2013年8月31日土曜日

マニー・マチャド



昨年デビューした、MLB期待の若手大型ショートでAロッドに憧れて背番号13を付けている。今期も12本塁打 打率0.299を記録。

ただ、オリオールズにはJJハーディーと言う、これまた大型ショートのレギュラーがいるので、メジャーではサードを守っている。

まだ21歳と言うから、末恐ろしい。

ただ、今のメジャーを見ていて不思議に思うのは、この種の動きが大きい打ち方の選手でさえ、ほとんど例外無く、パンチャータイプであると言う事。




バーノン・ウェルズ



パンチャータイプ、オートマチックステップの精神を形にしたような打ち方だ。

難しく考えて理想を追求したくなるものだが、時には、この原点に帰ると良い。

つまり、どれだけ打ち方に迷って、わけが解らなくなっても、バットを短く持って、こういう打ち方でミートを狙って行くなら、直ぐに出来るはずだし、それは直ぐに出来るようにしておかなければならない。

あくまで、それが出来た上での、そこから先の話である。

因にウェルズのここまで(2013年8月31日)の通算成績は、270本塁打 打率0.271 15年でこれだけの成績を残している。

ウェルズがやっているのは、まさに「つまり、どれだけ打ち方に迷って、わけが解らなくなっても、バットを短く持って、こういう打ち方でミートを狙って行くなら、直ぐに出来る。」と言う事だろう。

つまり、ある意味での諦めも入っているし、複雑に考えたく無いと言う思いも伺える。しかし、それが逆に安定感を生み出している。

ジェフ・バグウェル


(ホームラン3本)


オートマチックステップの化身のような打ち方だ。バグウェルのフォームからは多くの事を学ばせてもらったが、この構えから、このヒッチと言うのは、オートマチックステップ以外にあり得ない。興味深いのは、バグウェル自身が自分の打ち方をどう捉えているのかということだ。

オートマチックステップに取り組む人は、短く軽いバット(短いホウキが良い)で良いので、このバグウェルと同じ動きが出来るようにしてほしい。あまり、重いバットを使うと、クセが着きやすいのでお奨め出来ない。

栗山、後藤、柳田

日本人打者で、左でパンチャーと言うと、非常に少ないが、この3人はパンチャーだ。ヘッドの出の速さとか、前脚の開きにくさとかが、一般的な日本の左打者とは違う。因に、全員、右投げ左打ちである。

栗山


後藤


柳田


栗山は、雑誌のインタビューで「子供にバットをしならせて打てと言っても解らない。自分も言われたが、解らなかった。」と言っている。こうしたコメントに、パンチャーらしさが出ている。

2013年8月30日金曜日

新井貴浩



今の日本人選手で、最もパンチャーらしいバッティングをすると言えば、阪神の新井貴浩だろう。西武の浅村でも、ソフトバンクの柳田でも、アメリカに行った中島でも無い。

日ハムの中田は、惜しい。新井の方がバットの構え方が、トップの角度に近いぶん、パンチャーらしいタイトなスイングになっているので、誰か一人挙げろと言われれば、新井を選ぶ。巻き戻しがしっかり有るのも良い。

脚を挙げる時の体重移動も小さいし、脚を挙げるタイミングも比較的遅い。そうしたあたりも、パンチャーの脚上げ型の方法論としては、理に叶っている。

試合はあまり見ていないので、どういうバッティングをしているのかは、よく知らない。だが、ハマったときのスイングは素晴らしい。デレック・ジーターのスイングからクセを無くして、素直にした感じだろうか。

新井は、ある本の中で「投手のボールの勢いを利用して打ち返すような打ち方に挑戦した事が有るが、身体全体が緩んでしまう感じで、自分には向いていなかった。だから、強く打つ打ち方にしている。」と言うような意味の事を言っていた。ある程度、パンチャーである事の自覚が有ると言える。

ブライス・ハーパーのフォーム改造

メジャーの動画を見ていて、ちょっと驚いた事が有るので、記事にしておきたい。



上の動画は2013年の8月29日、つまり、一番最近のハーパーの動画だが、極めて興味深いフォーム改造を行なった事が解る。フォーム改造と言うより、構え改造だが。。

ハーパーと言えば、ヘッド入れ型の構えであり、それゆえに、脊柱のS字カーブが適切に形成されず、やや骨盤が後傾気味で、膝の潰れた構えが特徴的だった。ただ、それでもヘッド入れ型ゆえの、腕の力の抜きやすさを利用して、腕をリラックスさせた状態から一気に振り抜く事で、ヘッドの抜けが良い特徴的なスイングを見せて来た。

下の動画は、以前のハーパーのフォームで、これが正に、ハーパーらしいスイングである。


しかし、ここ数日のハーパーを見ていると、構えがトップ型になり、そのぶん膝の潰れも無くなっている。形としては、この方が良いのだが、トップ型の構えゆえの、腕にかかる負担。これに対して、ハーパーがどう対処するかで、結果が違って来る。

下の動画は8月25日だが、この時点で既にフォームが改造されている。


トップ型の構えにすることで「ハーパーらしさ」が消える懸念も有る。ハーパーらしさとは、「ボトムハンドの引きが強いながらも、筋肉を柔らかく使ったヘッドの抜けが良いスイング」と言えるだろう。しかし、全体として良い方向に向かう可能性も、勿論、有る。ただ、まだ膝を前に潰すような折り方をするクセは残っているが。。

懸念材料としては、少し重心の高い構えに変えたようだが、トップ型と重心の高い構えの相性は、良く無い。腕にかかる負担が大きいからだ。トップ型の場合、体幹部操作を効かせて、関節をハメ、ハムストリングスも効かせて構えた方が、腕が楽になる。

いずれにしても、メジャーリーグ注目の若手スーパースターが実行した、極めて理論的に意味の有るフォーム改造なので、今後も注目して見て行きたい。

2013年8月28日水曜日

ヤクルトのバレンティン


バレンティンが、王貞治のホームラン記録を抜こうとしている。
この記録は、過去にバースやカブレラが挑戦したが、四球などによって到達する事は出来なかった。個人的には、名シーンとして、王監督がベンチから見守る中、江川卓がバースに真っ向勝負を演じて、インコースの速球をスタンドに運ばれたシーンが、思い出される。

さて、バレンティンの打撃だが。。


脚上げ型、片手フォローのパンチャーである。
ただラボでは、特にパンチャータイプの場合、両手で振り抜く事が重要だと言い続け、実践してもらっている。これは、日本人の場合、特に重要になるポイントだ。

また、後ろ脚の角度が良いので、ハムストリングスが非常に良く効いている。

ところで、私の理論と食い違う動きで打つ選手を挙げて「じゃあ、この場合はどうなの?」と思われる事は多いと思う。そういう問いに対する、私の答えは「長いスパンで見て下さい。」と言う事になる。

ただ、バレンティンの場合、片手フォローで成功する選手のいくつかの特性を兼ね備えているので、メジャーほどの球威が無いNPBだと、ある程度は長持ちする可能性が有る。特に、このスイングの場合、インコースに食い込んで来る速球が打ちにくいので、そうした事を考えると、バレンティンのような中南米系の選手が、一回り、パワーの弱い日本の野球界でプレーしている事と、このスイングの間には関係が有ると言う事が言えるだろう。

つまり、パワーの有る中南米系の選手が、一回りパワーの無い、日本野球の中でホームランを量産するための打ち方でああると言う事だ。

良くも悪くも、日本野球に適応した結果としてのスイングである。バレンティンの能力、相手投手の能力、そして、バレンティンが日本球界で求められている役割。そうした物を考慮した時、バレンティンの採った選択肢が理解出来る。

脊柱のS字カーブの効いた骨格の選手が、低く構えると(あるいは肘をあまり挙げずに、上半身の力を抜いて構えると)比較的、片手フォローの悪影響が出にくい。同じようなスイングで、長期的に安定した成績を残しているカルロス・リーと言うパナマ出身のメジャーリーガーがいる。

カルロス・リー


マーク・マグワイアも、その範疇だし、ミゲル・カブレラもそうだろう。

マーク・マグワイア


ミゲル・カブレラ(おそらく、バレンティンはカブレラを意識しているのでは無いかと思う。)


ヤクルトのバレンティンを見て、ミゲール・カブレラ、カルロス・リー、マーク・マグワイアの3人を連想する。そうした事から、バレンティンの今後を類推する。その結果として予想されるのは、おそらく急激には成績を落とさないだろう。タフィー・ローズや、アレックス・カブレラに近い地位を日本球界で築いて行く可能性は高い。

ただ、もちろん、ラボでは両手で振り抜くフォローを重要な基本として行く。ミゲル・カブレラが三冠王を取って、バレンティンがホームラン記録を更新しても、そこは変わる事は無い。

日本人選手によるお辞儀合掌パフォーマンス


サッカーでも野球でも、海外に移籍した日本人選手がよくやる、あのお辞儀合掌のパフォーマンス。

あれは、止めてほしい。実に、頂けない。

まず、日本人は、挨拶する時に合掌してお辞儀などはしない。合掌してお辞儀をすると言うのは、死んだ人に対する儀礼であるはずだ。朝一番の挨拶で、合掌してお辞儀されたら、かなり違和感があるはずだ。試しに、就職などでの面接でやってみると良いと思う。

なので、まず第一に、日本の風習が誤解される。

次に、どうせやるなら、もう少し人と違う事を考えつかないものだろうか。

ただ、もう最近になると、おそらく外国人の方から、日本人を見つけたらお辞儀して合掌する流れが出来上がっているのかもしれない。それに付き合っていく内に、お辞儀と合掌が、その選手のパフォーマンスになっていくのだろう。



鳴りもの応援


私が日本野球をあまり見ない理由の一つに、このトランペットによる鳴りもの応援が有る。あの音が無ければ、もう少しは見られると思うのだが。かと言って消音にすると、打球音なども聞こえない。

鳴りもの応援が良いなと思えるのは、開幕後の1分くらいだろうか。その瞬間だけは、今年も野球の季節が始まったと言う気分にさせてくれるのだが。。

とにかく、あのトランペットの音と、メロディーと、声が醸し出す「グダグダ感」が耐えられない。

さらに、テレビで見ると、耳元で蚊が羽音を立てて飛んでいるような音にも聞こえて来るのが始末が悪い。

イライラして、チャンネルを変えた事は、これまでに何度も有る。ここまで、野球が好きな人間に、そうさせる、あの鳴りもの応援。なんであんな物が野球に有るのか?

また、家族の野球観戦に付き合う、野球に感心が無い人にとっても不快なものになるのでは無いか。

とにかく、あの音が気になると、2分も見ていられなくなる。

せっかくの野球を台無しにする鳴りもの応援。

なんとかならないものだろうか。

今日も、がんばって日本プロ野球を見ようとしたが、ダメだった。

応援のせいで、ダメだった。

なので、この記事を書いている。

そうこうしているうちに、横浜vs広島のような試合だと、
もう、知らない選手ばかりと言う感じになってしまった。

2013年8月26日月曜日

マーク・トロンボ



これは素晴らしい。

と、思うのと同時に、メジャーリーグでプレーする程の技量が有れば、誰でもこのくらいは出来るんじゃないか、いや、出来るはずだ。と言う気がする。なのに、それをする人が少ない。やった人はだいたい成功する。基本と言うのは、そういうものでは無いかと思う。

2013年8月25日日曜日

エドウィン・エンカーナシオンの打ち方



凄いパワーだ。(ホームラン2本収録)

去年42本塁打で頭角を表した打者で、今期も32本打っている。

前にも書いた事が有るが、上半身をリラックスさせ、楽な状態から一気に力を発揮すると言うパンチャータイプの本質部分を表現した打ち方である。なので、ハマると飛ぶ。

今、パンチャータイプのオートマチックステップで、しかもトップ型と言う最もハードな打ち方に取り組んでいる人も、(もしプロになれたとして)最後の2年くらいは、こういう打ち方をやってみると面白いのでは無いかと思う。もちろん、その場合は、完全な一発狙いになる。

その場合、練習では2キロくらいの短いバットで、トップ型のオートマチックステップの素振りを繰り返し、そして、ボールを打つ時は、エンカーナシオンの打ち方で打つ。そういうのも見てみたい気がする。

ジェフ・フランコーアのバックホーム



メジャーでも強肩で有名な外野手だが、この動画のように、キャッチボールみたいな弾道でバックホームすることが多い。そして、ノーバウンドでの返球が多い。

バックホームの基本では、ワンバウンドでもキャッチャーがタッチしやすい低めに投げる事になっているが、投げ手の都合で言えば、このような高い軌道で投げた方が良い球が行くのでは無いだろうか。そうした考えで、こういうボールを投げているのかもしれない。

もちろん、冒頭のリスクも有るので、高等技術だと言えるだろう。高校とかだと低く投げろと言われると思う。

2013年8月24日土曜日

ブレット・ガードナー



ブレット・ガードナー

左投げ左打ちの外野手で盗塁王を獲得した事が有る。
その盗塁王を差し引いても、中々、良い選手だと思う。
2005年にヤンキースから3巡目で指名された生え抜き選手だ。
加藤 豪将も、こういう風になるかも知れない。

打撃フォームからガッツがにじみ出ている所が良い。
引きが強いがパンチャーのようだ。

ただ、スインガーとかパンチャーとかを度外視して考えても、このくらいの体格の選手が、バックスイングしないで、足もあまり挙げないで打って、これだけ飛ばす。そういう所を感じ取ってほしい。大きく反動を付けても飛ぶが、付けないでも、飛ぶ。バッティングの七不思議の一つである。



2013年8月23日金曜日

ブラウンさん 2回目

ご来場ありがとうございました。




バッティングについて、パッと見で気になる点ですが。。

まず、捻りを強調した練習が多かったとは言え、ややヘッドが投手方向に入り過ぎています。特に、新聞紙打ちを見ていると、一般に言われる「ヘッドが投手方向に入り過ぎて、出て来ない」状態になってしまっています。この辺は微調整を加えた方が良いでしょう。

次に、やはり、最後に止まっている間が短いです。この辺は、もっとハムストリングスと腸腰筋についての感覚が良くなれば、出来るようになってくるでしょう。

今回、打撃について、特に重視しておこなったテーマは以下の通りです。

1)ハムストリングスと腸腰筋を使えるようにする。
2)グリップ(と捻り方)を良くする。
3)前軸が効いて、躍動感の有る巻き戻しが出来るようにする。

続きます。

事情により、更新が遅れていますが、少々お待ち下さい。

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打撃分析編

ケチをつけるのが仕事の一つである私ですが、欠点らしい欠点が無いので、困ってしまいます。今回は、他の皆さんに見てもらう意味で、良い所を挙げて見たいと思います。

1)トップ〜インパクト

軽いバットを使っているとは言え、前から来たボールを打つ中で、これだけの形が作れるのは、素晴らしいです。

2)ヒッチ

ヒッチの動きを練習するホウキスイングの中で、理想的なヒッチの動き、前脚の挙り方が出来ています。少しづつで良いので、この練習を行い、動きを身体に憶えさせてください。

3)捻りと、脊柱のS字カーブ

わりと大きく捻っているのに、脊柱のS字カーブ、とりわけ胸椎の後弯が維持されています。股割り体操で脊柱のS字カーブを作る練習を続けてください。

4)両肩がゼロポジションに入った構え

ボトムハンドで下から支え、トップハンドで上から掴むグリップと、そのための捻り方を練習しましたが、写真のように、両肩がゼロポジションになっている形が良いです。また、捻る時に体幹の面を捕手方向に向けてしまう人は、このアングルから見た時に、右のお尻が見えるのですが、それが見えていないのが、良い所です。つまり、肩甲骨のスライドで捻りを作れているということです。肩甲骨のストレッチ等を続け、この柔軟性を失わないようにしてください。

5)前軸

前軸を作る練習をしましたが、その中でも素晴らしい前軸のラインと両腕の伸びが作れています。この練習も少しづつ続けるようにしてください。

6)最短距離

それでいて、ショートストロークスイングをすると、理想的な最短距離の形が作れているところが、また心ニクいところです。(写真は1回目ですが)後ろが小さく、前の大きい理想的なスイングが出来る土壌が整っています。

7)フィニッシュ

写真は連続素振りながらも、フィニッシュでの両腕の形が非常にタイトで良い感じです。それでいて、充分に身体をねじりきれている。あくまでも、連続素振りでの中ですが、若い頃のアンドリュー・ジョーンズみたいなタイトかつ豪快なフィニッシュが出来ています。

8)始動からトップまでの動き

最も、クセの出やすいこのシーンにおいて、特にクセの無いのが羨ましい所です。上下逆回転の動きも小さいながらで来ており、前脚股関節を割った状態で着地しているのも良いところです。

9)巻き戻し

当初、不安の有った巻き戻しの動きも、ほぼ出来るようになりました。この動きを忘れないように、巻き戻して終わるということを常に心がけてください。動きとしては、バットを戻しながら、後ろ脚をホームベース側に踏み出す動きになります。

以上の、ように、形的には申し分無いブラウンさんですが、バッターとして見た場合、まだまだパワーが足りないです。

そして、また形としては確かに素晴らしいものが有りますが、オートマチックステップの本質部分である、基本メカニズムと言う観点から見ると、まだオートマチックステップ初心者に近い状態です。つまり、始動時の下半身の力が弱く、腕の力に頼らざるを得ない状態であるということです。逆に、その力が強ければ、形はもっと汚くても打てるくらいです。実際、そういうメジャーリーガーもいます。

下の動画は、全て大学での硬式プレーヤー、あるいは引退後すぐの人達ですが、始動時の力が比較的強い例を集めてみました。

状況的に考えて、既にブラウンさんくらいの形で振れているのあれば、パワーアップに舵を切っていい状態であると考えます。そして、また安心してGOサインが出せるケースです。もちろん、パワーとは上半身のバットを振る力だけでは無く、股関節の力も含めてです。そして、形を維持するためには、当日使用したソフトボールバットくらいのバットを使って練習しておけば、いつでも戻せるでしょう。

パワートレーニング法

パワートレーニングはテーマを持って行なう事が大切です。

まず、上半身ですが。。

1)振る力そのもの
これは、体幹の力を中心に考える必要があります。その意味で、短く重いバットを振る事が適しています。基本的な事として、重いバットを振る場合、構えの時間は短めにすることがポイントになります。

2)構えの力を付ける
これはトップ型の構えにとっては、特に重要です。ただ、やりすぎると筋肉が硬くなるので、その点に対するフォローを加えながら行なう必要があります。種目としては、マスコットバットの先端に重りを付けて、踵で足踏みしながらスクワットダウンする方法です。

3)ヘッドの重さに耐える力をつける
基本、どのバットも長くて先端が重い棒なので、普通に振るとどうしても理想のスイング軌道よりもヘッドが下がります。これを防ぐために、時にはトップバランスのマスコットバットを振る事も必要になります。この場合、特に構えは短い事が重要です。バットをクルッと回してから構える方法で振りましょう。

4)軽いバットを振る
上記、3つのトレーニングのフォローとして軽いバットを振る必要があります。少年野球用くらいで良いので、これを鋭く振って、スイングがスムーズになり、筋肉がほぐれてきたと感じるまで振って下さい。

5)ヒッチの動きを身体に憶えさせるホウキスイング
重いバットを振っている内に疎かになりやすいのが、このポイントです。スクワットダウンして体幹部操作の連動を効かせた構えから完全に静止してから、一気に振り抜きます。出来れば反応素振りで行ないたいところです。時々で良いので、この練習を行なって下さい。

次に、下半身ですが。。

1)スクワットダウンした状態からの力の発揮を憶える
これは、ハムストリングスと腸腰筋に深く関わって来るテーマです。方法としては、スクワットダウンして置きティーを打ったり素振りする方法と、事前にスクワットダウンした上で普通のスタンスで振る方法が有ります。いずれにしても、始動時の力に直結する問題なので、ブラウンさんにとっては非常に重要なポイントです。今回行なった股割り置きティーを見ると、やはりまだ始動時のパワーが弱いと感じます。腸腰筋その場ステップとスクワットの組み合わせ(6回+6回)と、セットでこうしたスイングを行なうと良いでしょう。

2)捻って後ろ脚股関節を割った状態からの力の発揮を憶える
捻って後ろ脚股関節を割り、さらにトップハンドの肘を張った構えからのスイングを繰り返す事で、身体の捕手サイドの力を強くすると同時に、やはり始動時の後ろ脚の力を強くする目的で行ないます。始動時の力は、やはり何と言っても後ろ脚がメインになりますから、これもまた重要なテーマです。

方法的には割れ絞り体操系のトレーニングとバットスイングの組み合わせで行ないます。もちろん、どちらか一方だけでも充分効果があります。バットを振る場合、捻りを強調した素振り、置きティー、あるいは巻き戻し連続素振りが適応します。

3)股関節の円運動をバットに連動させて揺らいでから打つ練習
股関節を鍛えた後、その動きを良くして、力を有効に使えるようにするための練習です。事前に腸腰筋その場ステップと揺らぎ体操を行なうと良いでしょう。バットはかなり軽いバットを使い、短く持って両手の間を僅かに離します。この状態から、揺らいで、止まってから振ります。出来れば置きティーで行ないたいメニューですが、素振りでも良いです。ただ、軽いバットで行なうようにしてください。

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だいたい、以上が行なってほしいパワートレーニングと、そのフォローです。なお、ブラウンさんを見て、特に身体のタイプとして、股関節の屈曲伸展よりも内転外転の力(脚を開いたり閉じたりする力)が強いか、あるいは、その動きを使いたがる傾向が有るように感じます。こうした特徴の人は良くいますが、概して始動時の下半身の力が弱い傾向にあります。そして、腰が回りにくい特徴が有るのも、共通する傾向です。一方で、四頭筋で体重を受けたがるクセは無い傾向に有るようです。ブラウンさんの他には、山下さんやホセレイエスJr君、JHETTさんも、このタイプです。しかし、トレーニングの結果として、始動時の力はかなり強くなりましたから、その点に関しては鍛える事で克服出来るのだと言う実感を得ています。ただ、似た部分が有るタイプだと言う事で、注目すると良いと思います。

上記のような事を感じるのは、股関節を割った時に「屈曲 外旋 外転」のうち、外転に依存する度合いが高いと感じられる点です。股関節を割るストレッチでは、もう少し爪先を閉じた感じで、膝の自動回旋を上手く使うと、大腿骨が外向きに回転し、股関節の外旋が大きく使えます。そうすると、骨盤が間に挟み込まれやすいので、股関節の屈曲も使いやすくなります。屈曲伸展系のトレーニング(つまり黒人化系トレーニング)を重視して行ないながらも、股割りなどのフォームも気をつけてみてください。



上記の写真では、もう少し膝の自動回旋が使えると、大腿骨が外向きに回転するので、股関節が外旋し、もっと骨盤が挟み込まれ、股関節が割れると思います。こうした感覚をストレッチの中で掴んで下さい。ただ、難しいのは、実際、打つ時は上記くらいの感じで足裏が地面に3点でついているくらいの方が良いと言う事です。この足裏のフィット感のまま、もっと割れるようにするためには、まだまだ股関節を割る練習が必要になると言う事です。

例えば、手を合わせて行なう股割り体操で、爪先を開かずに(脊柱のS字を度外視し)脊柱を思い切り前傾させてやると、骨盤が大腿骨の間に挟み込まれる感覚が良く解ると思います。

打撃については、以上です。

と、言いたい所ですが、重要な問題を書き忘れていました。きたろうさんの記事にも書いたのですが、揺らぎ〜打ちに行くときの「間」が無いということです。そのため全身の力が使い切れていません。

このアンドリュー・ジョーンズのような間が取れると、もっと下からの力が使えて、地中からの力がブワッと増幅されて全身がうねるようなスイングが出来るようになるでしょう。(1.40からのスイングに注目してください。)

投球分析編

ピッチングについても、形についてはよく出来ています。ただ、全ての動きが小さく、パワーも無い状態です。しかし、前脚側、グラブ腕側と言うのは、あまりパワーが無くても良いと思います。それよりも後ろ脚側、投球腕で生み出したパワーをロスしない事が第一ですから、形が良ければまずは良いです。その意味で、前脚側、グラブ腕側と言う事に着いては特に言う事はありません。

問題は、後ろ脚側と投球腕の可動域を拡大し、さらに力を付けると言う作業をしていく必要が有るということです。投球腕については腕を振る事や腕回し系、後ろ脚側については割れ絞り系と腸腰筋、ハムストリングス系が重要になります。

そこで、特にお奨めしたいトレーニングとして、ピッチャーズ・スパイラルダンスと言うのを紹介します。これは軽くやってウォーミングアップにするのも良いし、ハードにやってトレーニングにするのも良いです。


今のフォームでも、投球腕の動きの基本は出来ています。内旋してから肘から挙り、そして外旋しつつトップを経て、最大外旋の形を作りリリースに向かう。。これらの動き全て出来ていますが、基本的に動きが小さいです。(関節が名一杯動いていない。)


この一連の動きの中でポイントになるのは下の写真の二点で、つまり肘から上がってボールが下になる所と、いわゆる最大外旋の形を作る所です。ここで肩がしっかり入ってくれると大き腕の回るスローイングが出来ます。

このへんは、やはり外国人選手に限ります。このくらい肩が入ると、凄い球が投げられるでしょう。(デーブ・スチュワートとチャップマン)

なので、この形を作るためのストレッチは、非常に重要になります。そして、この形を作るためには後ろ脚の股関節を上手く使う事、またその力を引き出す事が大切になります。そして、その重要なテーマはもちろん、股関節の割れと絞り、そして腸腰筋とハムストリングスです。

このように、股関節の割れ絞りと投球腕の捻りは連動しています。ですから、肩甲骨や肩関節の柔軟性も、股関節の柔軟性も必要になります。そして、上記のピッチャーズスパイラルダンスでは、この写真の連動のメカニズムが実感出来ます。

そこで、特におすすめしたい練習方法が、下の動画の素振りとシャドーを組み合わせるというものです。

捻りを深く取る事で、後ろ脚の股関節が大きく割れ、タスキラインが引き伸ばされます。この状態からスイングすると、後ろ脚とトップハンドが強く使われる事になるので、この素振りとオートマチックステップのシャドーを組み合わせれば、強度と柔軟性を同時に鍛える事が出来ます。

ただ、スローイングのトレーニングとして打撃(特にパンチャータイプ)を取り入れる場合、バッティングでは、写真のように脇を閉める動き(肩関節の内転)を使うので、筋肉が緊張していれば、大胸筋や広背筋が硬化する可能性が有ります。


そのため、大胸筋や広背筋のストレッチは特に入念に行っておいてください。それについてはピッチングトレーニングの動画集に入っています。

ただ、バットスイングは筋トレなどと比べると、圧倒的に柔軟性を保つ、あるいは向上させる効果が高いです。

なので、バットスイング後に「腕を良く回す」と「大胸筋、広背筋をストレッチする」というセットで行うと良いでしょう。そしてもちろん、シャドーにはバットスイングの柔軟性を向上させる効果も期待出来ます。

右投げ、右打ちである事。そして、あまり時間が取れない事を考えると、この「素振りとシャドーの相乗効果」を活用しない手は有りません。

長くなりましたが、今回は以上です。

2013年8月22日木曜日

コータ君 8回目2

それでは具体的な練習方法について書いて行きます。

1)高重心の構えからのスイング


いわゆる「骨で立つ」構えからのスイングです。DVDでは、ハムストリングスの効いた状態を「高重心」と「低重心」にわけて解説しました。低重心の場合、ハムストリングスがより強く働くものの、大腿四頭筋も少なからず働きます。一方、高重心の場合、ハムストリングスの働きはそれほど強く無いものの、大腿四頭筋を殆ど完全に弛緩させる事が可能になるので、よりクリアーに「ハムストリングスの効いた感覚」を掴む事が出来ます。

コータ君の場合、この高重心の練習で、後ろ脚の膝が曲がる現象と、重心が後ろに戻る動きが殆ど消失してくれたので、やはり、今まではハムストリングスの効いた感覚が希薄だったのでは無いかと思います。

ですからまず、高重心の構えで、純粋にハムストリングスだけが効いている状態を掴み、そこからのスイングを繰り返すと言う事が重要になると考えられます。そういうスイングの中で、コータ君の最大の課題である始動時の後ろ戻りや膝の曲がりが解消されているので、そういうスイングを繰り返す事に意味が有ります。

練習方法のポイントはスタンス幅です。

スタンス幅が狭いと、前足の踵でトントンする感じが掴みやすくなりますが、股関節が割れないので、骨盤が前傾しにくくなります。一方、スタンス幅が広いと、股関節が割れるので骨盤が前傾しやすくなりますが、前足の踵でトントンする感じが掴みにくくなります。一長一短有るので、狭いスタンスと広いスタンスを交互に繰り返すと良いでしょう。もちろん、広いスタンスにしても、膝は曲げずに緩める程度で、重心は高めにします。

動画はハムストリングスが使えている例です。構えた時、ハムストリングスの所にハリが出来ている点に注目してください。力コブが出来ていると言っても良いくらいです。後ろ脚のハムストリングスが特に強く働いていますが、前脚のハムストリングスも働いています。始動時のに下半身が地面を押す動作の力強さに注目してください。腸腰筋その場ステップをかなりやった人の動画です。


膝はあまり深く曲げていない事に注目してください。その割にはスタンス幅が広いです。スタンス幅が広い事により、股関節が割りやすくなり、骨盤が前傾するのでハムストリングスが効きます。膝は、曲げずに緩めるだけの意識でも、骨盤が前傾することで、ハムストリングスが張力を増すと、その力で膝は自然に曲がります。この「スタンス幅は広めで、膝は緩めるだけ」と言うのが、最もハムストリングスの効く構えです。

ただ、当日お手本として使った少年の動画は、(オートマチックステップとしては)スタンスはやや狭めです。スタンスが狭い事によって、揺らぎがやりやすく、前足の踵でトントンしやすくなるので、それによってハムストリングスが使いやすくなっているわけです。


コータ君も、黒い服の少年も、打ちに行く直前に身体がピタッと止まっている事に注目してください。ハムストリングスが効くと、股関節伸展によって地面を押さえる力が強くなります。そうすると、物理的に物体が安定するわけです。

このように、高重心の構えからのスイングの場合、スタンスは狭めでも、広めでも、それぞれにメリットが有ります。どちらの構えも練習すると良いでしょう。

下の動画の最初の3スイングも、スタンスが広めで膝を緩めているだけと言うタイプの構えです。


いずれにしても、まずは高重心の構えからのスイングで、純粋にハムストリングスだけが効いて、骨で立っている感覚を身につけることが重要です。

それでは、次に、この「高重心の構えからのスイング」における、練習方法のポイントや、併用したいストレッチ、トレーニング等を挙げて行きます。

まず、最も簡略化されたメニューとしては、当日行なったように(1)「後ろ脚だけでの腸腰筋その場ステップ」〜(2)「ティー打撃」と言う流れで良いのですが、その他にもやっておきたいメニューが有ります。

続きます。

★ 腸腰筋その場ステップ

特に説明の必要は無いと思います。最も重要なトレーニングの一つなので、着地した時に、しっかりと足音が出る事と、腰を強く前に突き出す事を意識して行なって下さい。

★ ハムストリングスその場足踏み

これは、今回、新しく行なった練習です。後日、林さんの時も行い、かなり手応えを感じています。

お手本として使った動画の、黒い服の少年のように、ハムストリングスが効いて、身体がピタッと止まって安定した状態を作るために、重要なトレーニングです。当日行なった感想では、このトレーニングの効果が良い方に働いていたようです。



これを以下の点を意識して順番に行なって下さい。

1)右脚を下に踏み込めば、左脚が挙る。×6(左右3づつ)
2)左脚を下に踏み込めば、右脚が挙る。×6
3)常に下に踏み込む事だけを意識する。地中深くまで押し込むイメージで。×10
4)両足が着いた所で、一瞬の間を取り、身体がピタッと止まるのを感じる。×10

次に、技術的なポイントです。

a)やっているうちに脚が高く挙るようになって来ます。そして、腸腰筋が効くので、股関節がやや外旋気味に脚が挙るようになります。

b)腕を身体に引きつける事で、踵に体重が乗りやすいようにします。肘が背中に少し出るくらいが良いでしょう。

c)基本的に、ハムストリングスの働きで地面を押し込む運動です。一方の脚で押し込めば、反対側の脚が勝手に挙って来ます。大腿四頭筋を使った腿挙げにならないようにしてください。

d)片脚を挙げる時に、挙げていない方の脚の膝を突っ張らない。膝を常に緩めた状態で行なう。

e)事前に腰を反って腸腰筋をストレッチし、その反動で、胸椎がやや後彎した姿勢を作る。そして、アゴを引きながら行なう。こうする事で骨盤が前傾する。

★ 踵小刻みステップ

腰を反って腸腰筋をストレッチした後、踵で小刻みに地面をノックする運動です。DVDに収録されています。

★ 揺らぎ体操

スティックを持って、高重心で行ないます。出来るだけ、左右両方の打席で行ないましょう。(左打席だと右足でトントン出来ますし、右打席だと左足でトントン出来ます。)スティックは身体の近くに置き、それによって踵に体重が乗るようにするのがコツです。

高重心の構えからのスイング まとめ

この練習はストレッチに関しては「腸腰筋その場ステップ」「ハムストリングスその場足踏み」をメインに行なって下さい。中でも、ハムストリングスその場足踏みが重要で、腸腰筋その場ステップに関しては、その準備運動くらいの位置づけで良いです。「踵小刻みステップ」と「揺らぎ体操」は補助的なメニューと言う扱いで良いです。ただ、いずれにしても、ストレッチとスイングをセットで行なう事が大切です。今のコータ君を見ている感じだと、置きティーを使った方が良いでしょう。ただし、置きティーだけだと不安なので、素振りも挟むようにしてください。

そして、打つ前には「後ろ脚だけで腸腰筋その場ステップ」をします。なぜなら、揺らぎでは前脚だけでトントンするので、後ろ脚の方がハムストリングスの効いた感覚を掴む事が難しいからです。

メニューの例を挙げます。

腸腰筋その場ステップ 6回
ハムストリングスその場足踏み 10回
後ろ脚だけの腸腰筋その場ステップ 4回
置きティー 4本
素振り2本(インハイよりを見る)

これで1セットです。これを何回か繰り返して下さい。

この練習では、膝をあまり曲げないで打つぶん、純粋にハムストリングスだけが効いた感覚を掴みやすいメリットが有ります。そして、この流れで練習を行なった際、良い反応(後ろ戻りや、膝の折れが無い)が見られました。

この練習はコータ君が苦手とするテーマに直結しています。そして、当日、それをやった結果、良い反応が見られました。ですので、これを積極的に行なう事で、お手本に使った黒い服の少年みたいな感じになるようにがんばってください、

2)捻りと後ろ脚股関節の割りを強調した構えからのスイング




捻りを入れて、後ろ脚股関節の割れを強調する事で、後ろ脚の力が強く使えます。そうすると、始動時に後ろに戻る動きが出にくくなります。また、この構えからのスイングを繰り返す事で、後ろ脚(左脚)も鍛えられます。元々が右利きである右投げ左打ちの選手にとって、左脚を鍛える事は重要なテーマになります。

★ 割れ絞り系ストレッチ(バット割れ絞り体操 割れ絞りジャンプ 割れ絞りパンチ)


これらの種目は、後ろ脚を鍛えるのに、効果的です。

捻って左脚股関節を割った時に、大殿筋やハムストリングス等、左脚の裏側の筋肉が効いている感じを掴んで下さい。バット割れ絞りは、左脚を鍛える場合、左打者のグリップで行なって下さい。なお、打撃のスイングに影響が出る場合が有るので、その辺の違和感が出る場合は、素振り等で修正してください。


★ 連続素振り

連続素振りは捻りの効いた構えを作るための練習として効果的です。下の動画の0.30からの連続素振りを見て、こういう感じでやってください。コツは、巻き戻す時にバットの遠心力を利用して、捻りを入れる事です。割れ絞り体操の要領で身体を捻りながら、腰を落として行きます。左脚と左腕を鍛える事が出来ます。


(写真説明)腰を落とす時に、膝が曲がります。膝が曲がると、膝の自動回旋により下腿部が回内します。そうすると反対に大腿骨は外向きに回転するので、より股関節が割りやすくなります。ですから、重心を低くした方が捻りやすくなると言う事です。


捻りと後ろ脚股関節の割りを強調した構えからのスイング まとめ

この練習は、左脚、左腕を鍛える目的で行なってください。捻る事でタスキラインが伸ばされるので、トップハンドつまり左腕の力も使いやすくなります。

練習メニューの例を挙げます。

割れ絞り系ストレッチのいずれか 10回
連続素振り 5スイング
後ろ脚だけの腸腰筋その場ステップ 5回
捻り強調置きティー 5スイング
修正のための素振り 3スイング

※打つ前に、後ろ脚だけの腸腰筋ストレッチをするのは、後ろ脚の股関節を割る時に、後ろ脚に対して、骨盤が前傾した状態を作りたいからです。それによって後ろ脚のハムストリングスが効くので、後ろ脚の力が使いやすくなります。これは、始動時の後ろ戻りや膝の折れを改善するためにも重要になります。

3)補助メニュー(股関節の割り)

捻りを強調した構えから打つ練習を繰り返す事で、股関節の割れた構えを忘れてしまう事を防ぐ目的で行なってください。基本は両脚股関節が割れた上で、前の膝が内、後ろの膝が外に向いた構えを作る事です。



このトレーニングは、時おりで良いので、以下の順番で行なって、股関節の割れた構えを確認するようにしてください。

1)股割りストレッチ

準備体操として、まずは行なって下さい。

2)リズム股割り体操

動画

股関節の割りの能力を高める重要なストレッチです。両脚の内側のラインがたわむ感覚(ストレッチされる感覚)を重視して、アウトエッジ荷重で行なって下さい。

3)両手で8の字を書きながら、足踏みをしつつスクワットダウンする体操

DVDの「腸腰筋とハムストリングス」に収録されている「8の字揺らぎ体操」「踵足踏みスクワットダウン」をミックスしたものです。

8の字揺らぎ体操で、踵で足踏みしながら、揺らぎを利用して重心を下げて行くと、自然に股関節が割れる感覚を掴んで下さい。つまり、打撃の構えを作る時は、ストレッチのように直線的に股関節を割るのでは無く、揺らぎを利用して股関節を割るのだと言う重要ポイントを掴むための練習です。事前に腰を反って腸腰筋をストレッチしてください。

4)構え作りスクワット

動画

塩ビパイプを用いて、両脚股関節を割りながら、上半身を捻る事で、両脚股関節が割れた上で、前の膝が内、後ろの膝が外に向いた構えを作る練習をします。

5)揺らぎ構え作り体操

動画

まず、事前に腰を反って腸腰筋をストレッチします。そこから塩ビパイプを使って、揺らぎながら重心を下げて、構えを作る練習です。両脚股関節が割れた上で、前の膝が内、後ろの膝が外に向いた構えが出来ているか、鏡でチェックしてください。

6)素振り

揺らぎながら重心を下げて、股関節の割れた構え両脚股関節が割れた上で、前の膝が内、後ろの膝が外に向いた構え)を作り、スイングする。

〜〜まとめ〜〜

現状での問題点としては、始動した瞬間に後ろ脚の膝が折れて、重心が後ろに戻る動きによって、スイングの出だしにズバッと言う感じの力強さが出て来ない点にあります。

膝が折れる事によって、そこでクッションが生じてしまうので、体育館のマットの上でバットを振ってるような状態になってしまいます。つまり地面からの反発力を上手く使えないということです。また、重心が後ろに戻る事で、壁から跳ね返った後にボールが失速するのと同じで、重心移動の力をロスしてしまっています。ですから、これら2点を改善する事によって、身体の力をロスすること無く使い切れるようにするのが、最重要の課題になります。

ただ一点、仕方が無い部分も有るのです。

「スイングの出だしにズバッと言う感じの力強さが無い」と書きましたが、それはつまり、ヘッドが出て来るのに、やや時間がかかると言う事です。つまり、腰の回転でヘッドを引っ張り出すスインガータイプのようなバットの出方をする傾向が有ると言う事です。(コマ送りで見ると、だいぶんパンチャーらしくなってきましたが。)

しかし、それは右投げ左打ちの選手の特徴でも有るのです。左の力が弱いので、よくも悪くもヘッドの出が遅れるのです。特にヤセ型体系の1番2番タイプだと、そういう感じが多くなります。振り子打法の頃のイチローとか、オリックスの坂口、阪神の福留、巨人にいた篠塚のような感じが典型的です。

ですから、ある意味(世間一般的な考え方では)コータ君に対しては「右投げ左打ちの選手に、左投げ左打ちの打ち方を教えている。」と言う側面が有るのです。その意味で「難しい事をしている」と言う側面がありますが、その割には良く出来ていると思うと同時に、ある程度、気長に力がついて来るのを待つ必要が有るのかなとも思います。

しかし、どちらにしても、最終的には「右投げ左打ちの選手で左の力が弱い」と言うのは弱点になります。そういう選手はスインガーであれ、パンチャーであれ、本物のパワーヒッターにはなれない事が多いです。福留にしろ、高橋由伸にしろ、そうです。ですから、そういう左の強さを必要とする打ち方に子供の頃から取り組んでいると言うのは、非常に良い事だと思います。

つまり「左投げ左打ちのような右投げ左打ちの打者」を目指せば良いと言う事です。

将来、ちょっと野球に詳しい指導者や、高校の監督などに「君は左投げだよね?」と効かれたり、「絶対に左投げだと思ったよ」と言わせれば、勝ちです。

因に、左投げ左打ちで、ヘッドの出が速く、ズバッと言う鋭さの有る左打者(パンチャー)の例を挙げておきます。

レジー・ジャクソン


サム・ファルド


バリー・ボンズ


今から意識して鍛えていけば「左投げ左打ちのような右投げ左打ち」になれると思います。コータ君も見ていると、まだだいぶ「右投げ左打ちらしさ」が残っています。林さんに関しても、初期の頃から比べると、だいぶ「右投げ左打ちらしさ」が消えて来た所です。お手本にした黒い服の少年は右投げ右打ちです。それゆえの、あの「ズバッ」とした感じなのです。

そしてまた、もちろん、右投げ左打ちでも、ヘッドの出が速い打者はいます。そういう打者の例を動画で紹介します。コータ君も、この反動を使わない打ち方をやっていけば、いずれはそうなって来ると思います。

ジェイソン・ジアンビ
トラビス・ハフナー
プリンス・フィルダー(やや回転で引っ張る要素が強いタイプ)
ジム・トーミ
カーティス・グランダーソン
ジョーイ・ボット
ジャスティン・モーノウ
チェイス・アトリー
フレディ・フリーマン
ロビンソン・カノー(やや回転で引っ張る要素が強いタイプ)

右投げ、左打ちの現役のパンチャーで、ヘッドの出が速いタイプ。そして有名な打者と言えば、こんな感じですね。ブライス・ハーパーとかは回転で引っ張って来る要素が強いので外しています。なので、右投げ左打ちのパンチャーと言うだけなら、もっといます。

なお、スイッチヒッターと言うのは、大抵、右投げなので、スイッチヒッターも参考になるでしょう。スイッチヒッターで左打席がスインガーと言うタイプは多いのですが、左もパンチャーで打ってるスイッチヒッター(右投げの)を挙げておきます。

オーランド・ハドソン
ホセ・レイエス
ハンク・コンガー
カルロス・サンタナ
アズドルバル・カブレラ
ダニー・エスピノザ

このように、スイッチヒッターも併せると、右投げ左打ちのパンチャーも非常に多くいます。

左打者を4つに分類して考えると解りやすいでしょう。「左投げの左打者」「右投げの左打者」「右投げのスイッチヒッター」「左投げのスイッチヒッター」の4つです。

このうち、左投げ左打者は、今のMLBでは、ほぼ確実にパンチャーです。そして大打者が多いのも、このカテゴリーです。ボンズ、グリフィー、オルティーズ等です。次に右投げの左打者ですが、今のMLBではパンチャータイプが圧倒的多数なので、実は、このカテゴリーもほとんどパンチャータイプが独占しています。力的に突出しているのは、ロビンソン・カノー、プリンス・フィルダー、ブライス・ハーパー、ジェイソン・ジアンビ、ジム・トーミなどです。

難しいのが、右投げのスイッチヒッターですが、スイッチヒッターには、右打席パンチャー、左打席スインガーの使い分けタイプが多く、その使い分けをするのはほぼ確実に、右投げのスイッチです。実は、今のMLBで、最もスインガー率が高いのが、このカテゴリー(右投げスイッチの左打席)です。

最後に、極稀にですが、左投げのスイッチヒッターもいます。ニック・スウィッシャーなどですが、左投げのスイッチヒッターの左打席は、左投げ左打ちの打者と同じですので、このタイプの左打者はほぼ確実にパンチャーと考えて良いでしょう。


話が逸れましたが。。

要は、今のMLBで見た場合、右投げ左打ちのパンチャーと言うのは普通にいるわけです。そして、右投げ左打ちでパンチャーに取り組む以上、左腕、左脚の強さと言うのは重要になって来ます。もちろん、強さだけでは無く、上手く使える事も重要になって来ます。そこを重視して取り組んで行く事が、将来的に周囲に差を付ける事に繋がると思います。

左脚の鍛え方については、割れ絞り体操系が良いでしょう。片脚での腸腰筋その場ステップも使えますし、捻って後ろ脚の効いた構えからスイングするのも左脚のトレーニングになります。

それでは、左腕の鍛え方ですが、これは、短くて重いバットを(両手で普通に)振るのが良いと思います。なぜなら、ヘッドが重いとどうしてもボトムハンド側の回転で引っ張り出す要素が強く働くからです。また、バットが短い事で、よりトップハンドを中心としてバットの重さを支える事が出来ます。バットが長くてヘッドが重いと、どうしても、ボトムハンド側に頼る割合が強くなります。ですから、重いバットを振る場合、短いバットの出来るだけ根元に重りを付けて振ると良いでしょう。そうすれば、左腕を鍛える事が出来ます。そして、素振りとセットにストレッチをして、筋肉をほぐしておく事も重要です。


それと、もう一点、筋力、体格の割に硬式の重いバットを振っている事。また、左の力を必要とする打ち方に、右効きの選手が取り組んでいる事。しかも全く反動を使わない打ち方で。。こうした事などを考えても、コータ君にとっては、結構、ハードな取り組みをしていると言えます。この事は知っておいてほしいと思います。もちろん、それは将来を考えると非常に良い事なのですが、タマには、現時点で最もスイングスピードの出る軽いバットを使って振る、あるいは打つ事も大切です。そういう事をしないと、身体が速いスピードを発揮する感覚を忘れてしまう場合が有るためです。

昔から(自分が子供の頃から)、小さい頃から重いバットをがんばって振っているのに、もう一つ、キレ、スピード、センスが育って来ない子と言うのがいました。そういう子は、体力に対して重いバットばかりを振っているので、しなやかさが育ってこないのだと思います。若干ですが、コータ君にもそういう雰囲気を感じます。なので、重いバットを使ったトレーニングのカウンターとして、軽いバットも使用して行くと良いと思います。

ただ、選手のタイプの見極めとしては、右投げ左打ちの選手と言うのは、バランス型が多い印象です。一芸に秀でているタイプは稀な印象です。そして、また身体をバランス良く使う事も関係しているのか、頭の良い選手が多いです。そうした事も考えて、目指すタイプを決めて行けば良いと思います。

最後に、右投げ左打ちのデメリットばかりを挙げて来た感が有りますが、右投げ左打ちにはメリットが有ります。それは身体の両方を使って「スイング」が出来ると言う点です。右投げ右打ちや、左投げ左打ちは、知らず知らずにうちに身体が偏って来るのです。これは普通にしてると気が付きません。しかし、逆で振ってみた時にはじめて「アレ?」という感じで、自分の身体が偏っていた事が解るのです。(だから逆振りを奨める人がいるわけです。)右投げ左打ちはそういう意味で、身体をバランス良く使う事が出来るのがメリットです。そういう意味では、右でバットを振る練習、左で投げる練習も、遊びの中でやっていくと良いでしょう。その辺がやりやすいのも右投げ左打ちの長所です。

まとめると。。

1)現状では、パンチャータイプ特有の、ヘッドの出が速いズバッと言う感じがもうひとつ出ていないが、それは右投げ左打ちで、年齢が低い事、体形、体格を考えると仕方が無い部分が有る。しかし、今の内から、右投げ左打ちの弱点を意識して鍛えて行く事の意味は大きい。将来的に強みになり得る。なので、特にヘッドの出が速く、ズバッとバットが出る感じを目指して練習する事が重要になる。

2)右投げ左打ちのパンチャーで成功している例はMLBにも、いくらでもいる。

3)右投げ左打ちの弱点である、左腕を鍛えるためには、短くて重いバットを振るのが良い。また、左脚を鍛えるには、割れ絞り系(バット割れ絞り体操や、割れ絞りパンチ)などのトレーニングを行なって行くと良い。いずれにしても、左腕、左脚の機能性とパワーを向上させていく事が重要になる。

4)タマには、軽いバットを使って練習した方が良い。(重いバットを使ったトレーニングのカウンターとして)

5)「左投げ左打ちのような右投げ左打ち」を目指しながら「右投げ左打ち」の強みも活かした選手を目指す。そのためには遊びの中で良いので右でバットを振ったり、左で投げたりもすると良い。

ということです。

最後に、本文で紹介した練習法をまとめておきます。

練習法まとめ

自主練の時に以下の3種類の方法で練習してください。いずれも、全て一人で出来るものばかりです。順番も出来れば、A→B→C の順番が良いです。

A)ハムストリングス立ちのためのメニュー


1)腸腰筋その場ステップ 6回
2)ハムストリングスその場足踏み 10回
3)後ろ脚だけの腸腰筋その場ステップ 4回
4)置きティー 4回
5)素振り 2回(インハイ寄りを見る)


B)左脚と左腕を鍛えるメニュー

1)割れ絞り系ストレッチ 1O回
2)連続素振り 5回
3)後ろ脚だけで腸腰筋その場ステップ 5回
4)捻り置きティー 5回
5)修正のための素振り(インハイ寄りを見る) 3回

C)股関節を割った構えを作るメニュー

1)股割り体操 1回
2)リズム股割り体操 10回
3)8の字揺らぎ股割り 1回(事前に腸腰筋ストレッチ)
4)構え作りリズムスクワット 5回
5)揺らぎ構え作り体操 1回(事前に腸腰筋ストレッチ)
6)素振り 5回

まだ加筆中です。

最後に、スローイングについては、野手投げのクセ(腕力に頼った投げ方)が少し着いていたので、シャドーで良いのでオートマチックステップ投げの練習を行なっておいてください。

打撃 まとめ

打撃については、まず右投げ左打ち故の左の弱さと言う問題を克服していく事が大きなテーマとなります。この事については、林さんの記事にも詳しく書いているので、そちらも参考にしてください。

かいつまんで言うと、今の間は、捻ることで肘を挙げて後ろ脚股関節を割った構えからスイングを繰り返す事が重要になると言う事です。それをやっていくうちに身体の左サイドの筋肉が強くなると、もう少しバランスの取れた構えで、フルパワーを発揮出来るようになると思います。

この事はコータ君自身も身体で理解出来ていると思います。そう思えるのは、写真のように「重心の高い構えでの置きティー」で特に肘を挙げる事を言っていないのに、かなり肘を挙げて構えているからです。これは、このくらい肘を挙げないと力が出ない事を感じているからだと思います。

そして、捻って後ろ脚股関節の割れを強調した構えからの置きティーでは左脚と左腕の力を使える形が見事に作られています。

そこで、コータ君にとって、最重要となる練習方法を紹介します。それは、捻りを強調して左脚と左腕の力を使えるようにした構えから、短くて重いバットを振ると言う練習です。もちろん、試合同様の構えで試合と同じくらいのサイズのバットを振る練習と併せて行なってください。

また、この練習で懸念されるのは「両脚股関節を割れた構えの感覚を忘れる」「膝を曲げて、大腿四頭筋が効いた状態がクセになる」という二点です。その意味で、上記の練習法(A)(B)(C)のうち(A)と(C)も重要になります。捻りの効いた構えから短く重いバットを振る練習は(B)に相当します。

なお、重いバットを振る場合、構えの時間を出来るだけ短くする事も大切です。

今回は、以上です。

2013年8月21日水曜日

林さん 進化の記録6



続きはコチラです。

ハビアー・バエズ

MLB.COM よりの動画(ホームラン2本)


この動画は、ストレス解消になる。(特に2本目)

凄いスイングをしている。日本代表とのWBC強化試合(カブス戦)で、二本のホームランを打って試合を決めた打者だ。

パンチャータイプだが、ハーパーやマチャド同様、派手系のフォーム。以前にジム・レイリッツを例に挙げ、このようなフォームは今のメジャーにはほとんどいないと書いたが、このバエズだけは別で、80年代風味の派手なフォームをしている。最近はまた、こういう打ち方が増えて来たのも面白い。ファッションでも80年代のものが再び流行っている感が有るが、そういう事とも連動しているようで面白い。

こういう打ち方は、センスが無いと出来ない。一方、オートマチックステップのような打ち方はセンスが無くても出来る。(ただ、それだと打てないと思うが。)

逆に、このくらいのセンスが有る打者に、オートマチックステップを教えてみたいと思う。このくらいセンスが有ると、身体を大きく動かしたがるので難しいと思うが。


2013年8月20日火曜日

エバン・ガティス

久しぶりに面白い打者を発見した。エバン・ガティス。今期からメジャーに定着し、今のところ打率は0.247でホームランは15本。ポジションは捕手。





腰を落として、下半身の力を使う準備をしている。バットはあらかじめ振り出す位置に構え、そこからボールが来たら、バックスイング無しで、後は思い切り引っ叩くだけ。

やりたい事、コンセプトが非常に良く解る打ち方だ。そして、多くの打者が、このようなコンセプトで打撃に取り組んだ結果が、MLBにおけるパンチャータイプ全盛の現状に繋がっている。

なぜ、そういうコンセプトが流行ったのかと言うと、投手のレベルが挙ったからだろう。無駄な動きは無しで、バットは構えた位置から直接振り出すだけのシンプルな打ち方にしたい。となると、あらかじめドッシリ構えておかないと、足腰の踏ん張りが利かずに、力が入らない。その結果が、こういうフォームを生み出している。

パンチャータイプ創成期の80年代のMLBには、こうした打ち方の打者が結構いた。しかし、その後、パンチャータイプが主流となり、技術的にも爛熟期を迎えると、その初心を忘れたかのように、ブライス・ハーパーとかマニー・マチャドのような派手なフォームが増えた。ハーパーやマチャドを批判する気は無いが、ガティスのようなフォームを見ると、パンチャータイプの本質のような物を思い出させてくれる。

サム・フルド



この体格の選手が、この打ち方で、フェンスを超すんだから、

もう、それで良いじゃん。


2013年8月19日月曜日

コータ君 8回目(1)

ご来場ありがとうございました。


始動時の後ろ戻りと、後ろ脚の膝の折れが無い(あるいは小さい)スイングを集めた動画です。


始動時に後ろ戻りが起きると、一回逆方向に進んでから、その跳ね返りで投手方向に出て行く事になるので、壁に跳ね返った後のボールがスピードが落ちるのと同じで、力をロスしてしまいます。また、ハムストリングスが効かずに、始動時に膝が曲がってしまうと、クッションの上でバットを振っているのと同じで、地面からの反発力を上手く使えません。今回は、最大の課題であるこれら2点の問題を解決し、スイングを力強く、鋭くすると言う事に集中し、練習しました。

結果的には、それらを解決するための具体的な練習方法として「大腿四頭筋が効きにくい高重心の構えから打つ練習」「捻りを強調して、後ろ脚股関節を割り、後ろ脚の効いた状態から打つ練習」の2つが導き出されました。

後ろ戻りと膝の折れが起こりにくいのは、高重心の練習方法のほうです。しかしそれだけだと身体の後ろサイドの力が使えるようにならないので、捻りを強調する練習方法が必要になると言う事です。捻りを強調する練習方法(後ろ脚を深く曲げる)を繰り返す事で、通常の構えが高重心の練習のように感じられるようになってくると、通常の構えでも後ろ戻りと膝の折れが起こりにくくなって来るとも考えられます。その意味で、これら2つの練習方法が重要で、その中でスイングに力強さと鋭さが出て来ると良いと言う事です。重要なのはソコ(スイングの力強さと鋭さ)で、後ろ戻りとか膝の折れとかは、あくまでも形の話です。しかし、その形の問題が解決しないと、スイングの力強さと鋭さが出て来ないということです。なので、そのための取り組みであると言う事はコータ君自身が理解しておく事が大切になります。

形的にはかなり良いものが出て来ました。

そもそも、コータ君の場合は、形的な物は打つのも投げるのも、良いフォームを作れると言う長所が有ります。これは、やはり骨格の形の良さと関係があるのでしょう。

なので、一番のポイントは、ハムストリングスの効いた状態を作る事で、スイングをズバッと言う鋭い感じにして行く事です。今は、後ろ脚の膝が始動時に折れるので、そこでクッションになってしまい、地面からの反発力を上手く使えていないのです。これは、体育館のマットの上でバットを振ってるような状態ですので、スイングのパワーをロスして、ズバッと言う感じになってこないわけです。

それでは、その辺が上手く出来ている例(後ろ脚のハムストリングスが効いて、始動時に膝が折れていない例)を動画に集めましたので、まずはそれを見て下さい。


それが、コータ君の場合を見ると、やはり少し膝が曲がってしまいます。(特に2本目)


この動作が有ると
1)パワーをロスする。
2)打とうと思ってからバットが出るまでに時間がかかる
と言う、主に2つの大きな問題が起きるわけです。

ただ、去年の動画などと比較して見ると、少しづつ進化している事が解ります。始動時の後ろ脚の動き、その力の強さに注目して見てください。


始動時の後ろ脚の力が強くなるにつれて、膝が折れる動きも明確になって来た感が有ります。つまり、クセが付いて来たと言うわけです。しかし今回の動画では、その膝の折れがほとんど起きていない例も見られます。

ただ、特に進化していると感じられるのは、始動時の下半身の力がどんどん大きくなっている事です。6回目か7回目では、その辺の事をテーマにしていたと思いますが、初期の段階では、グッと地面を押して股関節が伸展する感じが無かった(外見的に無かった)のが、8回目では、股関節の伸展(同時に膝も伸びる)が明確に見られます。これは林さんや山下さんと同様の進化の経過を辿っていると言う事です。

始動時の力が強くなって行くと言うのは、オートマチックステップの打ち方と、腸腰筋、ハムストリングスをトレーニングして行けば、ほぼ例外無く達成出来る事です。しかし、その過程で、始動時の動きに、人それぞれのクセが出て来ます。このクセが始動時の力が大きくなると共に明確になって来るのですが、それを直すのが一番難しい事です。ただ林さんや山下さんの場合では、ここに来てようやく、前脚の膝が内に入るクセが直って来たようです。

コータ君の場合は、後ろ脚の膝が曲がる事が「クセ」になるのですが、今回の練習の中で、そのクセがほぼ消失しているスイングが何回か有ったのは、希望が持てる要素です。

例えば、次の動画等は、お手本にした動画と、ほとんど同じ感じが出来ています。


始動時に後ろ脚の膝が少し沈むように曲がる現象については、高重心で構えた場合には、ほぼ消えているスイングが見られます。しかし、重心をある程度低くして、実戦同様の構えをとった場合は、まだ完全に消失するに至っていません。

この動作が小さくなればなるほど、スイングがズバッと力強くなり、打ちに行ってからバットが出るまでが素早くなるはずです。そして、そこが最大の改善ポイントであり、テーマとなるわけです。

ただ、少し膝が曲がる動きが残っているとは言え、始動時の力が大きくなってきた事には手応えを感じます。膝が曲がる動きが完全に消失するのには、少し時間がかかるかもしれません。しかし、それと同じくらい、始動時の下半身の力を大きくしていくと言うのも重要なテーマです。

ですから、方針としては。。

始動時に後ろ脚の膝が曲がる動きを少しでも小さくしていきながら、始動時の下半身の力が大きく発揮出来るようにしていく。それによって、スイングの鋭さと力強さを向上させながら、打ちに行ってから素早くバットが出るようにしていく。

と言うことになります。

今回は、記事を2回にわけようと思います。

(2)では、上記のような現状を踏まえた上で、その具体的な改善策、練習法について書きます。これはもちろん、当日行なった2種類の練習が中心となりますが、それについての補足や、補助的メニューが少し加わる事になります。

いずれも、置きティーを使って出来るものなので、一人での自主練の時などに、少しでつでも継続して行なって行くと良いと思います。

(2)はコチラです。

2013年8月18日日曜日

グラント・バルフォアのコンパクトワインドアップ

グラント・バルフォアはアスレチックスのクローザーでタイプ的にはパンチャータイプの右腕。そのフォームには、どことなくアスレチックスに在籍していたティム・ハドソンの面影を感じる。

そのフォームだが。。

基本的には骨盤ごと前脚を挙げるメジャー特有の脚挙げだが、膝を畳んで非常にコンパクトなのが特徴だ。




実は、パンチャータイプのワインドアップモーションには、このタイプの脚の挙げ方が多い。これはラボで教えている(前脚の膝を畳まない)ダイナミックな脚挙げでは無い。しかし、コンパクトにする事で、始動ポジションの安定感が増すので、パンチャー特有の力の発揮がやりやすい部分が有る。ただし、やはりハムストリングスは効きにくい。

曲がりなりにも実践してみた。(使えそうなら、ラボでも採用したいため。)感想としては、やはり、ハムストリングスが効きにくく、重心移動が弱くなる。ただ、安定感は出るので、制球を重視したい向きには良いかもしれない。ただし、その場合もダイナミックワインドアップを練習する事をおすすめする。

自分でやったのを後から映像で見ると、意識したほど差が出ていないが。。


ワインドアップで投げるリズムは「クッと脚を挙げて、フッと力を抜いて、ガッと投げる」と教えているが、コンパクトタイプの場合、その「フッ」の間を短めにした方が良い感じだ。

スティーブン・ストラスバーグもこのタイプだ。ただし、とことん球速を追求したい人にはお勧め出来ない。

スティーブン・ストラスバーグ


現在、ラボで採用している投げ方は数種類あるが、そこにコンパクトワインドアップを加えようか、検討している。

1)ダイナミックワインドアップ
2)コンパクトワインドアップ
3)キンブレル型セットポジション
4)クイックモーション
5)すり足クイック
6)オートマチックステップ

ワインドアップ2種類に、クイックモーション2種類、オートマチックステップ1種類、セットポジション1種類の計6種類になる。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

細かい話をすると、前脚の膝を畳むということは、ハムストリングスで膝を曲げる事を意味する。ハムストリングスは骨盤を後傾させる働きが有るので、脚を挙げる時にハムストリングスを収縮させて膝を曲げてしまうと、そこから脚を降ろす時に骨盤が前傾に戻りにくい。これが、膝を畳むとハムストリングスが使いにくくなる理由だと思う。ただ、膝を畳んだ方が踵側に体重が乗りやすい。そのへんは、今後も考えて行きたい。




ポール・ゴールドシュミット 後ろパワー

ポール・ゴールドシュミットは、去年、打率0.286の本塁打20本の数字を残して頭角を表した打者だが、今年も派手な活躍が多く、注目を浴びている。今期は既にホームラン30本を打ち、打率0.296を記録している。(8月18日現在)

ただ、その打ち方は、典型的なオートマチックステップもどきだ。


ここで注目してほしいのは、顔の向き。インパクトの前後で、ほとんど置きティーのような顔の向きになるのがゴールド・シュミットの特徴である。おそらく置きティーで固めたフォームなのだろう。アメリカでは置きティーが日本の素振りみたいな感じで行なわれているようなので。

こういう顔の向きは良く無いと言って来たが。。

確かに、良く無いのは良く無い。

しかし、同時に実戦での顔の向きは必ずしも理想的かと言われれば、そんな事も無い。マウンドの上から投げるピッチャーのリリースポイントを見ようとすれば必然的にアゴがあがりやすい。そんな理由もあって、大多数の打者はフリー打撃より、実戦で身体が開く。

アゴが挙るのを避けようとして、目だけ見ようとすると、今度は首周りが緊張しやすい。おそらく、眼球を動かす筋肉との関係で解剖学的に説明される何かが有るのだろう。

そんなわけで、実は、実戦では理想的な形で打つ事は難しい。

じゃあ、練習でも、実戦同様の条件でバットを振るべきかと言えば、そんな事は無い。なぜなら、打撃と言うのは、まず身体の動きありきであって、野球と言うゲームありきで成り立つものでは無いからだ。つまり、実戦同様に投手のリリースポイントを意識して振り込んだ結果として、フォームを崩したのでは元も子も無い。あくまでも、実戦は練習の応用だと考えた方が良い。もちろん、実戦に適応させるための練習も必要だが、それは、いわゆる「調整」であって、日常的な「練習」では無い。

じゃあ、どの辺を見て振るのが一番良いのかと言うと、恐らく、方向は投手方向で、アゴが挙らないように、自分に数m先の地面を見たら良いだろう。あくまでも数mと言うのが重要で、あんまり近いと、これまた置きティーになってしまう。

そして、それよりも、外角寄りを見ると腰が回りにくいので手打ちになりやすく、内角寄りも見ると、腰が開きやすい。

ただ、常に真ん中を見て振れば良いのかと言うと、そんな事も無い。外角寄りを見て振ると、身体の後ろサイドの力(後ろパワー)が使いやすいし、内角寄りを見て振ると、身体の前サイドの力(前パワー)が使いやすい。そして、真ん中を見て振ると、全体のバランスが取れる。(真ん中パワー)

このように考えると、コース毎にスイングする練習は、身体の色々な部分の力を使って振る練習になる。だから素振りをするときは、少しで良いので、真ん中だけでは無く、内角寄りや外角寄りを振る練習もした方が良い。その意味は決して内角打ちの練習、外角打ちの練習と言うことだけでは無い。なお、前パワーはインコース高めで、後ろパワーはアウトコース低めで練習すると良い。前パワーの練習には素振りが適しているが、後ろパワーの練習には置きティーが適している。置きティーを使って、前パワーと後ろパワーを交互に練習するのも良いだろう。

なお、置きティーで後ろパワーの練習をするときは、身体の捻りを強調し、(投手方向を見る事を度外視する。)後ろ脚股関節の割りを強調した構えから打つと良い。

ゴールド・シュミットは典型的な後ろパワー優先の打者だが、真ん中パワーの打者、前パワーの打者の例も挙げておく。

エイドリアン・ベルトレイ(真ん中パワー的な打者)


ホセ・バティスタ(前パワー的な打者)


ポール・ゴールドシュミット(後ろパワー的な打者)


ハマった時のスイングを見ると、前パワー最強のように思いがちだが、崩されて打つ事が多いのがこのタイプの特徴なので、常にそういうスイングが出来る訳ではない。崩されたときの柔軟性があれば、打率は稼げるだろう。一方、後ろパワーの打者はバットの出方がコンパクトで鋭いのだが、腕力に頼りがちで意外と不振が長引く事もあり、必ずしも確実性は高く無い。やはり真ん中パワーが一番強い。しかし、後ろパワー、前パワーの練習もやっておいた方が良い。

ロッテ伊藤義弘のクイックモーション

この投手のクイックモーションは中々良い。タイム的には取り立てて速い方ではないが、動きがスムーズで身体の力をきちんと使えている。フィニッシュの動きを見ても、重心移動が充分なのが解る。



クイックモーションは、ステップを速くしようとして、スタンスを広くしたり後ろ脚の膝を折って構える投手が多いが、そういう事をすると、動きもギクシャクしてくるし、身体の力も使いにくい。

最近では少年野球でも普通にクイックモーションを教えるようだが、何度か通りすがりに見た印象では、やはり広いスタンスからのクイックでギクシャクしている感じが多い。少年野球でクイックモーションを教えるのであれば、伊藤義弘のようなクイックモーションを教えてほしい。

なお、クイックモーションでは「抜き」のメカニズムを利用する。(二本の柱で支えている物体から柱を一本抜くと、物体は抜いた方に倒れる)

スタンスが広いと簡単に抜く事が出来る。逆に狭いスタンスから抜こうとすると「抜く」と言う動作が本当に解っていないと出来ない。だから狭いスタンス、高い重心からのクイックモーションの方が、技術的には「高等」である。

ラボでお手本として使っている、クレイ・バックホルツのクイックモーションも狭いスタンス、高い重心からの「高等」なクイックモーションだ。

(0.22から2球)


ところで、クイックモーションには面白い話題が有る。

パンチャー、スインガーの分類を抜きにしても、ピッチングフォームには(松坂大輔や江川卓のような)昔式振りかぶり型のフォームもあれば(藤川球児や前田健太、平野佳寿のような)近代日本式のノーワインド脚挙げ、それにメジャー式の脚挙げ、さらにはクレイグ・キンブレルのようなセットポジションからの投球を常用するタイプ等、様々なものが有る。しかし、クイックモーションについては、全てのタイプに同じフォームを適用する事が出来る。(アンダースローやサイドスローの分類は別)

強いて言うなら、オートマチックステップ投法だけは別だろう。オートマチックステップ投法は基本的にクイックモーションより速いので、クイックモーションを使う必要が無い。

2013年8月17日土曜日

オートマチックステップをやりたくなる動画(1)

最近のメジャーには質の高いオートマチックステップの打者が少ないので、この打ち方に対する良いイメージがわきにくいのでは無いかと思う。「怪力的なパワーの打者がやって、やっとフェンスを超せるかどうかの打法じゃないの?」的な感想を持つ人が多いかもしれない。そこで、ここでは本当に質の高い(技術とパワーを兼ね備えた)オートマチックステップの動画を紹介したい。なお、どれも甲乙つけがたい素晴らしいスイングだが、ここでは敢えて順位をつけてみた。(この辺までくると、ほとんど好みの問題になるので、理論的な根拠はあまり無い。)因に、厳選すると、やはり全員黒人になった。

1位 ジョージ・ベル


2位 フレッド・マグリフ(2本目)


3位 アンドレ・ドーソン(最初のスイング)


4位 アンドリュー・ジョーンズ


オートマチックステップの打ち方を他人に紹介する人は、このページを紹介してほしい。

ジェイソン・ヘイワードとフレッド・マグリフ

ジェイソン・ヘイワードを見た時、真っ先に思い浮かべたのがフレッド・マグリフだった。体型のよく似た左打者で、ともにオートマチックステップだからだ。しかも同じブレーブス。

フレッド・マグリフ(1986~2004)一塁手
通算成績 493HR 打率0.284 打点1550

ただ、ヘイワードは脊柱を立てて膝を深く曲げているので、大腿四頭筋が効いている。そのため、フォームにフレッド・マグリフのような優雅さは無い。フォロースルーも小さく、どこかギクシャクした感も有る。



一方、フレッド・マグリフの場合、クラウチングで構えて、膝はあまり曲げない。クラウチングだとバランス上、スイングはややアウトサイドインになるが、クラウチングで膝を曲げないと言うのは、股関節を屈曲して、膝は曲げないと言う意味なので、ハムストリングスに関しては、最も使える。そのため、スピンが効いたしなやかなフォームをしている。ハムストリングスが使えると、無駄な緊張が無くなるからだ。

初期 ブルージェイズ時代 36本塁打でホームランのタイトルを獲得している。マグリフのルーキーイヤーの1986年には、かつて巨人でプレーしたジェシー・バーフィールドもブルージェイズに在籍しており、40本塁打でタイトルを獲得している。マグリフのクラウチングの構えは、バーフィールドの影響かもしれない。その他、阪神に来る前のセシル・フィルダーもチームメイトだった。




全盛期 ブレーブス時代 チッパー・ジョーンズやライアン・クレスコ、アンドリュー・ジョーンズ等と強力打線を形成していた。打った後に頭上でバットをクルッと回す仕草が話題になっていた。




晩年 レイズ時代 完成の域に達した芸術的なバッティング(ホームラン2本)


トーク後半に打撃シーン多数有り


パンチャータイプとしての技術論は最近の方が平均的に挙ったが、オートマチックステップの打者はマグリフが活躍した時代の方が多かったし、その頃の方が質が高かった。アンドリュー・ジョーンズが日本に来た今だと、メジャーではエイドリアン・ベルトレイやマット・ケンプくらいしか、ぱっと名前が思い浮かばない。

則本と松坂

則本の投げている姿は、この前にブログに書いた時に初めて見たのだが、それ以来、この投手のファンになってしまった。と言うのは、久々に出て来た、オールドタイプの振りかぶりフォームからのパンチャーで、しかもその完成度が高い。この種のタイプは昔はいくらでもいた。江川卓、渡辺久信、郭泰源などがそうだが、もともと昔はほとんどの投手が振りかぶり式なので、パンチャータイプの投手は皆、こんな感じだった。

だから、則本のようなフォームはむしろ、年配のファンに受けが良いのでは無いだろうか。今年の楽天の開幕投手を務めたのも、星野監督の理想とするフォーム(最近では見られなくなった)と、則本のフォームが重なったからでは無いかと思う。「これや!これが本当のピッチャーのフォームや!」と思った事だろう。しかも、ピッチングコーチが佐藤義則なので、2人で「則本いいね〜」と言う感じになったのは想像に難く無い。



グラブとボールを割る動きを重心移動、体幹部の動作と連動させる事が出来ている。そのため、グラブとボールを割るタイミングが抜群に良い。これが則本の最大の長所とも言える。

ただ、脚を挙げて来たところで、手が身体から離れ過ぎているため、重心が爪先よりに来て、ハムストリングスが少し使いにくくなっているのが難点であるが、これには仕方が無い部分が有る。

則本の場合、身長はそれほど高く無い。このくらいの身長だと、身体と頭の対比で、どうしても頭が大きくなる。自分自身、頭が大きい方なので良く解るが、そういう場合、振りかぶろうとすると、両腕で作った空間の間を頭が通りにくい。そうなると、やはり則本のように、肘が少し伸び気味になり、手が身体の前に出てしまいやすい。だから、身長の低い投手や、頭の大きな体型の投手には、振りかぶり型のフォームは向いていない。

一方、松坂のフォームだが。。


則本以前で、振りかぶり式パンチャーで完成度が高い投手と言うと、松坂までさかのぼらないと出て来ない。佐藤由規も良かったが、やや両手が離れ過ぎで、フォームの面では松坂や則本には及ばない。

ただ、則本と松坂で、フォームの完成度を比較すると、則本の方が高い。少なくとも高い部分が有る。それは、松坂は、動画に見られるように、ややグラブと投球腕が離れ気味になっているためで、こうなると、四肢がバラバラになり、無駄な力みが入りやすい。特に上半身が力むので、体重移動も中途半端になるので、フィニッシュでの後ろ脚の出方が安定していない。

その点、則本の方が、ポンと後ろ脚が前脚の横に出るような動きで安定しているし、小気味が良い。これでハムストリングスがもっと使えると、もっと弾むような動きになるだろう。昔式振りかぶり型の場合は、このように打者に正対するフィニッシュになりやすい。

このタイプの正対するフィニッシュで、後ろ脚の着地が小気味良いタイプは、昔に比べて減った印象が有る。振りかぶり式のフォームでは無いが、オリックスの平野佳寿などは、良い着き方をする。


この昔式の振りかぶり式のフォームは、簡単に出来るし、教えやすく、特に日本人には無理なく出来る動きなので、ラボで教えたい気持ちにかられる事も有るが、それをしないのはセットポジションからの投球になった時に、振りかぶり式の良さが全く無くなる事に有る。だから昔は「セットからの投球が課題」と言われる投手が多かったが、ノーワインドアップ全盛になった今では、その解説さえ死語になった感が有る。そして、もちろん、もう一つの理由は、ハムストリングスを使うと言う点では限界が有るため。(脚を挙げて来る時に腰を丸めるので)

則本のセットからの投球は、ブラゼルとの14球勝負で見られる。


この動画を見て、解るのは、このクイックモーションは、今のノーワインド型のフォームの投手のそれと同じで、振りかぶり型特有のセットからの投球では無い。振りかぶり型を採用する場合、この方式を採るのが良いと思う。つまり、ランナー無しなら振りかぶり、ランナーが出たらクイックにするという事。

2013年8月16日金曜日

CCサバシアの投球術

ヤンキースの左のエースで、長年にわたって、凄い成績を、しかも安定して残している。(WIKIの記事)因にスインガータイプ。



ただ、速球は93マイルくらいが多いが、それはメジャーでも取り立てて速い方ではない。(ただ、ズシンと響くような重さは感じられる)4シーム以外の球種は、2シーム、スライダー、チェンジアップと、さして多くも無い。コントロールも特別良いわけでは無い。基本的には、ストレートと、スライダー、チェンジアップの3つの球種で勝負している印象が有る。

このサバシアの投球術で特徴的なのが、プレートの左端とホームベースの左端(投手から見て)のラインと、クロスファイアーのラインを効果的に使っているということ。

例えば、右打者にインコースに入って来るスライダーを意識させておいて、外角低めにチェンジアップを投げると、打者は開きやすくなってるので泳がされやすいはずだ。

また、スリークォーター気味の腕の角度から、右打者に最短距離を通る外角低めのストレートを投げられると、打者は腰が回りにくいので、当たっても長打が出にくいだろう。

左打者に対しても、インコースのストレートを見せておいて、そこに外角低めに逃げるスライダーを投げ込みつつ、インコースのチェンジアップも有るよと言う投球術を見せる。

プレートのラインと、ホームベースの前のラインを底辺とする長方形を描くと、その縦の辺と対角線を効果的に使い分ける。これがサバシアの特徴だ。

長方形の縦線にチェンジアップとストレートを投げているところに注目。(0.30からの2球)


左打者の外角に逃げるスライダーと、右打者の膝元に食い込むスライダーはサバシアの大きな武器だ。


この動画では、長方形の縦線と対角線の使い分けがわかりやすい。


サバシアは基本的にスライダーを武器にするタイプの左投手に分類されると思うが、真骨頂は長方形の縦線の使い方にあるのでは無いかと思う。そして、それはサバシアがスインガータイプである事と関係している。

身体が大きく回り、腕が遅れて出て来る。ストレートの場合、縦線になげようとすれば、そのスインガーの本質とでも言うべきメカニズム(手を遅らせる)を意識しやすい。また、チェンジアップの場合、その投げ方だと、なおさら打者はボールが来ないように感じるはずだ。

マカッチェンのトップハンド

いままでに見たホームランダービーでも5本の指に入るのが、このマカッチェンのスイング。ハムストリングスの効き方が凄まじい。股関節伸展で骨盤を前に突き出すので、ボールの勢いに全く押される感じが無い。



ところで、マカッチェンのグリップを見ると、トップハンドがほとんど鷲掴みになっているのが解る。鷲掴みと言うと正確では無いが、要はそれだけ深く握っているのだが、こうした握りは日米ともに良く無いとされている。アメリカでも基本の教えはフィンガーグリップだ。

これは微妙な問題で、グリップと言うのはそんなに簡単な話では無いので書きたく無いのだが。。(誤解されて悪い方に行く場合が有るので)

トップハンドは、深く握った方が後ろ脚の力を使いやすい。「深く」というか、正確にはしっかり握るということ。なぜかというと、捻りを入れて構えると、バットのヘッド投手方向に入るので、ヘッドの位置が前脚の上に来る。この状態でトップハンドの握りが甘く、ボトムハンドをメインとしてバットを支えると、荷重が前脚に強くかかり、後ろ脚の力が使いにくくなる。

特に、オートマチックステップにおける始動後の後ろ戻りと関係しているのでは無いかと見ている。

トップハンドで上から掴む感覚になる。これは、ラボではよくやっている練習だが、両手の間を離して握り、捻りを強調して置きティーを打つ練習方法で掴む事が出来る。(やり過ぎるとクセが着くので、間に普通のグリップで打つ必要がある。)

では、以下にトップハンドを深く握って後ろ脚(のハムストリングスの力)が使えている例を挙げて行きたい。

ホセ・バティスタ


キャメロン・メイビン(後半、横からのスローが解りやすい)


マニー・ラミレス


同じくマニー・ラミレス(横からの映像 0.25~)


ドミニカの少年(Felix Osorio)


そして、バリー・ボンズ


ただ、グリップはコックとか、他にも色々大切な問題が有るので、この記事を読んで安易に鷲掴みにしても上手く行かないだろう。特に、黒人と日本人の骨格の違いも有るので、日本人だと、ボンズほどの鷲掴みは難しくなると思う。打てない事は無いが、かなり打撃が荒くなるはずだ。

2013年8月15日木曜日

オートマチックステップの原風景

アンドレ・ドーソン


ジョー・カーター


これらはメジャーの強打者が引退後にオールスターの余興でソフトボールをしている時の動画である。

少年野球などで、保護者によるソフトボール大会とかが有ると思うが、そうした中で、こういう打ち方をしている素人の父兄を見た事が有ると思う。

実は、それがメジャー打法なのです。(笑

もちろん、それは子供にも言える事で、素人にはこういう打ち方をする子が結構いるはずだ。ただ、今の野球だと、それは(よほど打たない限り)打ち方を変えさせられるだろう。そこで「打ち方」を変えずに、そのまま洗練されていったのがメジャーの強打者達なのだ。

則本、岸、新井、井口

則本のフォームについて再び。

この投げ方は、昔式(日本でもメジャーでもそう)の振りかぶるフォームで、そこからのパンチャー投法と言う事で、松坂大輔と同じタイプに分類される。

この振りかぶるフォームについては面白い記述が有る。週間ベースボールの2013年7月8日号によると。。

1905年に渡米遠征した早大のエース、河野安通志が、アメリカの投手が振りかぶる投げ方をしているのを見て「驚いて」それを取入れたらしい。なお、河野安通志は、そのフォームを「ボディースイング」と読んでいたらしい。それまでの日本人のフォームは自己流で、そうした投げ方は無かったらしい。

動画は、そのだいぶ後の1934年のカール・ハッベルのフォームだが、恐らく早大チームが目にしたのは、このようなリズムの投げ方だったのだろう。


本題に戻るが、この振りかぶるフォームの脚の挙げ方から、スインガーで投げる事も、パンチャーで投げる事も出来る。パンチャーで投げているのは松坂や則本、西口、佐藤由規などだが、スインガーで投げているのは岸や、唐川、大谷などだ。

則本のフォームには力感が有るが、岸のフォームには力感が無い。力感が有って球も走るのが則本で、力感が無いのに球が走るのが岸。どちらが良い悪いということは無い。

則本





このように、同じようなフォームでもスインガーとパンチャーの違いは有る。打撃に例えると、脚を挙げて後ろ脚に乗るタイプは、そこからスインガーで打つ事も、パンチャーで打つ事も可能だ。例えば、井口はスインガーだし、新井貴浩はパンチャーである。

井口のスイングには力感が無いが、新井のスイングには力感が有る。しかし打球はどちらも同じくらい飛ぶ。

井口


新井

大阪桐蔭の4番 近田

凄い高校生がいる。

大阪桐蔭・近田、森友とのアベック弾を喜ぶ

パンチャーとして、ここまでの域に達した日本人は初めて見た。
というのも、巻き戻しがブランコに近いときが有る。なので、正確には「日本人で、ここまでの巻き戻しは初めて見た。」と言うべきだろう。

ただ、まだまだ荒っぽいので、確率的にはそれほど期待出来ないかもしれない。

しかし、今後の甲子園で誰に注目かと言えば間違い無く、この近田(きんでん)だろう。

見るからに力任せで力感たっぷりなのが良い。

結局の所、パンチャーをどこまで出来たかどうかは、この「巻き戻しの豪快さ」いかんにかかっている。途中、どれだけ作り込もうとも、巻き戻しの弱いパンチャーは、パンチャーの本質が出来ていないと言える。

なぜなら、後ろ肩を前に押し出しながら、前脚股関節を締める事で、身体の中心に力を集中させるような筋肉の収縮がパンチャーの根幹部分にあるためだ。つまり、前軸が効いていなければ、充分にパワーを発揮出来ない。そして前軸が効くと、巻き戻しが強くなる。

空振でも良い。後一回、この近田の豪快な巻き戻しが見たいものだ。

楽天の則本

日本のプロ野球については、ほとんど見ていないので、おばちゃんがよく言う「最近の若い子の聞く音楽はわからへん」くらいの感じでわからない。

則本と言う名前もよく聞くので、気になっていたが、大卒のルーキーで開幕投手までつとめ、10勝も挙げているとは知らなかった。

そこで、フォームだが、松坂と同じタイプの「昔式振りかぶり型のパンチャー」に分類される。スライダーが得意なのも、よく似ている。

スライダーについては何種類ものスライダーを使い分けるらしい。しかし、則本の場合、腕が少し身体から離れ気味なので「藤浪、田中、ダルビッシュの縦スラ」のところで書いたように、基本、縦スラがメインなのでは無いかと思う。

この動画では、全編にわたり、ストレートで押している。「腕がしなる方ではない」「横降りなのでスライダー」と言う解説が有る。パンチャーを表現するキーワードだ。ただし、もちろん腕はしなった方が良いのだが、スインガーに比べると力感が有るので、そういう表現になる。


この動画では、一球だけ凄い縦スラが見られる。(1.02~)


縦スラに関しては、かなり良い線を行っていると思う。まだあまり見ていないので、これは推測に過ぎないが、縦スラを有効に使って奪三振を稼ぐスタイルなのかもしれない。大学時代に10回20奪三振と言う数字を残しているのも気になる。

昔式、振りかぶり型のパンチャーは、腕を降ろして来て、グラブとボールがセットポジションの位置くらいまでに降りて来た時に始動するのが、コツ。ある意味、一番簡単な投げ方でも有るが、デメリットは「ハムストリングスを使う」と言う観点では限界がある事と、セットポジションからの投球。

実際、やっている事は江川とかとほとんど同じだと思う。最近ではめっきり減ったオールドスタイルのピッチングフォーム。則本をキッカケにまた流行ると面白い。取り組みやすい投げ方なので、あり得ないとも言い切れない。

2013年8月14日水曜日

フレッド・マグリフのポール直撃弾



本物の技術を持った打者だった。パンチャータイプと言うのは、力任せの打ち方なので、実際に力任せのバッターは多い。ところが、その中でも少数のものは本当の技術力を兼ね備えている。

「悪い意味での力任せ」になりやすいと言うパンチャータイプの難しい所を、克服している打者は、本当の意味で素晴らしい。バリー・ボンズ、マーク・マグワイア、マイク・ピアッツァなど。

マグリフも、リアルタイムで見たときは既に最晩年だったが、それでも打席に立ったときのオーラは違っていた。そもそも、身のこなし一つとっても、その辺の打者には無い美しさが有る。そういう点で話題になるのはケン・グリフィーJrの方が多いが、何と言うか道を極めた感じはマグリフの方が強い。

上記の動画は96年ワールドシリーズ。研究のために購入したビデオに入っていたので、繰り返し見たスイングだが、この「コーン」と言う音と、溜め息のコントラストがなんともユーモラスなシーンである。

ホームランが出る一つのパターン

プリンス・フィルダーの特大ホームランだが、84マイル(約135キロ)の何とも中途半端なボールを少し泳ぎ気味で前のポイントで捉えている。

この、泳がされたときのパワー。これもレベルの高い両手振り抜き打者の強みだ。特にプリンスが前脚に体重を乗せるタイプである事も関係している。このタイプの打者は、緩い球が来た場合、前脚に体重を乗せた状態で、トップハンドを含めた身体の捕手サイドの力を緩めるようにして、その重さを利用してスイングにブレーキをかける。それによってヘッドが一瞬残る。さらに、その結果、トップハンド側が後ろに残る事で、体幹の筋肉は大きく引き伸されている。そして、最後の瞬間に、その引き伸されたゴムの力を解放させて、一気にボールをぶつける。動画ではトップハンドが深くボールの下に潜り込んでいるが、これは力を抜いてブレーキをかけているシーンでバットの重みによってトップハンドが外旋したからだ。そうすると、またトップハンドのパンチも効く。

要するに、ちょっとだけ泳がされた状態で、トップハンドが深く入っりながらヘッドが残るような待ち方が出来た場合、かなりのパワーが発揮出来る。こういう場合、前脚に体重をかける事で後ろ脚が外れるので、その後ろ脚が背中側に外れると同時に頭がホームベース方向に傾く。だから、この動画のプリンスのようにインパクトで深くホームベース方向に体軸が傾いている場合が多い。

後ろ脚が外れるからこそ、身体の後ろサイド(捕手側)の質量を重りにしてバットの出にブレーキをかける事が出来る。



この投手、シーザー・ラモスは動画のように90マイル台前半のストレートを投げる。



それが何かの投げ損ないで、84マイルのボールを投げたのだろう。

この、速い球を待っていて、そこから少しだけ遅い球が来た時。このタイミングでホームランが生まれる事が多い。やっぱり、差し込まれるよりも、少しだけ前のポイントで捉えた方が飛ぶということだろう。

これは、今回の動画のように5、6マイルも球速差が無くても良い。例えば、豪速球投手のストレートをバックネットにファールチップした後の次の球。そこで1、2マイル落ちる球が来た時などにもホームランは出やすいだろう。

●ストレートの後の、中速系変化球の投げ損ない。
●打者がストレートに着いて来ている状態での、ストレートの連投。

この2つは特に危ない。

詰まらせる場合は、微妙な変化で良い。
しかし、泳がせる場合は、結構大胆に泳がせに行った方が良い。

特に長打の有る打者に対しては。