。

ブログトップページの動画に寄せられたコメント


 ところで、あらかじめトップの位置で構えてほとんどノーステップ(実際にはステップはある)で打つというのは、外国人選手の打ち方のようでもありますね。下の動画を見てください。これがBPL理論で目指しているバッティングです。



 これは、一時期キューバ打法として、さかんにメディアで採り上げられていた打ち方でもあります。



 しかし、そうした外国人選手の打ち方に対しても「上半身の力に頼った打ち方。凄い筋肉が有るから出来る」という解説が良く聞かれます。本当にそうなのでしょうか。

 パンチャーのオートマチックステップは「構えた位置からテークバックや重心移動など、一切の準備動作を取らずに、瞬発的にバットを出して一瞬で振り抜く」という意識で行われます。



 ところが実際には、この時、つまりバットを瞬発的に加速しようとした瞬間に下半身が無意識下で力を発揮して、重心移動がオートマチックに発生し、その結果、いわゆる「割れ」もオートマチックに発生します。

 この現象は科学的にはAPA(Anticipatory Postural Adjustments)という用語を使って説明出来ます。



 下図は、腕を瞬発的に挙上しようとした瞬間、実際には下半身と体幹の筋肉が先行して力を発揮する様子を示しています。



 例えば下の選手は一こま目の状態から直接ドッジボールを投げようとした結果、APAによる下半身出力が無意識下でオートマチックに発生し、その結果として「割れ」がオートマチックに発生しています。選手に伝えたのは「テークバックや重心移動などの準備動作を利用せずに、構えた位置から瞬発的に大きな力を発揮して思い切り投げろ」ということです。



 現状では、APAは姿勢を制御するために発生する現象であると説明されていますが、私はこの現象が、上記のように目的動作と反対方向の動作(つまりテークバック)を無意識下で瞬間的に発生させ、目的動作の威力を高める役割を果たしていると見ています。

 つまり、

 構えた状態から(意図的な)重心移動やテークバックなどで、いかにも下半身を使っていますよ的な動きを取らなくても、このAPAという現象を利用する事が出来れば、下半身は充分に使えるのです。

 言い換えると、

 「構えた位置から、瞬発的に力を発揮して、直接バットを加速しようとすれば、ステップ、テークバック、体重移動などの準備動作はオートマチックに起きる」と言う事なのす。

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 しかし。。ここからが重要な所です。

 普段、脚を挙げたり大きな体重移動を利用して打っている人や、股関節、下半身の力を上手く利用出来ない人がパンチャーのオートマチックステップを行うと、APAを上手く利用する事が出来ず、実際にも下半身を使えない打ち方になってしまうのです。

 そして、実際にもほとんどの人がまずこの段階を経過します。つまり「意図的に下半身を使っていた打ち方」から「意図的には下半身を使わない打ち方」にチェンジした結果、単純に(下半身を使わないという)引き算だけが起こってしまい、パワーダウンしてしまうのです。

 これには2つの理由があります。

 まず第一に、今までパンチャーのオートマチックステップのような、いわばノーモーション打法的な打ち方をやってこなかったから、身体がまだその出力形式に馴染んでいない。という事が言えます。

 次に第二に、特に日本人(アジア系)の場合、黒人や白人に比べて骨盤が後傾気味で、ハムストリングスの力が上手く使えないという点が挙げられます。(外見的にはお尻が扁平でヒップアップしていない)

(写真)ヒップアップした黒人特有の体型


 つまり、実は日本人はむしろ下半身を使う事がある意味で苦手なのです。だからこそ、ことさらに腰を落として下半身に負荷をかけたり、如何にも下半身を使ってますよと言わんばかりに脚を使って重心を大きく移動されるような動作形態が推奨され、「下半身を使う」という事がことさらに強調されて来たと考えられるのです。

(写真)腰を落として下半身を使うという思想は日本文化に深く根付いている。


 ですから、オートマチックステップの動作形態によってスイングを繰り返しつつ、BPL式の股関節トレーニングを重点的に取り組んで、行けば、APAによる始動時の下半身出力は強くなっていきます。

 私がこれまでにYOUTUBE等にアップしてきた動画には、確かに、こうした観点から見て「発展途上」の下半身が使えていない実践者のスイングも含まれています。下の動画などは、その典型的な例です。ほぼ例外無く全ての選手がこの状態からスタートします。

ビフォー動画

 しかし、下の動画を見てください。上の動画の2人が二年近くBPL理論に取り組んだ結果のアフター動画です。

アフター動画

 ビフォーでは前述の「引き算」の状態が起こっており、始動時の下半身の出力が非常に弱く、その結果ほぼ腕だけで振ってるに等しい状態になっています。

 ところが、アフターでは「パンチャーのオートマチックステップによる徹底した振り込み」と「BPL理論に基づいた股関節トレーニング」を行った結果、始動時の下半身出力が満足の行く強さにまで向上しています。

 長期間に渡って取り組んでいても、股関節トレーニングを軽視した結果、始動時の力が中々向上しないケースもありますが、彼等には実際に繰り返し実地指導を行う中で、私が直接この事の重要性を繰り返し説いてきたため、このような結果が得られたのです。

 重要なポイントですが、パンチャーのオートマチックステップでは始動時の下半身出力が強く得られなければ、単なる手打ちになってしまいます。

 つまり、意識的に下半身を使わないぶん、無意識下で発揮される下半身の力を有効に使う事が重要になるのです。

 そして、それが出来れば、オートマチックステップでは脚を挙げて打つよりも大きなパワーが発揮出来ます。この事が実感出来た時に、始めてオートマチックステップがマスター出来たと言えるのです。

 ここからがさらに重要なポイントです。

 考えれば誰でも解る事ですが、実戦の中で打撃の精度を挙げるためには、出来るだけ無駄な動きを取りたくありません。

 極論すれば、ステップもテークバックも重心移動も無しで、構えた位置からそのままバットを出せれば理想的なはずです。実際にMLBにはそういう感じの打ち方の打者が数多くいます。

 ところが日本人には脚を大きく挙げて打つ打者が非常に多く、この事は世界の野球関係者達の間でも話題になっています。


 
 『構えた位置から何の準備動作も取らずにいきなりバットを出すだけでは下半身の力が使えない。だから、ステップしながらテークバックして、弓を引き絞ってからその力を解放させるようにして打つ。』これが従来のバッティング理論でしたね。



 上のイラストは阿部慎之介ですが、早実の清宮なんかはまさにそのタイプの典型例であり、また優等生であると言えるでしょう。(BPL理論では、そうした打法を何も完全否定しているわけではありません)



 ところがBPL理論で理想的と考えるパンチャータイプのオートマチックステップでは、構えた位置からそのままバットを出すだけで、実際には下半身が無意識下で出力し、その力を有効に活用出来るのです。



 つまり。。。

 このまま大きく身体を動かして下半身を使う従来の日本式の打ち方を続けていくか、それとも「構えた位置からそのままバットを出すだけ」のシンプルかつコンパクトな打ち方で、下半身の力を使えるようになるか?

 どちらが良いかは明白ですね。構えた位置から一切の無駄な動きを取らずに、そのままバットを出して、なおかつ下半身の力が使えれば、それこそが正に理想的な打ち方なのですから。

 そして、BPL理論では、オートマチックステップの中で、始動時の下半身出力を高める方法がメソッド化されています。

 ぜひとも、パンチャータイプのオートマチックステップをマスターして、理想の打撃を身につけてください。

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