2014年8月8日金曜日

2014年8月号

8月8日 上達する瞬間

 上達すると言う事は、積み重ねて行く過程で、あるとき突然フッと感覚を掴む事であり、それ以外には無いのでは無いかと思う。その瞬間を掴むためには反復練習が必要になる。もちろん毎日、多くの練習量をこなしていればそれにこした事は無いが、少しであっても繰り返していれば地味ながら効果は有る。そして、その「瞬間」はその日の練習の最初の方や、休み明けに来る事が多い。1000本ノックで追い込んでいる最中ではなく、その千本ノックの次の日の最初にそうした瞬間は起きる。おそらく神経や筋肉の記憶と関係が有るのだろう。自分の体が取り込んだデータを整理するために睡眠を含めた休息と時間が必要になるからではないだろうか。そうした意味で最近特に感じる事が2つある。

(1)逆打席振りの効果
 バランスを取るために反対で振る効果は確かに有る。ただ、その効果を感じるためには少しづつでも継続して行なって行く必要が有る。すぐには効果は感じられない。具体的には右打者が左でのスイングを続けると、右でのクセが抜けるように感じられる事が有る。無理に捻らないでもバランスの良い構えでしっくり来たりするようになる事が有る。体のバランスが改善されたからなのかもしれない。

(2)両手と両足のフィット感
 両手とバットのフィット感を向上させるためにはグリップエンドとボトムハンド、トップハンドとボトムハンドを密着させない事が重要だが、そうして構えると両足と地面のフィット感も良くなる。具体的には足裏の3点がバランスよく接地するようになる。そうすると全身の力が偏りなく使える。こういう事が出来ている選手はプロでも少ないように思われる。

8月23日 スピード

 このホセ•レイエスの打撃練習の動画を見てほしい。全体として雑で一見大した事無いように見えるが、3球目などはかなりのスピードを発揮している。その後のスイングでも動画の後半部分で時折、思い出したように凄いスピードを発揮している。こうしたスピードは年齢的に若さが必要な部分も有るが、技術的に読み取れる示唆も有る。

1)グリップが低い。グリップが低いのは理想的な構えではないが、それにより腕の力が抜けて、下半身の力が使え、下半身〜体幹への力の伝達もロスが無い。

2)ハムストリングスで立てている。この打撃のスピード感はハムストリングスが使えているスイングに特有のものである。

 つまり、上の力が抜けて下が使えているからスピードが発揮できているのだ。ただ、そこを追求すると形的には完璧にはならない。しかし、打撃には何よりスピードが大切である。こうしたMAXのスピードを発揮出来るコンディションでの練習は重要である。
 また、それは打撃練習だけには収まらない。普段のトレーニングの中で瞬発力を発揮する意識づけが大事である。筋肉には速筋と遅筋が有り、その比率は遺伝により決まるが、その中間の筋肉が有り、これはトレーニングにより速筋にも遅筋にもなる。また第二章で説明したPMSPとAPAを使いこなす事も重要になる。
 大事な事は、こうしたスピードは全身の連携により得られるという事。そのためにはトレーニング法の中でも下半身を使う事が重要になる。

 余談だが、3球目に凄いスピードを発揮できたのには理由がある。まず1球目2球目でウォームアップが出来た事。その後、少し談笑して休息した事。さらにその談笑のシーンでレイエスは重心を挙げて(膝を伸ばして)腕の位置を下げた楽なポジションを保っている。そこから3球目に打つまで一度も腕を担ぎ上げてはいない。こうした事が3球目のスイングスピードを生み出している。そうした視点から下のレジー•スミスの3打席連続ホームランを見てみよう。彼は全ての打席でそれを実行している。


話が打席での振る舞いに逸れたが、今回の話題の中心は瞬発力。それを鍛えるための方法も考えて行きたい。重要な事はMAXの力でMAXのスピードを発揮する習慣を付ける事。それを少しづつでも良いので継続する事。