2013年5月29日水曜日

短いバットでベースに近づかず、外角を打つ方法

トップ型のオートマチックステップでは、構えでバットの重さによる腕の筋肉の緊張を避ける事が非常に重要なテーマになる。そのため、使用するバットは軽くてミドルバランス。そして、短い方が良い。因に、細いバットの方が空気抵抗が小さくヘッドスピードが上がるので、細いバットの方が良いだろう。つまり、以下のようなバットが好ましい事になる。

●軽い
●短い
●細い
●ミドルバランス

こうしたバットを体に力を付けた上で、思い切り強振していく。ただ、ホームランを狙うのでは無く、芯を外してもヒットになりやすいように強く打つ。このスタイルだと、レベルの高い投手にも対応しやすい。いくら二戦球の投手からどうでも良い場面でホームランを打っても、相手のエースに手も足も出ないようでは良い打者とは言えない。そして野球ファンは結構、そうした事を鋭く見ている。これは選手の間でも同じでMLBでよく有る選手間のアンケート等を見ていると、それを感じる。

そして、もちろんスイングはフルスイング。相手バッテリーから見て「嫌だなぁ」と思われるようなアグレッシブなフルスイングで、どんどん振って行く。計算的なようで野性的、野性的なようで計算的。そういう打者を目指してほしい。

このページには多くのプロ野球選手のバットの長さと重さが書いてある。

見ると、やはり低い位置でバットを立てて構え、悠長なタイミングの取り方をする昔の打者は長くて重いバットを使う傾向が有るようだ。

プロレベルで「短い」と言えば84センチだろうか。そして重さは一番軽くて850gくらいか。ただ最初から一番軽い850gに設定してしまうと、自分の体調や相手のレベル(豪速球投手など)に合わせてバットを軽くして対応する事が出来ないから860g〜870gあたりが妥当か。

ただ短いバットを用いた時、問題になるのはアウトコースだろう。

ではホームベースに近づいて立つのが良いのか?

しかし、それはマズい。

何故なら、インコース高めの速球と言う一番バットを素早く出す必要が有るボールに対して、時間的余裕が無くなるからだ。そうなると、始動のタイミングを早くする必要が生じるが、これはオートマチックステップにとっては好ましく無い。オートマチックステップでは極力、始動のタイミングを遅らせて「リリース前始動」によるデメリットを軽減したい。だから、インコース高めの速球に対して、時間的な余裕を確保するため、ベースには近づきたく無い。

ただ短いバットであまりにベースから離れてしまうと、アウトコースが打てなくなるから、他の打者と同じくらい。つまりベースとの距離は「普通くらい」が良いだろう。それでも軽くて短く、ミドルバランスの細いバットを使っているのだから、インコース高めへの対策は充分と言える。

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では、本論。短いバットでベースに近づかず、アウトコースをどうやって打つのか。

まず、一つ。基本的にオートマチックステップの構えは(他の打法に比べると)クラウチング気味なので、そのぶん、アウトコースは打ちやすい。

また、上半身の倒し方、つまり構えのシルエット(投手方向から見たシルエット)が同じでも、腸腰筋の効き具合によって骨盤の角度が違って来る。そして、骨盤が前傾すると、ハムストリングスが使えるようになるが、この事がアウトコースを打つためには重要になる。

ハムストリングスは股関節の伸展筋だが、股関節の伸展とは、脚を後方にスイングして体を前に押し出す動作なので、ハムストリングスが効いていると、体をニュゥ〜ッとホームベース方向に押し出して行くので、アウトコースに対して踏み込みが強くなる。だから、ハムストリングスが効いていると、アウトコースにバットが届きやすい。

動画)フレッド・マグリフ クラウチング気味で膝をあまり曲げていない。つまり、股関節は屈曲して、膝は伸展気味の構えだが、バランス的に理想とは言えないものの「ハムストリングス」と言う観点から見ると、股関節が屈曲して膝が伸展しているとハムストリングスは最も引き伸されるので、その力が使いやすい。だから、アウトコースへの踏み込みが効く。ただ、クラウチングのデメリットはスイング軌道がアウトサイド・インになる事。そうしたメリット、デメリットが組み合わさって、この動画ではアウトコースのボールを引っ張って特大ホームランを打っている。また、単純にクラウチングのバランスによって外角方向に体が倒れやすいというのも有る。


このように、構えでハムストリングスが効いていると、アウトコースは打ちやすくなる。

そして、もう一つ。後ろ脚をズラすと言う使い方。もちろん、これも意識的なものであってはいけないし、そういう動きを意識的な動作として練習するのもいけない。ただ、そういう打ち方を練習する事は出来る。そして、この打ち方は、最も腕を伸ばす必要があるアウトコース低めに対して威力を発揮する。

まず、実験としてインパクトのポーズを作ってみてほしい。そして、その状態から後ろ脚を背中の方にズラす。そうすると、バランスを取るために、上半身がホームベース側に倒れ、そのぶんだけ、腕が外角に伸びる事が解るだろう。昔から打撃理論で良く語られて来た打ち方だが、これが出来るとアウトコースへの対応力は向上する。

動画)ジェフ・フランコーア 微妙で解りにくいが後半のスローモーションを見ると、後ろ脚を背中側に引く事により、肩がホームベース方向に倒れ込み、それによって外角低めに対応している。


この打ち方は、どうしたら出来るのか。まず構えでハムストリングスが効いていると、踏み込んだ前脚に体重が乗りやすいので、後ろ脚が外しやすい。(適度にと言うのが重要だが)クラウチングの構えも踏み込んだ前脚に体重が乗りやすいので後ろ脚が外しやすくなる。

そうした構えを作った上で、素振りをしてみよう。

目の前の壁のキズなど、目安になる点を見つける。そして、その点は外角低めのボールゾーンに設定する。その一点を見つめたまま何も考えずに思い切り振ると、自然に後ろ脚が外れるはずだ。出来なければ「クラウチングを強調」「膝の屈曲を小さく」「事前に腸腰筋をストレッチしてハムストリングスを効かせる」「さらに外に外れたポイントを見て振る」といった事をすると、後ろ脚が抜けるだろう。なお、ハムストリングスを使うコツは構えで踵(頸骨の真下)に体重を乗せる事だが、クラウチングで爪先体重になると大腿四頭筋が効いてしまうので、爪先体重にならないように注意する必要がある。

こういうスイングを素振りの中で練習しておくと良いだろう。

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ただ、基本的にオートマチックステップではインコース高めの速球に対する余裕を確保する事によって、始動のタイミングを遅らせたい。そうする事によって遅い球も対応しやすくなる。緩急への対応が一つのポイントになるオートマチックステップにおいてはインコース高めの速球と言うのは重要なテーマだ。

その上で、アウトコース低めを打つためには、どうすれば良いか。別に優先順位が有る訳では無いが、インコース高めに目をつむるわけにはいかない。なので、ベースに近づくわけにもいかない。

では、短いバットでベースに近づかずにアウトコーを打つための対策を最後に整理しておきたい。

(1)構え

構えは、この打法の理想的な構えを変える必要は無い。試合でアウトコースに対応するために構えを変えたりすると、調整が難しくなったりして、余計に話がややこしくなる。なので、基本的に構えは変えない。ただ、その上で、そもそも他の打法に対してクラウチング気味であるこの打法はアウトコースにアドテージが有る。これが一点。

次に、あくまでも「理想的なバランスで構える」事を前提として、アウトコースに対応するためのポイントは「膝を曲げ過ぎない」「事前に腸腰筋をストレッチする」の二点が挙げられる。膝を曲げ過ぎると大腿四頭筋が効き、ハムストリングスが働かない。次に事前に腸腰筋を効かせる事によって、骨盤が前傾し、ハムストリングスが使いやすくなる。つまり、同じ脊柱の傾き角度(クラウチングの角度)であっても、腸腰筋の効き具合によって骨盤の角度には違いが生じる。

(2)打ち方

後ろ脚を抜き、背中側にズラすスイングを練習で憶える。やり過ぎると良く無いが、こうした打ち方を練習の中で憶えるといいだろう。なお、その際、バランスを取るために交互にインハイを振る事も必要になる。(この場合はインハイの一点を見つめて振る。スイング軌道は意識しない。)

これら2つのポイントを抑える事がアウトコースを打つ上で重要になる。このポイントをもっと大雑把な視点で考えると以下の3点に纏める事も出来る。

1)構え ハムストリングスの効いた構えを作る
2)事前のストレッチ 腸腰筋とハムストリングスが活性化する状態を作る
3)スイング 後ろ脚を抜くスイングを憶える

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バットは短い方が良い。インコース高めの速球が大事なのでアウトコース対策に(クラウチングで構えるなど)極端な事は出来ない。その状況下で一番腕を伸ばす必要があるアウトコース低めを如何にして打つかと言う事が大切になる。

始動を遅く設定するためにインハイ速球への対応が重要になる。そして、短いバットを使うためにアウトコース低めへの対応が重要になる。インハイとアウトロー。この二つが重要になる。