2013年4月16日火曜日

イチローの凄さ

私の手元にはメジャーリーグとその周辺(マイナー等)でプレーする863人分の投手の動画データが有る。引退した選手の物を合わせるともっとだ。そしてフォームだけでは無く、彼等がどういうボールを投げるのかということを、重視してリサーチしている。変化球については「こういうボールが有る」ということを投手に教えたいからだ。一口にツーシーム、シンカーと言っても、そのバリエーションは非常に豊富なので、実質上の「球種」は一般に知られているよりも遥かに多い。

イチローの打撃に関しては「所詮、内野安打でしょ」と言う意見も少なからず有ると思うし私もそう思って来たが、メジャーの投手がどういう球を投げるのかということが良く解るとイチローの凄さも良く解る。逆に言うと、それが解らなければイチローの凄さも解らない。イチローはあれだけのボールを空振りせずに何とかバットに当てて来た能力は凄い。

イチローがメジャーでプレーしてきた2001年から2013年の間に、メジャーの投手のレベルはかなり進化したと思う。イチローは自分からは「自分がどれだけ大変なレベルでプレーしてるか」と言う苦労話は言わないだろうから、ここに書いておきたい。

打撃技術に関しては、日本時代の「ルーズ&ウィーク」(よく言えばしなやか)の典型のようなスイングから、メジャー流の「タイト&ストロング」なスイングに変化している。少しづつジワジワと変わって来たので気が付きにくいが、デビュー当時の振り子打法のスイングと今のスイングを比較すれば、全く別物である事が解ると思う。

10/7/2012 プレーオフ地区シリーズ第1戦 イチローハイライト

そして、最近メジャーに挑戦した野手では青木が成功しているが、やはり(日本人としては)「タイト&ストロング」なスイングだ。加えて、やはり内野安打の期待出来るタイプしか今のところは成功していない。(松井秀喜を除いて)

下の動画は韓国系アメリカ人のハンク・コンガーのものだ。民族的には完全にアジア系だが、スイングは日本人のそれとは大きく違う。コンガーはアメリカで育っているので、育って来た野球環境が我々とは全く違うのだ。

コンガーは以前から注目している打者だが、まだメジャーでの地位を築けていない。捕手なので難しい面も有るのだろう。だが、打撃センスに関してはかなりの物が有る。スイッチヒッターでこれだけスイングが良い打者は珍しい。



2011/04/05 Conger's solo shot(左打席)
Conger's two-run single(右打席)

日本の野球環境ではまだまだ「ルーズ&ウィーク」なスイングが好まれる風潮が有るが、そのへんを変えて行かなければ、世界的に通用する打者は産まれにくい土壌だと言わざるを得ない。