2015年4月30日木曜日

背中が反って体軸が後ろに傾くフォロースルー

 ハムストリングスの力によって腰が強く投手方向に突き出され、背中に反りが出来きて、体軸が後ろに傾くスイングが理想的である。BPL理論では身体の大きさに関わり無く、このようなパワーヒッターのスイングを目指してもらっている。
 もちろん、実戦では身体の大きさによって打者の役割は変わってくる。ネルソン•クルーズのような打者なら一発ホームランを期待されているが、そうでは無い打者の方が多い事は言うまでもない。
 良く言われる「身体が小さいからと言って小さいバッティングをするな」と言うのは「身体が小さくてもホームランを狙った打撃をしろ」と言っているのでは無い。あくまでもスイングの話である。
 BPL理論では練習では常にフルスイングを徹底し、強く打つ事を最重視している。しかしそれはホームランを狙うためでは無い。芯を外してもヒットにするためだ。投手のレベルが挙ってくると「甘い球を確実に捉えれば良い」という姿勢では通用しない。難しい球に食らいついて行く対応力が重要になってくる。



強いインパクトと両手で高く振り抜くフォロースルー

 BPL 理論では最後まで両手で振り抜く事を重視している。それによって両腕が充分に伸び、ボールに力を最大限に伝える事が可能になるからだ。手首を捏ねる事を修正しようとして片手でフォロースルーをとらせる指導が有るが、それでは根本的な問題解決にはならない。むしろ逆効果の大きい間違った指導法である。

BPL理論で目指すスイングイメージ

ボトムハンド側の肩甲骨が残ったインパクト

両肩甲骨が外転する(身体の前に出る)事で腕が充分に伸びている

高く振り上げる理想的なフィニッシュ

インサイドアウトのスイング

 連続写真はパンチャータイプにおけるインサイドアウトのスイングの典型例である。パンチャータイプとスインガータイプとではインサイドアウトの作り方も違ってくる。パンチャータイプの場合「ヘッドが立っている」事が重要になるのだが、それは振るときにヘッドを立てる事を意識するのでは無く、そういうスイングになるように構えておく事が重要になる。こうしたスイングの習得は人によっては容易では無い事だが、BPL理論で重視しているポイントの一つである。


 連続写真は実践者によるスイング例である。グリップの作り方を体幹部との関係から教えて行く事で、理想的なインサイドアウトのスイングが出来るようになった。

事前プログラム 投球編

事前プログラム 打撃編

 以下の内容はBPL理論打撃編の初歩の初歩です。この内容だけですぐに良い結果が得られるとは限りませんが、実地指導でより深い高度な内容に進むために、以下の内容は事前に理解&実践しておいてください。

STEP1 目指す打撃を知る

STEP2 パンチャーとスインガーの基本メカニズムを理解する

STEP3 コアとなるシステム「APA」の実験

STEP4 脚挙げスイングによるメカニズムの確認

STEP5 オートマチックステップの習得

STEP6 構えについて

STEP7 揺らぎ(超基礎)

STEP8 構えの作り方(超基礎)

STEP9 巻き戻し

STEP10 素振り

STEP11 ストレッチ ベーシック3 




事前プログラム

 技術指導を希望される方は、以下の内容を理解&実践した上で受講してください。実施当日の進行をよりスムーズにし、内容をより深いものにするためです。
 なお、以下の内容はあくまでも上記の目的に沿ったプログラムに過ぎません。したがって、これらを実践しただけですぐに良い結果が出るとは限りません。



※)事前プログラムを設けた理由

 まず一つは「最初に説明しなければならない事、理屈を説明するだけで出来るようになる事」はネット上に公開して独力で予習しておいてもらう事により、実地指導に通う回数が必要最低限で済むようにする事が狙いです。
 そしてもう一つは、事前プログラムの内容を実地でやってしまうと「細かな実践的技術にまで介入し、実際に上手くなってもらう」と言う段階に入るまでに時間がかかってしまうためです。
 こうした理由で事前プログラムを設けていますので実地指導を受ける人は必ず事前プログラムを実施して、その結果(打撃フォームや投球フォーム)を撮影した動画を申し込み時に提出(メールの添付ファイル及びyoutubeへの投稿)してください。

2015年4月29日水曜日

守備への適応

 始動からリリースまでの加速が速いパンチャーは守備のスローイングに適している。特に捕手はパンチャーの独壇場だと言って良いだろう。その他、投手の牽制でも有利だ。
 BPL理論では細かな守備技術にまでは言及していない。しかし、パンチャーという投げ方を守備のスローイングに適応させるためのポイントがいくつか有る。もちろん、それらは従来の技術論では語られて来なかった事だが、BPL理論では指導プログラムの中に組み込まれている。

 ただ、重要な事として守備におけるスローイング動作というのは「投げる動作の理想型」では無い。投げる動作の理想型はむしろピッチングの動作に近い。そのためBPL理論では野手であってもピッチングフォームを習得してもらっている。本来であれば高校野球などでも部員全員にピッチングをさせるべきなのだが、野球部にいながらも自分のピッチングフォームを持っていない選手が多い事には驚かされる。キャッチボールの時間を使ってピッチングフォームを練習させるべきである。もっとも、それをきちんと教えられる指導者と言うのも少ないのだろうが。守備のスローイングと言うのはあくまでも応用で、基本の投げ方があってこそのものである。しかし実際には守備の投げ方が基本の投げ方になってしまっている野手が多い。(マウンドから投げてもキャッチャー投げになるキャッチャーなど)

守備におけるパンチャータイプのスローイング

パンチャータイプ

 もちろんBPL理論ではパンチャータイプのピッチングフォームを中心に教えている。パンチャーのメリットは「始動からリリースまでが速い」「コンパクトなフォームで最大の球速を求める事が出来る」等と言った点にある。変化球のレパトリーもスインガーとパンチャーでは違いが有る。またパンチャーの方が守備では使いやすい。

 ただしパンチャーではポイントを押さえないと担ぎ投げやアーム式になってしまう場合が有る。そのため、BPL理論では担ぎ投げやアーム式のフォームになる事を防ぎ、投球腕が内旋した状態で肘から挙るコンパクトなテークバックの習得を特に重視している。

 なおパンチャーのフォームには以下のような特徴が有るが、それらは欠点では無いので、その点を理解して取り組む必要が有る。

1)フィニッシュで右投手であれば一塁側に軸足が着地する傾向
写真(フランシスコ•ロドリゲス)

2)腕の出所は自然とスリークォーター気味になる傾向
(写真=クレイグ•キンブレル)

3)ややインステップする傾向
(写真=ホセ•フェルナンデス)

4)フォロースルーで前脚が伸びきる傾向
(写真=ティム•リンスカム)

5)前脚が開き気味で着地を迎える傾向
(写真=アロルディス•チャップマン)

6)リリースポイントは身体に近い傾向
(写真=ケルビン•ヘレーラ)

7)フィニッシュで一瞬、投球腕がグーの形になる傾向
(写真=ペドロ•マルティネス)

投げ込みに匹敵するシャドーピッチング

 野球は投打ともに数多くの反復練習を必要とする。それによって体が自然に効率の良い筋肉の使い方を覚えて行くからだ。近年ではメジャーにならって投げ込みを否定する向きも有るが、メジャーが乗り気で無いWBCとは言え日本がアメリカや中南米諸国に勝つ事が出来るのはむしろ日本特有の地道な反復練習の成果だと考えた方が良い。日本の選手は彼らが冬にバスケットやフットボールをやっている間も野球をやっているので、特に若いうちは勝つ事が出来るのだ。

 しかしピッチングの場合は投げすぎる事で肩や肘を痛めるという問題が有る。そこでBPL理論では投げ込みに変わるものとしてシャドーピッチングを提案している。これは一般に行われるシャドーのようにタオルを持って鏡の前でゆっくりした動きでフォームを確認するようなものでは無く、実戦のイメージを持ち、全力で腕を振るものである。投球腕は素手で、グラブを使用する。



 私の場合、この方法で1日1000回シャドーをしても肩や肘を痛める事は無かった。ボールを持たない事で肩や肘にかかる負担が大きく軽減される事は間違い無い。一方で全力で動作する為、トレーニング効果は投げ込みに匹敵するものが有る。もちろん、ボールを投げる練習が優先されるが、帰宅後や雨や冬期でボールが投げられないコンディションでも、このシャドーを行えば充分にピッチングの練習が出来る。

投げ方のバリエーション

 「ライアン脚挙げ+クイックモーション」のところで書いたように、BPL理論では基本的にはワインドアップモーション(ノーワインドの)とクイックモーションを使い分けるピッチングスタイルを推奨している。しかし、その他にも複数の実戦で使用できる投げ方を用意しており「投げ方で揺さぶる」ことも可能である。これは球威などでやや劣る技巧派向きの戦略だと言えるだろう。下の動画はBPL理論で採用している各種フォームの実例だが、同じ構えから異なるフォームで投げる事も出来るので、大きなタイミングの取り方をする打者に対しては有効になるだろう。(動画は代表的な投法の4つで、他にもまだ有る)



動画の解説

1)オートマチックステップ投げ:クイックモーションとして使える。通常のクイックよりもタイムを短縮できる。

2)クイックセット:通常のセットポジションより後方への体重移動を抑える事により、タイムを短縮できる。オートマチックステップと同じ構えから投げられる。

3)クイックモーション:ランナーが出たら基本的にクイックを使うと良い。パンチャーの場合、クイックでも球速を出しやすい。

4)ワインドアップ:振りかぶらないノーワインドを基本としている。構えからの足の運びが重要で、そこにライアン挙げのポイントが有る。

パンチャータイプの変化球の特徴

 残念ながらBPL理論では具体的な変化球の投げ方は教えられない。変化球の投げ方については「ケガせずにストレートの走りに支障が出ない」という条件の範囲内で自由であり、これが絶対に正しいというのは無いと考える。そんな中で私技術論を語るのは私の役目では無いだろう。変化球に関する情報などは山ほど有るのだから、そうしたものを参考にして自分で考えてほしい。

 ただ、投げ方の特徴からどのような変化球が適しているかといった事は教えている。パンチャーの場合、キレの有るムービングファストボールが投げやすいようだ。変化球は高速〜中速系が多い。今中慎二やダルビッシュ有が投げるようなスローカーブは基本的には投げられない。カーブは抜くような投げ方ではなく強く腕を振って弾くような投げ方になる。曲がりも小さくて鋭い。(フォーム矯正として大きな縦のカーブを投げさせる指導はパンチャーには適応しない。最初に教える変化球としてスライダーを挙げるのはパンチャー的な指導だ)

 また緩急を付ける球としてはチェンジアップが 有効だろう。パンチャーは腕を緩めずに強く振り抜く投げ方なので、その腕の振りと球速のギャップを作り出す事が出来れば大きな武器となるはずだ。以下はパンチャーらしい投球を集めた動画なので参考にしてほしい。なお、変化球を習得する順番としては、パンチャーの場合はまずチェンジアップ、ツーシーム、スライダーを覚え、次にカーブに挑戦すると良いだろう。スインガーの場合は文句無しに縦に大きく割れるカーブから覚えると良い。



2015年4月28日火曜日

ターン&タンブルフィニッシュ


turn=回転する
tumble=倒れる

 回転しながら倒れ込むようなフォロースルー〜フィニッシュの取り方を「ターン&タンブル」と名付けた。言わずもがなだがメジャーリーグでは極一般に見られるフォームである。しかし日本では、感覚の古いコーチにより矯正される事が多い。BPL理論では、このターン&タンブルフィニッシュを必須技術の一つとして教えている。2007年から2014年までアメリカ球界で修行を積んだロッテのイ•デウンがアメリカ仕込みのターン&タンブルフィニッシュで開幕後無傷の4連勝を挙げた。これは我々東洋人にも難なく適応する技術である事を意味している。日本の投手コーチも間違っているのは自分たちである事を認めた方が良いだろう。



 下の動画はターン&タンブルフィニッシュの好例である。日本人の場合、ターンは出来てもタンブルが出来ていない場合が多い。つまり軸脚がクロスするように出て来ても、その脚が着地するときに体重が乗っていない。これはハムストリングスの力が使えていないので重心移動の力が弱いからだ。BPL理論ではタンブルの加わったメジャー流のターン&タンブルの習得を目指している。



肘から挙るコンパクトなテークバック

〜目指せ、INVERTED-W〜

 BPL理論では投球腕が内旋して肘が曲がり、肘から引き上げられるコンパクトなテークバックの習得を追求している。ただし、内旋も肘からの挙上もオートマチックに起きる動作である。「肘が背中側に入るのはいけない」等という「センス無し」丸出しな事は言わない。むしろ肘が背中側に深く入るくらいの柔軟性は投手として望ましい。実際にはこの「投球腕が内旋し、肘から上がり、肘が背中側に入る」形が作れずに、肘を痛めたりアーム式が直らずに苦労する投手の方が多い。「内旋して肘から挙るテークバック」は肘を痛めないために投手が何としてでも習得しなければならない動作である。


 現在、アメリカ球界で優勢となっているピッチング理論に「INVERTED-W」というものが有る。「逆さにしたW」という意味である。両腕がこの形を作ると肘を痛めると言われている。BPL理論ではこの考え方を大筋で否定する。もちろん「肘を痛めるINVERTED-W」も有るが、元々、この形はセンスの有る投手のみが作る事が出来る、むしろ目指すべき形であるからだ。しかし、そのすぐ横に落とし穴も有る。それが悪い意味でのINVERTED-Wであり、アメリカの理論で否定しているフォームである。断言するが下手クソにはINVERTED-Wを作る事は出来ない。


 下の写真は豪速球投手のクレイグ•キンブレルのフォームだが、見事なINVERTED-Wを形成している。肩肘が柔軟で、体幹部と上手く連動しているからこそ出来る形である。キンブレルのピッチングを見て、それでもまだ、これがキンブレルの欠点であると言い切れる人がいるのだろうか。キンブレルはやや重心移動が小さいため、上半身の力に頼っている部分が若干ある。そのため今後、肩や肘を故障する可能性も有るが、それは、この形(INVERTED-W)が原因ではないと予め言っておく。
 


 下の動画は内旋して肘から挙るテークバックが上手く出来ている例である。投球腕の回転がコンパクトで素早く、スムーズだ。これこそが求めたい肘の使い方である。これが解らない人間は投手の指導に関わるべきでは無い。

ライアン挙げ+クイックモーション

 BPL理論では、ノーラン•ライアンのように大きく前脚を挙げるフォームを教えている。ただし、ライアンほどには高く挙げない。この前脚の 挙げ方(ライアン挙げ)が前田健太のような一般的な日本人投手のそれと違う点は、骨盤ごと動かして脚を挙げるという点に有る。近年はヤクルトの小川泰弘を始め高校球児でも「ライアン挙げ」を取り入れる投手が増えて来たが、BPL理論ではその実践のためのメソッドが確立されている。「ライアン挙げ」の最大の効果は「脚を高く挙げて勢いを付ける」のでは無く「無駄な力みが入りにくく動きがスムーズになる」という点にあると考えている。したがって、その体の使い方さえ出来れば無理に脚を高く挙げる必要は無い。(かといって抑制しようとするとまた力みに繋がるので、それも良く無い)
 

 このライアン挙げを採用する場合のピッチングスタイルだが、それは「ランナーがいない時は、ワインドアップ(振りかぶらない=ノーワインド)モーションで投げ、ランナーが出たらクイックモーションで投げる」と言うものだ。そのため、ライアン挙げを採用する場合、クイックモーションは特に重要な技術となる。タイムを短縮するという意味では無く、クイックモーションでワイドアップに劣らない球威を出すと言う意味で。

 ワインドアップモーションの足運び(打者に正対した構えから始動する)で投げる場合、構えから一度前脚を後方にステップする。この動きが脚挙げのバックスイングの役割を果たすからこそ、大きく脚をスイングするライアン挙げが可能になるのだ。したがってセットポジションからの 投球とライアン挙げは相性が悪い。そのため、ランナーが出ればクイックモーションで投げる事を勧めている。
 そうしたピッチングスタイルを採用している投手としてクレイ•バックホルツを挙げる。バックホルツはクイックモーションも巧く、その点でもモデルにしている。クイックモーションを指導するメソッドが確立されているのもBPL理論の強みだ。


※)ただしマウンドやプレートの状態があまりにも悪く、最初から軸足をセットしておきたい場合はセットポジションから投げると良い。その場合のコツも有る。

BPL理論が目指すピッチング

BPL理論が目指すバッティング

「日本的」野球センス



 野球センスアップを看板とするAXIS.LABの石川 繁之によるレクチャー動画だが、脱力してボールに働く重力や慣性力を利用する事をテーマとしているように見える。このクニャクニャの動きこそが(特に)近年の日本球界に定着しつつある「センス」の概念を象徴的に表現している。

 イチローを見ても、石川 繁之と同じセンスを持っている事が解る。というか、イチローが表現している「センス」が石川 繁之の言う「センス」の大きなモチーフになっていると思われる。



 野球部のキャッチボールを見ても、このタイプの「センス」を体現しているような動きをする子が多い。「ゆる」の高岡英夫や「力感が無いのが良い」と言う二軸理論発の風潮、そして「筋肉ではなく骨を使え」という古武術系論者の発言が、こうした風潮を作って来た。タイツ先生の理論や手塚一志なども大きく関与している。

 もちろん、間違いとは言わない。これはこれで一つのセンスだ。そして野球部員にはこの種のセンスすら持ち合わせていない子が結構、多い。そういう子等にとっては石川 繁之のような指導は一つのステップアップとなるだろう。

 だが、エチェバリアのプレーを見てほしい。あまりしなっていないのが解るだろうか。

 

 もちろん「しなり」を否定する気は毛頭ない。しなりは野球選手にとって非常に重要な能力だ。しかし、もう一段上のレベルに行くと、そのしなりを「必要最低限だけ」使う。体幹が動くからだ。体幹で生み出した波動を末端に効果的に伝達するためには過度なしなりはむしろ邪魔になる。末節部を「ある程度」体幹にロックさせた上で、体幹と末節が連動する状態を作る必要がある為だ。その「ロック」が効いた上で「しなる」。これこそが最上級の身体の使い方だ。「しなり」を「これみよがしに」使っているうちはまだ二流だと言う事だ。悪いとは言わないが、野球センスが進化する過程の一段階に過ぎない。

 日本人の場合は体幹の動きが悪い。そのため末節を過剰にしならせて使う事で動きの波動を生み出そうとする傾向が有る。そして、この事が「日本人の長所はしなやかさだ」という一般的な論調につながっている。しかし、黒人も白人も柔らかい選手は柔らかい。「しなやかさでは日本人も負けていない」というのが正解である。

2015年4月27日月曜日

ビリー•ハミルトン



 リッキー•ヘンダーソンに続く次世代のスピードスターである。今期も既に13盗塁でトップに立っているので、既にその時代は始まっていると言って良い。この動画では盗塁の構えに注目してほしい。二塁側の腕、つまり右腕を下げている。こうする事で体が左に捻られ、左脚股関節が割れるので、スタート時に左脚股関節の絞り、つまり蹴りが使いやすい。そして、また帰塁する時も頭からの帰塁がやりやすい。

 ただ、このハミルトン、脚は速いがスタートはそれほど上手いとは思わない。下の写真のように、脚が地面から離れずに腰が浮き、上体があおられて二塁方向に向くのが遅れている。おそらく構えで少し手を前に出し過ぎているためだろう。こうすると爪先荷重になりブレーキ筋である大腿四頭筋が効きやすいからだ。




2015年4月26日日曜日

オバマステップ

 身のこなしについての話。オバマ大統領は身のこなしという点においては素晴らしい。一流アスリートはもちろん、1流の歌手や俳優に通じるものが有る。
 下の動画の階段の降り方を見てほしい。(8.20あたりから)肘を曲げて手を体の前に出す。こうする事で胸椎が後弯した状態をキープしやすいので脊柱が適切なS字を描き、骨盤が前傾するのでハムストリングスが使いやすくなる。
 通常、階段を降りるという動作は大腿四頭筋でブレーキをかけながらの動作になる場合が多いが、オバマはハムストリングスによる股関節伸展の力を利用して上に弾むようにしながら、前への力を抑制している。これによって非常に軽快に階段を降りる事が出来る。



オバマは常にこのような階段の降り方をしている。

Arrival of Air Force One and President Obama

2015年4月25日土曜日

運動意識論

 野球の動作理論が発達した結果、細部の動きまでもが解剖学的用語(股関節の外旋など)によって明らかになってきている。それ自体は良い事だが、次の事を忘れてはならない。つまり野球の動作には「意識して行う動作」と「無意識下で結果的に起こる動作」の二種類が有るという事だ。この視点が疎かにされているため、研究で明らかになった投球動作や打撃動作の動き(肩関節の内旋など)をそのまま意識的にやれと読み取れるような記述が非常に多い。これでは、せっかくの知識も選手の技術向上の助けになるどころか妨げになってしまうだろう。このことは、そうした理論を全く知らずに高い能力を発揮する選手もいれば、詳しいのに能力が低い選手もいるという事実の一つの説明にもなる。

 具体的な例として、投球動作の中でリリース後に投球腕が内旋される動作が挙げられる。この動作は無意識で起きるのだが、それを「意識的にやれ」と読み取れるような指導がなされている事がいまだに多い。これなどは「スポーツ科学が進化した事による弊害」の典型例だ。(写真=藤浪慎太郎)


 下の動画は元近鉄バファローズの石井浩郎が野球教室でスローイングを指導している所だが、腕を内に捻って投げろと言っている。



 意識的動作と無意識的動作は、原因と結果の関係で結びついており、一つの意識的動作の結果、多くの無意識的動作が起きる。投球や打撃において、意識するべき動作というのはそれほど多くは無い。


無意識的動作の典型的なものが打撃における手首の返しである。しかし、ややこしい事に手首の返しは無意識で起きるが、その動きが起きた事は「認識」する事が出来る。人間の体には自分の体の中で発生した動きを感知して脳にその情報を送り届けるシステムがあるためだ。「無意識で起きるが認識する事は出来る」。。少しややこしいので私はこうした種類の動きを『オートマチックな動作』と呼んでいる。

 オートマチックな動作という概念はBPL理論の中で非常に重要な位置を占める。このオートマチックな動作が生じる原因は以下の二つである。

1)伸張反射など筋肉の反射機能
2)物理的な力



1)について。
 筋肉には伸ばされると縮もうとする働きが有り、この働きを伸張反射と言う。伸張反射では筋肉が伸ばされたという情報が脊髄神経(背骨の中を通っている神経)に伝わると、脊髄神経が筋肉に対して収縮しろと言う指令を下す。脳は関与しない。


2)について。
 重力でヘッドが下がったり、前脚が着地したり、あるいは遠心力で腕が伸びたりする動作は物理的な力によってオートマチックに起きる動作であると説明出来る。


 オートマチックな動作は上記のように二つの経路によって起きる。技術指導を行う場合、事前にこうした基礎的事項の説明と知識の共有を行っておく事が大事である。30分とかかる事ではないが、その手間を割く事により、その後のコミュニケーションのスムーズさと深さが違って来るからだ。「難しい専門用語は使わない」と言い張ってこうした行程を避けると、いつまでたってもコミュニケーションに深みが生まれず、上辺だけのアドバイスに終始することになるだろう。
 野球の動作では特にオートマチックな動作が多い。指導の現場において、オートマチックな動作を「意識的にやれ」と言うアドバイスがなされている事が多い。これは近年になってスポーツ科学の知見が野球の技術論に多く流入した結果でもある。言うまでも無く、上記のような「運動意識論」を軽視した指導では結果は出にくい。BPL理論ではここに大きな重点を置いている。



股関節の運動理論

  BPL理論は、股関節の運動理論とそれに基づく各種ストレッチ、トレーニングを提案しているが、そのテーマは大きく二つに分けられる。

1)腸腰筋によって骨盤が前傾した姿勢を作り、ハムストリングスを有効に使う

 黒人は腸腰筋が非常に発達しており、そのために骨盤が前傾している。この結果、ハムストリングスの力を使いやすく、これが彼らの運動能力の高さの大きな原因となっている。

 ただし、骨盤前傾は一般的に間違った解釈をされている。多くの本やサイトでは背中を反ってお尻を突き出した姿勢を骨盤前傾と称しているが、こんな姿勢ではスムーズに動けるはずも無い。本来の骨盤前傾とは、下の写真のように脊柱のS字カーブが効くため、胸椎の後弯が生じる。


 では腸腰筋とハムストリングスを鍛えるためには、どうしたら良いのか。BPL理論では一般に普及している腸腰筋やハムストリングスのトレーニングを殆ど全て否定している。実際に、考察の質が低く逆効果が強いために使い物にならないからだ。もちろん、独自のトレーニングメニューを多数取り揃えている。

2)股関節の斜め回転理論

 股関節はボール&ソケットの構造と斜めの関節ラインを持つという特徴があるため、その運動は斜め回転になるのが自然であるという理論。


 この斜め回転には上向きの斜め回転と下向きの斜め回転が有る。上向きを「割れ」と言い、下向きを「絞り」と言う。この斜め回転は打撃や投球の腰の回転はもちろん、様々な競技の中で方向転換などの際に重要になる。フットワークの向上のために欠かせない要素だ。


 BPL理論ではもちろん、この股関節の割れと絞りの能力を高めるために様々なストレッチやトレーニングを用意している。



パンチャーとスインガーの分類

〜スイングメカニズムの本質的な原理は二つある〜

 「ヒトがその肉体の末節部を加速するための原理は1つである」「色々な打ち方が有るが、打撃の本質は常に一つ」。。そう言えた方が楽だし、話としてもスッキリしていて受け入れやすい。しかし、現実はそうでは無かった。スインガータイプとパンチャータイプの二種類に分けられるのだ。なお、この分類は打撃と投球のどちらにも当てはまる。





 走る時のスタートの仕方に例えるのが解りやすいかもしれない。段階的に加速していきMAXに持ち込む方法(スインガー)と、瞬発的にスタートを切り、いきなりMAXに持ち込もうとする方法(パンチャー)が有ると言う事だ。

 ただし、二つのタイプはあくまでも別個に完成されたものであり、上手いと下手の差では無い。完成されたパンチャーはもちろん素晴らしいが、同様に完成されたスインガーも素晴らしい。一方、パンチャーだろうが、スインガーだろうが、下手は下手である。

 スインガーは動き始めてからスイングスピードをMAXに到達させるまでの時間がかかるという特性が有る。打撃投球ともに、この特性が近代野球のニーズに合わなくなり、その数を劇的に減らしてしまった。特に打撃の場合、メジャーリーグではトップレベルの選手はほぼ例外無くパンチャータイプに分類される時代になっている。
 つまり、この分類法は良く有る「日米比較」では無い。むしろアメリカ球界の中の新旧比較と言った方が適切である。日本球界もその影響を受けているが、アメリカほど変化は劇的では無い。

 流行に乗れと言っているのでは無い。最低限、自分のタイプを認識してプレーしてほしい。その上で、それぞれの特徴に合わせて自分の技術を組み立てて行ってほしい。まだまだスインガーが活きる道も残されている。

 長期間にわたる研究の中、膨大な数の打撃投球フォームを観察する事によって、パンチャーとスインガーと言う異なる2つのメカニズムの存在が炙り出されるように明らかになっていった。そして、そのメカニズムの違いは、技術論、練習法、適応する道具、戦術の違いにまで繋がって行く。この二つのメカニズムの違いを理解した人は、その知識無しに打撃、投球の指導をする事の無謀さを悟るだろう。

〜パンチャーとスインガーの本質的な違い〜

 この分類法は単なる外見的なフォームの違いに言及するものでは無い。メカニズムの根幹をなす「加速システム」による分類である。車に例えると、ガソリンで動いているか電気で動いているかの違いである。

 スインガータイプの場合、体幹部、下半身で先行動作を発生させ、そこで生み出された力を利用して腕を振る。腕は自ら振ると言うよりもむしろ「振られる」と言った感覚に近い。打撃で「力を抜いてヘッドを落としてやるだけ」等と言う 感覚的技術論はスインガーのそれである。



 パンチャータイプの場合、体幹部、下半身での先行動作は必要無い。自ら瞬発的に力を発揮して一気に腕を振り抜く。もちろん、先行動作が有っても良いが、少なくとも加速メカニズム上は必要無い。自ら大きな力を発揮する意識が有るので、強く打つ、あるいは全力で投げる等の技術論的表現が適合する。



 以上が、パンチャーとスインガーの加速メカニズムの最も本質的な違いである。この根本的な違いに付随して様々な「フォーム的な違い」が生じるが、それらはあくまでも枝葉末節に過ぎない。
 紛らわしいのは、例えば打撃の場合、「準備動作が小さいスインガー」や「準備動作が大きいパンチャー」がいたりする事である。つまり如何に準備動作が小さくても、その力を利用して加速するのであればスインガーだし、準備動作が大きくても最終的に自力で出力するのであればパンチャーであると言う事だ。

 下の動画は、その「紛らわしいケース」の実例である。実践者であれば、紛らわしい例まで見分ける必要は無い。ただ、実践する感覚が有れば典型的な例(このページ冒頭の動画)については解るようになるはずだ。



 重要な事は、この分類法は前述のように「上手いか下手かの違い」では無いと言う事だ。一方が良くて他方が駄目という話では無く、むしろ「どちらも正解だが、中途半端はいけない」という事を理解してほしい。どちらを実践するにしても、中途半端はいけない。自分が選択したタイプに徹しきる事が重要である。

〜パンチャータイプの基本メカニズム〜

 ところで、パンチャータイプの加速メカニズムに対して一つの疑問がわき上がると思う。つまり「それって上半身に頼った力任せじゃ無いの?」という疑問である。結論から言うと、そんな事は無い。そして実はここの所にBPL理論の核心的ポイントが有る。

Anticipatory Postural Adjustment (APA)先行随伴性姿勢調節

 以下APAと言う。APAとは簡単に言うと「身体の一部を瞬発的に動かそうとした時、実際には他の部位が先行して力を発揮する現象」であると言う事が出来る。  
 典型的な実験手法としては直立姿勢から合図に反応して素早く両腕を挙上すると言うものが有る。この時、筋電図を計測すると腕を挙げるための三角筋よりも先に、脊柱起立筋やハムストリングスが無意識下で先行して活動する事が解っている。

図=APAの実験における筋収縮の順序を表すグラフィック

 この現象、つまりAPAは下の動画のような動作でも確認できる。この動画では静止した構えから瞬発的に力を発揮して、両腕で前方にパンチを打とうとしている。そうするとまず下半身と体幹が出力して重心を目的方向に運ぶ。その結果、相対的に肘が後方に引かれる事になり、テークバックしたのと同じ効果(テークバック効果)が生まれる。



 つまり、こういう事である。構えた状態からテークバック等無しにいきなりバットを出してスイングしようとしても、実際には体幹部や下半身が先に出力して重心移動が起きる。このとき反作用でグリップが捕手方向に引かれるため、オートマチックにテークバックが起きる事になるのだ。下図は、このメカニズムを表現している。オレンジ色は筋肉の出力を意味する。(モデル=ジェイソン•ジアンビ)

 ジェイソン•ジアンビ(終盤に横映しあり) 横から見るとステップもテークバックも有る。しかしジアンビはステップしてテークバックしてからスイングしているのでは無い。スイングしようとした結果、オートマチックにステップとテークバックが起きている。 つまりアジアンビの意識の中では、構えから直接バットを出そうとしているのだ。そう思って、ジアンビになったつもりで動画を見てほしい。

 下の動画はBPL理論の実践者によるもので、良く理論を理解した上での実技である。この動画では、「音の合図に反応して、構えた状態から準備動作を取らずにいきなりバットを出し、可能な限り素早く振り抜く」と言う事をやってもらっている。その結果、ハイスピードで見ると解りやすいが、まず最初に下半身が大きく出力し、ステップと重心移動とテークバックをオートマチックに引き起こしている事が解る。この始動時の下肢出力はもちろん無意識で起きている。そして、この現象は一定の説明と手順を踏むと例外無く全ての選手に確認する事が出来ている。


 一方、スローイングでも同じ事が起きる。下の動画では、「ドッジボールを持った投球腕を始めからトップの位置に構えておき、軸脚に体重を乗せた状態を作ったら、そこから瞬発的に力を発揮して出来るだけ速い球を投げる」という事をやっている。その結果、オートマチックに重心移動とテークバックが起きる事が確認出来る。


 もう少しピッチングに近い動きで見てみよう。下の動画では前脚を挙げて後ろ脚に体重を乗せた状態を作ったら、そこから瞬発的に力を発揮して一気に投げるように指示している。「投げるぞ!」と意識した瞬間をスローモーション動画でモノクロに効果音を入れて表現している。ボールを加速しようと意識した事によりAPAによる下肢出力が無意識下で起こり、その結果重心移動が起きている事が解る。重心移動と連動してグラブ腕と投球腕も自然に割れる。


 こうしたメカニズムが働くため、パンチャーのように下半身、体幹部の先行動作を利用せずに末節部を加速させようとしても、実際には下半身、体幹部が先に力を発揮する。その結果テークバック効果を利用できるので、下半身を含めた全身の力を効率的に使う事が出来るわけだ。以上の説明で「パンチャーが上半身に頼った力任せでは無い」ことが理解できるだろう。


 さらに、始動時にはAPAだけでは無く、「動作前筋放電休止期=Pre Motion Silent Period(PMSP)」と呼ばれる現象が起きる。簡単に言うと瞬発的に大きな力を発揮しようとした瞬間、筋肉は無意識下で一瞬だけ活動を停止する(弛緩する)と言う事だ。誤解されやすいのだが、これは意識的に力を抜く「脱力」とは全く別の現象であり、あくまでも無意識で起きるものである。例えば下図のように腕相撲で合図を聞いてから実際に力を発揮するまでの間にPMSPは起きている。


 面白いのはAPAもPMSPも、同じ条件下で同じタイミングで起きる現象であると言う事だ。つまり、瞬発的に力を発揮しようとした、その瞬間である。瞬発的に力を発揮しようと脳で決定してから実際に身体が力を発揮するまでには僅かなタイムラグが生じる。このタイムラグの間に発生するのがAPAやPMSPであると言う事だ。

 始動時にAPAによって下半身、体幹部が力を発揮して重心移動が起きるとき、上半身ではPSMPが発生している。このタイミングで上半身の筋肉が弛緩している事によって、腕が柔軟に動いて充分なテークバック動作が起きるわけだ。下図の青色はPMSPによる筋肉の弛緩を表現している。

 以上が、パンチャータイプの基本メカニズムである。つまりパンチャーでは腕の加速を意識した瞬間(解りやすく言うとスイッチをONにした瞬間)に、APAとPMSPが発生する。その結果、重心移動やテークバックがオートマチックに起きて、末節部の加速を効果的に行うための下準備を行ってくれる。そして、この「スイッチをONにする瞬間」の事をパンチャータイプにおいては「始動」であると捉える事が出来る。


 下の動画はパンチャーにおける始動の瞬間を「モノクロに効果音を入れたコマ」で表現している。始動のタイミング、始動に至るまでの動きには幾つかのバリエーションが有ることが解る。

 

 ちなみに重要な事だが、APAとPMSPは全力を発揮しようとするほどに、その働きが顕著になる。そのため、パンチャーでは「思い切り」という事が非常に重要になってくる。全力で打ち、全力で投げると言う事だ。「力を抜けば抜くほど打球が飛ぶ、指先が走る」というのはスインガー的な技術論であり、パンチャーでは残念ながらそのようにクールにはいかない。パンチャーとは、基本的にはアツい打ち方であり、投げ方である。

スポーツ科学の定説を覆したBPL理論

 「スイング動作は体幹部、下半身から力を発揮して、その力が連鎖的に上半身に伝わる運動である」というのが現在のスポーツ科学の定説である。そのため、そこから導かれる技術論は常に「下半身を使え、体幹部を使え」という「下半身、体幹主導主義」となる。しかし、パンチャーの基本メカニズムが示すように、いきなり末節部から加速しようとしても、下半身や体幹部は無意識下で先行動作を起こす。そして、その結果として導かれる動作(パンチャー)は意識的に下半身で先行動作を起こした場合の動作(スインガー)とは全く異なる。この事が判明した以上、現行のスポーツ科学を下敷きとする打撃や投球の理論は、大きく見直される必要にさらされていると言えるだろう。


関連コラム


アデイニー•エチェバリア



 個人的には現役MLBショートストップの中ではNO1だと思っている。しかし、そうしたランキングの上位に入って来る事は無い。打力が弱い事も関係しているのだろうか。

 注目したいのはバランス感覚。どのような崩れた体勢でも瞬時に軸を形成し、正確にスローイングしてくる。そのバランス能力に近いものを持っている野手を一人だけ見た事が有る。イチローだ。「崩された中でバランスを取る能力」これがイチローの中で最も突出している才能である。例えばイチローなら自転車でスリップ転倒しても殆どケガしないだろう。しかし、エチェバリアはその上を行っている。

 ハムストリングスが使えて、体がリラックスすると、こうしたバランス感覚が生じる。他競技の黒人選手にも、それは見られるが、それらと比べてもエチェバリアの能力は高い。捕球した後にボールをジャッグルして遊ぶ動きまでも、一連のリズムの中に組み込まれている。まさに芸術である。

 オジー•スミスは派手なので凄さが、見た目にも解りやすい。しかしエチェバリアの場合は、それよりは地味だ。なので見る人にセンスが無ければ、その凄さは解らないだろう。私の中ではスミスに次ぐ存在である。守備に関して、今の球界では群を抜いている存在であると思う。よーく見てほしい。全ての動き、一挙一動に無駄が無く、コントロールされつくしている。プレー後の動きまでもだ。


ライアン投法



 最近、このような脚の挙げ方をする投手が増えている。もちろんラボでも教えて来たものだが、私がアップしている動画がその切っ掛けの一つになっているのかもしれない。ただ動画の投手を見ても不完全だ。ヒールアップしなければ「ライアン挙げ」が出来ないというのは、まだライアン挙げ初心者である証である。

 私自身、このライアン挙げを1995年頃からずっと研究してきた。もちろん、山城のようにヒールアップしないと出来ないというステージも経ている。理論立てて理解し、人に教えられるようになったのはラボを始めてからの事だ。

 そういう立場から言わせてもらうと日本の投手のライアン挙げは「なっていない」の一言につきる。なぜ素直になって私に教えを請おうとしないのか。

 さらに日本のライアン挙げの投手の特徴はフィニッシュがターン&タンブルにならないと言う事である。要するに(ラボで教えた投手を除き)日本人のライアン挙げは、今のところ取って付けた飾りのような物でしか無い。全体の体使いが日本式のままで脚の挙げ方だけ外国人式になっているという事だ。

 

2015年4月20日月曜日

Baseball Performance Labo

清宮幸太郎



 今話題になっている早実の1年生。確かにステップするときの後ろ脚の使い方、割れ方、重心移動のリズム、着地からバットが出るタイミング、ハンドリングの柔軟性、着地後に一泊の間を作る変化球の打ち方など、プロ顔負けの完成度である。

 が、敢えてここで予言したい。この打者は大した打者にはならない。もちろん、よほどの大きな変化が有れば別である。

 フォーム的には、これぞ日本式といった感じだ。巧さも有るので、このままプロでもやれてしまう。そこのところが逆に問題で、器用に出来てしまうためにハングリーさが湧いて来ないタイプだ。松井秀喜の高校時代の方がまだ伸びしろと魅力を感じた。

 今の打ち方のままでは「井の中の蛙」そのものである。もう一度、バッティングと言う物を根本的に1から学び直した方が良い。今のままでは上手く行っても日本球界で阿部(巨人)レベルの成績が限度だろう。メジャーでは厳しい。

お問い合わせなど


 基本的にはメールで連絡してください。日時についての取り決め等は文字の方が確実であるためです。なお、メールによる理論に対する感想文などはネット上に公開する事があります。また、メールでの技術的質問はご遠慮ください。中学生以下の申し込みについては保護者に確認をとる場合があります。

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BPL理論とは


BPL(Baseball Performance Labo)理論

〜成功したいなら一刻も早く日本式野球技術を捨てろ!〜

 日本人と外国人のパフォーマンスを比較すると、やはりトップレベルにおいては大きな差が有ります。これは何に根ざしているのか? その答えを私は知っています。
 外国人の打法や投法は、ポイントを押さえれば日本人にも取り入れる事が可能です。そしてそれ以外に彼らに追いつき追い越す方法は無いと考えます。


 「日本人には日本人に合ったフォームが有る」と自らの殻に閉じこもり、進歩を拒み、未だ低レベルな打者と投手を輩出し続けているのが日本野球界です。少年野球〜中学〜高校〜大学〜社会人と続く「日本球界」にドップリ浸かってしまうと、貴方の才能は開花しません。濁ったぬるま湯のような世界から抜け出して、周囲と違う次元でプレーしたい。そんな志の高い選手の期待に応えられるのがBPL理論です。

 また、BPL理論では単なる打撃投球の技術だけでは無く、基礎となる身体作りにまで介入します。あらゆるスポーツで圧倒的な能力を発揮する黒人系選手の身体機能に近づく事を主眼として、豊富な股関節トレーニングメニューをお教えします。

打撃実践例


投球実践例


BPL理論の3大テーマ





BPL理論が目指す打撃と投球とは



2015年4月19日日曜日

真に「解りやすい理論」を求めて


(1)ビジュアルの重要性

 ある身体運動学の書籍には次のような一節が有る。

「両足を開かずにそろえて、抱く人の胴体に押しつけ、膝と腿の裏あたりから腕を回して抱っこする」と快適そうな顔をする赤ん坊も存在するのです。

 これを読んで、描写されている動作が正確にイメージできる人がいるだろうか。「たぶんコレの事だろう」というのは解るが、あまりにも舌足らずな文章だ。書籍には写真や挿絵は無い。身体運動理論の解説には図と写真によるアシストが必要不可欠であるが、それは書き手に表現者としての力量を要求する。この分野の書き手には多くの場合その資質が欠如しているので、実際の所、身体運動学系の本の殆どは読めたものでは無い。

(2)専門用語の重要性

 「股関節の外旋」などの専門用語を使う事を嫌う人がいる。「それでは選手に伝わらない」というのが彼らの言い分だ。しかし私は実際に小学生に対してもそうした用語を使って理解させて来た。そもそも、この程度で難しいと愚痴をこぼすような輩は始めからやる気が無いのだから甘やかすべきでは無い。
 
 また「専門用語の使用を嫌う人」が良くやる間違いが、例えば「倒す」とか「畳む」とかいった日常の用語に置き換えて表現する事だ。しかし、こうした表現はその人独自のローカルなものであるため、簡単にしているつもりが逆に問題をややこしくしてしまっている。

 専門用語を使う時にもっとも重要な事は、最初に使うときにその言葉の説明を丁寧にして理解させておく事である。そのプロセスを踏めば、専門用語の存在が却って相互間の意思疎通を容易にしてくれるだろう。

(3)「簡単な文章」では無く「やさしい解説」が重要

 技術論を簡単に説明しようとすると極短い文章で表記する事が出来る。しかしそれでは正確に理解させる事が難しいので、一部のセンスが有る選手しか、表現者の意図を汲み取る事が出来ないだろう。

「簡単な文章」は実は「不親切な説明」なのである。しかし、この事を理解できない人が多い。親切に説明しようとすると、ある程度文章は長くなるが、そうすると「難しい」という不満を漏らす人が多くなるのは残念な事だ。こういう人たちはそもそも国語力が無いのだろうが、さすがに私もそこまで面倒は見切れない。本当に熱心な人にとっては詳しい説明ほどありがたいので、私はそうした人たちを相手にしたい。

「難しい数式が出て来て、そうした知識が無いと理解できない文章」「図による解説が無くて理解できない文章」は駄目である。しかし「読めば理解できる詳しい解説」こそが本当の意味で「やさしい文章」であるのだ。私はこの「やさしい文章」を目指して行きたい。











はじめに

 私の理論が世に出たのは2005年に発表された「メジャーリーグのバッティング技術」が最初だが、その後、数多くの発展改良を加えながらも、その根幹部分は変わっていない。

1)パンチャーとスインガーの分類法(旧トップハンドトルクとウェートシフト)
野球の打撃、投球はその根幹部分(加速メカニズム)の違いにより、パンチャータイプとスインガータイプに分けられる。この2つのタイプの違いを認識しない限り、適切な技術指導は不可能である。

2)股関節運動理論
多くのスポーツで優位に立っている黒人系選手の身体機能の優位性はその骨格的特徴に根ざしている。腸腰筋を適切にトレーニングする事によって、体を作り替えて行けば、彼らに近づく事が出来る。その他、股関節の斜め回転理論もある。

3)随意動作と不随意動作の区別をつける
投球動作や打撃動作は意識的動作(随意的動作)と無意識的動作(不随意的動作)に分けられ、それらは原因と結果の関係(因果関係)で結びついている。意識するべき事はそれほど多くなく、究極的には1つにまで絞られる。それが「ボールを強く打つ」事であり「球を標的に向けて速く加速する」事である。これらは「無心で」と言う表現に結びつく。

 以上の3点を幹として読み解いて行くと、私の理論の大筋を理解できるだろう。

2015年4月18日土曜日

選手と指導者のための野球理論ガイド

 巷には多くの野球理論書があふれている。その事自体は元プロの書いた入門書しか無かった昔に比べると恵まれていると言えるだろう。ただ、多くの指導者や選手は解剖学等の専門家では無いので、これら理論に対する評価を下す事が難しいのではないだろうか。実際、私の目から見ると開いた口が塞がらないほど程度の低いものが評価されていたりする事が多いが、これは指導者や選手にとって良い状況とは言えない。そこで、ここではそうした数多くの野球理論について、評論していきたい。辛口では有るが、私情を排して認めるところは認めていきたいと思う。

★科学する野球 村上豊
 日本における「科学的な」野球理論の第一人者である。相手が王や長嶋だろうと容赦なくコキ下ろす姿勢は素晴らしい。理論的には一つの打ち方の根本を捉えている。しかし、 基礎理論を実践に移す段階でいろいろと間違いをおかしているため、この著者の言う事を全て聞いて打とうとすると、まずトップレベルでは結果を残せないだろう。しかしながら基礎理論そのものは質が高いため学ぶ価値は有る。

★手塚一志
 バッティングの正体、ピッチングの正体、ジャイロボールまでは良かったが、これらはあくまでも「基礎理論」であり、ノウハウにまでは結びついていない。理論を実践に結びつけるという段階では、充分な成果が残せたとは言い難い。この人に全てを任せて打撃、投球動作を作っても、高校野球ですら目立つ事は難しいだろう。打撃理論でも投球理論でも致命的な間違いがいくつか有る。

★立花龍司
 この業界のパイオニアの一人で、その意味での功績においては評価できるが、残念ながら悲しいほど才能が無い。この人の打撃、投球に対する動作理論とトレーニング理論は「プロ野球投手の共通フォーム&習得法」の打撃編と投球編でそれぞれ知る事が出来る。この本では、良いとされるフォームを作る為のトレーニングが氏によって紹介されているが、これがまたあきれ果てて物が言えないくらい程度が低い。断言するが、あのようなトレーニングをしたからと言って望むフォームが手に入るほど生易しいものでは無い。適当にもほどが有る。肩のインナーマッスルをアメリカ球界から導入したために理論家のようなイメージがついているが、実質的には平凡な一トレーナーに過ぎない。

★初動負荷理論 小山裕史
 トレーニング法や生理学には深い知識を持ち、その点では私には到底太刀打ちできないものが有る。実際、実践している選手はケガ無く高齢までプレーしている。(イチロー、山本昌、三浦カズなど)
 しかし、野球に関しては所詮門外漢である。関わった選手を見ても、ほとんど有益なフォーム改造は出来ていない。今期は内川のフォーム改造に関与したらしいが、さりげなさ過ぎてどこが変わったのかも解らないし、内川の成績自体の変化も微妙だ。有名な画家が描くと鼻クソをほじりながらキャンバスに線を一本引いただけでも見る側が勝手に想像して名作に仕立て上げられてしまう。氏の存在もその域に達しつつあるのでは無いか。読めども読めども理解できない氏の難解な日本語を読んでいるとそういう気がする。

★4スタンス理論 廣戸聡一
 著者の言うAタイプとBタイプが存在する事は間違いないだろう。それは私自信も指導の中で確認して来たし、役立ててもいる。これに気がつき、定義化した事については評価できる。しかし、打撃においては典型的なAタイプのフォームもBタイプのフォームも一言で言えば「極端な前軸タイプと後ろ脚軸タイプの悪い例」に過ぎない。したがって、実際の指導の中では双方の特徴を中和する事が一つの大きなテーマとなるのが実際である。
 人間の動きの特性を4つのタイプに分けた所までは良かったのだが、その延長で野球の技術理論を論じる事が出来る程、簡単なものでは無い。野球動作に対する見識が浅すぎるので、野球の技術論としては使えないというのが私の感想である。だいいち、本を見れば解るが、技術を説明するモデルのポージングに野球技術に対する感性やセンスがみじんも感じられない。私がプレーヤーであれば、ああいった写真を見た時点で実践する気にはならないだろう。(実際にスイングしたフォームが良く無いのならまだしも、静止状態で作ったポーズが悪いのでは言い訳は出来ない。)
 また、理論に対する「何故?」の説明がほとんど無いのが残念である。例えば正しい立ち方として「骨盤と肩甲骨を垂直に立てて土踏まずで地面を踏む」と有るが、何故それが正しいのかの説明も全く無い。実際、その正しい立ち方に対する見識も何か勘違いしてるとしか思えないような見識の浅さである。
 「何故」に対する答えを用意していないものは理論では無いので、これでは「1トレーナーの経験論」に過ぎないと言えるだろう。ただ「経験論」故に有用である部分は有るのだが。こういう経験論を積極的に発表していく事自体は有意義である。しかしながら野球動作に対する見識が浅いので、野球理論としては程度が低いというのが私の評価だ。例えるならフランス料理を2,3度しか食べた事が無い状態でフランス料理店を出しているような状態で、そういう人間が作った物は数多くの店で食べ歩いて来た舌の肥えた立場から言わせてもらうと、お粗末としか言いようが無い。

★二軸理論系
 数年前にブームとなった理論で「タメない、捻らない、うねらない」「なんば走法」など、数々のキーワードを提唱し、多くの書籍も発表されている。野球では「野球選手ならしっておきたい体のこと」が、代表作だろう。著者は二軸理論に賛同するトレーナーや大学教授のグループ等のようだ。
 結論から言うと、野球理論としては残念ながら論ずるに値しない。前掲の野球書は代表的な著者である小田伸午(東大教授)と小山田良治(鍼灸院経営)はともに野球の門外漢であり、そこに和田毅(元ホークス投手)のトレーナーとして有名になった野球トレーナーの土橋恵秀を迎えて書かれたようだ。
 また二軸理論は「なんば」との関連で同時期にブームになった古武術系理論ともコラボレーションしている事が多い。古武術の分野に口を出す気は無いが、なんば走法を採りいれたアスリート等はその後どうなったのか?
 また、前掲の書では打撃動作の解説で「のせ」と「はこび」という用語を使っているが、これは手塚一志の「乗せ」と「運び」と同じである。ただ重複を避けようとしてひらがな表記にしているのだが、これは頂けない。同じ表記にして、素直に参考文献に手塚本を記載しておくべきである。

★前田健
 最近にわかに注目されている理論家であるのだが、投球、打撃理論ともに程度は低い。どこの書店に行ってもピッチングメカニズムブックバッティングメカニズムブックが置いてあるしamazonの評価も異常に高いので、私も投打ともに資料として仕方なく1冊ずつ購入している。
 正直、理論的には開いた口が塞がらないほどレベルが低いので評論する気にはなれない。むしろ気になるのは「何がこの著者の理論に信憑性を持たせているのか」という事である。「阪神タイガースのトレーニングコーチという経歴」「大都市圏に複数のジムを構えているという環境、資金力」「大手出版社に記事や広告などが大々的に掲載されている事」などが挙げられる。この理論に傾倒してしまう人は、そうした「体裁」に惑わされやすい人であると言えるだろう。

 ピッチングにおいても致命的な間違いが有る。例えば氏が鉄則として挙げている「着地と同時にトップを作れ」だが、これはむしろ 「絶対にしてはいけない投球指導」の一つである。さらに飽きれるのが「トップさえ作れれば、そこに至る過程は問われない」という考えである。初めて読んだ時は目を疑ったが、信じられない見識の低さである。これほどまでに程度の低い解説を平気で出来てしまう人間に投手を教える資格は無い。打撃に関しては敢えて私が批判するまでも無いだろう。

 断言しておくが、この著者の理論を全て実践してプロ野球選手になる選手は今後、まず出てこないであろう。

★タイツ先生
 前田健を採り上げた以上、レベル的に伯仲しているタイツ先生も採り上げる必要が有るだろう。タイツ先生と前田健の差は「自分の考えを筋道立てて説明する能力の有無」であり、実質的な内容としてはむしろタイツ先生にホンの少しだけ軍配が挙る。理論的にはやはりレベルは低いが、極稀に使えるストレッチの動きを紹介してくれるからだ。
 単なる一実践者から見れば、この人の言説はそれなりに説得力を持って聞こえるのだろうか?しかし、その世界を良く知っている人間の立場で言わせてもらうと「どこかで聞きかじった話を引っ付け合わせて使っているコラージュ感」が半端では無い。また、技術に対する解説も「行き当たりばったり感」が半端では無い。例えば、動物の生態を研究する学者は、自らの観察記録を基に、何らかの説を打ち立てようとするものだ。それで初めて「理論」と言えるのだが、タイツ先生の話は「アリが何時に巣を出て、何匹で何時に戻って来た」というような話を延々続けているに過ぎない。これでは風景画を写生しているようなものなので、技術論になっていない。「見たまんま」を言っているだけなのだ。

★筑波大学系
 日本で唯一、大学に野球を専攻する研究室が有るらしい。つくば野球研究会というそうで、数多くの研究者が在籍し、書籍などに理論を発表したりしている。それを個人的には「筑波大学系」と読んでいるのだが。。何度か関連するものを読んだ事が有るが、その内容は「お粗末」の一言につきる。あまりにも寒々しい内容のものばかりで、真面目に論じる気にすらならない。結局、いくら資金があろうが、肩書きがあろうが、最先端の機器を使おうが、センスが無い人間にはプレーヤーにとって有意義な技術論を構築するのは不可能である。あまりにも才能が無さ過ぎる。
 今後は何か理論を打ち立てようとするのでは無く、その恵まれた機材を使用して地道にスイングスピードや筋力値などのデータを採取する事に専心した方が良いだろう。関連参考書籍としては「バッティングの科学」 「プロ野球打者の共通フォーム&習得法」等が挙げられる。いずれも中高生の夏休みの自由研究レベルの内容 だ。

★宮川理論
 ネット上では賑わいを見せている打撃理論ではある。ただ、理論と言うよりも個人的に編み出した打法のノウハウを紹介しているに過ぎず、動作に対する論理的考察はほとんど無いので理論にはなっていない。それでも、その打法が正しければ問題は無いのだが、ネット上にアップされている動画を見る限り、バッティングセンターの100キロ程度の球を気持ちよく打ち返して遊ぶ程度が関の山の幼稚なものである。 
 しかし、この業界にありがちな「上から叩けの古い指導を批判して父親コーチの気を引く」という手法を非常に強調して採っているため、傾倒して我が子の打撃を壊してしまう父親が増えないように注意を促しておきたい。言うまでもないが、この理論を追求してプロの打者になる事は「ハッキリと」不可能である。ただ、少しかじった程度の打者が活躍する事はあり得る。少しやったくらいでは毒が回りにくいのがこの理論の特徴であるためだ。理由を詳しく書くスペースは無いが、やればやるほど打てなくなっていく理論であり、この理論を真剣に追求すればするほど実践者の打撃はズタボロに壊れて行くだろう。
 全部ホームランを狙えという聞き分けの無い駄々っ子のような持論を展開しているが、この打ち方では体の力が全て伝わらないので、肝心の飛距離も出ないようになって行くだろう。

★縦振り先生
 理論的にはあり得ないほどレベルが低い。手塚一志氏の下で働いていたそうだが、こんな程度の低い後輩をこの業界に輩出してしまったと言う点で手塚氏の責任は問われるべきだろう。理論的な記述が少ないので全容は明らかではないが、アップされている動画を見てもビックリするくらい酷い。この理論をもって営業活動が出来るのであれば、どんな営業の仕事でも出来そうである。その点については認める。

★AXIS-LAB http://www.axis-lab.jp
 Youtubeに動画が投稿されているのを見た人も多いだろう。主にネットを中心に活動しているようだ。理論的にはタイツ先生と近いものが有る。つまり「脱力して身体を柔らかく使え」「道具に働く物理的な力を利用しろ」というありがちな理論である。どこかで聞いたような話が多いという点もタイツ先生と似ている。また、その理論上、高岡英夫や古武術系、二軸理論系の理論とも親和性が高い。要するにそういった物を全て掛け合わせて作られた感じが漂っている。
 この理論が「センスアップ」を標榜している所に、日本の野球選手や指導者がイメージする「センス」というものの問題が浮き彫りになっている。つまり彼 等にとってセンスという言葉は「 身体をしなやかに使う」というイメージとしか結びつかない。こういう人にとってオリックス時代のイチローはまさに神的な存在だろう。しかし、そこが日本人選手の限界であり、私はそれとは違う種類の「センス」を教えるのに苦労する事が多い。
 それにしても、この人の作るものには野球の匂いが全く感じられない。あんな色白の痩せた青年がバットを持って喋っているだけの動画を見せられて、納得する人がいるのだろうか? 語尾がはっきりしない喋り方や「w」が多いのも気になる。この理論に欠けているものを漢字2つで表すと、それは「野球」という二文字になる。そこの所を考え直して、もう少し見ている人間が「野球」を感じるものを作った方が良いだろう。

★馬見塚尚孝
 「野球医学の教科書」 「高校球児なら知っておきたい野球医学」という二冊の本が出版されている。この著者は整形外科医であるから、その点に対する知識は確かなものだろう。もちろん投球腕障害に対しても詳しい。
 しかし、野球技術論になると、これがまた本当にどうしようもない。主に投球動作の技術論を展開しているが、そのレベルはここで紹介している理論家の中でも1、2を争う低さであり、担ぎ投げやアーム式のようなフォームを勧めたり、投手が平地で投げる「立ち投げ」を否定したりと言った酷いものである。まさに驚天動地の才能の無さである。
 どういうバックグラウンドの人間なのかと思ってみて見ると、どうやら筑波野球研究会の幹事であり、前田健の理論を参考にしているらしい(同じ技術用語を使っている事からも解る)。この2つがコラボしてしまったのだから、この低レベルもいたしかたの無いところだろう。
 しかしながら整形外科的な知識の勉強になるので上記の本は全く役に立たないと言う訳ではない。むしろ、その辺の知識を易しい表現で解説している本の一つであると言えるだろう。しかしながらもしこの指導者が我が子のチームに指導に来たのであれば「お願いですから私の息子だけは教えないでください」と懇切丁寧に心を込めてお願いするのが親の役割というものであろう。この本の技術論を真に受けても絶対にピッチングは上達しないと120パーセントの自信を込めて言い切る事が出来る。
 この人を採り上げたのは、この種の専門家が抱える問題を如実に表しているからである。つまり、整形外科医やトレーナーの有資格者が技術を語っていると言うパターンである。こういうケースでは、その人が専門とする分野の知識については正しいが、野球の技術論となると全くのデタラメであるというケースが多い。若い選手や野球経験の無い親父コーチ達は、特に注意したいケースだ。

★野球新理論「捻りモデル」 猪膝武之
 理系の会社員によって書かれた異色作である。野球経験は定かでは無いが、全く無いという事もないようだ。従来の打撃理論を「回転モデル」だと定義し、それに対する新説として「捻りモデル」という自説を主張している。一つの研究結果をまとめたという意味では有意義だが、実践的な指導書では無い。
 この本で良く無いのは「話の進め方」だ。この著者が言うような「回転モデル」の打撃など、日本の野球では教えられていないし、そうした違いが日米の差に繋がっていると言う事も無い。かつて手塚一志が「ダブルスピン」と言う理論を発表したときに対立する概念として「二重振り子」という用語を持ち出したが、それと同じ手法を使っている。(コッチの方はそんなに的外れでは無い)
 科学する野球を参考文献に挙げており、それと似た論調で、なんやかんやと日本球界の打撃指導を批判しているが、それを言うだけの力量はとてもでは無いが、この著者には無い。そういう話をする前に、まず自身の理論をもう少し深める努力をした方が良いだろう。
 確かに理系の学会では、この著者の言うように「回転モデル」が定説になっているのかもしれない。しかし、それと野球指導の現場は全く関係が無い。つまり勝手に「日本球界ではこういう指導がされている」と決めつけて、勝手に「だから日本球界の指導は駄目だ」と言っているわけだ。根も歯も無い噂を立てられて非難されるようなものであり「日本球界」にとっては全く迷惑な話である。
 この本を出したところまでは良かっただろう。ただ、とてもでは無いが才能と力量が有るとは思えない。悪い事は言わないから本業に専念した方が良い。

★浜田典宏 これでエースを目指せ!厳選36冬トレメニュー
 1990年代にエンゼルスと契約してマイナーリーグでプレーした投手が、その後解剖学などを学びトレーナーとして活躍している。NPB経験は無いらしい。
 経歴はさておき、その著書の内容だがタイトルの付け方に大きな疑問が残る。というのも看板としている「36種のメニュー」は非常に程度が低く、投球技術の向上にはまず結びつかないというものばかりだが、その反面、後半部分の投手としての実践的なノウハウを紹介している部分は「1プレーヤーの実体験に根ざした経験論」として興味深い。
 一方、投球動作の理論については、ほとんど理論的な説明が無く、氏が雑誌などに書いている記事を読んでも、大した事は書いていない。
 要するに、こういう事だ。この人はまず第一に「マイナーリーグでプレーした投手である」そして第二に「トレーニング知識を勉強中のごく平凡なトレーナーである」と言う事だ。どちらもいくらでもいる人材だが、この2つが咬み合わさると、そこに大きなネームバリューが生じる。しかし、投手のためのトレーニングメニューを36個挙げろと言われて、こんな使い物にならない低レベルなものを平気で紹介できてしまうようでは少なくとも技術指導の才能は無い。36種のメニューについては、総合的には「普通にダッシュだけした方がマシ」という程度のものだ。

★安藤秀 野球に革命を起こすバッティング理論
 主にゴルフの理論家であり、その延長で野球理論を書いているらしい。とは言え、立教大学の野球部でプレーした経歴はあるようだ。
 ゴルフの方はどうなのかは知らないが、打撃理論としては全く酷いものである。内容をかいつまんで説明する気にもならないが、その辺の草野球選手がyoutubeの動画で5分くらいで説明しているようなくらいの話だ。あるいは、その辺の学生が思いつきで1ヶ月くらいだけ書いてほったらかしてあるような野球理論ブログに書いてあるようなレベルの話だ。
 ちょっとビックリしてしまうような程度の低さである。そこで経歴を見てみると「筑波大学でスポーツ運動学を研究し、博士号を取得」と書いてある。「筑波大学系」というのは、これからもこの業界の最下層を独走し続けるのか。まずは少なくともタイツ先生や石川繁之くらいのレベルには達してほしい。

2015年4月3日金曜日

第三章第一部


価格 4500円



 第3章第1部の完成を持って、教科書シリーズは私の中で最高傑作と呼べるものになりました。特に第3章第1部は最も力の入った作品です。とりあえず試しに一つという方にはコレをお勧めします。

 内容的にはパンチャーのスイングメカニクスをスインガータイプと比較しながら、その基礎的事項を徹底的にビジュアライズされたメディアでお伝えします。それぞれのスイングを3方向(横から、前から、後ろから)見る事により、そのスイングメカニクスは読者の脳裏に焼き付くでしょう。

 「前で打つタイプ」「近いポイントで打つタイプ」「後ろに残すタイプ」「フロントレッグヒッター」「引き手で打つタイプ」「押し手で打つタイプ」こうした様々な「タイプ」の根底に有るのはスインガーとパンチャーの違いです。これからの打撃理論はトップハンドトルク理論抜きには語れません。選手のみならず全ての指導者必携の作品です。

ダイジェスト動画

恒例サービスアップロード動画(トルク横から)


※)最終校正前の状態です。連続写真などの一部差し替えが有ります。