2013年9月21日土曜日

ホセレイエスJr君 4回目(後編)



今回、大人用の硬式木製バットについては、こちらが驚くほど良く振れていました。それはもちろん、事前にパワートレーニングを行なったからと言うのも有りますが、もう一つ、普段は軽めのバットで練習してきた事が原因として考えられます。

軽いバットで練習して来たので、上半身を力ませずに、(無意識に)下半身から出力して、そこから連鎖的に上半身を加速する身体の使い方が、身体に染み込んでいたのでしょう。その状態で急に重いバットを振ったので、これだけ振れたのだと思います。

これは自分自身、何度か経験した事が有ることですが、急に重いバットを振った時、気持ちよく振り抜ける事が有るのです。しかし、そこからずっと重いバットを振って行くと、今度は上半身の筋肉が緊張してきて、下半身の力も使いにくくなり、振り抜きが悪くなって来たりします。

ですから、ホセレイエスJr君の場合も、硬式木製で練習していく内に、最初のような良い感触が薄れていく可能性があります。そうした事を考えても、軽いバットを振る練習も、重いバットを振る練習と同様に大切になるわけです。

余談ですが、野球部で無い人がタマにやってビギナーズラック的に打ちまくる事が有りますが、それで「野球をやろう」となって、しばらく練習していくと逆に打てなくなる時期が来て、それを乗り越えた時に、本当の力が着くと言うパターンが有ると思います。これも「バットの重さ」が大きな原因となっている現象です。硬式木製を扱えるようになると言うのも、上記のような段階を経る必要が有ると思います。つまり、今回、良い感じで振れましたが、それが順調に続くとは限らず、そこから本当に力がつくまでには少し時間がかかる可能性が有ると言う意味です。

ただ、ホセレイエスJr君にとっての最大の課題は、やはり「腰の回転が小さい」ということです。これは前からテーマとしていましたが、今回はそこに深入りすると、それ以前の基礎的な内容が消化出来ないので、そこにはあまり触れないようにしました。なので、後編では、そこを中心に書くことにします。

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腰の回転が小さいと言う問題と、その改善策について

まず、前提として「両脚股関節が割れた上で前の膝が内、後ろの膝が外に向いた両脚のライン」を安定して作る事が出来るようになってください。当日の練習でも、それを言ったときは出来ている状態ですが、新聞紙を打ってるときの構えを見ると、やはりまだ前脚の股関節の割れが出来ていません。まず、前提としてここが出来ていないと、そこに原因が有るのだと言う可能性を消去する事が出来ないので、先に進む事が難しくなります。

まずは、写真で出来ている例と出来ていない例のイメージを掴んで下さい。出来ていない例は「前の膝が内に入り過ぎ、股関節の割れが崩れる」場合と、「両脚股関節が割れて、膝も両方割れて、ガニ股になっている例」の二種類です。(写真はDVDで使用するものです。)





下の写真は当日行なった「構え作りリズムスクワット(左)」と「揺らぎ構え作り体操(右)」です。これら体操の中では比較的良い形が作れていますので、この練習を行ないながら、両脚のラインを安定して作れるようになってください。これがまず、第一段階です。

練習のパターンとしては、基本的に左右の股関節を均等に割る、リズム股割りスクワットなどを先に行ない、次に、構え作りリズムスクワット、そして最後に揺らぎ構え体操を行ないます。また、股関節を割る前、揺らぐ前には腸腰筋のストレッチが重要で、割った後の股関節は絞っておく事も大切です。それらを考慮してメニューの一例を紹介しますので、この流れで練習してください。

1)大の字腸腰筋ストレッチ〜リズム股割りスクワット×5
2)大の字腸腰筋ストレッチ〜構え作りリズムスクワット×5(2セット)
3)股関節絞り×6(左右3づつ)
4)腸腰筋その場ステップ(おおきくゆっくりめに6回)
5)揺らぎ構え作り体操(1回)
6)腸腰筋ストレッチから、構えを作って素振り(約5回)

なお、例の両脚のラインを作るポイントは以下の通りです。

1)しっかり捻る。捻らないと、前の膝が内に入らない。
2)前足のアウトエッジ側に荷重する。拇指球側に加重すると股関節の割れが潰れる。
3)鏡で見て確認しながら行なう。

まずは上記メニューを練習して、両脚のラインを常に安定して作れるようになってください。

続きます。

前脚の膝が内に入るステップを修正する練習メニュー

股関節の割れた構えが作れたら、以下の練習も試してください。(一応、その通りにやった方が良いという順番に並んでいますが、必ずしもというわけでは有りません。)


それでは、それぞれの練習方法についてのポイントと意味について説明します。

1)バット割れ絞り体操

準備体操です。割れ絞り体操系が、最も割れと絞りの可動域を引き出せます。また理想的なステップ動作の中では、割れと絞りの連動が使われますので、その意味も有ります。

2)腸腰筋その場ステップ


揺らぎ体操のための準備です。

3)前脚での8の字揺らぎ体操

前脚股関節の回旋機能を引き出す狙いです。

4)腸腰筋一歩踏み出し

腸腰筋を使って一歩踏み出す運動です。もちろん、ステップする方の脚で行います。腸腰筋が効いていれば、股関節が外旋するので、外に開きながら着地するはずです。それが出来るようになる事が大切です。

5)前脚側腸腰筋ストレッチ

おそらく腸腰筋だと思いますが、構え作り体操で両脚のラインが上手く出来ると、写真のあたりに張りが感じられます。この感覚が出来ると、ステップで膝が内に入りにくくなります。



6)すり足打法ステップ

オートマチックステップと同じバランスでの前脚挙上を意識的に行うのが(スインガータイプの)すり足打法です。(二本の柱で支えている物体から一本の柱を抜くと、物体は抜いた方に倒れる)という「抜き」のメカニズムを利用したステップです。この動作が上手く出来るようになると、前脚股関節が割れながら挙上される動きになります。


※)ただし、あまり繰り返すとスインガーの動きがクセになるので、オートマチックステップでのシャドースイング(ホウキや手を組むだけで良い)を一回毎に挟む必要が有ります。

7)揺らぎ体操スイング

主に置きティーに適応するメニューですが、塩ビパイプなど軽いモノを振る場合は素振りでも良いです。



揺らぎ体操の感覚から、その流れで始動出来れば、ステップで膝が内に入りにくくなります。ただ、それを普通のバットでやると、揺らぎによるバットの円運動を受けて腕が緊張しやすいので、そこが難しい所です。それを解消するために、グリップの上下をかなり離してバットを握ります。こうする事で揺らぎに伴うバットの回転も大きくなり、その結果、股関節の円運動も引き出しやすくなります。ただし、手首の返しが強くなりやすいので、ボールにあたる置きティーを使うのがおすすめです。ボールが大きいソフトボールだと、なお良いでしょう。無理に手を動かすわけでは有りませんが、股関節の円運動とバットの回転を連動させ、揺らぎを止めてから打ちます。

もちろん、通常のグリップからのスイングを挟みつつ行う必要が有ります。


以上のような練習を行いながら、ステップ動作の修正を計ってください。ただ、前脚股関節が割れ気味に上がる動きが出来るようになった時、パワーが発揮しにくくなって、また元に戻してしまうという可能性も有ります。

それは、本当の意味で始動時の下半身の力を使って打つ感覚が身に付いていないからでしょう。つまり前脚を内にとじ気味にして、後ろに貯めたパワーを使って打つという「後ろ→前」的な力の使い方しか身体に身に付いていないと、そうなります。

特にオートマチックステップの場合(あくまでも無意識下で)下図のように、上下方向の力の発揮を使って打つのですが、この感覚はなかなか簡単には身に付かないものだと思います。

そのような場合(前脚が割れる形でステップすると力が出ない場合)、力が出やすい形でのスイングをメインとして、時折、前脚が割れる形でのスイング練習を行うようにしてください。

また、前脚が割れたステップで力を発揮出来るようにするためには、かなり上の図のような「上下の力」を使えるようになる必要が有ります。ですから、もし「割れるステップは出来るようになったが、それではパワーが出ない」という場合、スクワットダウンした構えから打つ練習を取り入れてください。(この場合、素振りよりも打った方が良いです。)あまり深くスクワットダウンしすぎると膝に負担がかかりますが、どちらにしても、ある程度はスクワットダウンした構えから打つ練習を取り入れて行く必要が有ります。


この動画の0.15からの横からのシーン。この構えから、このステップでパワーが発揮出来るのは、上下の力を使えているからです。




ジェフ•バグウェルの構え


ポイントをまとめておきます。

√ 両脚股関節が割れた上で前の膝が内、後ろの膝が外のラインを作る
√ 膝が内に入るステップを修正する練習メニューを行う
√ スクワットダウンした構えから打つ練習をする事で上下の力が使えるようになる

上記のテーマで練習した結果、ステップを修正して、どうしたいのかというと、それは当然、スイングでもっと腰が回るようにする事です。今の状態では、やや腰の回転が小さすぎます。林さんや山下さんは、構えで割れていて、そこから膝が内に入るという状態を改善しようとしていますが、ホセレイエスJr君の場合は、最初から内に入った状態で、終止そのままでスイングしています。基本的に、林さん山下さんはスイングの回転の大きさには問題が無いです。センターカメラからのアングルの動画を見て、このくらいになる事を目指してください。



2016年04月02日の動画分析



だいぶ良くなってるとは言え、いぜん「腰の回転が小さい」「始動からスイングが始まるまでの動きがバタバタしている」という課題が残っています。これら二点はバットの負荷によって上半身の筋肉が緊張しているためでしょう。それらを防ぐための工夫(肩乗せ打法など)や、練習法(軽いバットを振る)構えをもっとしっかり作るなどに気をつけてください。 全体としてはもっとドッシリした構えから小さな動きで瞬発的にバットが出る感じに持って行かないとオートマチックステップでの実戦対応は難しいです。ルートはどうであれ、そのゴールに高校中に辿り着かないと厳しいです。

構えについて挙げるとすれば、もう少し両方の肩甲骨を外転させて、胸椎の後弯を作った方が良いですね。そうすると全体的にもっと骨盤が前傾した構えになります。去年の夏の動画ではそれが出来てるようです。


次に試合での動画ですが。。

試合での動画は構えで捻りが小さくヘッドが投手方向に入っていないので「よそ行き」のバッティングに見えますね。ヘッドが入っていないので手首が上手く返っていません。試合でも遠慮せずに練習同様のスイングをしたいところです。

とにかく動画(George Bell)のように始動からスイングまでの動きがスムーズで小さく、クイックになるようになる事が大事です。どうすれば、そうなるか、考えながらやってください。

大きなヒントとしては、もう少しドッシリ構えて軽いバットで振ってるとそうなっていくはずです。バットを軽くすると言う意味では無く、この事が何を意味するか。。つまり現状でバットの重さによって腕が緊張しているという事を理解してください。周囲の日本の選手と違い、腕に負担がかかる打ち方をしている事を自覚する事が重要です。そのため、実戦対応においては特にそのあたりの工夫が重要になります。そのへんは「打撃革命」に詳しく書いています。

以上です。