これまでに繰り返し書いて来たように、パンチャータイプの打者にとっては両手で振り抜く事が非常に重要になる。アレックス・ロドリゲス、アルバート・プホルズ、マニー・ラミレスと言った片手フォローの代表的なスタープレーヤーもやはり下降線を辿っている。
ラボでは、コンパクトなスイングを奨めているつもりは全く無い。あくまで、野性味溢れる、アグレッシブで豪快なスイングを奨めている。
しかし、プリンス・フィルダーや、ブライス・ハーパーのような超一流のスタープレーヤーを除くと、大事な場面で役に立っている印象が強いのは、以下のような、比較的コンパクトなスイングの打者だ。
ウィル・ミドルブルックス
フレディ・フリーマン
バーノン・ウェルズ
いわゆる、インパクトまでにバットが最短距離を通って来るタイプの選手が、大事な所で役に立つ事が多い。もちろん、理想はインパクトまでは最短距離でフォロースルーは大きなスイングなのだが、そうした理想的なスイングを(メジャーの投手相手に)出来る打者はメジャーでも極一部で、大きなスイングをする打者となると、後ろも前も大きかったり、逆にインパクトまでが最短距離だと、フォロースルーもコンパクトになる打者が多い。当然、大事な場面では、少なくとも後ろは小さい(最短距離でバットが出る)事の方が必須になる。だから、自ずと大事な場面で打つ選手と言うのは、統計的にスイングがコンパクトな選手が多い。デレック・ジーターが「ミスター・クラッチ」と言われている事が、それを端的に表している。
さて、そうした両手で振り抜いてコンパクトなスイングをする打者が、良い当たりのヒットを打っているシーンを目にして「これは良い打者だな」と思い、成績を調べてみると、(MLBでは)意外と数字が伴っていない場合が多い。2割5分でホームラン8本とか、そんな感じが多い気がする。もちろん、それには投手のレベルの高さも有るだろうが、それだけでは無いと思う。
その原因と考えられる理屈を、説明したい。そして、それは両手で振り抜く打者に取って、重要な技術論上の示唆を与えるだろう。
繰り返し書いて来たように、両手で振り抜く事がスイングメカニクス上、理想的なのだが、それはあくまでもMAXのパワーを発揮する中で、全身の力を使い切り、腰もフルに回転している状態での話だ。
イメージが掴みにくいだろうか?
例えばティー打撃。この場合、打者は投げ手の方を向いている。そのために腰の回転も小さくなる。腰の回転が小さな状態で両手を投手方向に伸ばすと解るが、当然ながらトップハンドがボトムハンドに届かない。この状態で両手で振ろうとすると、ボトムハンドを伸ばし切る前にトップハンドの手首を返す事になるので、つまり手首を捏ねたスイング(フォローが小さいスイング)になる。
「写真解説」左が肩が完全に投手に正対した状態。この状態だと、トップハンドとボトムハンドが同じ所まで伸びる。一方、右は肩の回転角度が小さい状態。トップハンドがボトムハンドに届かない。
こうした事(肩の回転が不足し手首を捏ねるスイングになる)は置きティーでも起きるし、軽く振る素振り(腰の回転も小さくなる)でも起きる。そして、メジャーの選手の置きティーや素振りを見ると、決まって顔が横(右打者なら一塁ベンチ方向)を向いている。この角度で両手で振ろうとすると、手首を捏ねるスイングになるので、それを嫌って多くのメジャーの打者が片手でフォローを取りたがる。これも、メジャーで片手フォローの打者が多い一つの原因だろう。
置きティーを打つアルバート・プホルズ。アメリカ野球の中で最もポピュラーな打撃練習が置きティーで、日本人が素振りを好んでやるように、アメリカでは多くの選手が行なっている。この練習の中から、片手フォローの打者が量産されて来ると考えられる。
同じく、ジョシュ・ハミルトン。プホルズもそうだが、打ちに行く時の顔の向きに注目してほしい。科学する野球の表現を借りると、これでは野球と言うよりゴルフだ。この顔の向きだと肩が回りにくいので、その状態で両手で振ろうとすると、手首を捏ねる事になる。それを嫌うからか、置きティーは片手でフォローを取る打者が多い。
ただ、置きティーなどでトップハンドを離す事によって、手首を捏ねないで振る事が出来たとしても、片手フォローでは別の問題が生じて来るので、トップハンドを離した事で問題が解決するわけでは無い。結局、置きティーやトスのティー、軽く振る素振り、横を向いて振る素振り、と言った練習方法では、どうやっても理想的なスイングは生まれないということだ。
ここからが本題だが、つまり両手で振り抜くタイプの場合、軽く当てに行くような打ち方との相性が悪い。これは片手フォローの選手よりも相性が悪いと思う。ヘッドが返ってしまうと当てる事すら出来ないからだ。
イメージがわきやすいように具体的な例を挙げると、二戦球の投手が気の抜けたような球をボワーンと投げて来たような時、両手で振り抜くような打者が変に右に打ち返そう等と考えて打つよりは、片手でフォローを取る打者が、半ばホームラン競争のような心持ちで、これまたボワーンと振りに行った方が、まだ打てる確率が高いような気がする。
このように、両手で振り抜く場合、ある程度全力で振って行かないと両手振り抜きの良さが活きてこない。そのため、どうでも良いような場面で、打球をどっちに飛ばそうとか、器用に打ってやろう等といった余計な考えが頭によぎるような状況の中では、力を発揮しにくいのでは無いか。そして、大事な場面で、アドレナリンが湧き出て来るような状況の中、ボールに集中して叩き潰しに行ったような時に、真の実力が発揮出来ているのでは無いか。
別にアドレナリンが出て来る必要も無い。しかし重要な事は、常にボールを強く叩きに行き、余計な事を考えないということだ。打球の行き先はボールに任せれば良い。右に打とうとか、フェンスを超してやろうとかでは無く、とにかくボールとバットが衝突するポイントに集して、強くボールを叩こうと言う姿勢が大切になる。この事が両手で振り抜くタイプの打者にとっては大切になる。
最後に、練習方法について。置きティーやトスのティー打撃、軽く振る素振り等では、トップハンドを離した方が良いのかと思った人も多いと思うが、別にそういう話では無い。大事な事は、そうした練習では決して理想的なスイングに近づけないと言う事を知っておく事だろう。置きティーやトスティーにはそれなりにメリットが有るので、やった場合は後で素振りやフリー打撃で修正しておかなければならない。ラボでも都合上置きティーを使う事が多いが、やはりフォームを作る上では良く無い事を実感している。(コマメに修正のために素振りを挟んでいる。)
ラボでは、コンパクトなスイングを奨めているつもりは全く無い。あくまで、野性味溢れる、アグレッシブで豪快なスイングを奨めている。
しかし、プリンス・フィルダーや、ブライス・ハーパーのような超一流のスタープレーヤーを除くと、大事な場面で役に立っている印象が強いのは、以下のような、比較的コンパクトなスイングの打者だ。
ウィル・ミドルブルックス
フレディ・フリーマン
バーノン・ウェルズ
いわゆる、インパクトまでにバットが最短距離を通って来るタイプの選手が、大事な所で役に立つ事が多い。もちろん、理想はインパクトまでは最短距離でフォロースルーは大きなスイングなのだが、そうした理想的なスイングを(メジャーの投手相手に)出来る打者はメジャーでも極一部で、大きなスイングをする打者となると、後ろも前も大きかったり、逆にインパクトまでが最短距離だと、フォロースルーもコンパクトになる打者が多い。当然、大事な場面では、少なくとも後ろは小さい(最短距離でバットが出る)事の方が必須になる。だから、自ずと大事な場面で打つ選手と言うのは、統計的にスイングがコンパクトな選手が多い。デレック・ジーターが「ミスター・クラッチ」と言われている事が、それを端的に表している。
さて、そうした両手で振り抜いてコンパクトなスイングをする打者が、良い当たりのヒットを打っているシーンを目にして「これは良い打者だな」と思い、成績を調べてみると、(MLBでは)意外と数字が伴っていない場合が多い。2割5分でホームラン8本とか、そんな感じが多い気がする。もちろん、それには投手のレベルの高さも有るだろうが、それだけでは無いと思う。
その原因と考えられる理屈を、説明したい。そして、それは両手で振り抜く打者に取って、重要な技術論上の示唆を与えるだろう。
繰り返し書いて来たように、両手で振り抜く事がスイングメカニクス上、理想的なのだが、それはあくまでもMAXのパワーを発揮する中で、全身の力を使い切り、腰もフルに回転している状態での話だ。
イメージが掴みにくいだろうか?
例えばティー打撃。この場合、打者は投げ手の方を向いている。そのために腰の回転も小さくなる。腰の回転が小さな状態で両手を投手方向に伸ばすと解るが、当然ながらトップハンドがボトムハンドに届かない。この状態で両手で振ろうとすると、ボトムハンドを伸ばし切る前にトップハンドの手首を返す事になるので、つまり手首を捏ねたスイング(フォローが小さいスイング)になる。
「写真解説」左が肩が完全に投手に正対した状態。この状態だと、トップハンドとボトムハンドが同じ所まで伸びる。一方、右は肩の回転角度が小さい状態。トップハンドがボトムハンドに届かない。
こうした事(肩の回転が不足し手首を捏ねるスイングになる)は置きティーでも起きるし、軽く振る素振り(腰の回転も小さくなる)でも起きる。そして、メジャーの選手の置きティーや素振りを見ると、決まって顔が横(右打者なら一塁ベンチ方向)を向いている。この角度で両手で振ろうとすると、手首を捏ねるスイングになるので、それを嫌って多くのメジャーの打者が片手でフォローを取りたがる。これも、メジャーで片手フォローの打者が多い一つの原因だろう。
置きティーを打つアルバート・プホルズ。アメリカ野球の中で最もポピュラーな打撃練習が置きティーで、日本人が素振りを好んでやるように、アメリカでは多くの選手が行なっている。この練習の中から、片手フォローの打者が量産されて来ると考えられる。
同じく、ジョシュ・ハミルトン。プホルズもそうだが、打ちに行く時の顔の向きに注目してほしい。科学する野球の表現を借りると、これでは野球と言うよりゴルフだ。この顔の向きだと肩が回りにくいので、その状態で両手で振ろうとすると、手首を捏ねる事になる。それを嫌うからか、置きティーは片手でフォローを取る打者が多い。
ただ、置きティーなどでトップハンドを離す事によって、手首を捏ねないで振る事が出来たとしても、片手フォローでは別の問題が生じて来るので、トップハンドを離した事で問題が解決するわけでは無い。結局、置きティーやトスのティー、軽く振る素振り、横を向いて振る素振り、と言った練習方法では、どうやっても理想的なスイングは生まれないということだ。
ここからが本題だが、つまり両手で振り抜くタイプの場合、軽く当てに行くような打ち方との相性が悪い。これは片手フォローの選手よりも相性が悪いと思う。ヘッドが返ってしまうと当てる事すら出来ないからだ。
イメージがわきやすいように具体的な例を挙げると、二戦球の投手が気の抜けたような球をボワーンと投げて来たような時、両手で振り抜くような打者が変に右に打ち返そう等と考えて打つよりは、片手でフォローを取る打者が、半ばホームラン競争のような心持ちで、これまたボワーンと振りに行った方が、まだ打てる確率が高いような気がする。
このように、両手で振り抜く場合、ある程度全力で振って行かないと両手振り抜きの良さが活きてこない。そのため、どうでも良いような場面で、打球をどっちに飛ばそうとか、器用に打ってやろう等といった余計な考えが頭によぎるような状況の中では、力を発揮しにくいのでは無いか。そして、大事な場面で、アドレナリンが湧き出て来るような状況の中、ボールに集中して叩き潰しに行ったような時に、真の実力が発揮出来ているのでは無いか。
別にアドレナリンが出て来る必要も無い。しかし重要な事は、常にボールを強く叩きに行き、余計な事を考えないということだ。打球の行き先はボールに任せれば良い。右に打とうとか、フェンスを超してやろうとかでは無く、とにかくボールとバットが衝突するポイントに集して、強くボールを叩こうと言う姿勢が大切になる。この事が両手で振り抜くタイプの打者にとっては大切になる。
最後に、練習方法について。置きティーやトスのティー打撃、軽く振る素振り等では、トップハンドを離した方が良いのかと思った人も多いと思うが、別にそういう話では無い。大事な事は、そうした練習では決して理想的なスイングに近づけないと言う事を知っておく事だろう。置きティーやトスティーにはそれなりにメリットが有るので、やった場合は後で素振りやフリー打撃で修正しておかなければならない。ラボでも都合上置きティーを使う事が多いが、やはりフォームを作る上では良く無い事を実感している。(コマメに修正のために素振りを挟んでいる。)