2015年5月26日火曜日

商品一覧


打撃革命 詳細はコチラ

英語版でも制作され、MLBの強打者たちに送付されたBPL理論の集大成。(商品はもちろん日本語版です。)どれか一つというのであれば、間違いなくこの一本をオススメします。目次表紙抜きで561ページの対策です。価格は7000円になります。



以下、その他商品 ラインアップ


教科書シリーズ、そして股関節理論シリーズはセット販売のみ行っています。既にセット内のどれか1つを持っている場合に限り、バラで販売可能です。詳しくはメールでお問い合わせください。(tsukaguchi520314@gmail.com)



新しい野球技術の教科書 第1章 詳細はコチラへ
 教科書シリーズ全3章セットで7500円
トップハンドトルク理論打撃編の第1章です。パンチャーとスインガーの違いなど、基礎的な内容を解りやすく説明しています。まず初歩の初歩の理解を固めたい人にお勧めします。

新しい野球技術の教科書 第2章 詳細はコチラへ
教科書シリーズ全3章セットで7500円
第2章ではぐっと内容が詳しく、そして専門的になります。予備動作を必要としないパンチャーがなぜ上半身に頼った動作にならないのか。それは始動時に無意識下で下半身が力を発揮するからです。第2章ではそのメカニズムを動作前筋放電休止期と随伴性先行姿勢調節と言う現象によって解説しています。学術論文からの引用が数多いですが、内容的には実践者にとっては必須の重要ポイントです。実際、パンチャーに始めて取り組んだ人は大体が始動時の下肢出力が弱く上半身の筋力に頼った動作になります。それを如何に克服するかがパンチャーの技術探求の核心なのです。

 新しい野球技術の教科書 第3章 第1部 詳細はコチラへ
 教科書シリーズ全3章セットで7500円
 254ページ動画資料107個付きです。第2章がパンチャー(スインガー)基本メカニズム前編だとすると第3章は後編です。つまり、着地からフォロースルーにかけての動作、要するにスイング理論です。打撃理論で最も面白いスイング理論の魅力をこれでもかというほどのビジュアル資料により解説しています。全ての打者のみならず、全ての指導者にとって必携の一作です。

股関節理論シリーズ 


タイトル通り股関節理論が中心となりますが、股関節理論はオートマチックステップの構えの作り方など打撃の技術論に関わる部分が多いため、実質はトップハンドトルク(パンチャー)のための実践編とも言って良い内容です。

購入者の方からの感想文
復刻版動画資料の2枚は大変有用です。過去のブログも含め、今でも繰り返し見ては身体を動かしています。新しい気づきやフィーリングが得られる度に動画資料やブログを改めて見直すと、今まで見逃し聞き流してしまっていた解説コメントや、気にならなかったポイントが引っかかってきて、なお一層理解が深まります。

復刻版 動画資料 VOL1 腸腰筋とハムストリングス 
Vol2とセットで5000円
 かつてDVDソフトとして販売していたディスク3枚分4時間近くに及ぶ作品を画質を一部落とし一枚のディスクにMOV形式の動画ファイルとして収録したものです。(約3.8GB)DVDソフトで再生するDVDでは無くパソコン上で再生する動画資料です。内容はトップハンドトルク理論の中核を成す股関節理論の二大重要要素のうちのひとつである「腸腰筋とハムストリングス」についてです。理論ももちろん詳しく解説していますが、実践者、実践指導者を強く意識して製作しました。

復刻版 動画資料 VOL2 股関節の斜め回転理論 
Vol1とセットで5000円
3時間30分以上(約3.8GB)の映像作品です。内容はトップハンドトルク理論の中核を成す股関節理論の二大重要要素のうちのひとつである「股関節の斜め回転理論」についてです。打撃の構えやリズムの取り方など、打撃理論について、より詳しく解説しています。VOL1ともども、実践者にとってはマストアイテムです。

2015年5月25日月曜日

縦の力を使え

 下半身、体幹を使えと良く言われるが具体的にどうやって使うのかと言う事はイマイチ明確にされていない感が有る。

 連続写真の解説などにはこんな評論が有る。

「ドッシリ腰を落として下半身を使おうとする意識が感じられるフォーム」

 なぜ、腰を落とせば下半身が使えるのか。


 下半身と体幹(コア)のビッグマッスルの多くが縦に走行する繊維を持っている。下半身、体幹を使うと言う事はまずこれらの「縦の力」を使う事を意味する。横に体重移動したり捻ったりする事だけが下半身を使うという意味では無い。

 オートマチックステップのような無反動打法では、如何にこの縦の力が使えるかがカギになる。逆に言うと横の動きが無いぶん縦の力は使いやすい。これが出来るようになると脚を挙げたり反動をつけたりするより飛ぶ事が良くわかる。オートマチックステップで伸び悩む人の多くはこれが出来ていない。気がついていない。そういう人はいつまでたっても高い重心で狭いスタンスの構えを取りたがる。まず縦に力が発揮され、それが横の動きや捻る運動に変換されていくメカニズムが有る。

 森がこれだけ低重心で構えるのはそのためだ。ただし正しい股関節の使い方を憶えれば、もう少し高い重心で「縦の力」が使えるのだが。。森がそこに気がつく事が出来るか。。自力では難しいだろう。膝を故障しなければ良いのだが。

2015年5月23日土曜日

町田友潤

 加藤豪将のところで日本とメジャーの内野手の動きの違いについて書いたが、この選手はメジャー的な動きのセンスを持っている。グラブ捌きとか投げ方とか、日本の野球だけを見ていたら持ち得ないイメージで動いている。おそらくメジャーの内野手の動きを動画などで見て参考にしたのだろう。



 検索するとツイッターが有る。https://twitter.com/machidatomohiro

 読むとメジャーリーグに関心を持っているようだ。

 そして、打撃はこの通り。



 こういう選手を意識が高いと言うのだろう。ほとんどの選手は動きを見ると「ああ、コイツは日本の野球をテレビで見てるだけなんだろうな。インターネットなんか使ってもロクな事してないんだろうな。」とガッカリされられるのだが。町田のような選手が当たり前にならないといけない。



2015年5月22日金曜日

「優劣の違いでは無い」の意味

本編に戻る

 パンチャーとスインガーの違いは優劣の違いでは無いと書いたが、この事についてもう少し掘り下げて説明したい。断っておくが私は「打撃理論にこれが正解というものは無い」等と言う耳障りが良いだけの事が言いたい訳ではない。実際に「ある部分」において優劣が無いからそう言っている。下図を見てほしい。


 投打ともに野球の「技術力」はメカニズムだけでは決まらない。メカニズムの善し悪しとは「身体に負担をかけずに、その力を最大限に利用できているか否か」によって決まるわけだが、投打ともに、この点においてはパンチャーとスインガーの間に違いは無い。つまり、双方ともに個別の完成されたメカニズムとして成立しており、その意味においては優劣の差は無い。

 それでは競技適応とはどういう事か。例えば投手であればクイックモーションのタイムは速いに超した事は無い。しかしそれは野球という競技の中に盗塁という戦術があるからこそ要求される能力であって、投げる動作それ自体の善し悪しを計る物差しにはならない。実際ワインドアップにおいては「ゆったりした良いフォーム」という表現が有る。

パンチャーの特性を活かした久保康友の高速クイックモーション

 一方バッティングでも、バックスイングにかかる時間が短ければその分だけ落ち着いて投球を待てるのだが、この事も打つ動作それ自体の善し悪しを計る物差しにはならない。しかしこれらの能力は野球と言う競技の枠組みの中では、共に投手や打者にとって重要なものであり、したがって良い選手か否かを計る物差しにはなりうる。

 パンチャータイプがスインガータイプよりも優れているのはまさにこの点で、その事がスインガータイプ主流の時代からパンチャータイプ主流の時代への変化をもたらす要因となったと考えられる。もちろん、その変化は多くの選手の試行錯誤の結果として起きた変化であり、何かの理論を背景として起きた変化では無い。

 マーク•マグワイアとベーブルースの違いはパンチャーとスインガーの時代を明確に表現している。2人とも単に記録的な数のホームランを打っただけでは無く、打撃技術の進化、変遷に大きな役割を果たしたと言う意味で共通している。

 パンチャータイプとスインガータイプの間には「身体に負担をかけずに、その力を最大限に利用できているか否か」という観点から見た場合は優劣の差は無い。しかし、競技適応という観点から見た場合、パンチャータイプの方が優れている(野球に向いている)なぜなら加速のための準備にかかる時間が短いからである。例えば、ゴルフなどの競技ではこうした能力は必要とされないだろう。

2015年5月21日木曜日

STEP12 ストレッチ ベーシック3



 BPL理論の股関節論に基づいた代表的な3つのストレッチです。ここでは細かなポイントまでは踏み込みませんが、まずは見よう見まねでやってみて、次第に感覚を掴んで行くようにしてください。

★腸腰筋その場ステップのポイント

1)腰を前に突き出して反りを作り、その反動で脚を挙げる。
2)腿上げのように無理に脚を挙げない。反った反動を使う。
3)着地する時に脚を踏み下ろす勢いを緩めない。踵側を中心に力強く着地する。
4)着地した脚で地面を押し込み、腰を前に突き出す。
5)腕はぶら下げたまま意識的には振らない(自然に動く)。

★股割り体操のポイント

1)脊柱は前傾させ、首の角度もそれに合わせる(下を向く)。
2)両手を組み、やや内側に捻って手首を背屈(甲側に折る)させる。
3)肘が浮かないように(地面を指すように)する
4)爪先はあまり開かない(指一本分程度)。
5)大腿骨の間に骨盤が挟み込まれる(前傾する)ことを意識する。
6)脊柱のS字カーブを作る(腰を丸めず胸椎後弯の凸アーチを高い位置に作る)。
7)足裏のアウトライン(外枠)に荷重する
8)事前に腰を反って腸腰筋をストレッチさせる。

★絞りストレッチのポイント

1)体を寝かす事により、ストレッチ効果が増す。
2)股関節の斜めラインを意識して膝がつくまでしっかり絞る。
3)大腿前面の斜めのラインをストレッチする。

 以上です。文章だけでは理解しにくい部分もありますので、以下の図も参考にして取り組んでください。これら3種のストレッチは毎日でも行いたいものです。腸腰筋その場ステップのみ足音が大きく響くので2階などではやりにくい難点が有りますが。

腸腰筋その場ステップにおける腸腰筋の働き

股割体操における脊柱の前傾とS字カーブの形成

股割体操における腕の形(前腕の回内と手首の背屈)

大腿骨の間に骨盤が挟み込まれる(股割体操)

アウトラインに荷重する(股割体操)

大腿前面の斜めのラインをストレッチする(絞りストレッチ)


 なお、割れと絞りのストレッチはセットで行う事が重要です。開けたら閉める、締めたら開けると憶えておいてください。順番は自由で良いでしょう。


2015年5月20日水曜日

STEP10 守備への応用(基礎)

 ここではあくまでも「パンチャーのメカニズムを守備のスローイングの中で実現するためのポイント」について的を絞って説明します。テーマは「守備におけるスローイング動作の流れの中のどこに始動ポジションを形成するか」という問題です。

 ここでもう一度、理想的な始動ポジションについて思い出してみましょう。STEP4の「パンチャー投げ3ステップ法」で書きましたように、始動ポジションの2大重要要素は以下の2点です。

1)体重が後ろ脚(土台になる脚。守備では常に後ろ脚とは限らない)に乗ってる。
2)手がセットポジションにある。(両腕が合わさっている)



 つまり守備では一連のステップの中で最後に軸脚に体重が乗ったところがまず始動ポジションになるべきです。しかし、ここで難しいのは守備の場合、その段階ではほとんどのケースにおいて既に両腕が割れていると言う事です。
 ここで考えましょう。2大要素のうち重要なのはどちらか?それはもちろん(1)の「軸脚に体重が乗っている事」です。 3ステップ法のステップ1とステップ2を思い出してください。手はセットの状態には無くても、後ろ脚に体重を乗せて投げれば充分なパワーが発揮できる事が解ります。
 ですから、守備の場合「最後に軸脚に体重が乗った瞬間」が最適な始動ポジションであると言えます。両腕の形はケースバイケースになるのは仕方がありません。その事を意識しながら下の動画を見てみましょう。



 最初にノックを受けている選手の連続写真を見てみましょう。4コマ目のモノクロのコマが始動ポジションに相当します。両手は離れていますが、軸脚に体重が乗っています。その後、下半身が力を発揮し、5コマ目のように上半身と下半身の割れが生まれます。


 「守備では最後に軸脚に体重が乗った瞬間が始動ポジションになる。」

 この事を憶えておいてください。

 ただし、守備の動作はステップが概して素早く、そのスムーズな動きの中で「ココで始動」等と意識していては動きが悪くなってしまいます。そのため、まずはゆっくりしたステップで補球して投げる中で、始動ポジションを確認する練習をしましょう。だいたい理解できたら、後は各々の動きの中で自然に、動きがスムーズになる事を優先して、感覚でこなしてしまえばOKです。始動ポジションの多少のバラツキは仕方が無い事です。守備のスローイングではどうしても勢いがついているので、重心移動を利用するスインガーの要素が混入しがちですが、これも仕方が無い事です。イチローのようなスインガーで投げている野手の場合は反対に、充分なステップや時間が確保できない時はパンチャーの要素を使わざるを得ないのが守備というものです。

 重要な事ですが、守備でのスローイングでは殆どのケースで「投げる動作の理想型」にはなりません。(外野手のバックホームはまだそれに近いと言えるが)
 そのため、大切な事は守備のスローイング動作を云々する事よりもまず基本となる投法である投手の投げ方で練習を積む事によって「基本」をしっかりと固めてしまうものです。守備のスローイングはあくまでもその応用です。「ゲーム後のキャッチボールで投手投げをして、1日の守備練習で乱れた投球動作を修正する」という考え方が必要です。投手の投げ方が上手く出来ない野手が多いですが、BPL理論では上記のような理由で野手にもピッチングの練習をしてもらっています。

補足 パンチャー 至近距離ダーツ投げ

 ところで、守備の場合、至近距離で緩い球を投げたり、無理な体勢で投げざるを得ないケースが有ります。こうした状況の中で軽く投げるときの投げ方にもパンチャーとスインガーの違いが出ます。
 スインガーの場合では軽く投げる場合もあくまでも腕をしならせるイメージで脱力して投げる方法がマッチしますが、パンチャーの場合ではダーツのように真っすぐ押し出すイメージで投げる方法がマッチします。慣れれば至近距離でスッポ抜けにくい有効な投げ方となるでしょう。あまり執拗に繰り返す必要は無いものの、内野手は特に練習しておきたい投げ方です。下の動画を見て参考にしてください。



 ランダウンプレーでの「相手のボールを見せる」という決まり事にも適応しやすいのがパンチャーのダーツ投げです。これをキャッチボールで練習しておきましょう。

 キャッチボールでは写真のように相手に対して正対からやや斜めに向いた構えを作り、相手にボールを見せたトップからダーツのイメージでリラックスしながら真っすぐ押し出すように投げます。


STEP9 クイックモーション基礎

 クイックモーションの定義とその指導メソッドを紹介します。クイックモーションは仕組みさえ解れば簡単にできるので、コレについても事前プログラムで済ませておきます。

 ここではまずタイムを縮める云々以前に、「クイックモーションという投げ方の中で、如何に身体の力を使い切り、無理の無い投げ方で良い球を投げられるか」という事をメインテーマとします。これは少年野球などでクイックモーションを教える際にも重要な事でしょう。これが出来た上で、次にタイムの事を考えるべきです。

 そうした点を考慮して、BPL理論でクイックモーションのお手本として採用しているのがクレイ•バックホルツのそれです。(2010年頃の。最近ではクイックに関してはやや劣化した)スムーズでギクシャクしておらず充分な球威が出ています。



 それではまず基礎中の基礎から説明します。まず、そもそも「セットポジション」と「クイックモーション」の違いとは何でしょうか? 下の動画を見て考えてみましょう。単なる脚の挙げ方の大きい小さいや、動きの速さの問題ではありません。



 答えは以下の通りです。

セットポジション 脚を挙げてから打者方向に重心移動する
クイックモーション 脚を挙げると同時に打者方向への重心移動を始める

セットポジション

クイックモーション

 セットポジションの脚の挙げ方は誰でも簡単にできると思います。それではどうすればクイックモーションの脚の挙げ方が出来るのでしょうか。つまりどうすれば「脚を挙げると同時に重心移動が始まる」という動きが出来るのでしょうか。そのためのポイントは2つあります。つまりその2つこそが「クイックモーションが成立するために欠かす事の出来ない動作」なのです。

 それら2つのポイントとは「抜き」「捻り」と表現する事が出来ます。

1)「抜き」について
 下図のように物体を二本の柱で支えている状態から一本を抜くと、物体はその抜いた柱の方に倒れます。つまりクイックモーションでは前脚を挙げるときに後ろ脚に体重を移動しないで、前脚を「抜く」ように挙げる事で、前脚の挙上と同時に重心移動が始まってくれます。



 「抜き」については鏡に自分を映して、自分の身体が空間位置上で後ろ脚の方向に動かないように気をつけながら前脚を挙げると実感できます。

2)「捻り」について
 下図のようにセットポジションの構えから身体をバックスイングの方向に捻ると、前の股関節がセンター方向に、後ろの股関節が打者方向に動きます。それによって後ろ足の接地点と後ろ脚股関節の間に距離が出来、後ろ脚の大腿骨が斜めに傾きます。


 例えば鉛筆でも机の上に真っすぐ立てている限りは安定しています。しかし少しでも斜めになると、重力によって傾きを増して行き、最終的には倒れます。つまり前脚を挙げながら後ろ脚が斜めになる状態を作る事によって「前脚の挙上と同時に重心移動が始まる」という動きを可能にしているのです。
 ですから、クイックモーションでは前脚を挙げるとき、若干後ろ脚の方に寄せるようにして捻りを入れる必要があります。(もちろん捻り過ぎは駄目)

※)捻りのメリットはそれによって後ろ脚に体重が乗る事にあります。一方でメリットは捻りすぎるとその反動で開いたり様々な好ましく無い動作を引き起こす点にあります。

 バックホルツのフォームを見ると、前脚を挙げるとき2コマ目のように(背景と比較)センター方向に重心移動していない事が解ります。つまり「抜き」が出来ています。また、前脚を挙げながら後ろ脚大腿部が斜めに傾く形を作れています。「捻り」も丁度良いくらいです。


 このようにクイックモーションと言うのは「前脚を挙げるときに抜きと捻りを行う事により、脚を挙げると同時に重心移動が始まるようにする投げ方」を意味します。下の動画はBPL理論の実践者によるクイックモーションの実例です。



 なお、クイックモーションにおける「始動ポジション」は脚を挙げた直後と考えると良いでしょう。ここでも「動きの中での始動」になります。バックホルツの連続写真で言うとモノクロになっているあたりで始動するイメージです。



 なお、スタンスの広さによってクイックの性格は変化します。スタンスを広めに取れば「抜き」がやりやすくなり、モーションのタイムは速くなりますが後ろ脚に体重を乗せにくいので球威は出にくくなります。一方、狭くすると後ろ脚に乗せやすくなりますが、そのぶん「抜き」がやりにくくなるため、タイムは遅くなり球威重視となります。しかしながら、狭いスタンスでも「抜き」を上手くやる事によってタイム面でのデメリットを最小限に抑える事が出来ます。ある意味、これがクイックの理想像とも言えるでしょう。バックホルツをお手本にしているのは「狭いスタンスながら抜きを上手くやる事によってタイムと球威を高い次元で両立させている」からです。

 以上の内容が理解できたら、シャドウピッチングも利用しながら前脚の挙げ方や始動のタイミングのコツを掴めるまで練習してみましょう。


2015年5月19日火曜日

STEP8 ターン&タンブルフィニッシュ基礎

 ターン&タンブルフィニッシュについては「BPL理論とは」の中の記事で既に説明しましたので、まずは記事を読んで大まかな理解を済ませてください。

 ここでもはじめに動画でもう一度見ておきましょう。なお「ライアン挙げで始まりターン&タンブルフィニッシュで終わる」というのがBPL理論式投球フォームのトレードマークであり、真のメジャー流です。投手の人はコレを目指したいものです。



 こうしたフィニッシュの取り方については「守備に影響が出る」という観点からの批判もありますが、BPL理論ではあくまでもピッチングメカニクス優先の立場からターン&タンブルフィニッシュを推奨しています。その理由は主に以下の2点です。

1)下半身の力が使えている事を意味する
 下半身の力とはここでは「股関節伸展によって地面を押す力」の事を意味します。ここでは難しい理屈は言いませんが、股関節伸展の力が強いと言う事は重心を打者方向に運ぶ力が強い事を意味します。また股関節の回旋機能を使えているため投げ終わった後に身体がターンするのです。したがってターン&タンブルフィニッシュが出来ているか否かはピッチングメカニクスの善し悪しを計るリトマス試験紙と言えます。

 例えば下の動画は日本人と外国人のフィニッシュを比較したものです。日本人の場合はターンは出来ている投手がいますが、タンブル(倒れ込み)が出来ている投手はほとんどいません。これはハムストリングスの力が使えていない為に重心を前に運ぶ力が弱いためです。そのためターン&タンブルを出来るようにするためには腸腰筋とハムストリングスを上手く鍛えると言う事も重要になってきます。


 
2)投球腕を故障しにくい
 下の写真を見てください。投球腕が斜め軌道でスイングされた後、同じ軌道を追いかけるように重心が移動するのがターン&タンブルの動きです。つまり、この動きが出来る事によって、フォロースルーで投球腕に急ブレーキがかかる事を避ける事が出来るわけです。そのため、ターン&タンブルフィニッシュが出来ると肩に負担がかかりにくいと言えます。逆に良く無いのは投げ終わった後に後ろ脚が宙に浮いたままになっているケースです。打者に正対するフィニッシュでも前脚の横か、それより打者寄りにトンと小気味よく後ろ脚が着地するフォームはまだ良いフォームと言えます。


〜習得は容易では無い場合も有るし、容易な場合も有る〜

 ところで、このターン&タンブルフィニッシュですが、フィニッシュですのであくまでも意識的に作る形ではなく、それまでの動作の結果としてオートマチックに「そうなる」というようにしなければなりません。ただ、その習得は人によって容易な場合も有れば容易では無い場合も有るのです。

 例えば以下の動画は大学硬式野球部の選手(野手)のビフォー&アフターです。野球経験が長いほど、日本式投球フォームのイメージと動きが身体に刷り込まれているため、その習得に時間がかかる傾向が有ります。彼らの場合は投球動作そのものの改善はもちろん、股関節周りのトレーニングも行い1年以上かけてアフターの状態になりました。(打撃に重点を置いていたというのも時間がかかった理由)



 一方で野球経験が短い草野球などの選手や少年野球の選手は、そうしたクセが着いていないので比較的習得は容易です。このページではあくまでも「事前プログラム」という事で、必ずしも全ての人がターン&タンブルフィニッシュを習得できる内容にはなっていません。しかし、少なくとも事前にその動きのイメージだけは掴んでおいてください。

ターン&タンブル習得 初歩の初歩 イメージング•アップ

 まず最初は軽い動きの中で意識的にターン&タンブルの動作をやって、そのイメージを掴みましょう。その次の段階ですが、意外にもターン&タンブルフィニッシュはクイックモーションのような大きく前脚を挙げない投球動作の方がむしろ出現しやすかったりします。 そこでここではSTEP4の「パンチャー3ステップ投」の「セット始動投げ」を使って練習してみましょう。シャドーピッチングで構わないので特に意識しないで投げて、自然にターン&タンブルフィニッシュが出るまで練習してみましょう。最初は軽く振って意識的にターン&タンブルの動きをやってもOKです。

セット始動投げからターン&タンブルが出来ている例


 最後に、ターン&タンブルの動きのポイントを一つ挙げておきます。下の連続写真を見てください。投球腕を振り切った後に跳ね上がるような動きが起きています。この腕の振り上げが後ろ脚の振り下ろしと同時に起きる事でバランスが取れます。この動きのイメージを掴んでおいてください。


 動画はターン&タンブル時の腕の振り上げが出来ている例です。

STEP11 シャドーピッチング

 シャドーについては「BPL理論とは」の中の記事でも書きましたが、BPL理論では打撃における素振りのような感覚でシャドーピッチングに取り組んでもらいます。その方法は具体的には以下の通りです。受講までに事前プログラムの内容をシャドーピッチングで身体に覚え込ませておいてください。

1)タオルを持たない
2)グラブをはめる
3)全力で動作する
4)標的となるポイントを見つめる
5)平地で行う

動画=BPL式シャドー実践例


※)なぜ平地で投げるのか

 ピッチャーの多くが「マウンドで投げなければピッチングの練習では無い」と思っているようですが、それは違います。平地で投げる事があくまでも基本であり、マウンドからの投球と言うのはあくまでもその応用に過ぎないと言ってもいいくらいです。そもそも平地で投げる動きと斜面で投げる動きのどちらが人間にとって自然な動きであるかと考えると、言うまでもなく平地で投げる方が自然である事が解ります。
「斜面(マウンド)で投げて崩れた動作を平地で投げて修正する」と考えるくらいで丁度良いでしょう。平地での「立ち投げ」は投球動作の根幹を作る重要な練習で、これを単なるのウォーミングアップのキャッチボールと考えているようでは駄目です。

 それでは、そもそも何故マウンドには傾斜が有るのか。下の写真を見てください。


 マウンドに傾斜が有る事で、そこから投じられたボールはやや下向きに投げ下ろされる事になります。こうすると本来平地で投げれば相手の胸あたりに届くボールが丁度ストライクゾーンに集まります。キャッチボールで相手の胸に投げろと言われるのは、キャッチボールくらいの距離であれば相手の胸あたりに投げると一番良い球がいくからです。これは投捕間の距離でも同じ事です。つまり一番良い球をストライクゾーンに入れるための装置、それがマウンドなのです。
 以上のように考えると、平地での投球練習ではどこに投げれば良いのかと言う事が解ります。つまりそれはストライクゾーンでは無く相手の胸あたりです。平地でキャッチャーを座らせて練習している投手をタマに見かけますが全く意味の無い事です。シャドーでも胸のあたりを見て投げるようにしましょう。

 ちなみにシャドーピッチングはアスファルトの上でも出来る手軽さも長所です。この時、普通にスニーカーを履いて行うと、すぐに軸足の爪先が削れて駄目になってしまうので、下の写真のように粘着テープを巻いてスニーカーの地が出て来たら巻き直すようにすると良いでしょう。



2015年5月18日月曜日

STEP7 ピッチングフォームでの始動

 まずSTEP4「パンチャー投げ3ステップ法」で説明した「始動」と「始動ポジション」について思い出してください。「瞬発的な力の発揮を意識した事によって下半身が無意識下で力を発揮する瞬間」がパンチャーにおける「始動」の瞬間であり、そのときの体勢の事を「始動ポジション」と呼ぶのでした。

 ドッジボール投げの実験で説明しましょう。(1)では後ろ脚の上に体重が全部乗っている状態です。この状態から投げようとするとAPAによって後ろ脚が力を発揮して地面を押す動作が起きるので、(2)〜(3)のように重心移動が発生します。つまりここでは(1)が始動ポジションと言う事になります。


 この「始動ポジション」において重要な事は後ろ脚の上に体重が乗っているという事です。下の写真を見てください。いずれも後ろ足の設地点から真っすぐ伸びる線を引いています。(1)がもっとも後ろ脚に体重が乗っていると言えます。(2)では前脚が振り下ろされているぶん、その質量が若干前に流れています。(3)では既に後ろ脚が斜めになってしまっているのでこのタイミングで始動しても力は出ません。後ろ脚の上に体重が充分に乗っていないため地面を押す力が小さくなるためです。


 つまり上の写真では出来れば(1)悪くても(2)の段階で始動する必要が有ると言う事です。始動のタイミングが遅れれば遅れるほど重心が前(打者方向)に流れるので後ろ脚が地面を押す力は弱くなります。

 ところで、ここで「ライアン挙げ」の特徴を考慮する必要があります。それは前田健太のような日本式の場合は前脚を挙げた状態で止まれるのに対して、ライアン挙げでは止まる事が出来ないという事です。
 ライアン挙げでは前脚を挙げた直後から前脚の振り下ろしが始まり、それにともなって重心も打者方向に移動していきます。ですからライアン投げの場合は動きの中でタイミングを見計らって始動する必要が有ると言う事です。これについてはもう「リズムで憶える」としか言いようが有りません。


 下の動画はパンチャーのピッチングにおける「適切な始動のタイミング」を表現したものです。スローモーション動画がモノクロになっているタイミングの中で始動する感覚を掴む事が重要です。



 前述のように始動のタイミングは遅くなってもいけないのですが、早すぎてもいけません。では始動ポジションが遅すぎたり早すぎたりするとどのような弊害が生まれるのでしょうか。以下に挙げておきます。

(1)始動ポジションが早すぎる場合:充分にリラックスする事が難しい。いわゆる「投げ急ぐ」ような状態で、地に足が着いていない状態から始動する事になるので安定しない。

(2)始動ポジションが遅すぎる場合:後ろ脚の上から体重が抜けてしまうので、後ろ脚で強く地面を押す事が出来ない。その結果、パワーをロスする。また、重心移動と同時に両手が割れて行くのでセットポジションからの始動が難しくなる。

 ですから、シャドーピッチングやキャッチボールをしながら、個人個人で「最も力が発揮できて、最も安定するリズム、始動のタイミング」を掴んで行く必要が有ります。これはシャドーピッチングでも充分に出来ます。「グッと脚を挙げてズバッと投げる」など、擬音を使ったりしてイメージを作って行くと良いでしょう。

 最後にヒントとして、標的を見るタイミングも関与してきます。正確なコントロールのためには標的への集中力が必要不可欠です。打撃の素振りで一点を見つめて振ることを言いましたが、それと同じように投げるときも標的を見る必要が有ります。
 前脚を挙げる過程から標的を見つめておくと、挙げてから早いタイミングで始動しやすくなり、球威は出やすくなります。一方で前脚を挙げた後に標的を見つめながら前脚を降ろして標的に集中しようとすると必然的に始動のタイミングは遅れがちになります。この場合、制球はしやすい可能性がありますが、少なくともパワーはロスします。

 下の動画はBPL理論実践者における始動するタイミングの違いを比較したものです。いずれも許容範囲内とは言えるでしょう。自分のシックリ来るリズムとタイミングを掴む事が大切ですが、それには実践による試行錯誤しかありません。

2015年5月17日日曜日

STEP6 ライアン挙げの基礎

 ここではBPL理論で必須としている「ライアン挙げ」の基礎について説明します。このタイプの脚の挙げ方は日本人には馴染みの無い動作ですので、すぐにスムーズで自然なライアン挙げになるとは限りません。むしろ一定のレベルに達するのにある程度時間がかかるのは普通です。ただ、その基礎的な部分については以下の内容を実践する事で出来るようになるでしょう。


「ライアン挙げ」とは何か

 まず前提として一般的な日本人のフォームと北米中南米の選手に多く見られる「ライアン挙げ」の違いとは何でしょうか。それを表現しているのが下の写真です。右の日本式では骨盤を動かさずに股関節の屈曲で前脚を挙げますが、左のライアン挙げでは骨盤ごと動かして前脚を挙げます。そのため使う筋肉も異なって来ますし、もちろんライアン挙げの方が前脚が高く挙ります。しかし、ライアン挙げの真価は「脚を高く挙げる事」にあるのでは無く「全身を使って前脚を挙げる為に一部の筋肉に負担がかからずにスムーズに動ける」という点にあります。


 それでは以下にライアン挙げを実践するためのポイントを挙げて行きます。

1)ワインドアップステップを使う

 STEP6で説明したワインドアップのステップを思い出してください。まず(1)から(3)にかけて前足を後方にステップし、次に(4)で軸足(後ろ足)をプレートにセットします。この流れの中で後ろ足(軸足)に対して前足(フリーフット)が後方に引かれた状態が作られます。これが前脚を挙げる為のバックスイングの役割を果たします。ライアン挙げでは前脚を大きくスイングさせて使います。そのため、このワインドアップステップを利用する事が重要になります。セットポジションからの投球にはライアン投げはマッチしません。


2)軸脚の膝を緩めて踵で地面を軽く踏む

 ここでは「基礎編」と言う事で難しい理屈は言いません。結論から言うとプレートに軸足をセットするとき、踵で軽くトンと踏むようにするとライアン挙げはやりやすくなります。そして、この「踵でトン」をやるためには「前脚を後方に引くとき、後ろ脚の膝と股関節をカクッと緩める」事がコツになります。さらに、その緩めた膝の角度を踵でトンと踏んでから前脚を挙げるシーンでキープしておく(膝を伸ばしきらない)事もポイントです。以下はBPL理論の実践者による「踵でトン」が出来ている例です。


もう一度、ポイントを列挙しておきます。

ポイント(1)前脚を後方に引くとき、後ろ脚の膝と股関節をカクッと緩める。
ポイント(2)軸足をプレートにセットするとき踵でトンと踏みつつ前脚を挙げる。
ポイント(3)前脚を後方に引いたときに緩めた後ろ脚の膝の角度をキープする。

 感覚的には軸足で地面を踏む事によって、その反動で前脚がポンと挙げやすくなる感じです。理論的には膝の角度を緩めたまま踵で地面を押す事でハムストリングスが働きやすくなり、脚を挙げるときに骨盤の回転を使いやすくなると言う事なのですが、そこまでの理解はここでは求めません。実践できるようになれば充分です。

以下はメジャーリーグの投手で踵で踏めている例です。

 なお、ライアン挙げをしようとするとヒールアップする人が多いと思いますが、ヒールアップするようでは本物のライアン挙げとは言いません。「踵でトン」をマスターしてヒールアップしない本物のライアン挙げを身につけましょう。

3)骨盤ごと前脚を挙げる

 前述のようにライアン挙げでは骨盤ごと前脚を挙げます。前田健太のような日本式のように膝を挙げる感じではなく、もっと身体の芯を意識して骨盤ごと前脚を挙げるように意識します。つまり骨盤を後傾させて前脚を挙げるという事です。「脚を高く挙げすぎると骨盤が後傾する」という論調も最近ではアチコチで聞かれますが、ライアン挙げの場合は挙げた時に後傾した骨盤が、その反動で前脚を降ろすときに前傾するので問題は有りません。


4)脊柱を柔らかく使う

 下の写真のように脚を挙げるときに背中が丸まるくらい脊柱を柔らかく使います。(背骨を丸める意識は必要ないが間違っても背筋をピンと伸ばす意識は持たない)日本式が腿上げの筋肉を集中的に使うのに対してライアン挙げは全身の筋肉を総動員させて前脚を挙げます。そのぶん前脚の筋肉が緊張しやすいので脚の振り下ろしに引っかかりがなくスムーズなのです。これはライアン挙げの大きなメリットです。なお脚を挙げたときに丸まった背骨は降ろすときに反動で元に戻るので問題有りません。


5)挙げる脚の膝の屈曲は意識しない

 ライアン挙げでは前脚を挙げるとき、膝の屈曲は意識しません。骨盤から下を全体的にリラックスさせて振り子のようにブラーンとスイングさせて挙げてやると膝は自然に(オートマチックに)曲がります。これは股関節の屈曲によってハムストリングスが引き伸ばされ、その伸張反射が起きるためです。


なお、この「ハムストリングスの伸張反射を利用したオートマチックな膝の屈曲」が出来ているか否かの目安となるのが脚を挙げた時の爪先の向きです。ノーラン•ライアンのように爪先が上を向いていれば出来ている証拠です。逆に前田健太のように爪先が下を向いていれば膝を意識的に曲げている(畳んでいる)事を表します。(これは腓腹筋の働きによるものですが、ここでは難しい理屈は言いません)

 下の写真のようにまず股関節が屈曲し、次にハムストリングスの伸張反射によって膝が屈曲します。つまり脚挙げ動作の途中から前脚の膝がオートマチックに折り畳まれると言う事です。



 以上が「ライアン挙げ」の主なコツであり、また基礎的事項です。それではここでライアン挙げの感覚を掴むためのドリル「ピッチャーズ•ハイキック」を紹介します。

ピッチャーズハイキック


 最初は戸惑う人が多いですが慣れると非常に簡単な動きです。まず右投手であれば右脚と左腕を挙げた姿勢を取ってください。そこから挙げておいた右脚と左腕を振り下ろしながら左脚を挙げます。右脚を踏み降ろす時は「踵でトン」を行います。この動きを繰り返すのですが、このドリルの中では以下の点を特に意識しましょう。

1)踵でトンして、軸脚の膝の角度を保ちながら前脚を挙げる。
2)前脚を挙げるときは骨盤ごと挙げて、膝の屈曲を意識しない。
3)脊柱を柔らかく使う。
4)軸足でトンと踏むと同時に前脚をポンと挙げるリズムを掴む。
5)肘を90度に曲げて、顔は打者の方に向ける。

 (5)以外は、ようするにライアン挙げのコツです。このドリルをやった後は少し脚の筋肉が疲れているので脚が挙りにくくなるかもしれませんが、ライアン挙げを憶えてもらうために導入期に行っているドリルです。


2015年5月16日土曜日

STEP5 ワインドアップのステップ

※)ここで言う「ワインドアップモーション」とはあくまでも脚の運びの事です。腕の動きに関してはBPL理論ではノーワインドアップタイプを採用しています。



 ワインドアップモーションでは構えで打者に対してほぼ正対しており、そこから軸足を約90度ターンさせてプレートにセットして投げます。この90度ターンを一気にやってしまうと身体に余分な捻りが入りやすく、フォームが安定しません。そこで、上の動画のように軸足のターンを2回に分けて行う事が大切です。つまり約45度づつターンさせると言う事です。さらに言うと最初に構えでは打者に対して完全に正対して構えるのでは無く、少し斜めに身体を向けていた方が良いでしょう。これによって約70度のターンを35度、35度の2回に分けて行うくらいにするのがベストです。

 ペドロ•マルティネス(斜めに構えて2回に分けて軸足をターンしている)


 なお、具体的には以下の手順で足を踏み替えます。

ステップ1 前足を後方に引きつつ、後ろ足を35度ターンさせる。実際には前足を引く動作の後半くらいに膝と股関節の屈曲が起こるので、その動きを利用して後ろ足を軽く浮かせてターンさせる。

ステップ2 前足を後方に引いて着地させたら、次に後ろ足を35度ターンさせてプレートにセットする。このとき後ろ足の踵で軽く地面をトンと押すようにすると前脚が挙りやすくなる。

 以下の動画でイメージを掴んでください。


 なお、いわゆる「プレートの踏み方」についてですが、下図(1)のような軸足の置き方が正しい方法です。(2)のように斜めにセットすると打者方向に力が向きやすいイメージが有りますが、実際には軸足股関節周辺の筋肉が働きにくくなりパワーをロスします。



STEP4 パンチャー投げ3ステップ法

 STEP3におけるドッジボール投げの実験によって、基礎的なパンチャー投法のメカニズムは理解&体感できたと思います。つまり後ろ脚に体重を乗せた状態から一気にボールを投げようとするとオートマチックに重心移動とテークバックが起きると言う事です。
 しかし、問題はこの状態ではまだ「担ぎ投げ」であると言うことです。そこでここではSTEP3で説明した基本的メカニズムをベースに、担ぎ投げでは無い投手らしい腕の使い方を伴った投球動作の基礎を作り上げるメソッドを紹介します。

 このメソッドは3段階に分かれていますが、とても簡単な内容で少年野球の選手に教える場合でも10分程度で消化できるものです。(もちろん前提となる知識の説明は必要ですが)まずはざっと動画で見てみましょう。



 前提として確認しておきますが、ここで身につけたいのは下の動画のような投球腕の動きです。つまりテークバックで肘が曲がって、肘から挙る動作です。この投球腕の動作を身につける事でケガを防ぐとともに球速も向上します。



 それでは順番に説明しておきましょう。

STEP1 トップ投げ
 これはドッジボール投げの実験と同じです。つまり投球腕をトップの位置に置き、後ろ脚に体重を乗せた状態を作ったら、そこから瞬発的に力を発揮して投げます。ここでは「重心移動がオートマチックに起きる事」と「割れがオートマチックに起きる事」の2つを確認してください。理解を深めるためには横から動画を撮影して行う必要が有ります。同時に、この段階ではまだ担ぎ投げである事も理解してください。

STEP2 小さく前へ倣え投げ
 次にトップの位置に構えていた投球腕を小さく前へ倣えの位置まで下げて、そこから同じように後ろ脚に体重を乗せてから投げます。そうするとSTEP1よりテークバックでの腕の回転が良くなる事が解ると思います。これは腕を下に下げた事によって肩周りの筋肉がリラックス出来るようになったからです。STEP2を行う事により、投球腕のテークバックはオートマチックに起きる動作であると言う事が理解できます。

STEP3 セット始動投げ
 最後に、STEP2で小さく前へ倣えの位置まで下げた両手を合わせてセットポジションの形を作り、そこから後ろ脚に体重を乗せて投げると言う事をやります。これによりSTEP2よりさらにテークバックでの腕の回転がスムーズになる事が解るはずです。なぜかと言うと、セットポジションでは両手が共に支え合う事によって、双方の腕にかかる負担が最小限にまで軽減されるためです。セットポジションから直接投げる意識を持つ事でリラックスした状態から投球腕の動作がスタート出来るため、投球腕の理想的な動きを引き出す事が可能になります。STEP3ではこの事(セットポジションから直接投げる事)の重要性を理解してください。

 以上が3ステップ法の手順です。まだ脚を大きく挙げるピッチングフォームにはなっていませんが、投球動作のコアの部分は以上で完成した事になります。それでは以下に重要なポイントを列挙しておきます。

ポイント1 後ろ脚にしっかり乗せて間を作ってから投げる
 特に子供の場合は後ろ脚に体重を乗せて間を作るという動作が出来ない(やろうとしない)場合が多く、サッと前脚を挙げて何となく投げてしまうような子が多くいます。それではパンチャーのメカニズムを理解できません。少々しつこくなっても良いので後ろ脚に体重を乗せて間を取ると言う事を見本を見せながら繰り返し強調する事が大切です。「後ろ脚に体重を乗せて、そこで間を取ってから、一気に瞬発的に力を発揮して投げるんだ」と言う事を、身振り手振り、擬音を交えながら、出来るまで何度も何度も根気よく伝えて行く事が大切です。

ポイント2 始動ポジションの2大重要項目を理解する
 「力を発揮しようと意識して下半身がAPAによって始動する瞬間」の事をパンチャーの技術論では「始動」と呼びます。そして、そのときの体勢の事を始動ポジションと言います。STEP3まで行う事で始動ポジションの2大要素が浮き彫りになります。つまり「後ろ脚に体重が乗っている」と言う事と「手がセットポジションの状態にある」と言う事の2点です。3ステップ法を通して、この事をしっかりと理解&体感できるようになってください。

ポイント3 セットポジションで手は肘より少し上に置く
 手を肘より上に置く事によって重心移動と連動して両手が落下する距離が長くなり、その勢いがつきます。そうすると、そのストンと落ちた反動で肘がクッと挙って来ます。これによって肘から挙る理想的な投球腕の動きが身に付きやすくなります。逆に手が肘より低いと、そうした効果が得られないためアーム式や担ぎ投げになりやすくなります。

ポイント4 アップは入念に行う
 パンチャーとは基本的に静的な状態から瞬発的に力を発揮する投法、打法の事を言います。そのためアップは特に入念に行ってください。特に3ステップ法は導入段階で実施するため、まだ動きも良く無い場合が多いので、この状態で無理をする事は危険です。思い切り投げる事は重要である事には違いありませんが、STEP1とSTEP2では敢えて不完全な投げ方をティーチングメソッドとして行うため8割~9割の出力でも意図が理解できれば良しとします。

2015年5月15日金曜日

森の巻き戻し



 森と筒香は順当に活躍している。森はパンチャーなので左打者でも、この動画のように巻き戻しが顕著に起きる。左打者のこういう動きは今までの日本野球ではあまり馴染みの無いものだったはずだ。ただ残念ながら前脚が途中で外れているため、不完全な巻き戻しでは有る。

 にしても森は確かに高卒としてはすごい打者だが、森のすごさというのは「特別な事をしてる凄さ」では無く「当たり前の事が出来ている凄さ」である。逆に言うと、森レベルの事が出来ないプロというのは何なのか。このくらいの事は社会人野球のレベルで出来ていなければちゃんと野球をやっているとは言わない。ていうか、このくらいが出来ないやつは野球やめろっていうレベルの事だ。草野球とか少年野球の選手でも出来るような事を地道に積み重ねてきた結果が、この森のスイングである。これを出来なくしてしまうのは選手本人の間違った考えか、指導者の間違った指導か、その他諸々の要因だろう。

 ちなみに横からのスローでは始動時の下肢出力の強さと、その動き、形のハーパーとの類似性に注目してほしい。二人とも同じパンチャーなので同じ事が始動時の後ろ脚に起きている。

2015年5月8日金曜日

STEP2 パンチャーとスインガーの基本メカニズムを理解する


 まず「BPL理論とは」の中の「パンチャーとスインガーの分類」を読んでください。その上で、以下の実験(両タイプの基本メカニズムの実験)を行って、それぞれの方法を実際に体感してください。やってみると感覚が違う事はもちろん、身体の使う部位も違う事が解ると思います。

スインガータイプの実験 自然体で立ち、腕は力を抜いておく。その状態から体重移動と身体の回転を起こして、その力を利用して腕を振る。腕は「振る」と言うよりも「振られる」という感覚になる。



パンチャータイプの実験 ある程度腰を落としてドッシリと構え、振る腕はあらかじめトップの位置に置いておく。そこから準備動作を一切とらずに、瞬発的に力を発揮してパンチを打つ。パンチを打とうとするとステップや重心移動がオートマチックに起きる。「下半身の体重移動や回転を利用して腕を振る」という考え方を完全に捨て去る事が第一歩になります。



 まずパンチャーとスインガーの違いを身体で理解する事が第一歩です。実験は打撃動作に近いですが、投球動作の腕の振りにも同じ事が当てはまります。つまり、下半身体幹部をまず動かして、その運動量を利用して腕を走らせる方法と、下半身を土台として一気に瞬発的に力を発揮して腕を振り抜く方法の違いです。

※)パンチャーの実験の動作では「担ぎ投げ」あるいは「捕手投げ」になるでは無いかと思われるかもしれませんが、BPL理論では担ぎ投げとアーム式を防ぐ事を重視しています。この点についての回答はSTEP4で説明しています。




STEP1 目指す投球動作を知る


 まずは「BPL理論とは」のページを読んで、理論の概要と目指す投球動作を把握してください。BPL理論では選手のフォームに合わせて微調整を加えると言う指導では無く、今現在の投球動作を一度白紙にしてもらって、1からBPL理論に則って取り組んでもらっています。そのため、まずはその決心をしてください。

 下記項目は特に重要です。受講前に必ず一度じっくりと目を通してください。投球のみを希望する場合でも、打撃についても読んでおいてください。


2015年5月7日木曜日

大谷の首

 大谷の打撃の良い所は脊柱を前傾させて股関節で体を折ってるので、ハムストリングスと大腿四頭筋でハムストリングスが主導になっている点だ。しかし勿体ないのは首が立っている所。こうすると脊柱軸が首のところで折れてしまう。胸椎が前弯して腰椎が後弯した逆S字になりやすい。つまり骨盤が後傾して腰が引ける。この点が改善されればさらにハムストリングスが使えるだろう。右のBPL理論実践者と比較してほしい。大谷の「どことなく腰の引けた感じ」は首が立っているところに原因が有る。ちょっと首を傾けるだけでグッと腰が入るのだが。

 ただし難しいのは首を傾けるともっとバットが寝る。そうなると今より腕に負担のかかる構えになる。そういう事に対する対応もコミでやっていかないと、この問題は改善されない。そうした事をするだけの能力を今の日本プロ野球の指導者が持っているはずも無いのだが。


STEP11 ストレッチ ベーシック3



 BPL理論の股関節論に基づいた代表的な3つのストレッチです。ここでは細かなポイントまでは踏み込みませんが、まずは見よう見まねでやってみて、次第に感覚を掴んで行くようにしてください。

★腸腰筋その場ステップのポイント

1)腰を前に突き出して反りを作り、その反動で脚を挙げる。
2)腿上げのように無理に脚を挙げない。反った反動を使う。
3)着地する時に脚を踏み下ろす勢いを緩めない。踵側を中心に力強く着地する。
4)着地した脚で地面を押し込み、腰を前に突き出す。
5)腕はぶら下げたまま意識的には振らない(自然に動く)。

★股割り体操のポイント

1)脊柱は前傾させ、首の角度もそれに合わせる(下を向く)。
2)両手を組み、やや内側に捻って手首を背屈(甲側に折る)させる。
3)肘が浮かないように(地面を指すように)する
4)爪先はあまり開かない(指一本分程度)。
5)大腿骨の間に骨盤が挟み込まれる(前傾する)ことを意識する。
6)脊柱のS字カーブを作る(腰を丸めず胸椎後弯の凸アーチを高い位置に作る)。
7)足裏のアウトライン(外枠)に荷重する
8)事前に腰を反って腸腰筋をストレッチさせる。

★絞りストレッチのポイント

1)体を寝かす事により、ストレッチ効果が増す。
2)股関節の斜めラインを意識して膝がつくまでしっかり絞る。
3)大腿前面の斜めのラインをストレッチする。

 以上です。文章だけでは理解しにくい部分もありますので、以下の図も参考にして取り組んでください。これら3種のストレッチは毎日でも行いたいものです。腸腰筋その場ステップのみ足音が大きく響くので2階などではやりにくい難点が有りますが。

腸腰筋その場ステップにおける腸腰筋の働き

股割体操における脊柱の前傾とS字カーブの形成

股割体操における腕の形(前腕の回内と手首の背屈)

大腿骨の間に骨盤が挟み込まれる(股割体操)

アウトラインに荷重する(股割体操)

大腿前面の斜めのラインをストレッチする(絞りストレッチ)


 なお、割れと絞りのストレッチはセットで行う事が重要です。開けたら閉める、締めたら開けると憶えておいてください。順番は自由で良いでしょう。