2012年7月30日月曜日

7月30日雑記

(1)http://www.youtube.com/watch?v=aWO9kaaltdc&feature=plcp

外角低めのストレートが投手の基本だと言われますが、上の動画の一球目はその意味を良く表しています。キンブレルの外角低めの速球に、デビッド•ライトが空振りしています。

外角低めを打とうとすると、打者の顔の向きが置きティーに近くなります。そのため、投手方向を向いた場合と比べると腰が回りにくく、手打ちになりやすいので外角低めは飛ばないのです。動画でも、ライトは手打ちになって、バットの加速が効かず、空振りをしています。

基本的に対角線の配球はインハイの速球とアウトローに落ちる変化球と言う考えが強いと思います。なぜなら、インハイは最も素早くバットを出す必要の有るコースですし、アウトローに落ちる変化球は最も(肩を開かないで)引きつける必要が有るコースだからです。

しかし、インハイとアウトローの対角線は、(スイング中にホームベース方向に傾いた)打者の体軸と直交するスイング軌道に内包されているため、究極的には打者の技術力によって対応する事が可能な対角線なのです。
実際、インハイの速球やアウトローの緩い変化球が打てない場合、それは技術的な問題と見なされます。しかし、インローやアウトハイが打てないと言うのはあまり技術的な弱点とは見なされにくい傾向が有ります。

むしろインローはアウトステップ気味に開きながら打つ打者が強いイメージがありますし、アウトハイもクローズドスタンスでドアスイングの右打者が引っ張ってショートの方向にライナーを打つイメージが有ります。つまり、これらのコースはある意味変則的な打法の方が打ちやすいかもしれないのです。

もちろん、インローもヘッドが上手く落ちて行かないスイングでは打ちにくいですし、アウトハイも身体の軸が傾き過ぎのゴルフ的な軌道だと打ちにくくなります。

しかしアウトローの速球だけは理論上、技術力が有っても打ちにくい事には代わりが無いのです。(もちろん、生半可な速球では打たれるでしょうが)
アウトローの速球は、流しにかかろうとすると肩が回らず手打ちになりますし、かといって強引に巻き込もうとすると、目切りが早くなります。結局はどうやっても打ちにくいのです。
さらに右投手が右打者に投げる外角低めは最もリリースを遅く設定出来るため球に力が込めやすいですし、打者に当てる心配が無いぶん、思い切って腕が振れると言う好条件が揃っているのです。インコースだと内に外れるとデッドボールになりますし、外に外れると最も危険なボールになるため、投手にとっては非常に投げにくいコースになるでしょう。一方アウトローだと、低め故に打球が挙りにくいので、一発長打の心配が薄れる事も、投手を大胆にさせる一因です。つまり、それだけ腕を思い切り振れるので球も走りやすいわけです。

こういった事からアウトローが投手の基本だと言われているのです。ブレーブスの投手コーチとして有名だったレオ•マゾーニーが外角低めの重要性を説いていたせいか、キンブレルの他にもジャイア•ジャージェンスやデレック•ロウなどブレーブスの投手には低めの速球を重視するタイプが多いイメージが有ります。

ではバッターは外角低めの速球を打つ練習をすれば良いのかと言うとこれが疑問で、そもそも良いスイングが出来ない故に難しい球なので、そこばかり練習しているとスイングを崩す可能性すら有ります。

このように外角低めの速球は投手にとっては最大の武器になりますし打者にとっては克服する事が難しい弱点となります。
ただ付け加えなければならない事としては、それはあくまでも高いレベルでの野球での話しだと言う事です。つまり、打者の技術論としては、一般にはやはりインハイの速球を詰まらずに打つ事は難しいですし、アウトローに落ちる緩い球を引きつけて打ち返す事は難しいのです。一方、生半可なアウトローの速球なら、それらに比べると腕が伸びる分、インハイのように詰まる心配が無いですし、速球なので緩い球のようにタメる必要も無いため、まだマシなのです。

ですから「アウトロー速球絶対理論」は投手の球が遅くても成り立ちませんし、打者がインハイや緩い変化球に弱点を抱えていても成り立ちません。ある意味、投手が究極、打者が究極と言う究極vs究極の中でこそ際立つのが「アウトロー速球絶対理論」だと言えるでしょう。

動画では右投手の豪腕最強クローザーが右の最強打者に外角低めのストレートを投じて空振りにしとめると言う「アウトロー速球絶対理論」の真骨頂が表現されています。しかもカウントは3ボール2ストライク。フルカウントからでもこのコースにこの球を投げる自信が有ればかなり精神的に優位に立てるでしょう。「困ったときのアウトロー速球頼み」が出来る訳ですから。