2012年8月31日金曜日

8月31日 雑記

(1)フェルナンド•ロドニー

http://www.youtube.com/watch?v=Wy0LC0wfciI&feature=plcp

脚の挙げ方が小さいからだと思いますが、メジャーの中でもかなり純粋なセット始動に近いタイプと言えるでしょう。「セット始動ドリル」のようです。なお、セット始動ドリルでは前脚を挙げた所で止まらない事が大切です。

因に成績は現在39セーブ(MLB全体で2位)で防御率0.75 です。

いくつか動画を載せておきます。

http://www.youtube.com/watch?v=59laYw9kZgs&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=MxNIsCsVC2A&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=5RwUN5Iyw-A&feature=plcp

ただ、セット始動の割には肘の角度が開き気味で、アーム式の一歩手前のようになっているのは、前脚を挙げると同時に手を大きく挙げるからでしょう。ここで手から動き出すと、腕の筋肉の緊張から、アーム系になりやすいのです。

ラボでは既にピッチングに関してはセット始動から理論転換しましたが、セット始動が「投げる」事において重要である事には代わり有りません。バックホームや遠投のように助走を付けられないプレート上からの投球では前脚を大きく挙げる必要が有り、その動作とセット始動の相性が悪いと言う事です。

ですから、ジェレッド•ウィーバーのような投げ方の投手が16勝でメジャー全体の2位につけているのですね。

http://www.youtube.com/watch?v=eDRSUN1XZbc&feature=plcp

2012年8月26日日曜日

ハンターさん 1回目

本日はご来店ありがとうございました。



おそらくご自身の良い所を気づかれていないと思います。私も後から見て、解った事が多々有ります。(いつもそうですが。)

まず、当日お話したポイントの全てが、平均点的にソツ無くこなされています。そして全体のバランスも良いです。イメージ的には白人のパワーピッチャーにいそうなフォームと投げるリズムです。

ただ、回し込み型のクセが色濃く残っており、まずそれを取り払う事と、肩の柔軟性、股関節の柔軟性を養う事が第一の課題です。

下の動画は回し込み式を実演したものですが、以下の特徴が出ている事に注目してください。

●後ろ脚股関節が割れにくい
●フィニッシュでグラブ腕が背中側に引けやすい
●投げ終わった後、後ろ脚が出て来る動作が大人しくなる。



また、その他にも腕の出所も低くなります。いずれにしても、当日はまだ、こういったフォームのクセが残っている状態でしたので、動画を見ても、クセが残っている感じがします。クセが取れるのには数週間〜1ヶ月くらいはかかると思いますが、半年とか一年も残るようなものでは無いと思います。

続きます。

ハンターさんの長所としては、脚を挙げた時の姿勢は良いものがあります。脊柱のS字カーブが綺麗に描けています。ただ、メジャー式の脚上げでは、骨盤が後傾するので、もう少し全体的に脊柱が丸まっていても良いです。


問題は、脚を挙げる時に脊柱が使えていない事です。腰から上を固めたまま、前脚を挙げています。その辺がクリアされれば、もっと膝が胸に付くくらいまで前脚が挙ると思います。(個人的な柔軟性も有りますが。)その「脊柱を(柔らかく)使う」ためのポイントは江坂さんの記事で前述しましたが、そのままもう一度再掲します。

以下、再掲

メジャー式の脚挙げをする上でのコツを書きます。踵で足踏みすることや、後ろ脚で軽く踏むようにして前脚を挙げる事は当然ですが、それ以外にもまずは股関節を視点として、上半身を背中側に倒すと脚が挙ると言うメカニズムを利用します。(背中を倒す事で脚を挙げると言う意味では無く、背中を倒すのと脚を挙げるのを同時にやると言う事です。)


次に、その感覚を保ったまま、頭だけは背中側に倒さず、最初に位置に残しておくようにします。丁度ダルマ落としで真ん中を抜いても、上は真っすぐ落ちて来るのと同じです。


そうすると、脊柱を柔らかく湾曲させ、骨盤も後傾した状態を作れます。ここで一度骨盤が後傾する事で、始動ポジションでは前傾位を作れるのです。以下は、これらを動画で説明したものです。



ただ、この方法で注意するべき点は誇張しすぎると、反動で前脚を降ろす時に骨盤が大きく前傾し、ハムストリングスを引っ張るので、その張力が増して、股関節伸展(後ろ脚)が強く働き過ぎて、伸び上がります。上の動画でも前脚を降ろす時、やや伸び上がりが見られますが、少しなら良いのですが、あまり大きく伸び上がってしまうと、肝心の始動した時に股関節伸展の力が使いにくくなります。そうすると、肩に大きな負担がかかります。ですから「前脚を降ろす時に大きく伸び上がる」「肩に負担がかかる」と言う状態になった時は以下のように対応してください。(肩に痛みや違和感が出た場合は教えてください。)




1)前脚が降りる時、頭の位置が浮き上がらないように、目標に集中する。
2)前脚を挙げて、降ろして、骨盤が云々と言う動作では無く「脚を挙げてフッと力を抜いて、ガッと投げる」と言うリズムを意識する。
3)脚を挙げる時に、動画で前述した動作を誇張しすぎず、あくまでもバランス良く、自然な感じにまとめる。

以上、再掲 終わり

では、ここからは幾つかの技術的ポイントについて書いて行きます。

★グラブの位置

グラブの位置が体からやや離れ過ぎています。こうなると重心が爪先よりに来て、その後の重心移動のシーンでも膝が折れやすく大腿四頭筋で体重を支える事になり、ハムストリングスが使いにくくなります。そうなると、自分で出そうと思った力が100%出し切れない状態になります。

試しに、両腕を前へ倣えのように前方に突き出したセットポジションから前脚を挙げて爪先荷重で重心移動をする動作と、グラブを胸にピタッと付けて踵荷重で前脚を挙げて重心移動をする動作を比べてください。大腿四頭筋を使っている状態と、ハムストリングスを使っている状態の違いがよくわかるはずです。

もう少し肘を曲げて、グラブを体の近くに置くと、踵寄りに体重がかかり、股関節で体重を受け止めている感じになるはずです。


★テークバックと肘の位置の関係

写真に見られるように、テークバックで投球腕の内旋がかからず、ラジオ体操のように腕を伸ばしたまま肩を外転する動きになっています。内旋がかかると、大胸筋が緩むのでテークバックで投球腕が外転しても大胸筋に不要なテンションがかかりません。また、伸ばしたままだと腕を支えるための筋肉(肩関節の外転や肩甲骨の上方回転に関与する筋肉)に負担がかかり、肩に力が入ります。


ここで重要なのは内旋の方で、テークバックで大胸筋にテンションがかかっているため、フォロースルーに入った時、大胸筋による肩関節内転および内旋の作用が強く働いていると見られます。結果的に外旋が不十分で大胸筋による内転の力も加わるので、肘の位置が低くなり、肘を痛めそうな形になっているのです。

また、もう一つの原因として、回し込み式では肩の捻りが誇張されるので、投球腕だけが背中側に引かれやすく、投球腕の大胸筋が過剰に引き伸ばされる傾向が有ります。

まず、テークバックで内旋して肘が曲がった形を作るために、回し込み式では無い、ラボで行った投げ方でのシャドーを繰り返す事と、ウェートトレーニングよりもストレッチを重視する事で柔軟性を向上させる事が重要になります。不要な捻りを排して、グラブとボールが体の中心近くで割れるようにする事も重要です。

★肩の外転と股関節の外転の連動


この形、動きは多くの人によく見られる一つのパターンです。投球腕が肘で曲がって内旋するテークバックになっていないと、肩が外転して開くのと連動して股関節も開くのですが、それは下図のようなメカニズムの結果です。


つまり、肩の外転と連動して、オレンジのセグメントが回転し、その回転と連動し、緑のセグメントが回転するわけです。ただ、この動作で、どの動きが一番の原因になっているかはケースバイケースが有るでしょう。ハンターさんの場合、投球腕の動きが原因になっているように思います。回し込み式でグラブとボールを割る位置が、体の中心から、後ろ脚側にズレると、このような投球腕の動きになりやすいのです。

こうなると、後ろ脚股関節も割れない(割れでは無く、単なる外転になってしまう)ので、その力をロスします。ですから、まずは、不要な捻りを排して、グラブとボールが体の中心近くで割れるフォームにする事が重要です。


以降の内容は二回目の方で記述いたします。

2012年8月18日土曜日

8月18日 雑記

(1)http://baltimore.orioles.mlb.com/team/player.jsp?player_id=456068

Miguel Gonzalez

今期メジャー初先発を果たした1984年生まれの右投げ右打ち。今期はこれまで5勝2敗の防御率3.38です。

投球シーン
http://www.youtube.com/watch?v=Yh3C5va19Zo&feature=plcp

骨盤が後傾して膝で体重を受け止めている点を除いては素晴らしいフォームです。ただ、その問題点が非常に大きいので、そこが気になります。

骨盤を後傾して前脚を挙げるメジャー式で多いのですが、脚を挙げる時に後ろ脚の膝まで曲がってしまう事です。こうなると、そこから重心が移動する時に膝が折れてしまい、膝で体重を受け止めるので大腿四頭筋が働きすぎて、ハムストリングスが充分に使えません。こうなると、前脚を降ろす時に骨盤も充分に前傾に戻らなくなります。ですから投げ終わった後の一塁への倒れ込みも、イマイチ躍動感とキレに欠けるのです。

ストレートを見ると93マイルくらいですが、印象的にスピンが効いた、所謂軽い球質のようです。日本人に多いタイプですね。

これは私の持論ですが、骨盤が前傾してハムストリングスが使えているタイプは重心移動、そこから身体を回転させる力が強いので、より体幹部、下半身の力でボールを押し出せるため、末節部に頼る割合が小さくなります。一方、骨盤が後傾して大腿四頭筋が効き過ぎている投手は、体幹部、下半身の力が使えないので、末節部の力に頼ります。そうなると、指でボールを切ってスピンをかける感じの投げ方になるので、スピンが効いた軽い球質になります。一方、ハムストリングスが使えている場合、スピンに頼らず、身体全体でボールを加速する感じになるので重い球質になります。

※)因に、骨盤の前傾、後傾、については、投げ方に起因する場合と体型に起因する場合があります。

その意味で言うとミゲール•ゴンザレスは球筋が綺麗な上に、球質が軽いタイプですから、この投球フォームで力押ししようとすると、特にメジャーでは長打をくらいやすいでしょう。ですから、動く速球を低めに集めるとか、緩急を使う等と言った技巧を磨く必要があります。(もちろん、フォーム修正をするのが理想ですが)

その意味で、お手本になるのがティム•ハドソンです。

上記リンクのwikiによると「ほとんど球が高めに来ない投手(イチロー)」と言うように、低めのボールを集めるのがハドソンの特徴です。

投球シーン
http://www.youtube.com/watch?v=8v1oPOs-JhE&feature=plcp

投球フォームはゴンザレスと同じく、骨盤が後傾した状態で膝が折れるのでハムストリングスが充分に使えないタイプです。それでも2011年までで通算181勝97敗の防御率3.40と言う素晴らしい成績を残している。

ミゲール•ゴンザレスが今のフォームで成功しようとするのなら、コントロール、変化球、緩急、等の技巧を重視する必要が有るでしょう。ただ、このタイプは見た目にいわゆる「キレの良い」速球が投げられますし、本人の感覚も球が走っているように感じるので、速球で押したくなる心境になるのだと思います。その辺が難しいところですね。実際、マイナーリーグや学生野球では本格派の速球投手として鳴らしたと思います。つまり、アマチュア時代に4番打者でも、プロに入ると技を磨く必要に迫られるタイプだと言う事です。ハドソンと同じスタイルとは言わないまでも、何等かの自分なりの色を打ち出して行く必要が有るでしょう。

その他の投球シーン
http://www.youtube.com/watch?v=lfqtScCQxdQ&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=jsnZMz7tyhY&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=CQWiG9ue2Gc&feature=plcp

現時点では緩急を使うのが上手い印象ですね。この腕の振りからの速球とチェンジアップの組み合わせは武器になりそうです。こういう引き出しを増やして行く事がこの投手には必要になると思います。

(2)http://baltimore.orioles.mlb.com/team/player.jsp?player_id=489002

Steve Johnson

今期メジャーデビューした1987年生まれの右投げ右打ちの投手。

投球シーン
http://www.youtube.com/watch?v=wCLmWOmxKk8&feature=plcp

チャド•ビリングスリーに似た体型で右のパワーピッチャー的な路線を行こうとしているかのように見えます。確かにストレートもズドンと響くような良い球質に見えますが、球速がそれほどでもありません。

身体の使い方にはややロスが有りますね。この投手の場合、前脚を挙げるところまでは良いのですが、挙げた所で膝を畳んでいます。これをすると、降ろす時に骨盤を前傾させるのが難しくなります。恐らく、膝を曲げる時に前脚のハムストリングスが収縮するからでしょう。ハムストリングスは股関節伸展筋ですが、膝の屈曲も行い、さらに骨盤の後傾も股関節伸展の一種である事をわすれてはなりません。つまり、前脚ハムストリングスが収縮して骨盤を後傾した状態に保とうとするので、骨盤が前傾しにくくなると言う仮説です。

ジョンソンの場合は後ろ脚の膝を折っていないぶん、まだ良いのですが、それでもやはりいくぶん骨盤が後傾した状態で重心移動に入っています。テークバックで肘から挙る形が不十分なのも無関係では無いでしょう。

ただ、フォーム的にはボールがグラブの中に入った状態を長く保っている上に、膝を畳むぶん、良くも悪くもコンパクトにまとまっていますし、比較的無駄な動きも少ないので、むしろ制球を磨く事で伸びて行く可能性は有りますね。グレッグ•マダックスのスタイルをお手本にすると良いと思います。

その他の投球シーン
http://www.youtube.com/watch?v=W0BJqc8hTqw&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=LEhjyer9kUE&feature=plcp

因に下段の動画は最後の方に不鮮明ながらハイスピードカメラが有りますが、バックスピンでは無いように見えますね。そもそもピッチャーは自分の身体の正中線に向かって投げようとするのが基本で、そうすると投球腕の手の平も自分の身体の中心に向きます。その上で、人差し指より長い中指が最後までボールに残るので、少しボールの側面をスライダー気味にこするようにリリースするわけですから、ボールの回転がバックスピンになるのが基本だとは少し考えにくいですね。

2012年8月13日月曜日

8月13日 雑記

(1)ジョニー•クエト

今シーズン、15勝6敗 防御率2.45と飛躍的な活躍を見せているジョニー•クエト。パンチャーらしいと言う事で以前から採り上げては来ましたが、まさかここまでの投手になるとは読めませんでした。

投球を見てみましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=e8gBcNPEZTw&feature=plcp

後ろ脚の膝を緩めた状態でトントンと踵で足踏みをしつつ前脚を挙げています。そして投げ終わった後は豪快に一塁側にターン&倒れ込みます。過剰に捻りが入る事を除けばラボで目指しているフォームに近いものがありますね。

また、スインガーの場合、身体の回転の後に腕が遅れてしなりながらヒュッと出て来る感じですが、クエトの場合、リリースに向かって身体全体がグーンと加速する感じもパンチャーらしさが良く出ています。

何よりもワインドアップで脚を挙げる時の後ろ脚の「骨で立ってる感」「ハムストリングスが使えている感」が素晴らしいです。ただこの骨盤が如何にも前傾した感じの体型ゆえにと言う部分ももちろんあるでしょう。捻る事によってロスしている部分は有りますが、後ろ脚のハムストリングスを使う事が非常に上手く出来ています。

投球内容的にはどのようなものなのでしょうか。まだじっくり見ていないので断言出来ませんが、動画を見る限りだと、低めに落ちるボールやチェンジアップを使ってる感じですね。

また、この投手の特徴的なのがストレートの球筋。藤川球児のようにバックスピン的な綺麗な球筋では有りません。軽く放物線を描いたり、浮き上がったりしています。0.45からの最後の二球に96マイルと95マイルのストレートが有ります。放物線を描き、失速しない。パンチャーの投手に多く見られるこの類のボールこそが手塚一志のジャイロボールでは無いかと私は見ているのですが。

2012年8月12日日曜日

8月12日 雑記

(1)http://orioles.mlb.com/team/player.jsp?player_id=592518

オリオールズの野手が終わったと思ったら、スーパールーキーが登場したようです。1992年生まれの若干20歳で、MLB公式サイトでは期待のルーキー100人の6位にランクされています。3Bとありますが、ショートやセカンドも守るようです。

メジャーデビュー2試合目で2本の本塁打を放ちました。現在3試合目で12打数4安打2本塁打の打点5。

フォームを見てみましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=bA1F9fJ_dE8
カッコいいですね。

脚上げ型のパンチャーで片手フォローと、最近の若者らしい打撃フォームです。あと5年くらいはこの手のフォームの新人が続々出て来るでしょう。ある意味、オートマチックステップ等はやや古典的に見える時代になるかもしれません。

しかし、その後は再び、動きの小さなフォームに回帰する時代が来ると信じています。投手の技術が挙る事でベースボールがウィッフルボール化すれば、おのずと打撃フォームから無駄が省かれて来るからです。

それまではブライス•ハーパーや、今回のマニー•マチャドのような派手系のフォームがMLBで幅を効かせる時代になると思います。

それでは、この派手系のフォームの意味する所はどこに有るのでしょうか。それは意外にもパンチャーのメカニズムがアメリカ球界に定着した事を意味すると考えています。

マチャドのフォームを派手に見せている要素は主に二つで一つ目が一本脚打法である事。二つ目が片手フォローである事。この二つです。

アメリカの打者が日本人のように脚を上げて後ろ脚に乗るようになったのはAロッド以降の事で、それまではあまりいなかったのです。(上げても後ろに乗らず、抜く感じだった)後ろ脚に乗せる事は言うまでも無く、脚上げ型パンチャーの始動ポジションを形成する事を意味しています。
また、この種の跳ね上げて止める片手フォローはパンチャー特有のもので、そのイメージがアマチュアプレーヤーの中にもかなり浸透して標準化していると言う事でしょう。

つまり、今はある意味、アメリカ球界でのパンチャー化が完了、かつ定着し、それを確認すると共に、各個人個人が応用で、独創的な色を出し始めたと言う時期だと言えるでしょう。その意味では(打撃フォーム的には)面白い時代が来ていると思います。しかし、パンチャー本来の長所を完全に活かすためには、その次のステップとして、ジェイソン•ジアンビやマーク•マグワイアが見せた無駄の無いフォームへの回帰が必要であると考えます。そしてメジャーリーグがそこに到達するのに、後5年〜10年はかかると言うのが私の読みです。

ただ、そこで難しいのは「無駄の無い」と言うのはイコール没個性化を意味するので、やはりその時代になっても、個性を表現しようとする選手は出て来るでしょうし、どのフォームが最も優れているかを純粋科学的に証明するのは不可能ですから、結局のところ画一化は実現しないでしょう。

話をマチャドに戻しましょう。

まず、この選手は身体が素晴らしい。身長188センチと申し分無く、手足が長過ぎない均整の取れた体型は野手向きだと言えるでしょう。また、動画を見ると、なで肩でもイカリ肩でも無く、肩のラインが前方にせり出して、胸が凹んで見える、骨盤前傾型の体型をしています。

http://www.youtube.com/watch?v=xQP6tHCuNxc&feature=plcp(0.16から)
http://www.youtube.com/watch?v=2TqMEsSx630&feature=plcp

この選手は間違い無く活躍出来るでしょう。

ただ、気になるのは耐久力で、前例を見ても片手フォロー(特に脚上げ型)は成績が下降するのが早いのです。

ホアン•ゴンザレス、フランク•トーマス、アレックス•ロドリゲス、マニー•ラミレス等、派手な片手フォローを取るタイプはある時期から成績を落とす傾向にあります。

この選手も30歳くらいまでは良く打つでしょうが、その後、どうなるか。一番、脂の乗って来る30代前半にどうなっているか。そこがポイントですね。

2012年8月5日日曜日

8月5日 雑記

(1)http://baltimore.orioles.mlb.com/team/player.jsp?player_id=502154

ZACH BRITTON

1987年生まれ 左投げ左打ち メジャー通算12勝12敗 防御率5.00

http://www.youtube.com/watch?v=Hk_pESDnaAs&feature=plcp

左投手はカーブ、スライダー方向に曲がる球しか無い場合が良く見られますが、この投手はスクリューボールの方向に微妙に動きながら落ちる球が有りますね。ウィキを見るとシンカーを投げると書いてあるので、それだと思います。

大きなカーブが有っても良さそうな投げ方ですが、無いのが惜しいですね。この投げ方だと78マイルくらいの大きなカーブが投げられそうですが。

フォーム的には腕を下に降ろした状態から始動するパンチャーでしょう。そのため、重心移動の最初に、身体をセンター方向に傾ける動作をやや強調します。今季の方がらしさが出ています。
http://www.youtube.com/watch?v=fxRzu90cdgk&feature=plcp

投げ終わった後に、ポンッと両脚で弾むように着地していますが、これはこのタイプの始動ポジションを形成するパンチャーの特徴で、右投げですがマイク•ムッシーナがそうでした。このポンッと着地するのが小気味良い方が良いフォームです。

マイク•ムッシーナ(ヤンキース)先発試合
http://www.youtube.com/watch?v=WqqOZoMnscE&feature=fvsr

ただ、ブリットンの場合、脚を上げる時に腕を引き上げる動作が大きいので、やや上半身の筋肉が勝ってしまい、下半身の力をロスしているぶん、最後の動作が小気味良くなりにくいのが問題点です。私がコーチだとしたら、脚を上げるときに腕を上げる動きを無くす事によってフィニッシュの小気味良さが出る方向にフォーム改善を計って行くと思います。ただ、この種のフォームは腕を下げるぶん、クイックが遅くなるというか難しくなるでしょう。

この動画の1.05〜クイックモーション。基本的にあまりクイックはやらないようです。
http://www.youtube.com/watch?v=KCPb9OB0cIw&feature=plcp

今期は4試合で1勝1敗 防御率8.35とふるいません。前述のフォーム改造に加えて、大きくて緩いカーブを憶えて緩急の差をもっと大きくすれば良いと思うのですが。パンチャーとは言え、このタイプのフォームは遅いカーブを投げるのには適しています。

2012年8月4日土曜日

8月4日 雑記

(1)http://ja.wikipedia.org/wiki/ニック・マーケイキス

Nick Markakis

3割20本前後を安定して打ち続ける1983年生まれの中堅どころの外野手。右翼の外野守備も高く評価されているオリオールズの中心選手。

http://www.youtube.com/watch?v=NtcWpEo7yjY&feature=plcp

バッティングはご覧の通り、スインガーとパンチャーの微妙な所を突いており、以前から分類に悩んで来た打者の一人です。

http://www.youtube.com/watch?v=aT72z7yA7tQ&feature=plcp

この動画終盤の横からの映像を見ると、パンチャーと見て間違い無いでしょう。始動時の下半身の力も有るし、トップハンドの動作も、パンチャーのものです。

今年はまだ、構えがパンチャーらしいので解りやすいのですが、去年まではスインガー的な構えだったので、なおさら分類が難しかったのです。2011年の動画を見てみましょう。

http://www.youtube.com/watch?v=xlEyyqakuEQ&feature=plcp(横有り)
http://www.youtube.com/watch?v=-s20TqfAH7k&feature=plcp (横有り)
http://www.youtube.com/watch?v=Jf_1GxS0xeo&feature=plcp(今期の構えに近い 横有り)

守備
http://www.youtube.com/watch?v=gDse9DjCWH0&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=ylYp0fxRxrk&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=PpV-nO5AOjU&feature=plcp

因に今期はこれまで打率0.289 の 10本塁打 また例年並の数字を残すでしょう。

これでオリオールズ40人枠の野手(ポジションプレーヤー)については紹介し終えましたので、ここで一度、ベストメンバーを考えてみましょう。

1番 サード    ウィルソン•ベテミー 右打席 左打席
2番 レフト    ハビアー•エイブリー
3番 ファースト  クリス•デービス
4番 センター   アダム•ジョーンズ
5番 キャッチャー マット•ウィータース 右打席 左打席
6番 ライト    ニック•マーケイキス
7番 ショート   JJ•ハーディー
8番 DH       ジム•トーミ(対右投手) ノーラン•ライモルド(対左投手)
9番 セカンド   ロバート•アンディーノ

どうでしょう。かなりの重量打線になったと思います。ただ全体にボワーンとした大きなスイングの打者が多いので、大味な野球になりそうだなと言う印象が有りますね。

(2)ライアン•ボーグルソン

2007年と2008年に阪神で活躍したライアン•ボーグルソンがメジャーで活躍しています。今季は9勝5敗の防御率2.38で、防御率においてはメジャー全体で3位につけています。

そこで、動画を見てみると、凄いライジングファストボールを投げています。(0.10から)
http://www.youtube.com/watch?v=iHSLs-T2c8A&feature=plcp
メジャーの打者がこの高さの球を振る事は普通なら無いでしょうから、相当浮き上がっているのでしょう。投げ終わった後の後ろ脚の動作を見ると、他の球種より前に出て行かない事から、恐らく投げ上げているのではと思います。つまり意図的に投げていると思われるのです。

2012年8月2日木曜日

8月3日 雑記

(1)投手の基本はアウトコース低めストレートと書きましたが、打者にとっての基本はインハイの速球とアウトローに落ちる変化球を打ちこなす事でしょう。その理由は以下の通りです。

(a)インハイとアウトローはホームベース方向に傾いた打者の体軸に直交するスイング軌道に内包されている。

(b)インハイには最も素早くバットヘッドを出す必要が有る。それゆえ、インハイは速球が最も難しい。一方、アウトローは最も開きを我慢して引きつける必要が有る。それゆえアウトローの遅い球は最も引きつける必要が有るコースと言える。(因に低めは高めより腰の回転が小さくなる。)

(c)インハイに素早くヘッドを出せる自信がある場合、ボールを良く引きつけてから打つ事が出来るので、そのぶんアウトローの緩い変化球も打ちやすい。インハイに素早くヘッドを出せる自信が無い場合、早めに身体を開いて打ちに行く必要があるため、アウトローの緩い球も打ちにくくなる。

(d)タイミングを外されてもアウトローの緩い球を打てるスイングの柔軟性が有れば、速球にタイミングを合わせて思い切って打ちに行ける。その場合、インハイの速球も打ちやすくなる。タイミングを外された時に緩い変化球に対応出来るだけのスイングの柔軟性が無い場合、思い切って速球に合わせて打ちに行く事が出来ないのでインハイの速球も打ちにくくなる。

これらの事から、まず打者としてはインハイの速球とアウトローの緩い変化球を打てるように練習する必要が有ります。これらのボールが打てるスイングであれば、インロー、アウトハイもストライクゾーンであれば打てるはずです。

また、練習する場合、インハイ速球とアウトロー遅球は出来るだけ交互に打った方が良いでしょう。なぜならインハイ速球とアウトロー遅球は究極の緩急でもあり、緩と急は交互に見ると双方がより際立って感じられるからです。

私が野球部の監督なら、以下のように練習します。インハイ速球についてはタオルを丸めたボールを利用して至近距離で打ちます。一方アウトロー遅球については通常のフリー打撃の要領でふんわりした球を投げて、それを打ちます。この練習を二カ所で同時に行い、3~5スイングで交互に回します。打者と球拾いの野手には気持ちよく打てる練習では無い事をあらかじめ伝えておく必要が有ります。
ただ、この練習の難点は、ある程度ボール球でも手を出した方が練習になると言う点です。(練習効率も良い)そのため、補完メニューとして実戦形式の打撃練習が必要になります。(ストライクボールの見極めをつけるため)

(2)http://baltimore.orioles.mlb.com/team/player.jsp?player_id=217915

Lew Ford

オリオールズシリーズ再開します。1976年生まれの右投げ右打ち外野手。今期MLB初ヒットを記録したオールドルーキー。

http://www.youtube.com/watch?v=V3-z6o83Ct4&feature=plcp

一種の二段ステップでしょうか。かなり始動のタイミングが遅いのが面白いです。

守備も結構上手いように見えるのですが。。
http://www.youtube.com/watch?v=2ik5aBVeoP4&feature=plcp

(3)http://baltimore.orioles.mlb.com/team/player.jsp?player_id=542897

Xavier Avery

1990年生まれの若者。今期デビューで90打数21安打 打率0.233 本塁打1 盗塁6

中々良い選手だと思います。気迫が感じられるし、難しい球に対応する反射神経が良い。始動時の後ろ脚の力が使えていて、グリップはリラックス出来る位置に有るので、実戦的には無理の無い打ち方です。ただ、これから「上手さ」がどれだけ出て来るかと言う事が大きな課題になるでしょう。

http://www.youtube.com/watch?v=DZl_XNvv8fQ&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=AH6Gxa9LfmM&feature=plcp

ホームランを流し打ちで打っているのも期待出来ます。
http://www.youtube.com/watch?v=gqJPGnN31CM&feature=plcp

高めの打ち方も上手いですね。両手振り抜きならではの高め打ちです。
http://www.youtube.com/watch?v=9T-2LyhEpGM&feature=plcp

バッティングの「打ち方の作戦」的にはエドウィン•エンカーナシオンと似ていますね。上半身は形よりも楽な位置においておき、リラックスした状態から一気に振り抜く事を重視したスイングです。
http://www.youtube.com/watch?v=Ylt-etdKJaQ&feature=plcp

スイング的にはカーティス•グランダーソンにも少し似ています。
http://www.youtube.com/watch?v=Dd_sjReBbnM&feature=plcp

こういった先例を見ると、成功する可能性は充分有ります。日本人にはいない感じの左打者なので、MLBの先例を見て予測しなければ解りにくいでしょう。

この守備、この肩の強さも魅力的です。21 安打 四死球11で 6盗塁と俊足も光ります。
http://www.youtube.com/watch?v=2FnkT-ROa2o&feature=plcp

この選手は非常に魅力的ですね。こういう選手を使わない手は有りません。オリオールズは今期地区二位と善戦しており、勝敗を度外視して使う事が難しい状況なので、24試合と出場試合数が少ないのでしょう。

2012年8月1日水曜日

8月1日 雑記

(1)今期のMLB打撃部門における大きな話題がアンドリュー•マカッチェンの打率(現在0.371)とジョシュ•ハミルトン(スインガータイプ)の序盤での本塁打量産(現在29本の2位)でしょう。マカッチェンに関してはこの時期に右打者が打率0.371をキープしているのは驚異的だと言えるでしょう。

この二人に共通しているのが、打席内でバットを肩に乗せて待つ方法を今季から採用している事です。
この方法が決して理想的とは言いません。しかし、この二人の活躍は「(バットを斜めに構える事によって生じる)バットヘッドの重みに起因する腕の筋肉の緊張を防ぐ」と言う事の重要性を意味しています。

アンドリュー•マカッチェン

2011年
http://www.youtube.com/watch?v=eEHQlkZlov0&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=38jT0WeJNpA&feature=plcp

2012年
http://www.youtube.com/watch?v=R5xTM24mD0s&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=c2ShZGfmZEk&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=O1YGeUkPT0A&feature=plcp

ジョシュ•ハミルトン

2011年

http://www.youtube.com/watch?v=U2_NqJ3YsaU&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=Bd6FhhhHGc8&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=tFmvYM7lwK0&feature=plcp

2012年
http://www.youtube.com/watch?v=WPJDCoTKDV8&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=sHDAAD3aKt8&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&v=b7jkmyasJQ8&NR=1

たったこれだけの工夫で打撃成績は大きく変わるのです。こういう小さな工夫の積み重ねは大きな成績の違いにつながるでしょう。

この方法の注意点としては、バットを担ぐ感じになると僧帽筋の緊張から胸椎が前湾し腰椎が後湾した悪い姿勢になってしまう事などが挙げられますので、あまり高い位置にバットを担ぎ上げない事と、胸椎の後湾を保つ事が重要になります。二人とも、それが出来ています。

バッティング成績を決めるのはスイングメカニクスだけでは有りません。戦略や、ルーティーンも関係してきます。