2016年4月24日日曜日

オンライン フォーム分析

※)現在、システム構築中です。しばらくお待ちください。

 ブログを利用した有料のフォーム分析サービスです。BPL理論を実践しているしていない人に関わらず、その人の取り組みに合わせて分析を行います。

料金 
投打一方のみの場合 ブログ記事3回分 6000円
投打両方の場合 ブログ記事6回分 10000円
※)一回あたりの記事料の目安はコチラをどうぞ。
  
申し込み方法 
メールの添付ファイルか、YOUTUBEを通じて動画を提示の上、メールにてお申し込みください。(アドレス: tsukaguchi520314@gmail.com

動画の撮影方法について

打撃の場合
実打がベストですが、素振りでも構いません。素振りの場合、横からと投手方向からの撮影を行ってください。

投球の場合
グラウンドでボールを投げている姿が理想的です。ただそれが難しい場合、公園や路上などでも良いのでグラブをハメてタオルを丸めたもの等、何かを投げてください。シャドーは不可です。



2016年4月19日火曜日

寄付の記録

2016/04/19 熊本地震に対する義援金として10.000円を寄付しました。
2016/05/03 日本赤十字社を通じて1125円(75×15)がエクアドル地震の義援金として寄付されました。



2016年4月14日木曜日

打撃革命の誤植修正情報

1-40
(誤)(1)後ろ脚の内転筋
(正)(2)後ろ脚の内転筋

6-30
赤丸で囲んだ部分はパンチャーでは無くスインガーです。

 

2016年4月13日水曜日

ダルビッシュ投手フォーム分析 その20

補足を何点か書きます。

1)スインガータイプの特徴と投球スタイル
まず以下の内容は、必ずしもダルビッシュ投手個人に当てはまる事ではなく、私がこれまで多くのプロやメジャーの投手を映像で観察してきた結果として、「こういうタイプの投手にはこういうピッチングスタイルが合う」という話に過ぎない事をお断りしておきます。つまり、一般論として参考にして頂ければと思います。

まず私の観察によるとダルビッシュ投手はスインガータイプです。このタイプは末節部の加速に(パンチャータイプと比べて)長い時間(コンマ何秒ですが)を要すると言う特徴があります。なぜなら体幹部の回転を先行させつつ、末節部を遅らせる事で最後にヌンチャク効果を利用して加速するからです。そして、加速に長い時間かかるのが優れたスインガーなのです(打撃で言うと落合博満のヘッドが中々出てこない感じ)。下の写真は体が回ってもギリギリまでボールを残している様子が良く出ています。
ですからスインガーの場合、クイックモーションや牽制球で動作の素早さを追求しようとすると、肝心の投球動作そのものに悪影響が波及しかねません。ですから、スインガーの場合はクイックや牽制については「基本を抑える」にとどめ、打者に集中した方が、その真価を発揮出来ます。逆に言うとランナーと格闘しだすと魅力が半減するのがスインガーの特徴です。特にクイック等に関しては、最近多いコンパクトなフォームは基本パンチャー向けなので、スインガーの投手が取り組むと「メカニズムと戦略の不一致」となるので特に注意が必要なテーマです。スインガーの場合、並進運動を充分にとる事が命とも言えるメカニズムなので基本的には高重心の構えが絶対的に有利なのです。基本的には体を大きく使った方がスインガーのメカニクスにはマッチします。

また、スインガーは基本のフォームがオーバーハンド (パンチャーはスリークォーター)になる事と、変化球を投げる時に「抜く」腕使いがやりやすい事から、(縦のスライダーなど)縦の変化球を武器とする投手が多く、そのため、三振をとる上で有利です。この事も、打者集中型のピッチングスタイルが適している一因です。つまりランナーを進塁させるリスクを背負いつつも落ちる球で三振を奪いに行くあたりにスインガーの真骨頂が有ると言う感じです。

また、メカニクスの本質が「腕の力を抜いて体幹、下半身の力で腕を振る」という所にあるので、8割の力で長く投げる事がやりやすいので、先発投手に多いのもスインガーの特徴です。つまり8割とまでは言わないまでも、ある程度、力をセーブして長いイニングを投げ抜くのに適した投法だと言えます。この事と「バッター集中」の特性を併せて考えると、限られたイニングを0点に抑えるつもりのスタイルよりは8回〜9回を3点以内に抑えるプランで投げた方が真価を発揮出来るのがスインガーです。長いイニング投げる代わりに中5日のインターバルが取れたら理想的なんですけどね。

なお、ダルビッシュ投手個人のスタイルに言及すると、その特徴はやはり球種の多彩さでしょう。縦と横に変化球においていずれもメジャートップレベルの変化量を持つボールを投げ、さらにスローカーブまである。。このような投手は中々いません。それは回し込み式と言う特有のステップ形態とも関係が有ると思います。ロモのようにスライドする球、ピービーのようにシュートする球、シャーザーのように落ちるスライダーが有り、浮く球まで有る。さらに今中のようなカーブ。。それらをふまえるとストレートに関しては94マイルを維持出来れば言う事は無いと思います。ただ横にも大きく滑る変化球が投げられる一方、本当の意味でダルビッシュ投手のメカニクスに合致する基本となるのはむしろ縦系の変化球だと思います。
いずれにしても、変化球が多彩になって真っ向勝負の定義もかわりつつ有る今の野球の中で、間違ってもクレメンスとかノーランライアンの方向性は目指してほしく無いというのがそっちょくな感想ですね。 また、単なる思いつきですが、元々が最大外旋が深くカーブに適したフォームなので年齢がいって球速が低下すると共にカーブを投げる割合を増やすと長く活躍出来るかもしれません。カットボールもスインガーに適した球ですし、また腕の振りが縦軌道の右投手は右打者の内角に食い込むようなツーシームを投げる場合が多いので、そうしたボールも投法にマッチしているかもしれません。マリアーノ•リベラが一時やっていたように右打者にはツーシーム、左打者にはカットボールで詰まらせるスタイルとカーブをミックスすれば、球速が落ちてもかなり勝てると思います。あまり確証が無い事を書くのも何ですが、ダルビッシュ投手の投法に本質的な意味でマッチする変化球は縦に落ちるスライダー、小さく鋭く沈みながら落ちるカッターとツーシーム、それからカーブなのでは無いかと思います。そこに加えて横捻りの入ったフォームの特性上、横に大きく滑る変化球が有るのがスパイスになる。。そんな感じがします。


2)コアメカニクス•ドリル
ダルビッシュ投手のフォームの特徴として、前脚挙上から重心移動に至る際の回し込む動きが挙げられます。この動作は前脚挙上から重心移動をスムーズにするだけでは無く、フォームにやや横回転の要素を加える事で多彩な変化球を可能にしていると考えられます。 ただその一方で、純粋に「投げるための身体運動」という観点から見ると、この捻り動作が若干の問題点を作り出しています。つまりメリットとデメリットが有るのですが、そのメリットはいずれも実戦の中では有効に作用していると言う事です。

このようなケースでは普段の練習の中で如何にデメリットを軽減するかと言う事が重要になります。その上で実戦の中では回し込み式のメリットを利用するのが理想的です。

そこでダルビッシュ投手に特にお勧めしたいのが、この「コアメカニクスドリル」です。これは投球動作の中から大きな前脚の挙上や反動動作を極力省き、必要最低限のミニマムな動作形態にしたうえで7~8割の力で投げると言う事です。大きな前脚の挙上や捻りを省く事によって基本となるメカニズムを良い状態に保つ事が出来ます。

コアメカニクス•ドリルとして使える投げ方をいくつか動画で実演しました。条件を満たす投げ方は他にも有るかもしれません。


このドリルの最大のポイントは以下の3点です。

1)重心移動との連動で両腕を割る 
藤川球児を出来ている例に挙げましたが、回し込み式の弱点になりやすいのがこの部分です。セットの位置に有る両腕が重心移動の結果として割れて左右対称に肘が挙がる動きになる事が重要です。(写真は前脚が着地した所で動きを止めています)


2)後ろ脚からの地面反力で前に出る
その2(http://bplosaka.blogspot.jp/2016/03/2.html)で書きましたが、回し込み式は腰を捻って後ろ脚股関節を前方に送り出す事で重心移動をスムーズにスタートさせる点が長所ですが、その反面「地面反力で後ろから押す前に骨盤が前に流れる」ので、その「前に流れる」要素が強くなると軸脚の力をロスしやすい点が短所です。この回し込み式のデメリットを修正するために、このコアメカニクス•ドリルでは極力反動や大きな前脚挙上を避けて、後ろ脚からの地面反力のみで並進運動をスタートさせる事がポイントになります。あまり知られていない事ですが、後ろ脚の上に体重を乗せてリラックスして立ってやると、それだけで打者方向への重心移動が始まります。そうなった時、後ろ脚の力をロス無く活用出来ますし動作もまとまります。その感覚を掴むためにも有効なドリルです。


3)平地で投げる
このドリルはキャッチボール等の際に平地で行う事がポイントです。基本的に平地で投げる事が投げる動作の基本だからです。そもそもマウンドに傾斜が有るのは「18.44mくらいの距離だとベストピッチは相手の胸あたりに集まる」からです。つまり本来、相手の胸あたりに集まる球をストライクゾーンにズラすのがマウンドの傾斜の意味です。ですからもちろん平地で投げる場合は捕手を座らせる意味はありません。コアメカニクス•ドリルを20mくらいのキャッチボールで行う場合、相手の胸あたりに投げる事が重要です。また、シャドウでも効果的ですが、いずれにしても平地で行う事が大切です。
 
なお、このコアメカニクス•ドリルのような考え方、取り組み方はダルビッシュ投手のような多彩な変化球を投げ、なおかつフォームにもバリエーションが有る投手にとっては非常に重要なものだと思います。つまり、いつでも出来て基本フォームを確認出来るドリルを行うと言う事です。そこを軸としてクイック、ワインドアップはもちろん、様々な派生的フォームに応用したりすると言う考え方です。また、変化球を投げ過ぎた後にストレートの感覚を戻す時にも有効でしょう。

なお、コアメカニクス•ドリルは基本的にはミニマムな動作形態を用いるので小さな動きになりがちですが、そのカウンターとして(動画のような)ダイナミックな投法で体を名一杯使う感覚を呼び戻すための投げ方を行うのも効果的です。

ライアン式の脚挙げについてはコチラのページに書いてあります。また振りかぶり式投法は始動時に腕を大きく回すためか、思い切り投げると肩に張りが出やすいのでキャッチボールで軽く投げる時に使うのが良いと思います。

なお、外野手のバックホームやショートの一塁送球なども体をノビノビ使う意味で面白いのですが、バックホーム投げはグラブ腕が引けるクセがつきやすく、内野手投げは横手投げのクセがつきやすいので、あえて除外しました。ちょっとやる分には良い練習だと思いますが。


3)セットの構え作り 
これは最近新しく編み出したすぐに使えるテクニックです。下の動画を見てください。まず構えでは広めに足幅をとり、リラックスのための手を低い位置におきます。この状態で腰を沿って腸腰筋をストレッチした後、その伸張反射を利用して股関節で体を折り、構えを作ります。この時、手の位置を肘より上に挙げて構えを完成させます。なお、動画のモデルはやっていませんが、股関節で折って構えを作る時、少し足幅を狭めると良いでしょう。

なぜ腰を反る時に歩幅を広めるのかというと、下図のように腸腰筋というのはハの字型に付着しているので、多少足幅を拡げた方がストレッチしやすいからです。ただその状態だと構えとしては足幅が広すぎるので、股関節で体を折る時に足幅を狭くするわけです。なお、この時に前脚が挙がるのは腸腰筋その場ステップと同じ感覚で、腸腰筋の伸張反射を利用すると自然に行えます。

もちろん、この方法は低重心型の構えを作る場合に、特に適した方法です。股関節で体を折る時、胸椎の後弯を高い位置に形成し、頸骨で立つ状態を作る事がコツです。単純に言うと、この方法により腰の入った構えができるという事です。
 
自分で撮り直しました。このように股関節を屈曲する時に足幅を狭めます。

 
4)ボールに握りに対する1考察
これは新しい変化球か或は速球のバリエーションを編み出すための参考になればと思って書きます。下の画像が一般的なボールの握りの教えで、ストレートを投げる場合は○の例のように中指と人差し指の中間に親指を置き、親指の側面でボールに接するように言われます。一方、×では親指が横にそれて、腹でボールを握る鷲掴みの握りで一般に悪い握りとされています。

なぜこの握りが正しいとされているのかと言うと、バックスピンを投げると言う事が前提になっているからです。もちろん、バックスピンを投げるためには、この握りが正しい握りです。

ただ、この「正しい握り」には唯一の弱点が有ります。写真のように人差し指と中指からの圧力は親指からの圧力と釣り合いますが、小指と薬指からの圧力は、それと釣り合う力を持たないと言う事です。そのため、このバックスピン用の握りでは物理的にボールが横に抜けやすい構造で、それを防ぐために手に無意識に僅かな力が入ってしまうはずです。

ここで「バックスピンには適さないが、構造力学的に安定した握り」を紹介します。安定しているからこそ、手の力が抜けるのが長所です。それは写真のようにボールと指の四つの接点を台形に近い状態に配置するというものです。(もちろん、親指の腹で握らない事が重要になります。また、完璧な台形にすると親指が横にズレ過ぎて腹で握る事になるので、そこまでは必要ありません。通常の握りより少し横にずらすだけで充分力学的な安定感が得られます)この握りにする事で手の力は抜きやすくなります。
可能性としてはスピン量が減って「重い球」になるかもしれません。

5)振りかぶり動作と回し込み式の相性
これまでに書いて来ましたように投手の重心移動のリズムは「振りかぶり式」「腿挙げ型」「回し込み式」「ライアン式」等、様々な種類が有ります。その中で回し込み式のリズムと振りかぶり動作は相性が悪いのでは無いかと思います。実際、ダルビッシュ投手が振りかぶって投げている所を見ると、前脚挙上〜重心移動のリズムは「振りかぶり式」になっている場合と「腿上げ式」になっている場合が有るようです。

簡単に言うと、振りかぶり式の場合は振りかぶった腕を下ろして来る流れを止めずにテークバックに入るのに対して、腿上げ式の場合は前脚を挙げた所でカチッと動きが止まるので、そこで手も止まるリズムになります。しかしいずれの場合にも言える事はこれら2つの投法の重心移動のリズムは回し込みのそれとは異なると言う点です。回し込み式のリズムをそのままに振りかぶり動作を加えようとすると無理が有る事が解ると思います。そういえば斎藤雅樹なんかも振りかぶってませんしね。

ここで、振りかぶる動作のメリットを書いておきますと、それは腕を振り上げた時に前脚側に反りが作れるので、それが腹筋、腸腰筋、大腿四頭筋などをストレッチする事になり、前脚の挙上が楽になると言う点です。

その意味では振りかぶりも使えるテクニックですが、その場合、基本となるフォームに対する影響の出方が考慮すべきファクターとなるでしょう。おそらく「腿挙げ型」のリズムの方が影響は少なくてすむのではと思います。特に振りかぶり式で注意したいのは肩への負担ですね。始動時に腕から動かして行くので腕の筋肉に頼りやすいぶん、振りかぶり式は肩に張りが生まれやすいフォームだと思います。

6)回し込み式についての補足
回し込み式の本質は捻りを利用して後ろ脚股関節を前方に送り出す事で重心移動をスタートさせるという点にあります。しかし、この捻るという動作自体は必ずしも「回し込む動き」を伴いません。そういう意味ではジョシュ•ベケットなどは回し込まずに捻るタイプと言えるでしょう。こういう捻りは「腿挙げ型」の藤川球児も使いますし、「振りかぶり式」の投手も基本的に捻りを利用します。
実際、先に挙げたダルビッシュ投手の振りかぶる動画でも「振りかぶり式」「腿挙げ型」のいずれにおいても捻りを明確に利用しているようです。ある意味回し込み云々よりも捻って重心移動をスタートさせるという点にダルビッシュ投手のフォームの根本的な特徴が有るのかもしれません。これは書き進めて行く中で気がつかされた事です。くどいようですが、こうしたタイプのフォームの特徴は重心移動がスムーズに始まる反面、強調すると体が前に流れて軸脚側の力を(僅かに)ロスする場合が有るという事です。そのためにコアメカニクス•ドリルを紹介しました。


7)ウェートトレ後のアフターケアドリルを作る
金本知憲はウェートトレーニングの後に必ず素振りをしていましたが、この行程が非常に重要です。肩の回旋系のストレッチ(特に動的ストレッチ)は重要ですが最も効果的なのはスローイング版の素振りであるシャドーです。投球動作では腕がリラックスした状態で筋肉の反射機能(伸張反射)が働き、さらに静止状態では生まれ得ないような負荷がかかり肩関節が捻られるために非常に動的ストレッチング効果が高いのです。

なお、ここで言うシャドーとはタオルを使わずにやる方法で、こちらのページhttp://bplosaka.blogspot.jp/2015/05/step11.htmlに説明してあります(モデルはパンチャー)。素手によるシャドーは肩肘に負担がかからず、何度でも出来るのが長所です。ウェート後などにしばらくやってると最初はごわついていて手先の走りが鈍かったのが段々ヒュッと手先が鋭く走るようになってくるはずで、そうなって来た頃には柔軟性も回復しているはずです。コチラは実践した中学野球指導者のブログです。いずれにしても、そうした意味でのウェートのアフターケアとなる流れを確立する事が非常に重要だと思います。


8)メジャーの打者の傾向 
「日本人にはまずいないがメジャーに多い打者」 といってまず思いつくのが動画のような片手フォローの打者です。特にかなり筋肉の発達した打者とこの片手フォローが組み合わさると低めの落ちる球をすくい打つのが難しくなります。この辺に落ちる球を武器にする日本人投手が成功する理由の一つが有ると思います。

低めを打つためには腕に捻りが入って画像Bのようにヘッドを下げないといけないのに、片手フォローは画像Aのように手の甲を投手に向けて引っ張る腕使いのイメージになるうえに、発達した胸周りの筋肉で腕に捻りが入りにくくなっている場合が多いからです。日本人にはいない、マッチョで片手フォローで手首を返さない直線的なスイングの打者はたいてい落ちる球に弱いと思います。


9)フォームのバリエーションを持つ効果 
ダルビッシュ投手は常々、何種類かのフォームをその時のコンディションによって使い分けると言う話をしていますが、これは非常に良い考えだと思います。なぜなら、ほとんどのフォームには一長一短あるのであまり一つに固める事にこだわるとデメリットまで蓄積されてしまうからです。そこで時には違うフォームで投げる事で違う筋肉を刺激してやった方がむしろコンディションは良い状態に保たれるはずです。ちなみに左で投げる事にもそういった効果(違う筋肉を刺激して体のクセを取る効果)はあると思います。ただ、こうした取り組みの場合、コアメカニクス•ドリルで書きましたように基本となる一つの型を確認出来る練習の存在が重要になって来るはずです。


おわりに
長くなりましたが、以上です。このたびは当方の勝手に申し出に快諾して頂き、本当に有りがとうございました。日本代表のエースピッチャーに自分の研究を見て頂けるという事で、あまりのやりがいについついここまでの大作になってしまいました。あまり多くを語り過ぎる事は良く無いと言われがちですが、ダルビッシュさんのように研究熱心で自分で考えるタイプの選手であれば、そのヒントとなる理論を出来るだけ多く、詳しく挙げた方が良いのでは無いかという考えからこうした内容にさせて頂きました。それでは今後のご活躍を期待しております。重ね重ねありがとうございました!

2016年4月12日火曜日

ダルビッシュ投手フォーム分析 その19

まず投球動作の特徴を簡単に振り返っておきます。

フォーム上のまとめ

1)「割れと絞り」 
後ろ脚股関節の割れ絞りの柔軟性が素晴らしいです。これは股関節の柔軟性と回し込み式の特徴が出ていると言えます。この柔軟性が大きなストライドを生み出していると言えますが近年は(意図的な部分も有るのかもしれませんが)この柔軟性とストライド幅がやや減少しているように見受けられます。この股関節の捻りがスインガーのオーバハンドとしては稀な大きく横滑りする変化球を可能にしているのかもしれません。


2)「ハムストリングスを使う」
回し込み式の動作形態上、重心移動の初期に骨盤がやや後傾しやすく、そのぶん膝スクワットの要素が若干、混入します。その結果として必要以上に重心が下がってしまう場合が有ります。この問題については回し込みの動きを小さくする事で軽減されます。また、普段のトレーニングや投球に入る前の立ち方などもポイントになります。動作中に骨盤の角度を無理に意識してもあまり意味は無いと思います。

3)「肩の柔軟性」
本編では書かなかったですが、投球腕の回転がしなやかでスムーズな事は大きな長所です。特に最大外旋が深くとれているのが良い所です。この柔軟性が球速だけでは無く大きなカーブに繋がっているのでしょう。上半身のウェートトレーニングに取り組む際に、特に重要になるのが投球腕の外旋可動域の保つ事です。大胸筋、広背筋、僧帽筋といった上半身のビッグマッスルは肩を内旋させるので、これらが固まってしまうと外旋可動域が低下するためです。


4)「腕の軌道」
これも本編では書かなかったですが腕の振りが綺麗な縦ぶりになっているのが特徴的です。横回転系の身体の使い方で引っ張ってきて最後に腕が縦振りで出て来る。。この組み合わせが横と縦の変化球を併せ持つという類い稀な投球スタイルを生み出しているのかもしれません。コーチによっては「身体が横回転で腕が縦回転なのでいっその事サイドスローにしたら」等と言う人がいるかもしれないフォームです。もちろんそんな必要はありませんが。ただ、この点については動作上の善し悪しと言うよりは「特徴」と言うにとどめたいと思います。ただ横と縦の変化球を併せ持つと言う所にダルビッシュ投手の大きな強みが有る事は言うまでもありません。

ところでなぜ腕の振りが縦振りになるのかというと、おそらく首の角度のためでしょう。写真のメキシコの投手のような首の角度になっていると、脊柱軸と腕の回転面が直行しやすいのに比べてダルビッシュ投手のように首が立っていると脊柱軸に対して腕の回転面が立ちやすいからです。このため腕の出所自体は低くても縦振り気味になるのでしょう。

ただ、(メキシコ投手は傾き過ぎにしても)負担がかからないのは脊柱軸と腕の回転が直行する方だとは思いますし、動作中に部分的な角度の意識が入るとスムーズさの面ではマイナスになります。意識するのはむしろバランスで脊柱が傾き気味でもそれによって全体のバランスが真っすぐとれていれば良いというのも考え方の一つです。

5)「グラブ腕」
これも回し込み式フォームの特徴なのですが、グラブ腕を壁のようにかざしてしまうと、そこで動き(グラブ腕のスムーズな回旋運動)がブロックされやすく、その結果、フォロースルーでグラブ腕が後ろに引けやすくなります。これはパワーロスに繋がります。具体的にはグラブ腕の外旋が不十分になります。グラブ腕側の胸の張りが不足しているのも、このためです。


(まとめ)
回し込み式として完成度が高いゆえに、その特徴(回し込みの捻り動作に起因する長所と短所)が非常に明確に表れているフォームだと思います。ただ、その長所と短所が組み合わさる事で、縦横いずれの変化球もメジャートップレベルの変化量を持つと言うダルビッシュ投手最大の長所に繋がっていると言う事を考えると、その時々のニーズに合わせたさじ加減が非常に重要になってくるのではと思います。
また、本来的には股関節や肩関節の回旋能力の柔軟性が大きな長所なのですが、近年はそれがやや減少しているように見えるのが有る意味、最も気になる点です。

肩肘の負担について

もちろん、別段肩肘を痛めやすいフォームという事は無いのですが、ダルビッシュ投手のフォームで痛める原因になる箇所が有るとすれば以下の通りです。

1)左右非対称に背中側に入る投球腕
図(モデル=八木智哉)のように投球腕の肘だけが大きく背中側に入ってしまうと、投球腕側の大胸筋が伸張され、その伸張反射で強く収縮するので肩の外旋が不足気味になり、肘が下がりやすくなります。ダルビッシュ投手の場合、回し込みに伴う捻りを大きく取り過ぎる事でこの状態が起こりえます。
2)グラブ腕の引け
この点で真っ先に思いつくのが江川卓です。グラブ腕を前にかざした後、背中側に引くフォームで肩痛で早く引退した投手です。グラブ腕が引けるぶん、投球腕に負担が増すのでしょう。このタイプのフォームは良く肩を痛めます。ダルビッシュ投手の場合はやはり捻りが大きくなった時にこの現象が置きるのではと思います。(図モデル=江川卓)

 3)外旋可動域の低下
これはツイッターでお話した通りです。大胸筋、広背筋、僧帽筋が硬化してしまうと投球腕の外旋稼働域が減少して肘の内側側副靭帯に負担がかかります。ウェートトレーニングに取り組む際に最も注意したいポイントです。(僧帽筋は腕を前に出した状態での肩内旋と連動します)

写真=外旋可動域が低下して肘が下がった危険なフォーム
4)フォロースルー
膝スクワットの要素が強くなり、フォローで後ろ脚が充分に出てこなくなると、投球腕にブレーキのストレスがかかるので、この場合は肩を痛めやすくなります。
写真のようなメジャーでよく見られる一塁側に倒れ込むようなフォローは腕の振りの軌道を重心移動がなぞるので、腕にブレーキの負担が集中せず、肩に負担がかからないフォームです。

ただ、回し込み式の場合、あまり一塁側に倒れるフィニッシュにはなりにくいでしょう。いずれにしてもフォローで後ろ脚が勢い良く出て来ると、肩に負担がかからないと言う事です。その点ではオリックスの平野佳寿なども良い例です。


ダルビッシュ投手の場合、上記4点に留意する事でほぼ肩肘を痛める不安要素は無くなると思います。特にウェートトレーニングを行う時に肩肘の柔軟性を保つという点については気をつけて頂きたい部分です。以下にその場合に使えるストレッチを簡単に紹介します。特に目新しいものでは無いですが参考くらいにはなるのではと思います。

肩腕回旋の動的ストレッチ(内旋3種 外旋3種 総合3種)

このように脊柱のしなりも利用します。また肘を90度に曲げて腕を挙げる事で下図のメカニズムが働き、肩を捻りやすくなります。
 
この種のストレッチは考えようによってはいくらでもやり方が有ると思います。 こういったストレッチをウェートトレーニングの合間や後に挟んで行く事によって肩腕回旋の柔軟性を保つことが重要です。

特に、スインガータイプの場合、投球腕の外旋は非常に重要な意味を持ちます。ある意味、スインガーの本質に関わる動きです。下図のように体幹が回転する時に慣性でボールを後方に残し、身体の回転が減速する時にヌンチャクのメカニズムで末端が走るのがスインガーのメカニズムだからです。最後の瞬間にヌンチャク効果を有効に活用するためには末端部を後方に残して体幹を回す事が重要で、そのためには肩関節の外旋可動域の柔軟性が必要になるためです。
例えば、この写真(大谷)で言うと、4以降がヌンチャク効果で腕が走ってるシーンです。ただ、この時上半身のビッグマッスルが肩関節を強く内旋させるため、ヌンチャクのような直線運動の感覚は本人には無いはずです。ヌンチャクはあくまでも比喩です。

ダルビッシュ投手の場合でも、同じように最大外旋を作って、その後にヌンチャク効果で末端が走っている事が解ります。

ちなみに、これが松坂や藤浪のようなパンチャー投手になると、トップから筋肉のしなりで一気に腕を振って来る感じになります。

パンチャーの場合でも柔軟性は重要なのですが、スインガーの場合、特に重要度が高いと言う事です。故障を防ぐだけでは無く、球速を挙げる、大きなカーブを投げる上でも外旋可動域の大きさが重要となるのがスインガーの特徴です。

その19 完

2016年4月8日金曜日

ダルビッシュ投手フォーム分析 その18

 今回は「股関節の斜め回転」に関する、より高度で実践的なトレーニングを紹介します。まず、投手の場合「股関節の斜め回転能力」は何と言っても写真のように「片方が割れて片方が絞られた状態」を作る事が重要となります。そこで、ここではこの動きに的を絞ったトレーニング法を紹介します。(3コマ目と5コマ目で割れと絞りが入れ替わっています)

キンブレルとチャップマンの「割れ〜絞り」※彼らのようなパンチャーの場合は絞りが起きるタイミングがやや早くなります。


(1) 割れ絞りスイング
 割れ絞りの基本的なトレーニングです。短めのマスコットバットかバットダンベルを使用します。動画のようにゴルフのテークバックのイメージでバットを振り上げつつ後ろ脚の股関節を割り、その反動で逆側にターンする動きを繰り返します。リラックスしてリズミカルに行う事が重要です。

このトレーニングの大きなポイント(そして始めてやる人のほとんどが見落とす点)は、写真のように左右にターンする中央で一度完全に立ち上がる事です。ジャンプするくらいのイメージで良いでしょう。こうする事により両脚が一度伸びるので、負担が軽減してリラックスしてリズミカルな動きになります。
 
下図のようにアップダウンを繰り返しながら左右にスイングすると言う事です。アップが無く脚が力んだままになる人が多いです。写真はバットダンベルですが動画ではバットに針金を巻き付けて3.5キロにしたものを使用しています。

なお、身体を捻るときは水平に捻ったり、身体を倒したりせずに、股関節のラインに沿って斜めに捻る事が重要です。


(2)割れ絞りジャンプスクワット
軽くジャンプして、捻りながら着地します。それによって股関節を割りながら股関節スクワットの形を作ります。動画のように沈み込んだ所で間を取るパターンを挟むと良いでしょう。右腕を使うときは右脚股関節のトレーニングになります。

このトレーニングではピッチングで重心が下降する時に「後ろ脚股関節が割れながら股関節スクワットになる動き」を想定しています。軸脚に、この動きのクセをつける事も目的の一つです。トレーニングの中では、踵〜頸骨のラインでトンと着地し、カクッと沈み込む感覚になればOKです。

なお、トレーニングの中では下の画像のように割った脚の荷重位置はアウトライン(踵、小指側重視)になり、インエッジがやや浮くくらいの方が股関節が割りやすくなります。
大腿四頭筋にハリを感じるのは好ましくありません。大臀筋、脚の外側のライン、ハムストリングスあたりにハリを感じるのが、股関節が割れている時の感覚です。

(3)割れ絞り腕回し
前回(その17)の最後に少し書きましたが、投球腕のテークバックや内旋〜外旋に至る動作も股関節の割れ絞りと連動しています。特に肘から挙がるテークバックになる事が後ろ脚股関節を割るうえで重要になります。

割れた後、絞られる後ろ脚股関節と、投球腕の外旋も連動して起こります。

そうした一連の動きを取り入れたのが「割れ絞り腕回し」です。このエクササイズは「マエケン体操を肩腕でやって下半身動作と連動させたもの」という位置づけで投球前の準備体操として最適です。実際の投球動作と違い、投球腕の捻りは(力まない程度に)意識的に行います。内旋しながら肘から挙げた後、引っくり返して外旋し、カーブを投げるような腕の使い方でストンと振り下ろし、その反動で再び肘から挙げて行きます。


(4)リズム割れ絞り体操 
ここまでのトレーニングでは深く沈み込み最大限に股関節を割る事を重視しましたが、この体操では浅め沈み込みきでリズムを重視し、筋肉の柔軟性を向上させる事を目的としています。動画のようにジャンプした後の着地を利用して一方の股関節を割り、反対の股関節は絞ります。

このエクササイズでは腕の動きと脚の動きを連動させる事がポイントです。写真を見てください。赤線の腕と脚は外旋で、青線の腕と脚は内旋しています。外旋する腕は肘が曲がり、内旋する腕は伸びます。腕の動きで股関節の割れと絞りを誘導してやる事がコツです。股関節が斜めラインに沿ってねじれる様を強く意識してください。


(5)割れ絞りスイッチダンス
前述しましたが、股関節の割りは骨盤の前傾と深く関係しています。そしてさらに、骨盤が前傾していると、股関節の斜め回転がスムーズになるという効果も得られます。

股関節の靭帯は図のような走行方向で付着しているため、骨盤が前傾すると緩みます。靭帯が緩むので股関節がスムーズに回転するようになるという理屈です。
なぜこうした走行方向をしているかというと、骨盤が前傾すると股関節のハマりが深くなるからです。ハマりが深くなるので靭帯の張力で固定する必要が無いので靭帯が緩むわけです(人間の身体が元からそういう構造になっている)。

この違いは立位で骨盤の前傾した状態と後傾した状態を作って比較してみると解りやすいでしょう。この場合の骨盤前傾は反り腰の無理矢理なそれでも構いません(単なる実験なので)骨盤を前傾すると股関節が緩み、後傾すると締まることが解るはずです。
この効果を上手く使っているのがドリブルが上手い事で有名なクリスチアーノ•ロナウドです。元々S字が効いた恵まれた骨格のうえに、その姿勢を保ちながらドルブルするので股関節のローテーションが効いて、超絶的なドリブルテクニックを可能にするわけです。
 
 ロナウドのドリブル


もちろん、投球や打撃の中で股関節のローテーションを上手く使うためには骨盤の前傾した構え、立ち方をしている事が重要になります。そして、この事を確認するためのエクササイズが下の「割れ絞りスイッチダンス」です。

具体的なやり方は見よう見まねでとしか言いようが無いのですが、べつにこの動きで無くても、いろんなパターンで出来ると思います。重要な事は事前に腸腰筋その場ステップや腰を反るストレッチを行う事で腸腰筋をストレッチし、股関節で身体を折るアスレチックポジションを作っておく事です。


(6)捻り割りストレッチ
可動域を大きくとって、名一杯割る事を目的としたストレッチです。バッティングのフィニッシュのイメージで股関節のラインに沿って思い切り身体を捻りきります。

この写真のイメージです。右バッターの場合、フィニッシュで左脚股関節が割れます。
右投手の場合、左打者のフィニッシュの形で右脚股関節を割るストレッチが特に重要になります。股関節のラインに沿って斜めに捻り上げる事が重要です。



(7)割れ絞り連続素振り
これまでの体操と同様に身体を捻って後脚股関節を割った状態からスイングします。少し打撃のスイングに影響が出るのが難点ですが、股関節のトレーニングとしては最高です。沈んだ反動でジャンプする動きになります。


(8)坂道ダッシュ
最後は坂道ダッシュです。割れ絞りのトレーニングというよりも「割れ絞りにも効果がある下半身の総合トレーニング」と言えます。低衝撃&高負荷でなおかつスピードトレーニングなので野球の下半身トレーニングとしては理想的です。

坂道ダッシュ最大のポイントは重力軸と体軸を一致させることです。つまり斜面に対しては前傾します。

 そのためには事前に腸腰筋をストレッチする(腸腰筋その場ステップや腰反り)ことが大切です。それによって骨盤が前傾しやすくなるからです。
また、動画ではスキップから始めていますが、これは正しい腕振りの感覚を掴むためです。走る時は腕を後方に振る時に少し内旋するので手の平が後ろに向き、前に出して来る時は手の平が身体側を向きます。

これが出来ると、坂道ダッシュで四足動物の感覚になります。もちろん手は地面につきませんが、あたかも手で地面を掻いて走るような感覚になるということです。

そもそも人間は四足動物から直立二足歩行に進化したわけですが、その過程でデメリットも発生しました。直立位で股関節が伸展しているために、股関節伸展を使って走る上で(四足動物に比べて)不利になったわけです。

ここで骨盤が前傾しているとどうなるか。立位で股関節の屈曲角度が稼げる事になります。ある意味、これが骨盤前傾の最も本質的な意味です。つまり人類は二足歩行になった事で手先を器用に使えるようになり脳が発達しましたが、大きな出力を要する原始的な運動を行う時にはまだまだ四足動物時代の遺産を使いたいわけで、そのうえで有利なのが骨盤の前傾した体型であると言う事です。

その事が良く表れている一例として、多くの黒人や一部の白人は歩く時に手の平が後ろに向く傾向があります。(アジア系は身体側を向く)これは骨盤が前傾して脊柱のS字が効いた結果、肩甲骨が外転する事で自然にそうなっているのですが、この手の向きは四足動物の前脚と同じです。

坂道ダッシュでは身体と地面の関係性が平地を走る四足動物のそれに近づくので、四足動物的な身体の使い方がやりやすくなるのですが、それが走るフォームの改善にも繋がります。

なお、急過ぎる斜面や緩すぎる斜面はNGです。前者は着地する時に足が爪先立ちになるのでハムストリングスが使いにくく、後者は単純にトレーニング効果が少ないからです。

また、坂道ダッシュでは写真のように着地脚が開き気味になりますが、これは着地のタイミングが平地を走る時よりも早いので、股関節が屈曲(割れた)状態で着地を迎えるからです。この状態から地面を蹴る(絞る)事になるので、坂道ダッシュは割れ絞りのトレーニングとしても効果的なのです。

坂道ダッシュについては以上ですが、このトレーニングは腸腰筋その場ステップ〜スキップ〜ダッシュの順番で行う事が理想的です。

まとめ
以上で下半身動作の二大テーマである「腸腰筋を効かせて骨盤を前傾させハムストリングスを使う」「股関節の割れ絞りを利用する」の二点について書きました。
ダルビッシュ投手の場合、回し込み式と言う前脚挙上および重心移動の動作形態上、「割れ絞り」のテーマについては素晴らしいものがあり、大きな長所となっていますが、「骨盤前傾ハムストリングス」のテーマについてはパフォーマンス毎にやや不安定性があり、そこに改善の余地が有ると思います。ただ、これら二大テーマは相互に関連しているので「骨盤前傾ハムストリングス」について追求すれば自ずと「割れ絞り」も改善され、逆もまたしかりとなるはずです。いずれにしてもピッチングの下半身動作の大きなテーマである事はご理解頂けたのではないかと思います。

振りかぶり式と回し込み式は、その動作形態上「骨盤前傾ハムストリングス」のテーマが弱点となりやすいので、フォームの中で改善すると同時に、特に意識してトレーニングしたいテーマです。

連続写真でも3コマ目でしっかり割れているので、 4コマ目の軸脚の伸びが素晴らしくなっています。割れ(屈曲)が大きいので、そこから強く伸展(絞る)ことが出来るからです。これが大きなストライドを稼ぐ上で重要なポイントです。そして5コマ目の鋭い絞りが骨盤の鋭い回転に繋がっています。

なお、割れ絞りについては柔軟性が重要になるテーマですが、その柔軟性がまた骨盤前傾能力にも繋がると思われます。一般に柔軟性は年齢と共に低下する一方、意識してキープしようとすれば、むしろ向上させて行く事も可能なので、一つのテーマとなると思います。

いずれにしても「骨盤前傾ハムストリングス」の点において向上すれば、従来よりも重心が少し高くなり、フォロースルーでの重心移動がダイナミックで後ろ脚が勢い良く前に出て来るフォームになると思われます。 もちろんそれは意図的にそうするという意味では無く、自然とそうなるという意味です。

その18 完