2013年4月23日火曜日

ジェイク・アリエッタもライザーの使い手?

ジェイク・アリエッタ

オリオールズの若手有望株(プロスペクト)でありながら、まだメジャーでは目立った成績を残せていない、本格派の右腕。2011年には10勝8負を記録しているが、防御率は5.05と結構、点を取られている。1986年生まれなので、出て来るならそろそろ頭角を表して来るはずだが。

ただ、この投手が面白いのは、極めてファイブツール・ファストボーラー的な投手であるということだ。つまり、上、下、右、左、と全ての方向にムーブする速球を投げる。そして、さらに面白いのはカーブに対する評価が高い投手ということ。オフスピードピッチとしてのカーブを持っており、つまり「ファイブツール・ファストボーラー+1」と言う事になる。

この種の投手が打者にとって厄介なのは、外角のストライクゾーンギリギリにボールが来たとき、その球がそこから右に曲がるか左に曲がるかわからないと言う事だ。こうした状況で、いわゆる「選球眼」と言うのは役に立つのだろうか。

Arrieta's strong start

↑この動画の2球目と3球目、トリー・ハンターと松井秀喜に対する投球では、94マイルの速球が、鋭くシュート方向に動いている。

2012/09/24 Arrieta strikes out the side

↑この動画は面白い。1球目の82マイルの比較的速いカーブは典型的なパンチャーカーブ。2球目は91マイルの高速スライダー。3球目の82マイルもスライダーと見せかけて実はパンチャーカーブだと思うがどうだろう。打者から見ると、どちらでも同じ事だが。

この投手のカーブは81マイル〜82マイルが多く、カーブとしては速いのもパンチャーの特徴だが、面白いのは、時おり76マイルくらいの緩いカーブを投げる。下の動画の3球目がそれ。

Arrieta's scoreless start

↑この動画では1球目にもカーブを投げているが、3球目のカーブの方が遅いのでは無いか。そして、こうした球を投げるあたりに、フォームの特徴が出ている。藤浪の所でも書いたが、この投手は「始動が遅いタイプのパンチャー」である。だからパンチャーの割にはあまり力感が無い。つまり、ある程度、重心が打者方向に移動してから「エイッ」と力を入れて投げている。そして、このタイプの投手は、最後の腕の振りだけ緩めて、遅いボールを投げるのがやりやすい。パンチャーとしては理想的なフォームでは無いが、そうしたフォームには、そうしたフォームなりの利点が有ると言うのも野球の面白さの一つだろう。このタイプの最大のデメリットは球速が出にくい事。軸脚に100%体重が乗っているうちに始動した方が力が出るから、始動が早い方が球速が出る。

カーブについては下の動画が面白い。

2012/05/18 Arrieta's nine strikeouts

1球目と2球目は、81マイルの鋭いカーブで、おそらくこのカーブの方がアリエッタにとってはスタンダードなカーブだと思う。要するに、あまり腕の振りを緩めないで、ストレートに近いフォームから投げるカーブである。アリエッタのように90マイル前半から90マイル中盤の速球を投げるパンチャータイプの投手が、普通にカーブを投げると、81マイルくらいになるのが自然で、それより遅いカーブを投げようとすれば、腕の振りを緩めなければならないはずだ。

そして、ライジング・ファストボール。

2011/05/25 Arrieta's strong start

↑この動画の最後の2球。特に最後の1球。フォームを見ていると、他のボールを投げるときに比べ、体の横回転の角度が浅い。元々、投げた後に後ろ脚が勢い良く出て来るフォームでは無いが、ライザーを投げているときは、それにもまして後ろ脚が出て来ない。体全体で意図的に投げ上げ角度を作っているようにも見えるが、どうだろう。

ライザーについては投げ方がまだ解らないので、何とも言えないが、アリエッタもライザーを意図的に操っているように見える。そして、また面白いのは時おり、微妙に腕の角度を変えて投げているようにも見える。ここまでやると本格派と言う感じでは無くなるが。。ただ、本質的には縦軌道で腕を振るタイプの投手で、メインウェポンはツーシームとカーブと言うパターンでは無いかと思う。

ただ、それにしても、このくらいの球を投げる投手が防御率4点台5点台を記録している事に驚かされる。実際の試合を通しては見ていないので、なんとも言えないが、こうした投手(良い球を投げているのに防御率が悪い)は結構多い。このへんにメジャーのレベルを感じる。