2013年5月21日火曜日

理想だけど難しい「トップ型」の構え

交流戦のセレモニーで、東尾修と掛布雅之による一打席真剣勝負が行なわれた。結果はセンターフライだが、この年齢で硬式木製バットでセンターフライを打っているのだから掛布の勝ちと言っても良いくらいだ。現役時代のイメージそのままの素晴らしいスイングである。掛布のスイングはバットの長軸周りのスピン量が大きくリストターンが鋭いイメージなので、昔から打球にスピンがかかって高く挙るホームランが持ち味であった。その持ち味をそのまま発揮しているあたりが流石だ。1985年、圧倒的な実力を誇った3番バースの後ろで「ベテランにはなったが、このチームの主砲は俺だ。」と言わんばかりの重厚な存在感を放っていた4番掛布の現役時代が思い出される。


そこで掛布の構えだが、落合ほどではないがバットを立てて構えている事に注目してほしい。この構えだと腕に負担が掛かりにくいので年を取ってもパフォーマンスが落ちにくいと言うのは有るだろう。因に掛布はスインガータイプ。

パンチャータイプの場合、バットをあらかじめトップの角度で構えておく「トップ型」の構えが(解剖学的、技術論的に)理想的だが、この構えは(バットを横に寝かすので)腕の筋肉に負担がかかると言う弱点が有る。なので、まずその点を克服しなければ「解剖学的、技術論的に理想的である」と言うトップ型の恩恵に浴する事は出来ない。つまり理論的には理想的だが、それを理論通りに理想的な物として実現させるということはそれほど簡単では無い。軟式草野球等の場合はまだバットが軽いので良いが、体力がバットの重さについていかない高校の硬式野球や、相手投手のレベルが高いプロ野球などでは、尚更である。そのため、ラボでは「構えの力を付けるトレーニング」と言うものを考案しているのだが、それについては新しいバージョンを含めて、後日ブログ上で公開する予定である。

台湾球界に移籍したマニー・ラミレスはトップ型の構えで打っていた(二本のホームランが収録されている動画)


トップ型の構え

もし野球がテニスのラケットのような軽い打具を使って行なう競技なら、トップ型の弱点は存在せず、理想的な技術が文句無しに理想的な技術として存在出来る。しかし実際には140キロ前後の硬式球を打ち返すために、900g前後の打具を必要とするので、理想的な技術であるはずの「トップ型の構え」に弱点が生まれてしまった。

このためにバッティング技術の追求には二つのルートが生じてしまう。一つはフォーム的には問題が生じる事を受け入れてバットを立てて構えると言う方法。この場合、腕の力が抜けるので、柔軟に振る事が容易になる。二つ目はあくまでもフォーム的に理想である事を追求し、トップ型で構えると言う方法。この場合、よほど体格的に恵まれている打者を除き、何等かの形で筋力を強化して行く事が必要になる。そして、もちろん、これらの中間的な方法も有る。こうした事情から、野球のバッティングフォームには多様性が生まれている。

トップ型の構えだと、引退して体力が落ちて来た時には高いパフォーマンスを維持する事が難しいだろう。また軽いバットを使わないと打てなくなると思う。しかし、若い間は、より高い次元のパフォーマンスを発揮する事が出来るはずだ。

つまり、野球のバットがテニスのラケットくらいの軽さなら、トップ型で構えるのが一番良いと断言出来る。しかし、実際には900gの重さが有るので(その打者の筋力等)ケースバイケースで、どのように構えると一番結果が出るかと言う事が違って来る。(トップ型で構えると一番結果が出るとは断言出来ない。)

因に、メジャーリーグと言えども、純粋なトップ型の打者と言うのはそれほど多いわけでは無い。マーク・トロンボやブライス・ハーパーやマット・ケンプは厳密にはトップ型では無い。そこで、ここでは現役メジャーにおけるトップ型の強打者を紹介しておきたい。

プリンス・フィルダー
アレックス・ロドリゲス
ジャンカルロ・スタントン
ジャスティン・アップトン
ジョーイ・ボット

このあたりの打者は完全なトップ型の構えだと言えるだろう。因に日本人打者なら、西武の浅村、ソフトバンクの松田、巨人の長野あたりはトップ型に分類出来る。

トップ型の構えを選択すると言う事は、究極のフォームを追求する事を意味するし、それは同時に身体運動としても究極と言える境地を目指す事を意味する。また、打撃技術というものに対し、がっぷり四つに向き合う事を意味する。

ここまで書くと「トップ型の構え」を目指さざるを得ないだろう。硬式プレーヤーの場合、バットが重いし、プロを目指すとなるとピッチャーのボールも速くなるので苦労も多いと思うが。

因にトップ型がその弱点を克服するためのポイントとなる項目を挙げておく。具体的な内容までは書けないが、一度、頭を整理する事が出来ると思う。

1)構える力を付ける。(筋力を強化する事だがウェートトレーニングでは無い。)
2)出来るだけ軽いバットを使う。(特にトップバランスは避ける)
3)骨格を上手く使った、筋力的負担の少ない構えを身につける。
4)構えを作るタイミングや構えの作り方を工夫し、構えている時間を短くする。
5)間が長過ぎればタイムをかけて打席を外す事も考えておく。
6)見逃しが続いた時等は軽く素振りを挟んで腕の筋肉をほぐす。
7)ハムストリングスの効いた構えを作る。
8)腸腰筋が効いて、胸椎が後彎した骨格を目指し、構えでその形を作る。
9)柔軟性を損なわないように、軽いバットを使った素振りも行う。

※)7についてはジャスティン・アップトンの記事で書いたが、構えでハムストリングスが効くと、地面を抑える力が強くなるので、反作用的にバットを持ち上げる力が強く働き、バットを軽く感じるようになる。

上記の内容を考慮すると、おのずと打撃スタイルは「体の力をつけて、軽いバットを凄いスイングスピードで思い切り振り抜く。バットの重さで飛ばすのでは無く、スイングスピードで飛ばす。」と言う方向に行き着くだろう。