2013年5月22日水曜日

エドウィン・エンカーナシオン

二本のホームランが収録されている動画だが、どちらとも凄い。


エンカーナシオンは構えで腕を下げており、バットも立て気味なので、腕には負担がかからない。ただし解剖学的には理想的な構えにはならない。今期ホームランは12本と4位につけているが打率は0.255とあまり高いとは言えない。やはり、こうした打ち方だと一発長打に走るか、アベレージを狙いに行くかのどちらかにならざるを得ないのだろう。

ただ、上半身の力が抜けている分、始動時の下半身の力は凄まじく、かなりハムストリングスを使えている。始動時の下半身の力は上半身のサイレントピリオドと連動しているので、上半身に力みが有ると、始動時の下半身の力は弱くなる。

また、エンカーナシオンは下半身の構えも楽な感じだ。典型的なパンチャータイプの構えでは無いが、この打ち方は「リラックスした状態から一気に大きな力を発揮する」と言うパンチャータイプのメカニズムの本質的な部分を非常に良く表現しているし、それは傍から見ていても解りやすいと思う。上半身も下半身も全体的にリラックスした構えから一気に力を発揮してボールを強く叩く。そういう打ち方である。

そうした「力の発揮の仕方」と言う観点から見ると良い打ち方なのだが「形」を伴っていないので打撃成績にも限界が有ると言う事なのだろう。ただ一つの「打撃スタイル」としては充分魅力的であるし「打者のタイプ」としても魅力的ではある。

エンカーナシオンと比較的似たスタイルを採っているのがブライス・ハーパーだ。


一見、トップ型の構えに見えるが、よく見ると顔の前にバットを通す「ヘッド入れ型」の一種である。これはやってみると解るが、トップ型よりも腕に負担がかからない。ただ、この構えだと骨盤が前傾しにくく股関節が割れにくい問題が有る。なのでハーパーもやや腰が丸まり気味で膝が前に潰れた形を採っている。なので、そのフォームは理想的であるとは言えない。

しかし、下半身に関しても、動的なタイミングの取り方をすることでリラックスした状態を作れているので、エンカーナシオン同様「リラックスした状態から一気に大きな力を発揮する」と言うパンチャーの根幹部分はよく表現出来ている。ただ、エンカーナシオンに比べるとフォームを重視した「バランス型」と言えそうなので、バランスの良い打撃成績を残す事が出来るのだろう。スイングもエンカーナシオンに比べるとクセが無い。

ハーパーにしてもエンカーナシオンにしても構えで腕の力が抜けているので、始動時に発揮される下半身の力が強い。ただ、そうやって発揮したパワーもフォームに問題が有るとロスされて行くので、最終的には差し引きが生じる。そのため、彼等のようなフォームが一番パワーを発揮出来ると決めつける事は出来ない。ただハマった時に飛距離が出やすいスタイルである事は間違い無いと思う。

ただ、やはりフォーム的に理想なのはプリンス・フィルダーのようなトップ型だ。あらかじめトップの角度にバットがセットされているので、バットが出るまでに無駄な動きが少ない。(面倒なので簡単な言い方をするとそうなる。)


しかし、トップ型で結果を残すためには数多くの抑えなければならないポイントが有る。