2013年4月4日木曜日

インコース低めに落ちる球

一般的に配球で「対角線」と言えば、インハイとアウトローを意味する。確かに、これらのボールは打つのが難しいが(ホームベース方向に傾いた体軸に直交する)スイング軌道の中に有るので、技術の高い打者ほど上手く対応してくる。

一方、その反対の対角線である、アウトハイとインローは、むしろクセの有る打者、変則的な打者の方が打つのが上手い印象が有る。例えば、インロー。アウトステップする右打者や走りながら打つ左打者。アウトハイは、クラウチング気味で片手で振る右の外国人(昔の助っ人だと中日のアロンゾ・パウエルや巨人のジェシー・バーフィールド)が、腕を伸ばしてショートの頭上をライナーで超すイメージが有る。

一方、技術的に完璧な打者は、逆に、その「逆対角線」には対応しにくいかもしれない。例えば、左投手が右打者のインローに落とすスライダー。右投手が左打者のインローに落とすスライダー。打者は投手のリリースポイント付近を見るので、目線が外角よりになっているし、そのために踏み込んで行きやすい。そこでインローに落とされると非常に打ちにくいだろう。もちろん、こうした作戦はサイドハンド気味の投手の方が使いやすい。

逆に右対右、左対左での場合、思い切ってアウトコース高めにチェンジアップを投げてみると面白いのでは無いか。これもサイドハンド系の方が有利だが、サイドハンド系の投手で背中からボールが来るような場合、リリースポイントを見るために、目線が(右打者なら)かなり3塁寄りになる。この顔の向きだと体が開きやすいので、外の遅い球には対応しにくいだろう。さらに高めは低めに比べて、アゴが挙りやすいぶんだけ体が開きやすい。(実際に、打者が完全にヘッドアップして泳いで空振をするのは高めから落ちて来る落差の大きいカーブで、一度高めを見るために開きやすくなるからだろう。)最も開きを我慢する必要があるのはアウトロー低めに落ちる球だが、この場合はアゴを引いてボールを見る分、開きも我慢出来る。例えば、右打者対右投手で、外角高めのボールゾーンからストライクゾーンに落ちるカーブ。肩口から入るカーブは最も危険だと言われるが、状況によっては面白いのでは無いか。

特に泳いで、体が開いて、ヘッドが残っている状態だと、低めにはバットが出しやすいが、高め、特に正規のスイング軌道から外れた外角高めにはバットが出しにくいだろう。

もちろん、こういった話はそこに投げられる技術を伴ってこその話だが、打撃理論も考慮した上で配球を考えると面白い。また、「どこへ投げても打たれそうな打者。長打では無く、シングルなら良しとしなければならない打者」そうしたケースで、ホームランを打たれないための配球、大けがを避ける配球と言うのも、配球の大きなテーマだろう。

いずれにしても、技術的に完璧な打者ほど、逆対角線は打ちにくくなるはずだ。そして、クセの有る打者ほど、逆対角線のボールは対応しやすい。

そしてやはり外角低めの速球。このボールは打者の目線が外角に向くために体の回転が小さくなり、そのぶん打球は飛びにくい。だから投手の基本と言われている。思い切り体を回して打とうとすると目きりが速くなるし、引きつけて良く見ようとすると飛ばない。非常に厄介なボールだと思う。城島も「動くボールが主流と言われるメジャーだが本当に良い投手はアウトコース低めに綺麗な真っすぐを投げる」と言っていたが、メジャーでも当然アウトローは重視されている。

これも「打者の目線」と「体の開き」と言う観点で考えると、右投手vs右打者なら、多少目切りが早くても、軌道を読みやすいのでは無いか。その逆に、左投手vs右打者なら、打者の目線はかなりアウトコース寄りになり、外角低めのメリットは大きくなる。特に左投手のツーシームやスクリューボールが右打者の外角低めに決まれば、打者は非常にボールが見えにくいだろう。

ツーシームやカットボールは高速で横に動くので、詰まらせるために使う事が多い。ただメジャーの投手の投球を見ていると、左投手が右打者に投げるツーシームやスクリューボールは(つまりシュート方向に曲がる球)外角低めが多いと感じる。下の動画も、それだ。

http://www.youtube.com/watch?v=k24PHE-TbJs(最後の一球)
http://www.youtube.com/watch?v=c2cKNKBwzEM(0.22〜)