それでは具体的な練習方法について書いて行きます。
1)高重心の構えからのスイング
いわゆる「骨で立つ」構えからのスイングです。DVDでは、ハムストリングスの効いた状態を「高重心」と「低重心」にわけて解説しました。
低重心の場合、ハムストリングスがより強く働くものの、大腿四頭筋も少なからず働きます。一方、
高重心の場合、ハムストリングスの働きはそれほど強く無いものの、大腿四頭筋を殆ど完全に弛緩させる事が可能になるので、よりクリアーに「ハムストリングスの効いた感覚」を掴む事が出来ます。
コータ君の場合、この高重心の練習で、後ろ脚の膝が曲がる現象と、重心が後ろに戻る動きが殆ど消失してくれたので、やはり、今まではハムストリングスの効いた感覚が希薄だったのでは無いかと思います。
ですからまず、高重心の構えで、純粋にハムストリングスだけが効いている状態を掴み、そこからのスイングを繰り返すと言う事が重要になると考えられます。そういうスイングの中で、コータ君の最大の課題である始動時の後ろ戻りや膝の曲がりが解消されているので、そういうスイングを繰り返す事に意味が有ります。
練習方法のポイントはスタンス幅です。
スタンス幅が狭いと、前足の踵でトントンする感じが掴みやすくなりますが、股関節が割れないので、骨盤が前傾しにくくなります。一方、スタンス幅が広いと、股関節が割れるので骨盤が前傾しやすくなりますが、前足の踵でトントンする感じが掴みにくくなります。
一長一短有るので、狭いスタンスと広いスタンスを交互に繰り返すと良いでしょう。もちろん、広いスタンスにしても、膝は曲げずに緩める程度で、重心は高めにします。
動画はハムストリングスが使えている例です。構えた時、ハムストリングスの所にハリが出来ている点に注目してください。力コブが出来ていると言っても良いくらいです。後ろ脚のハムストリングスが特に強く働いていますが、前脚のハムストリングスも働いています。始動時のに下半身が地面を押す動作の力強さに注目してください。腸腰筋その場ステップをかなりやった人の動画です。
膝はあまり深く曲げていない事に注目してください。その割にはスタンス幅が広いです。スタンス幅が広い事により、股関節が割りやすくなり、骨盤が前傾するのでハムストリングスが効きます。膝は、曲げずに緩めるだけの意識でも、骨盤が前傾することで、ハムストリングスが張力を増すと、その力で膝は自然に曲がります。この
「スタンス幅は広めで、膝は緩めるだけ」と言うのが、最もハムストリングスの効く構えです。
ただ、当日お手本として使った少年の動画は、(オートマチックステップとしては)スタンスはやや狭めです。スタンスが狭い事によって、揺らぎがやりやすく、前足の踵でトントンしやすくなるので、それによってハムストリングスが使いやすくなっているわけです。
コータ君も、黒い服の少年も、打ちに行く直前に身体がピタッと止まっている事に注目してください。ハムストリングスが効くと、股関節伸展によって地面を押さえる力が強くなります。そうすると、物理的に物体が安定するわけです。
このように、
高重心の構えからのスイングの場合、スタンスは狭めでも、広めでも、それぞれにメリットが有ります。どちらの構えも練習すると良いでしょう。
下の動画の最初の3スイングも、スタンスが広めで膝を緩めているだけと言うタイプの構えです。
いずれにしても、まずは高重心の構えからのスイングで、純粋にハムストリングスだけが効いて、骨で立っている感覚を身につけることが重要です。
それでは、次に、この「高重心の構えからのスイング」における、練習方法のポイントや、併用したいストレッチ、トレーニング等を挙げて行きます。
まず、最も簡略化されたメニューとしては、当日行なったように
(1)「後ろ脚だけでの腸腰筋その場ステップ」〜(2)「ティー打撃」と言う流れで良いのですが、その他にもやっておきたいメニューが有ります。
続きます。
★ 腸腰筋その場ステップ
特に説明の必要は無いと思います。最も重要なトレーニングの一つなので、
着地した時に、しっかりと足音が出る事と、
腰を強く前に突き出す事を意識して行なって下さい。
★ ハムストリングスその場足踏み
これは、今回、新しく行なった練習です。後日、林さんの時も行い、かなり手応えを感じています。
お手本として使った動画の、黒い服の少年のように、ハムストリングスが効いて、身体がピタッと止まって安定した状態を作るために、重要なトレーニングです。当日行なった感想では、このトレーニングの効果が良い方に働いていたようです。
これを以下の点を意識して順番に行なって下さい。
1)右脚を下に踏み込めば、左脚が挙る。×6(左右3づつ)
2)左脚を下に踏み込めば、右脚が挙る。×6
3)常に下に踏み込む事だけを意識する。地中深くまで押し込むイメージで。×10
4)両足が着いた所で、一瞬の間を取り、身体がピタッと止まるのを感じる。×10
次に、技術的なポイントです。
a)やっているうちに脚が高く挙るようになって来ます。そして、腸腰筋が効くので、股関節がやや外旋気味に脚が挙るようになります。
b)腕を身体に引きつける事で、踵に体重が乗りやすいようにします。肘が背中に少し出るくらいが良いでしょう。
c)基本的に、ハムストリングスの働きで地面を押し込む運動です。
一方の脚で押し込めば、反対側の脚が勝手に挙って来ます。大腿四頭筋を使った腿挙げにならないようにしてください。
d)片脚を挙げる時に、挙げていない方の脚の膝を突っ張らない。
膝を常に緩めた状態で行なう。
e)事前に腰を反って腸腰筋をストレッチし、その反動で、胸椎がやや後彎した姿勢を作る。そして、アゴを引きながら行なう。こうする事で骨盤が前傾する。
★ 踵小刻みステップ
腰を反って腸腰筋をストレッチした後、踵で小刻みに地面をノックする運動です。DVDに収録されています。
★ 揺らぎ体操
スティックを持って、高重心で行ないます。出来るだけ、左右両方の打席で行ないましょう。(左打席だと右足でトントン出来ますし、右打席だと左足でトントン出来ます。)スティックは身体の近くに置き、それによって踵に体重が乗るようにするのがコツです。
高重心の構えからのスイング まとめ
この練習はストレッチに関しては「腸腰筋その場ステップ」と「ハムストリングスその場足踏み」をメインに行なって下さい。中でも、ハムストリングスその場足踏みが重要で、腸腰筋その場ステップに関しては、その準備運動くらいの位置づけで良いです。「踵小刻みステップ」と「揺らぎ体操」は補助的なメニューと言う扱いで良いです。ただ、いずれにしても、ストレッチとスイングをセットで行なう事が大切です。今のコータ君を見ている感じだと、置きティーを使った方が良いでしょう。ただし、置きティーだけだと不安なので、素振りも挟むようにしてください。
そして、打つ前には「後ろ脚だけで腸腰筋その場ステップ」をします。なぜなら、揺らぎでは前脚だけでトントンするので、後ろ脚の方がハムストリングスの効いた感覚を掴む事が難しいからです。
メニューの例を挙げます。
腸腰筋その場ステップ 6回
ハムストリングスその場足踏み 10回
後ろ脚だけの腸腰筋その場ステップ 4回
置きティー 4本
素振り2本(インハイよりを見る)
これで1セットです。これを何回か繰り返して下さい。
この練習では、膝をあまり曲げないで打つぶん、純粋にハムストリングスだけが効いた感覚を掴みやすいメリットが有ります。そして、この流れで練習を行なった際、良い反応(後ろ戻りや、膝の折れが無い)が見られました。
この練習はコータ君が苦手とするテーマに直結しています。そして、当日、それをやった結果、良い反応が見られました。ですので、これを積極的に行なう事で、お手本に使った黒い服の少年みたいな感じになるようにがんばってください、
2)捻りと後ろ脚股関節の割りを強調した構えからのスイング
捻りを入れて、後ろ脚股関節の割れを強調する事で、後ろ脚の力が強く使えます。そうすると、始動時に後ろに戻る動きが出にくくなります。また、この構えからのスイングを繰り返す事で、後ろ脚(左脚)も鍛えられます。元々が右利きである右投げ左打ちの選手にとって、左脚を鍛える事は重要なテーマになります。
★ 割れ絞り系ストレッチ(バット割れ絞り体操 割れ絞りジャンプ 割れ絞りパンチ)
これらの種目は、後ろ脚を鍛えるのに、効果的です。
捻って左脚股関節を割った時に、大殿筋やハムストリングス等、左脚の裏側の筋肉が効いている感じを掴んで下さい。バット割れ絞りは、左脚を鍛える場合、左打者のグリップで行なって下さい。なお、打撃のスイングに影響が出る場合が有るので、その辺の違和感が出る場合は、素振り等で修正してください。
★ 連続素振り
連続素振りは捻りの効いた構えを作るための練習として効果的です。下の動画の0.30からの連続素振りを見て、こういう感じでやってください。コツは、巻き戻す時にバットの遠心力を利用して、捻りを入れる事です。割れ絞り体操の要領で身体を捻りながら、腰を落として行きます。左脚と左腕を鍛える事が出来ます。
(写真説明)腰を落とす時に、膝が曲がります。膝が曲がると、膝の自動回旋により下腿部が回内します。そうすると反対に大腿骨は外向きに回転するので、より股関節が割りやすくなります。ですから、重心を低くした方が捻りやすくなると言う事です。
捻りと後ろ脚股関節の割りを強調した構えからのスイング まとめ
この練習は、左脚、左腕を鍛える目的で行なってください。捻る事でタスキラインが伸ばされるので、トップハンドつまり左腕の力も使いやすくなります。
練習メニューの例を挙げます。
割れ絞り系ストレッチのいずれか 10回
連続素振り 5スイング
後ろ脚だけの腸腰筋その場ステップ 5回
捻り強調置きティー 5スイング
修正のための素振り 3スイング
※打つ前に、後ろ脚だけの腸腰筋ストレッチをするのは、後ろ脚の股関節を割る時に、後ろ脚に対して、骨盤が前傾した状態を作りたいからです。それによって後ろ脚のハムストリングスが効くので、後ろ脚の力が使いやすくなります。これは、始動時の後ろ戻りや膝の折れを改善するためにも重要になります。
3)補助メニュー(股関節の割り)
捻りを強調した構えから打つ練習を繰り返す事で、股関節の割れた構えを忘れてしまう事を防ぐ目的で行なってください。基本は両脚股関節が割れた上で、前の膝が内、後ろの膝が外に向いた構えを作る事です。
このトレーニングは、時おりで良いので、以下の順番で行なって、股関節の割れた構えを確認するようにしてください。
1)股割りストレッチ
準備体操として、まずは行なって下さい。
2)リズム股割り体操
動画
股関節の割りの能力を高める重要なストレッチです。両脚の内側のラインがたわむ感覚(ストレッチされる感覚)を重視して、アウトエッジ荷重で行なって下さい。
3)両手で8の字を書きながら、足踏みをしつつスクワットダウンする体操
DVDの「腸腰筋とハムストリングス」に収録されている
「8の字揺らぎ体操」と
「踵足踏みスクワットダウン」をミックスしたものです。
8の字揺らぎ体操で、踵で足踏みしながら、揺らぎを利用して重心を下げて行くと、自然に股関節が割れる感覚を掴んで下さい。つまり、
打撃の構えを作る時は、ストレッチのように直線的に股関節を割るのでは無く、揺らぎを利用して股関節を割るのだと言う重要ポイントを掴むための練習です。事前に腰を反って腸腰筋をストレッチしてください。
4)構え作りスクワット
動画
塩ビパイプを用いて、両脚股関節を割りながら、上半身を捻る事で、
両脚股関節が割れた上で、前の膝が内、後ろの膝が外に向いた構えを作る練習をします。
5)揺らぎ構え作り体操
動画
まず、事前に腰を反って腸腰筋をストレッチします。そこから塩ビパイプを使って、揺らぎながら重心を下げて、構えを作る練習です。
両脚股関節が割れた上で、前の膝が内、後ろの膝が外に向いた構えが出来ているか、鏡でチェックしてください。
6)素振り
揺らぎながら重心を下げて、股関節の割れた構え
(両脚股関節が割れた上で、前の膝が内、後ろの膝が外に向いた構え)を作り、スイングする。
〜〜まとめ〜〜
現状での問題点としては、始動した瞬間に後ろ脚の膝が折れて、重心が後ろに戻る動きによって、スイングの出だしにズバッと言う感じの力強さが出て来ない点にあります。
膝が折れる事によって、そこでクッションが生じてしまうので、体育館のマットの上でバットを振ってるような状態になってしまいます。つまり地面からの反発力を上手く使えないということです。また、重心が後ろに戻る事で、壁から跳ね返った後にボールが失速するのと同じで、重心移動の力をロスしてしまっています。ですから、これら2点を改善する事によって、身体の力をロスすること無く使い切れるようにするのが、最重要の課題になります。
ただ一点、仕方が無い部分も有るのです。
「スイングの出だしにズバッと言う感じの力強さが無い」と書きましたが、それはつまり、ヘッドが出て来るのに、やや時間がかかると言う事です。つまり、腰の回転でヘッドを引っ張り出すスインガータイプのようなバットの出方をする傾向が有ると言う事です。(コマ送りで見ると、だいぶんパンチャーらしくなってきましたが。)
しかし、それは右投げ左打ちの選手の特徴でも有るのです。左の力が弱いので、よくも悪くもヘッドの出が遅れるのです。特にヤセ型体系の1番2番タイプだと、そういう感じが多くなります。振り子打法の頃のイチローとか、オリックスの坂口、阪神の福留、巨人にいた篠塚のような感じが典型的です。
ですから、ある意味(世間一般的な考え方では)コータ君に対しては
「右投げ左打ちの選手に、左投げ左打ちの打ち方を教えている。」と言う側面が有るのです。その意味で「難しい事をしている」と言う側面がありますが、その割には良く出来ていると思うと同時に、ある程度、気長に力がついて来るのを待つ必要が有るのかなとも思います。
しかし、
どちらにしても、最終的には「右投げ左打ちの選手で左の力が弱い」と言うのは弱点になります。そういう選手はスインガーであれ、パンチャーであれ、本物のパワーヒッターにはなれない事が多いです。福留にしろ、高橋由伸にしろ、そうです。ですから、そういう
左の強さを必要とする打ち方に子供の頃から取り組んでいると言うのは、非常に良い事だと思います。
つまり
「左投げ左打ちのような右投げ左打ちの打者」を目指せば良いと言う事です。
将来、ちょっと野球に詳しい指導者や、高校の監督などに
「君は左投げだよね?」と効かれたり、
「絶対に左投げだと思ったよ」と言わせれば、勝ちです。
因に、左投げ左打ちで、ヘッドの出が速く、ズバッと言う鋭さの有る左打者(パンチャー)の例を挙げておきます。
レジー・ジャクソン
サム・ファルド
バリー・ボンズ
今から意識して鍛えていけば「左投げ左打ちのような右投げ左打ち」になれると思います。コータ君も見ていると、まだだいぶ「右投げ左打ちらしさ」が残っています。林さんに関しても、初期の頃から比べると、だいぶ「右投げ左打ちらしさ」が消えて来た所です。お手本にした黒い服の少年は右投げ右打ちです。それゆえの、あの「ズバッ」とした感じなのです。
そしてまた、もちろん、右投げ左打ちでも、ヘッドの出が速い打者はいます。そういう打者の例を動画で紹介します。コータ君も、この反動を使わない打ち方をやっていけば、いずれはそうなって来ると思います。
ジェイソン・ジアンビ
トラビス・ハフナー
プリンス・フィルダー(やや回転で引っ張る要素が強いタイプ)
ジム・トーミ
カーティス・グランダーソン
ジョーイ・ボット
ジャスティン・モーノウ
チェイス・アトリー
フレディ・フリーマン
ロビンソン・カノー(やや回転で引っ張る要素が強いタイプ)
右投げ、左打ちの現役のパンチャーで、ヘッドの出が速いタイプ。そして有名な打者と言えば、こんな感じですね。ブライス・ハーパーとかは回転で引っ張って来る要素が強いので外しています。なので、右投げ左打ちのパンチャーと言うだけなら、もっといます。
なお、スイッチヒッターと言うのは、大抵、右投げなので、スイッチヒッターも参考になるでしょう。スイッチヒッターで左打席がスインガーと言うタイプは多いのですが、左もパンチャーで打ってるスイッチヒッター(右投げの)を挙げておきます。
オーランド・ハドソン
ホセ・レイエス
ハンク・コンガー
カルロス・サンタナ
アズドルバル・カブレラ
ダニー・エスピノザ
このように、スイッチヒッターも併せると、右投げ左打ちのパンチャーも非常に多くいます。
左打者を4つに分類して考えると解りやすいでしょう。
「左投げの左打者」「右投げの左打者」「右投げのスイッチヒッター」「左投げのスイッチヒッター」の4つです。
このうち、
左投げ左打者は、今のMLBでは、ほぼ確実にパンチャーです。そして大打者が多いのも、このカテゴリーです。ボンズ、グリフィー、オルティーズ等です。次に
右投げの左打者ですが、今のMLBではパンチャータイプが圧倒的多数なので、実は、このカテゴリーもほとんどパンチャータイプが独占しています。力的に突出しているのは、ロビンソン・カノー、プリンス・フィルダー、ブライス・ハーパー、ジェイソン・ジアンビ、ジム・トーミなどです。
難しいのが、
右投げのスイッチヒッターですが、スイッチヒッターには、右打席パンチャー、左打席スインガーの使い分けタイプが多く、その使い分けをするのはほぼ確実に、右投げのスイッチです。実は、今のMLBで、最もスインガー率が高いのが、このカテゴリー(右投げスイッチの左打席)です。
最後に、極稀にですが、
左投げのスイッチヒッターもいます。ニック・スウィッシャーなどですが、左投げのスイッチヒッターの左打席は、左投げ左打ちの打者と同じですので、このタイプの左打者はほぼ確実にパンチャーと考えて良いでしょう。
話が逸れましたが。。
要は、今のMLBで見た場合、右投げ左打ちのパンチャーと言うのは普通にいるわけです。そして、右投げ左打ちでパンチャーに取り組む以上、左腕、左脚の強さと言うのは重要になって来ます。もちろん、強さだけでは無く、上手く使える事も重要になって来ます。そこを重視して取り組んで行く事が、将来的に周囲に差を付ける事に繋がると思います。
左脚の鍛え方については、割れ絞り体操系が良いでしょう。片脚での腸腰筋その場ステップも使えますし、捻って後ろ脚の効いた構えからスイングするのも左脚のトレーニングになります。
それでは、左腕の鍛え方ですが、これは、
短くて重いバットを(両手で普通に)振るのが良いと思います。なぜなら、ヘッドが重いとどうしてもボトムハンド側の回転で引っ張り出す要素が強く働くからです。また、バットが短い事で、よりトップハンドを中心としてバットの重さを支える事が出来ます。バットが長くてヘッドが重いと、どうしても、ボトムハンド側に頼る割合が強くなります。ですから、
重いバットを振る場合、短いバットの出来るだけ根元に重りを付けて振ると良いでしょう。そうすれば、左腕を鍛える事が出来ます。そして、素振りとセットにストレッチをして、筋肉をほぐしておく事も重要です。
それと、もう一点、筋力、体格の割に硬式の重いバットを振っている事。また、左の力を必要とする打ち方に、右効きの選手が取り組んでいる事。しかも全く反動を使わない打ち方で。。こうした事などを考えても、
コータ君にとっては、結構、ハードな取り組みをしていると言えます。この事は知っておいてほしいと思います。もちろん、それは将来を考えると非常に良い事なのですが、
タマには、現時点で最もスイングスピードの出る軽いバットを使って振る、あるいは打つ事も大切です。そういう事をしないと、身体が速いスピードを発揮する感覚を忘れてしまう場合が有るためです。
昔から(自分が子供の頃から)、小さい頃から重いバットをがんばって振っているのに、もう一つ、キレ、スピード、センスが育って来ない子と言うのがいました。そういう子は、体力に対して重いバットばかりを振っているので、しなやかさが育ってこないのだと思います。若干ですが、コータ君にもそういう雰囲気を感じます。なので、重いバットを使ったトレーニングのカウンターとして、軽いバットも使用して行くと良いと思います。
ただ、選手のタイプの見極めとしては、右投げ左打ちの選手と言うのは、バランス型が多い印象です。一芸に秀でているタイプは稀な印象です。そして、また身体をバランス良く使う事も関係しているのか、頭の良い選手が多いです。そうした事も考えて、目指すタイプを決めて行けば良いと思います。
最後に、右投げ左打ちのデメリットばかりを挙げて来た感が有りますが、右投げ左打ちにはメリットが有ります。それは身体の両方を使って「スイング」が出来ると言う点です。右投げ右打ちや、左投げ左打ちは、知らず知らずにうちに身体が偏って来るのです。これは普通にしてると気が付きません。しかし、逆で振ってみた時にはじめて「アレ?」という感じで、自分の身体が偏っていた事が解るのです。(だから逆振りを奨める人がいるわけです。)右投げ左打ちはそういう意味で、身体をバランス良く使う事が出来るのがメリットです。そういう意味では、右でバットを振る練習、左で投げる練習も、遊びの中でやっていくと良いでしょう。その辺がやりやすいのも右投げ左打ちの長所です。
まとめると。。
1)現状では、パンチャータイプ特有の、ヘッドの出が速いズバッと言う感じがもうひとつ出ていないが、それは右投げ左打ちで、年齢が低い事、体形、体格を考えると仕方が無い部分が有る。しかし、今の内から、右投げ左打ちの弱点を意識して鍛えて行く事の意味は大きい。将来的に強みになり得る。なので、特にヘッドの出が速く、ズバッとバットが出る感じを目指して練習する事が重要になる。
2)右投げ左打ちのパンチャーで成功している例はMLBにも、いくらでもいる。
3)右投げ左打ちの弱点である、左腕を鍛えるためには、短くて重いバットを振るのが良い。また、左脚を鍛えるには、割れ絞り系(バット割れ絞り体操や、割れ絞りパンチ)などのトレーニングを行なって行くと良い。いずれにしても、左腕、左脚の機能性とパワーを向上させていく事が重要になる。
4)タマには、軽いバットを使って練習した方が良い。(重いバットを使ったトレーニングのカウンターとして)
5)「左投げ左打ちのような右投げ左打ち」を目指しながら「右投げ左打ち」の強みも活かした選手を目指す。そのためには遊びの中で良いので右でバットを振ったり、左で投げたりもすると良い。
ということです。
最後に、本文で紹介した練習法をまとめておきます。
練習法まとめ
自主練の時に以下の3種類の方法で練習してください。いずれも、全て一人で出来るものばかりです。順番も出来れば、A→B→C の順番が良いです。
A)ハムストリングス立ちのためのメニュー
1)腸腰筋その場ステップ 6回
2)ハムストリングスその場足踏み 10回
3)後ろ脚だけの腸腰筋その場ステップ 4回
4)置きティー 4回
5)素振り 2回(インハイ寄りを見る)
B)左脚と左腕を鍛えるメニュー
1)割れ絞り系ストレッチ 1O回
2)連続素振り 5回
3)後ろ脚だけで腸腰筋その場ステップ 5回
4)捻り置きティー 5回
5)修正のための素振り(インハイ寄りを見る) 3回
C)股関節を割った構えを作るメニュー
1)股割り体操 1回
2)リズム股割り体操 10回
3)8の字揺らぎ股割り 1回(事前に腸腰筋ストレッチ)
4)構え作りリズムスクワット 5回
5)揺らぎ構え作り体操 1回(事前に腸腰筋ストレッチ)
6)素振り 5回
まだ加筆中です。
最後に、スローイングについては、野手投げのクセ(腕力に頼った投げ方)が少し着いていたので、シャドーで良いのでオートマチックステップ投げの練習を行なっておいてください。
打撃 まとめ
打撃については、まず右投げ左打ち故の左の弱さと言う問題を克服していく事が大きなテーマとなります。この事については、
林さんの記事にも詳しく書いているので、そちらも参考にしてください。
かいつまんで言うと、今の間は、捻ることで肘を挙げて後ろ脚股関節を割った構えからスイングを繰り返す事が重要になると言う事です。それをやっていくうちに身体の左サイドの筋肉が強くなると、もう少しバランスの取れた構えで、フルパワーを発揮出来るようになると思います。
この事はコータ君自身も身体で理解出来ていると思います。そう思えるのは、写真のように「重心の高い構えでの置きティー」で特に肘を挙げる事を言っていないのに、かなり肘を挙げて構えているからです。これは、このくらい肘を挙げないと力が出ない事を感じているからだと思います。
そして、捻って後ろ脚股関節の割れを強調した構えからの置きティーでは左脚と左腕の力を使える形が見事に作られています。
そこで、コータ君にとって、最重要となる練習方法を紹介します。それは、
捻りを強調して左脚と左腕の力を使えるようにした構えから、短くて重いバットを振ると言う練習です。もちろん、試合同様の構えで試合と同じくらいのサイズのバットを振る練習と併せて行なってください。
また、
この練習で懸念されるのは「両脚股関節を割れた構えの感覚を忘れる」「膝を曲げて、大腿四頭筋が効いた状態がクセになる」という二点です。その意味で、上記の練習法(A)(B)(C)のうち(A)と(C)も重要になります。捻りの効いた構えから短く重いバットを振る練習は(B)に相当します。
なお、重いバットを振る場合、構えの時間を出来るだけ短くする事も大切です。
今回は、以上です。