2012年6月23日土曜日

股関節の割れと両脚のライン

常日頃感じる事として、「股関節の割れ」「両脚股関節が割れた上で前の膝が内、後ろの膝が外に向いた両脚のライン」を作れるように教える事の難しさとその重要性です。ただ、最近では比較的メソッド化も進んで来たので、それを少し紹介しましょう。

そもそも、両脚のラインが何故重要かと言う事ですが、股関節は両方割れていないときちんと割れている事にならないので、前脚の股関節が割れていない状態で前の膝を内に入れただけでは後ろ脚の股関節も割れにくく、骨盤が後傾気味になり、大腿四頭筋で体重を支える事になるので、始動時の下半身の力が使えないのです。この場合、大腿四頭筋が力んでいるため、見た目の両脚のラインも特有の縮こまったような感じになってしまいます。この感じは観察経験上、実に明確に解ります。

一方、両方の股関節を割っても、両脚の膝が外に向いた(いわゆるガニマタ)状態だと、捻りが入っていないので、この場合もまたパワーを発揮しにくくなります。(最初期の頃はそう教えていたのですが、それは間違いだったと言う事です。)

ですので、あくまでも両方の股関節が割れた上で、前の膝が内、後ろの膝が外に向いた微妙なライン(下図)を上手く作る必要が有り、そのための前提として股関節を割る事が上手く出来なければならないのです。(因に下のイラストは、そのラインを表現するのを重視しました。)



まず、股関節を割る股割り体操についてはこれまで繰り返し書いていたので省略しますが、この場合、リズム股割りスクワットも重要になります。(ただ、これもアップダウンでリズムを取る動きを掴んでいる必要が有ります。)

リズム股割りスクワットでは足裏のインエッジが浮くくらいアウトエッジに荷重する事と、脚の内側のラインがたわむような感じで内股がストレッチされる感覚、大腿四頭筋を効かせた膝の屈伸にならないように気をつけましょう。爪先を開きすぎない事も重要です。親指一本分開くくらいで充分です。

弾むようにアップダウンでリズムを取り、ダウンする時に両肘を内に絞り込みます。股関節を割った時に、骨盤が両脚の間に挟み込まれるように前傾する感覚も掴めれば、尚良しです。

この体操で股関節を割る感覚を掴む事が第一歩になります。

次に、構え作りリズムスクワットを行います。この場合、あくまでも両脚股関節を均等に割る意識を持つ事が重要です。それでも上半身に捻りが入ると、微妙な膝の向きの違いが生じているのですが、やっている本人はそれが見えにくいので鏡で見たり、撮影して確認しておいた方が良いでしょう。前脚の膝が内に入ってくるのを我慢したアウトエッジ荷重を保つくらいの意識で(この体操に関しては)丁度良いのです。因に深く沈み込むぶん、体幹部操作による捻りも深く入るため、大きな捻りにより投手方向を向く事が難しくなるので、顔は置きティーのティー台くらいの向きに向けます。

なお、前の膝が内に入る角度を強調してしまうと、前脚に関しては大腿四頭筋を使った膝の屈伸運動になるので、膝を痛めやすい事が容易に想像出来ますから、注意してください。前述しましたが、この体操では前脚の膝が内に入るのを我慢するくらいの意識で丁度良いのです。

この時点で、出来ている場合は比較的良いラインが作ります。

次に腸腰筋その場ステップをします。これはこの次の「揺らぎ構え作り体操」のための準備です。腸腰筋が効いて骨盤が前傾すると股関節の靱帯が緩むので大腿骨骨頭部のボールが骨盤のソケットの中で転がりやすくなり、揺らぎで股関節の円運動を使いやすくなるのです。ですから揺らぎ体操と腸腰筋その場ステップ(或は腰を反っての腸腰筋ストレッチ)は必ずセットで行います。なお、この体操ではスタートポジション(突っ立ってグリップは低い位置に置く)から揺らぎの回数を多く使って、少し低めの構えまで持ち込みます。

直線的に重心を下ろすと、膝の屈曲が強く生じやすく、これまた大腿四頭筋に力みが入りやすいのです。一方、揺らぎによる股関節の割れ(体重を受け止めた方の股関節が僅かに屈曲=割れる)を利用すれば、直線に重心を下げる意識無しに、重心を下ろせますので、膝の屈曲では無く、股関節の屈曲=割れをメインにした重心下降が行いやすいのです。

最後に素振りをするのですが、その前に割れ絞り体操で、股関節を絞る感覚も身体に思い出させてからスイングするようにしましょう。この場合の割れ絞り体操は軽くで充分です。

この流れ、つまり、リズム股割り体操→構え作りリズムスクワット→腸腰筋その場ステップ→揺らぎ構え作り体操→割れ絞り体操→素振り を執拗に繰り返すと、大体両脚のラインが上手く出来るようになってきます。


因にこのラインを上手く作れている例はMLBではいたとしても脚上げ型だったりして、中々オートマチックステップの打者の中には見られないのが残念ですが、少し例を挙げて考察してみましょう。

アレックス•ロドリゲス(http://www.youtube.com/watch?v=52-E0bRU-G8&feature=plcp

非常に惜しいです。股関節の割れがもう一歩です。後ろ足の爪先が開き過ぎているので、膝が内に入り込んでしまい、上手く股関節がわれていません。両脚の膝の向きの微妙な角度差は非常に良いです。勿体ない例です。