前編で書きましたように、現状でのリュータ君の骨格の形は、アスリートとしては不利な部類に入ります。プロを目指す場合、私が最も心配するのが技術では無く、この骨格と言う部分です。つまり、骨格が良く無いと、良い筋肉の使い方が出来ずに、力を発揮しにくいから、それだけ不利になるためです。
ですから、後4年か5年の成長期が終わるまでに、こうした部分を出来るだけ改善するということが大きなポイントになります。ですから闇雲に走り込むとか、筋肉を付けるとかでは無い、計算されたトレーニングが必要になって来るということです。こうした骨格の形には当然、遺伝的な要素が有りますが、絶対にそれだけでは無いと私は見ています。つまり成長期が終わるまでに運動をした子としなかった子では当然ながら違いが出ますし、また運動をしても、良い運動の仕方をしたか否かでも、結果は変わって来るはずなのです。実際、成長期が過ぎて、骨の形や筋肉の長さが決まってしまった後でも、いい体の使い方をすれば(姿勢を司る微小な筋肉の働きが良くなるのか)見た目の姿勢が違って来ます。
ではリュータ君の写真を見て下さい。打撃の構えでは脊柱のS字カーブが見られず、また投球のフォームでは腰椎が後彎した形になっています。こうした形はパワーを発揮する上で不利になります。
一方、下の写真は、腸腰筋をストレッチしながら、胸椎の後彎や首の角度に気を付けながら、繰り返し姿勢を重視して構えを作り、打つ練習をした際の写真です。現状のリュータ君の骨格的な形を考えると、かなり雰囲気が出ていると思います。
こうした骨格の形を見る際に、参考になるのが座り姿です。太腿が地面と水平になって、足が地面に付くくらいの高さの椅子だと一番解りやすいのですが、下の動画では良い座り姿と悪い座り姿を混ぜています。(黒人は全て良い例です。)
例えば、オバマ大統領は黒人で元バスケット選手だけ有って、やはり座り姿が良いです。腰椎が後彎せず、胸椎が後彎しています。「座り姿が良い」と言うより、元の骨格が良いということですね。これが、骨格が良いと座り姿も良くなるのですが、オバマ大統領は、良い骨格の見本の一例です。(座り姿では股関節が割れ気味になっている場合が多く、骨盤が前傾し、腰椎が前彎しやすいので、胸椎も後彎しやすい。なので、元の骨格が良い人はさらに良い骨格に見える。)
次は、日本人のお笑い芸人です。(アンジャッシュの渡部)彼は高校時代に野球をしており、野球の雑誌にも時おり出ているのですが、やはり若い時にスポーツをしただけ有って、良い骨格をしています。日本人としてはかなり良い例でしょう。(だいぶ以前の写真のようですが。)
次に、相方の小島と並んだ時の写真ですが、小島の方は典型的な日本人の骨格ですね。ただ、この写真では座り方そのものが内股気味で良く無いので、そうした座り方を変えることでよく見せる事も可能ですが、それでもやはり渡部の方が骨格の形が良いです。渡部の方が骨盤が立っています。
次のお笑い芸人も、典型的な日本人体型ですね。脊柱のS字のメリハリが無いということです。ただ、このように肘を高い机にかけたりすると、胸椎が前彎しやすいと言うのも有りますが。
下の写真の人は日本人としては平均的な部類でしょう。この人と比べると、渡部の骨格の良さが解ると思います。
一度、リュータ君も、椅子に座って姿勢を確認してみると良いでしょう。日本人でも渡部のような骨格に成長すれば理想的なのです。
そして、当日も見てもらいましたが、黒人の体型です。(大胸筋が発達している場合は別ですが)胸椎の後彎がきちんと形成されているので、普通にリラックスすると、胸はややへこみ気味に見えます。そして、肩甲骨が外転して胸の方に出て来るので、やや肩はせり出し気味です。こうした体型が理想的な体型です。
以下の二つの動画に出て来る黒人の姿勢と骨格に注目してください。共通点が解ると思います。つまり、胸椎後彎のカーブがきちんと形成されていると言う事です。そして、理想的には、こういう骨格に成長してくれると良いということです。
現実的に日本人にはここまでは難しいですが、下の写真のように脊柱のS字カーブのメリハリが効いている体型がアスリートとしては理想的です。
では、どうすれば良いのかと言うと、ポイントはやはり腸腰筋です。腸腰筋が収縮すると、腰椎を前に引っ張ります。そうすると胸椎が後ろに彎曲し、脊柱のS字カーブが形成されます。微小であってもこのカーブが形成されていれば、後は頭部や上半身の重みで脊柱がたわみ、このカーブが強調されます。
このように、脊柱のクビレが効くと言うのは、重みによるたわみと言う要素も関与しています。一方、下図のように逆のケースもあるのです。つまり脊柱が逆S字を形成してしまうと、その形で彎曲が強調されてしまうのですが、これが最も避けたい形です。
この形は、車の付いた買い物かごを押すおばあさん等によく見られますが、あれは中腰で顔が前に向くため、胸椎が前彎し、腰椎が後彎してしまうためです。一般的に生活の中では中腰になっても顔は前に向く必要があるケースが多いので、中腰で作業する事が多い人は、そういう悪い姿勢が身に付きやすいのです。そして加齢とともに筋肉が弱り、脊柱のたわみが悪い方向に強調されてしまうと言う事です。
一方、下の写真の人は、加齢によって胸椎の後彎が強調されるケースで、よく有る腰が曲がるケースとは明らかに違います。これは脊柱のS字カーブが正しく形成された状態で加齢し、脊柱のたわみが強調されたケースですから、こういう体型になっていく人は姿勢が良い人なのです。
その他にも、若くても、座り方が悪い状態で座ってばかりいると、下図のように脊柱が逆S字を描いてしまいますから、いい骨格には育ちにくくなります。若い時に座ってばかりいる人と、運動している人では雲泥の差があるのです。なぜなら腸腰筋は歩いたり走ったりする中でも使われ、鍛えられるからです。
ただ、ここで重要になるのは、腸腰筋を『ウェートトレーニング』で強化しても意味が無いということです。腸腰筋を鍛える方向に負荷をかけると大腿四頭筋や腹筋も働きます。特に腹筋が硬化すると、骨盤を後傾させるので逆効果です。
ですからラボではリズムトレーニングを取り入れています。腸腰筋その場ステップもその一種です。筋肉がリズミカルに弛緩〜伸張〜収縮を繰り返すと、スポンジが水を吸ったり吐いたりするように血流が良くなり、筋肉の柔軟性が保たれると言う、良く知られた事実が有るためです。
こういったリズムトレーニングやストレッチで腸腰筋を鍛えながらも「教育」し、本当に鍛えるのはダッシュをすることが重要です。ダッシュも筋肉のリズムカルな伸張〜収縮を繰り返すので、筋肉は硬くならないからです。解りやすい例ではネコの体を触ってみると筋肉が柔らかい事が解ると思います。
また、もう一つのポイントとして、ハムストリングスと腹筋の柔軟性がポイントです。これらの筋肉が硬化短縮すると、共に骨盤を後傾させてしまうからです。下図は腹筋とハムストリングスによって骨盤が後傾するメカニズムを表しています。
体育の授業の腹筋30回程度では大丈夫ですが、あまり日常的に腹筋をやるのは避けた方が良いでしょう。それよりも、腰を反るストレッチで日常的に腹筋を伸ばしておく習慣をつける事が重要です。因に腹筋運動の否定は骨盤前傾を重視する初動負荷理論でもされています。そして、もちろんハムストリングスもストレッチで日頃から引き伸しておきましょう。「腹筋ストレッチ」「ハムストリングスストレッチ」「腸腰筋その場ステップ」の組み合わせは骨盤の前傾した感覚を得るために良いです。こういった事に気を付けながらトレーニングをして行くと、良い骨格、良い姿勢に少しでも近づいて行けます。それでは以下に、そのためのポイントを箇条書きにしておきます。
良い骨格に育つためのポイント
ちなみに、この内容は成長期の少年だけでは無く、成長期が終わった後も、良い姿勢を作り、良い骨格をキープする事につながりますし、また加齢に伴う姿勢の悪化を防ぐ意味でも重要です。ただ、実践における実例がまだ少ないのが難点ですが。
(1)腸腰筋を鍛える
一般的に言われている腸腰筋トレーニングの殆どは腹筋や大腿四頭筋に効いたり、或は腸腰筋を含めたそれらの筋肉の硬化をもたらすものなので、しないで下さい。腸腰筋その場ステップ等のリズムトレーニングや、腰を反る腸腰筋のストレッチを行なった上で短距離ダッシュによって鍛えるようにしてください。
(2)ハムストリングスと腹筋のストレッチ
前述のようにハムストリングスと腹筋が柔らかく伸びなければ、骨盤が前傾した状態は作れませんので、ストレッチによって腹筋やハムストリングスを伸ばしておく事が重要です。筋肉の長さも成長期の間に決定されますが、もし腹筋やハムストリングスが硬化短縮し、短い状態で成長期を終えてしまうと、それによって骨盤が後傾した骨格が出来上がってしまいます。ストレッチでは筋肉だけでは無く、靭帯や皮膚等の軟部組織も引き伸しますが、それによってそうした組織が伸びてくれると、骨盤が前傾した姿勢が作りやすくなります。因に世界各国には子供の頃などに衣服などを利用して、体の形を(その民族の美意識に沿うように)作り替える風習が有る民族が有ります。つまり、そうした後天的な働きかけによって体の成長の仕方も変わって来ると言う事です。腹筋のストレッチは腕を組んで腰を反る体操で腹筋を伸ばす事が出来ます。一方、ハムストリングスのストレッチでポピュラーなのはこれですね。(この器具についてはよく知りませんが。)
ハムストリングスと腹筋のストレッチ(ハムストリングスのストレッチは両手を組んで回内し、肩甲骨から体を前に引っ張ってやるとやりやすくなります。)
(3)スクワット等の下半身トレーニングは極力避ける
特に成長期が終わるまでは筋肉が硬化を起こしやすい、負荷を用いたスクワットは避けた方が賢明です。例え自体重が負荷であっても、腕立て伏せでも筋肉は硬化を起こしますから、そうしたタイプのトレーニングは極力避けてください。下半身を鍛えるのは短距離ダッシュと垂直跳び(ラボで行なった両脚の間に台を置くもので、着地の衝撃を小さくする事が大切です。)が最高のトレーニングで、他は特に(筋力トレーニングは)やる必要がありません。
もちろん、全くやってはいけないと言う事は無いのです。問題なのは日常的に反復して繰り返す事です。そもそも全てのトレーニングと言うのは、人間が有る部分の筋肉を鍛えるために無理矢理考え出した動きですから、自然な動きでは無いのです。そうした不自然な動きを日常的に繰り返せば、良く無い結果が出るのは当然です。それに比べるとダッシュや野球のスイング、そしてダンスのリズムトレーニング等は、人間の体が自然に近い形で使われる「良い動き」なのです。ランジ等も「人間が無理矢理考えたトレーニング用の不自然な動き」なのですが、そうしたトレーニングをやる場合は多くの種目を少しづつと言うのがコツです。つまりクセを付けるのが良く無いということです。
(4)特に避けたいトレーニング
まず前述の腹筋ですが、これも体育の授業で30回とかなら良いのです。ただ、ボクサーとかがやるように、一日500回とか(ボクシングは内蔵を保護する意味でも腹筋を鍛えます。)をやるのが問題なのです。こうして腹筋が硬化短縮すると骨盤が後傾します。またハムストリングスの筋トレでハムストリングスが硬化短縮を起こしても骨盤は後傾しますから、ハムストリングスを鍛える運動(椅子踏み台昇降)をする際は特にリズミカルに力を抜いて行なう事を心がけてください。最悪なのは寝そべって膝を曲げるレッグカールです。そして、大腿四頭筋に効く種類のトレーニングも避けた方が良いでしょう。レッグエクステンションは最悪です。エアロバイクもよく有りません。実にやりたく無いトレーニングばかりなのです。因にチューブトレーニングもギュッと力を込めた状態を作りやすく、筋肉が硬化を起こす事が知られています。
(5)座る時や中腰になるときに気をつける事
基本的に、日常生活で気をつける事(例えば歩き方)等について言うつもりはありません。まったく重要では無いとは言い切れないのですが、そうした取り組みは労力の割りには得られる効果があまりにも小さいためです。ただ、重要なポイントとして、座ったり中腰になる時と言うのは腰椎が後彎して骨盤が後傾してしまいやすいのです。ですから、そうした姿勢を取る前には、出来るだけ腰を反って腸腰筋をストレッチして腰椎が後彎した姿勢を作らないようにしましょう。(筋肉はストレッチした後に一時的に収縮しようとする力が強くなるので、その筋肉が効きやすくなります。ですから構えを作る前に腰を反ったりしてもらっています。)
下図は良い座り方、良いしゃがみ方です。骨盤が立って点(座骨)で、椅子に付くのが良い状態です。
(6)体は立って鍛える
「良い骨格」とはすなわち「重力に勝っている骨格」です。逆になで肩や腰が丸まった姿勢などの悪い骨格は「重力に負けている骨格」なのです。ですから、成長期にスポーツをすることが重要なのです。重力と言う垂直のベクトルを持つ力の元で立ってバランスを取ろうとする時、必然的に筋肉は良い使われ方をします。ですから走る事はもちろん、野球の打撃、投球でも良いのですが、とにかく立って体を鍛える事が重要です。つまり腹筋、背筋、腕立て伏せ、ベンチプレス、タイヤ押し、座って行なう筋トレ等は良い骨格を作るトレーニングには適していないのです。もちろん、ストレッチなどで座って行なうものも多々ありますが、基本的な概念として、良い骨格を作るためには、重力軸とバランスを取りながら、立った状態で体を鍛える事が重要だと考えて下さい。ただし長距離走は良いとは思えません。極度に疲労した状態で無理矢理走り続けるため、良い筋肉の使い方をすることが極めて難しいと考えられるためです。もちろんダンベルを持ってのランニング等は最悪です。
(7)階段上がりは両刃の剣
座ったり中腰になる時に気をつけるべき点が有るのと同様、階段上がりにも気をつけるべき点が有ります。階段上がりは上手くやれば(普通に上がるだけで)非常に良いトレーニングになるのですが、上がり方が悪いと、非常に悪い運動になります。典型的な悪い階段の上がり方をしている動画を見つけましたので、見て下さい。(膝の悪いマリオがひたすら階段を上がる動画)
多かれ少なかれ、階段は普通に上がるとこうなります。なぜなら、脚を挙げようとすると骨盤が後傾するのが自然だからです。そして骨盤が後傾すると大腿四頭筋にテンションがかかって効きやすくなります。この状態から階段を上がろうとすると(ハムストリングスによる股関節伸展では無く)大腿四頭筋による膝関節伸展をメインに使う事になりますから、膝を痛めるのです。骨盤後傾、大腿四頭筋による膝伸展、膝痛。良く無いキーワードが出そろっています。
階段上がりのコツは体重を持ち上げる事を意識するのでは無く、踏み出した足の踵まで着地し、階段の踏み面を踵で下に踏みつける事を意識する事です。グッと踏むのでは無く、小気味良くポンッとです。そうすると、その反動で体は持ち上がります。これが股関節伸展を使った階段の上がり方です。一段一段、弾むような上がり方になりますが、さほど目立つ動きでもありません。そして、階段を上がる前に骨盤が後傾しにくいように腸腰筋のストレッチが出来ればベストです。大袈裟にやらずとも、腰に手を当てて腰を少し突き出したり、ポケットに手を入れたまま腰を少し突き出すだけで効果が有ります。
下図のメカニズムを使うと言う事です。
(8)左右対称性を保つ
これは骨盤前傾うんぬんとはやや視点が違う話ですが、野球選手の場合、片側の筋肉だけが効果短縮を起こしていたりして、左右対称性が取れていない場合が多いと言われています。専門書などには左右の肩甲骨の高さが違う子供の写真などが有ったりします。左投げ左打ちも少しづつ練習するのが大切です。(シャドーや素振りで充分)こうした事(骨格の左右対称性)をそうした専門家に見てもらうのも手ですね。ちなみにリュータ君に特にそういう問題を感じたということは全くありません。
(9)下腿部の鬱血を防ぐ
これは「良い骨格」とはあまり関係がありませんが、ついでですので触れておきます。野球の練習の特徴として「立って止まっている」状態が長いのです。こうした場合、フクラハギの筋肉は硬くなり、また重力で鬱血しやすくなります。また、学生の場合、授業で長時間座る事を強いられますが、これも下腿部が鬱血しやすい状態です。エコノミークラス症候群もこの状態です。
自分でも経験が有りますが、こうした日々を続けていると脚が重ダルくなってくるのです。走るのもマックスの力を出しにくくなって来ます。長時間の立ち仕事でもそうした状態になるでしょう。フクラハギは第二の心臓と言われており、筋肉のポンプ作用で上半身に血液を送り帰す事が出来れば血流が良くなります。しかし運動不足や長時間の止まった状態でいると、そうした働きが期待出来ずに、様々な問題を引き起こします。もちろんフクラハギの筋肉が固まるので脚も遅くなるでしょう。怪我にも繋がると思います。
野球選手は特に、この事を重視する必要があります。一度、スチーム式のフットスパを使ってみると下腿部の血流が良くなって脚が軽くなるのが実感出来ると思います。マッサージタイプも有りますが、これらで血流が改善されると脚の疲れが取れて脚取りが軽くなります。怪我なく野球部生活を乗り切るにはこうした事も考える事が重要だと思います。大腿部も重要ですが、下腿部の疲労は特にこまめに取る必要が有ります。
(10)股関節の割れと絞りも重要
股関節が上手く割れるようになると、その間に挟み込まれるように骨盤が前傾します。こうした事が出来るようになると、座ったり腰を落とした姿勢を取っても、骨盤が後傾しにくくなります。ですから股関節を割るストレッチが重要ですが、それとバランスを取るために絞るストレッチも重要です。
いずれにしても股関節の運動の二大テーマは「腰の反りによる腸腰筋ストレッチや股関節伸展を使った運動」と「股関節の割れと絞りの運動」の二つです。
(11)その他(まとめ)
基本的な考え方としては、腹筋、ハムストリングスの柔軟性を保ちながら、腸腰筋を鍛るということです。そして、極力自然な運動、良い動きの中で体を鍛えることです。特に『「ハムストリングスストレッチ」「腹筋ストレッチ(頭上で腕を組んで腰を反る)」「タオルを使う腸腰筋ストレッチ+腸腰筋その場ステップ×6〜10」』の3点セットはヒマが有ればするようにしてください。このメニューの後、骨盤がクッと前傾し、骨で立つ感覚、大腿四頭筋がフニャフニャでハムストリングスが締まっている感覚が掴めれば、良い感覚が掴めた事になります。
また、もう一つの基本的な考え方として、腰を反る体操、脊柱の柔軟性を作る体操を積極的にやるようにしてください。腸腰筋をストレッチするためには、かなり脊柱が反った形を作る必要が有りますが、他の筋肉や軟部組織の硬化短縮により、充分に反る事が出来ないと腸腰筋にアプローチ出来ません。腸腰筋を鍛えて行く行程は、まずこの反り方向の柔軟性を獲得する事から始まると言えます。
腸腰筋は良い骨格を作るためのキーストーンです。この筋肉が効いて骨盤が前傾すると、腰椎が前彎し、胸椎が後彎し、適切な脊柱のS字カーブが形成されます。そうした状態を恒常的に作り上げて行く事が重要です。まず第一段階としては大の字になって腰を反り、腸腰筋をストレッチした後、その反動で体を戻したときに胸椎の後彎が形成される感覚が掴めればOKです。この感覚を磨く事が重要です。
それに加えて、股関節の割れと絞りもトレーニングする事が重要です。股関節や腸腰筋といった骨盤の付近が身体のコアですから、そのあたりの運動性は特に重要になります。股関節や骨盤周辺の重要なトレーニングテーマは「反り」「割れ」「絞り」です。
そして、ダンスのリズムトレーニング2種類とそれを応用したエクササイズをしてください。これらは腸腰筋とハムストリングスを柔軟性を保ちながら鍛えられる最高のトレーニングです。
座るときや階段を上がる時など、日常生活の中で気をつけたいポイントも有りますが、最も重要な事は、腸腰筋を柔軟性を保ちながら鍛えて行くと言う事です。それによって骨盤が前傾し、脊柱のS字カーブの効いた骨格を作ると言う事です。そして、そのためには腹筋やハムストリングスの柔軟性が大切になるのです。
最後に、体育やチームのメニューなどで「良く無い運動」をせざるを得ない機会も多いと思いますが、そうした時は、後から腸腰筋のトレーニングや腹筋とハムストリングスのストレッチを行い、骨格の調整をするようにしてください。目安は腸腰筋ストレッチ後に骨盤の前傾と胸椎の後彎が感じられる事、それから大腿四頭筋がフニャフニャでハムストリングスが締まった状態が掴める事です。この感覚が戻るまで調整を続けてください。