2013年4月17日水曜日

リッキー・ヘンダーソンとウィリー・メイズ

リッキー・ヘンダーソンはMLB歴代最高盗塁記録保持者だが、右打者がこの記録を打ち立てた事は凄い。それだけの打撃技術が伴っている事を意味するからだ。ヘンダーソンのスイングはパンチャータイプで、アスレチックス時代のスイングを「メジャーリーグのバッティング技術」の中でも一つのパンチャーの見本としてイラストに起こしている。



この動画の中に3盗のシーンが2回有るが、2回目のスローモーションの方を見ると、踵から着地している事に注目してほしい。通常、スプリントでは踵からの着地にはならない。しかし、盗塁の場合、スプリントのように加速フェーズ以降で体が起き上がる前の、前傾姿勢のままゴールに到着するので、走るフォームも前傾姿勢となる。そのため、着地も踵からになるのだ。

※)盗塁はリード姿勢からスタートするので、クラウチング姿勢からスタートするスプリントの加速フェーズと共通点が有る。しかし、バッターランナーの場合、立っている姿勢からスタートするので、加速フェーズでも前傾姿勢にはならない。

また、頭から滑り込んでいるが、前傾姿勢からのスライディングとしては、この方が合理的だろう。ただ、相手守備との兼ね合いなどを考えると、頭から行くか脚から行くかを選択する要素は他にも有るのかもしれない。一例では、ヘッドスライディングはとにかくランナーにとっては危険な行為だ。突き指、肩の打球、その他諸々の可能性が有る。何とか体を起き上げて脚から行く方が良いのかもしれない。ヤンキースのブレッド・ガードナーは面白い手袋を付けていた。

こうした様々な要因から「走りの理論」も野球と陸上では変わって来る。しかし、それは走る事の根本の理論が変わるのでは無く、走ると言う動作を、その競技に適応させるための方法論が変わって来るだけの事だ。そこの所を誤解して「陸上の走り」と「野球の走り」が有ると考えない方が良い。走る根本は陸上も野球も同じだ。

では次に、ウィリー・メイズの動画を見てほしい。メイズはスインガーの打者で、スインガータイプのスイングとしてはかなり好きな部類のスイングだ。ハンク・アーロンよりもスイングそのものはアグレッシブなので迫力が有る。



背中から映した盗塁のシーンが有るが、この映像はメイズ関連の映像ではよく見かける。脚から行っているが、とにかく速い。弾丸のような速さとはこの事だろう。面白いのは、背中と腰が球体のようにというか、ハンドルのように回転しているように見える事。

これは坂道ダッシュでも同じ動きが見られる。坂道ダッシュでは、斜面に対して前傾軸を作るので、脚が完全に踏み下ろされる前に着地する。この場合、股関節が、平地でのダッシュより屈曲した状態で着地する事になる。つまり、割れた状態で着地する。その結果、そこからの絞り運動も使いやすい。そして、こうした事情は、前傾したまま走る盗塁のフォームと共通している。こうした股関節の捻り運動が、背中から見た時の円運動の原因だろう。そしてまた腕の振りも前傾しているぶん、捻り運動が起こりやすい。丁度四つ脚動物の前脚のようなイメージだ。この捻りも背中から見た円運動と関連が有るだろう。こうした動きを引き出す上でも坂道ダッシュは有効な練習である。

なお、坂道ダッシュの前には、腸腰筋をストレッチしておくと良い。前傾姿勢が作りやすくなるからだ。