2016年3月15日火曜日

ダルビッシュ投手フォーム分析 その10

それでは前回お話した、膝が折れない「股関節スクワット」のフォームにするためのポイントを書きます。


(1)軸脚の頸骨で「トン」する
(2)重心移動が始まるまでは手は身体の近くに置く
(3)前脚を挙げる時、後ろ脚の膝を突っ張らない
(4)骨盤ごと前脚を挙げる
(5)捻りすぎない

等が主なポイントです。

(1)軸脚の頸骨で「トン」する

(1)についてはメジャーの投手が上手い点です。特に中南米系と黒人系の投手が多いのですが、日本の投手はほとんどやっていない動きです。具体的には、軸脚をプレートにセットする時に、足の頸骨の真下のあたりで軽くトンと押さえるようにしてプレートを踏みます。(力を入れないで軽くトンッとするだけです) 動画はそれが出来ている例です。


コツとしては、ワインドアップのステップで前脚を後方に引いた時に軸脚の膝をカクッと言う感じで緩める事です。(写真の3)これにより、膝が緩んで頸骨が立った形が出来ます。その形のまま、軸脚をプレートにトンと置きます。このへんはメジャーには上手い投手が非常に多くいると思います。




(2)重心移動が始まるまで、手を身体の近くに置く

重心移動が始まったら手はオートマチックに動きだすので、その後は意図的にはコントロールするべきではありません。無駄な力みに繋がってしまうからです。なので、重心移動が始まるまでの手の位置が重要になります。

手が身体の前に出過ぎていると、爪先体重になり、膝スクワットになりやすくなります。反対に身体の近くに手を置くと、頸骨真下に荷重しやすくなります。

写真のように前腕部を突き出さない事が重要です。 

(3)前脚を挙げる時、後ろ脚の膝を突っ張らない。

膝を曲げるのはもちろん良く無いのですが、突っ張るのも良く無いという事です。「緩める」と表現するのが良いかと思います。 (曲げると大腿四頭筋が強く働き、ハムストリングスが使いにくくなります) 写真中央が「緩める」の例です。
 

なぜ膝が突っ張っては行けないのかというと、下図のような「股関節伸展の力が頸骨から地面に伝わる」という形が出来ないので、膝を突っ張るとハムストリングスで立つ事が出来ないからです。
 

(4)骨盤ごと前脚を挙げる

こうする事によって、前脚を下ろす時に反動で骨盤が前傾する=股関節が屈曲するからです。そのため、股関節スクワットがやりやすくなります。写真はライアン挙げの例ですが、回し込み式でもほぼ同じ事が起こります。
 
動画


(5)捻りすぎない

下の写真のように振りかぶって背骨を丸めたり、捻ってサイドスロー型のヒップファーストを作った時に背骨が丸まって出来た骨盤の後傾は、脚を下ろす時に前傾に戻ってくれないので注意が必要です。


ただ、写真のように、腰椎が後弯して骨盤が後傾気味でも、 捻る事によって後ろ脚股関節が割れると、膝は折れにくくなります。しかし骨盤が後傾しているとハムストリングスが緩んで力を発揮しにくいので、この場合、形的には膝は折れてなくても、ハムストリングスはそれほど効いていないと考えられます。


斎藤雅樹:この動画を見ると、腰が丸まっている事が解ると思いますが、これはサイドスロー特有のヒップファーストの作り方に伴うものです。捻り過ぎると、このように腰椎が丸まって骨盤が後傾するのでハムストリングスを使うという観点からはマイナスになります。


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こうしたポイントがクリアーされて、股関節屈曲スクワットをフルに使えたフォームになると重心移動が大きくなります。膝が折れないので重心は少し高めになりますが、ステップ幅は広くなるか、少なくとも狭くはならないと思います。また、フォロースルーでの軸脚が大きく前に出てくるようになると思います。

さらに球質にも変化が出るかもしれません。あくまでも印象論ですが、膝スクワット型の投手は浅い握りから指先の走りでスピンが効いた軽い球 を投げる印象があります。一方、股関節スクワット型の投手は指先の走りと言うよりも身体全体でボールを押し込む感じでズドンと重い球を投げる印象があります。握りは少し深い方が合うような気がします。

その10 完