2013年7月2日火曜日

アランさん 2回目

ご来場ありがとうございました。


今回、置きティーではかなりスイングスピードが出ています。しかし、素振りではあまりスイングスピードが出ていません。そして、置きティー、素振り、新聞紙打ちで全て感じが違います。

ただ、これは程度の差こそあれども、誰でもそう(素振りと打つ時のフォームが違う)なので、あまり気にする必要は無いでしょう。山下さんや林さんは素振りのフォームと打つ時のフォームがかなり近いですが、それは私の理論では実際の試合のフォームで素振りすることを重視しているからです。(取り組み始めた頃は、もっと素振りと打つ時のフォームが違う感じでした。) 日本のプロやメジャーリーガーを見ていても、素振りと打つ時のフォームは全然違うのが普通です。そして、メジャーの強打者でも、素振りは「凄く無い」と言う打者はいます。

アランさんの場合、今の段階で重要な事は、とにかく1回でも多くバットを振る事によってスイングスピードを速くして行く事です。

今回にしても、素振りではあまりスイングスピードが出ていないのに、置きティーを打ったら、かなり速いスイングスピードが出ています。つまり、素振りをしている時は解らなくても、振っている事で、着実に「速く振れる身体」が作られていると言う事です。そして、現状では置きティーの中で、その能力が最も発揮されています。最終的には、当然、試合の中で最も能力を発揮出来るようにする必要がありますが、今の段階ではまずその「能力」を向上させる、つまり「速く振れる身体」を作る事が最も重要です。

そして、効果の出方が地味で時間がかかるのが素振りですが、これは素振りに限らずバッティングとは基本的にそういうものです。例えば3日間思いっきり振りまくって、その時はあまり効果が感じられなくても、1日休んで、次の日に振ってみると「アレッ」と言う感じで少し今までに無い良い感触が出ている。ただ、それも周囲の人には解らないような変化。そういう繰り返しで、少しづつ上手くなり、それが積み重なって進化して行くと言う事です。それと、ある時、急に「大きな進化」が起きる時も有ります。しかし、それは進化を感じられない状況の中でも、ある意味惰性ででも良いので継続して振り込んでいると言う下地があってこそ可能になる事です。そうした意味でも普段からバットを振り込んでおく事が必要になるわけです。(例えるなら、売れなくても毎日コツコツ真面目に料理を作り続けて来たレストランが、料理雑誌に採り上げられたのをキッカケに急激に有名になるようなものです。)

ちょっと長い話になりましたが、要するに満足のいかないフォームでも良いので、今はとにかく振り続けてくださいと言う事です。あと1年、この打ち方で振り続けて、さらに股関節のトレーニングを継続していけば、来年の今頃には凄いスイングスピードになっていると思います。まずはそれが第一目標でしょう。そして3回生の春くらいから実践対応能力を徹底して磨いて行くと良いでしょう。ゴチャゴチャと長い文章になってしまいましたが、要するに今一番してほしく無い事はフォームの事などを考え込んでしまって振るのが止まってしまう事です。

何度も言うようですが体格が有り、根本的に力が有るのでシンプルな取り組みが出来る事が強みです。

つまり

●950g〜1キロくらいのバットを振り込む
●股関節を中心としたストレッチ、トレーニング
●実践対応能力を磨く

と、このくらいで良いわけです。

続きます。

分析編

1)実打のフォーム

前から飛んで来るボールを打つ時のフォームですが、これを見ると速い球に手こずっている一つの理由が解ります。



始動する時にかなり大きく後ろへの重心移動が起きています。この重心移動のぶんだけ振り出しが遅れるのでしょう。

このようになる原因の一つは、構えでの捻りが足りないからです。(捻りが足りてなくても後ろに戻らない人はいますが、だいたい後ろに戻る人は捻りが足りない場合が多いです。)

写真のように後ろ脚股関節のラインに沿った捻りを入れて肘を挙げて構えると、後ろ脚の外側のライン、右の脇腹、右の肘にかけてのラインに筋肉の張りを感じます。そして、そこに「後ろの壁」(身体が後ろに動くのを止める壁)が出来ます。この「捻りによって出来る後ろの壁」が出来ると、始動した時に後ろに戻りにくくなります。(この構えだと後ろ脚の方が地面を押す力が、かなり強くなります。そうすると前脚で地面を押す力によって身体が後ろに戻る動きが起こりにくくなります。)
           
            
もちろん、強調しすぎると力みに繋がりますが、こうした構えからのスイングを素振りで練習し、フィーリングを掴んでから速い球を打つと、振り遅れにくくなると思います。

このように、捻りと、それに伴う股関節の割れによって身体の捕手側にハリが出来る感覚を割れ絞り体操で掴む事が出来ます。

続きます。

2)グリップ

今回重点的に行なった「グリップ」について、もういちど復習的な意味で書いておきます。スイングの始まりとなるのがグリップなので、グリップを良くする事がまずは大切になります。グリップが悪ければ振るたびに悪い癖がついていく可能性も有るためです。

まず、第一に、体幹部操作の結果としての前腕部の回内。そしてグリップのコックです。(股関節の割れ→胸椎の後彎→肩関節の内旋→前腕の回内→グリップのコック)

この捻りは前腕部の二本の骨が交差することによって起こります。そのためのトレーニングとしてはバットを振り子にようにぶら下げたり、手で前腕部を捻るものがあります。

手首が背屈すると、腱固定効果で指が自然に曲がり、また、背屈することでバットを乗せるタナが生じます。ここでは、このタナが出来る事がポイントになります。

このタナにバットを乗せて、前腕部の二本の柱で、下図の野球のトロフィーの構造によりバットを支えるわけです。
まずは肘をあまり挙げない、小さな構えでこの感覚を掴みます。ショートストロークスイングのグリップで、グリップはやや絞り気味です。(両手の人差し指が真っすぐ前を指す状態)

写真のフィルダーの構えも、丁度、そんな感じになってます。

さらに、大きなポイントとなるのは、そこから体幹部操作が効き、捻りが深く入ってヘッドが投手方向に向き、グリップも絞り気味からやや開いて行った状態での形です。

ここで、両手の位置関係が変わる事によって、それぞれの役割が変化します

まず、ボトムハンドは、写真のように、下から支える格好になります。この時も手首の背屈によって出来たタナを使い、前腕部の骨で支えます。

さらに、トップハンドはヘッドが投手方向に向く事で、上から掴む形になります。

これによって、トップハンドは上から掴み、ボトムハンドは下から支える形が出来るわけですが、それが一番、腕に負担のかからない両手の役割分担となります。

写真)ややヘッドが投手方向に向き過ぎですが、比較的、出来ている(下から支え上から掴む形が出来ている)例です。

「上から掴む」と「下から支える」が出来るとバットを構えるのが楽です。そして、そのためには、ヘッドが投手方に向く必要があります。ですから、構えでは捻りが入って、ヘッドが投手方向に向いた方が楽なのです。

※)補足
ただ、この構えでは肘が大きく挙る事で、どうしてもトップハンド側の三角筋が疲労しやすくなり、そうなるとバットが下から出やすくなります。(三角筋は肩関節を外転させる筋肉なので、それが効かなくなる事で、肩が簡単に下がってしまう。)

これは、ある意味、この打ち方の弱点なのですが、そのために構えの時間を短くする事なども重要になってきます。そのために、補助的トレーニングとして構えの力を付けるトレーニングや(1)ストレッチ(脇腹の筋肉を伸ばすストレッチをすると肘が挙りやすくなる。)も必要になります。また、(2)構えでハムストリングスが効いてくると地面を押す力が強くなるので、それとバランスをとるようにバットを持ち上げる力が発揮されるので、構えでの腕の負担がかなり軽減されます。そして、もちろん、(3)三角筋に負担がかかりやすい肘の挙げ方と負担のかかりにくい肘の挙げ方があります。

1)上に挙げた腕をやや内に捻り、身体を側屈させて脇腹をストレッチする。こうするとトップハンドの肘が楽に挙るようになる。


2)バットをバーベルのように担ぎ上げて、両脚で地面を押すと、バットを持ち上げる力が自然に発生する実験。


3)写真上は体幹部操作の結果としての肩の内旋が効いた肘の挙げ方。三角筋に負担がかかりにくい。懐も大きく開く。 一方、写真下は三角筋に頼った肘の挙げ方。

写真)三角筋に頼った肘の挙げ方(マット・ジョイス)

写真)懐が開き、三角筋に負担のかからない肘の挙げ方(デビッド・オルティズ)
なお、それでも(三角筋の緊張が)気になる場合の応急処置として、肘を高く挙げない構えをとることも悪くは有りません。ただ、肘を低くすると必ずしも楽かというと、そうでは無く、トップハンドの手(グリップ)が肘よりも上に来る事で、こんどはトップハンド側の上腕ニ頭筋が疲労しやすくなります。ですから、肘を挙げるのも肘を挙げないのも、結局は一長一短有ると言う事です。

写真)肘を挙げない構えの場合、トップハンド側の上腕ニ頭筋に負担がかかり、緊張しやすくなる。(恐らく、そのため、ジャスティン・モーノウはフォロースルーでの腕の伸びが小さい。)

〜補足終了〜

さて、ボトムハンドで下から支え、トップハンドで上から掴む構えのメカニズムが理解、実践出来たら、最後にもう一段階有ります。それは、その感覚(ボトムハンドで下から支え、トップハンドで上から掴む感覚)を全身の中に消化させて、感覚を消して行くと言う作業です。感覚を消化させる事が出来ないと、手に意識が行って、手の筋肉が緊張する事で、全身の力を上手く使えなくなってしまいます。ですから下から支えるとか上から掴むとかは、ある意味で「知識」であって、実際に構えた時はその感覚が消えていた方が良いのです。

これは、体幹部操作が深くかかり、以下の3つの事が起きると、感覚が消えて行きます。

1)体幹部操作が深くかかると、身体の各パーツがいい場所にハマって来る事でバットの重みが上手く全身に分散される。

2)体幹部操作が深くかかると、ハムストリングスが効いて来る事で、バットを持ち上げる力が自然に発生し、腕や手の感覚そのものは薄くなる

3)体幹部操作が効いて来ると、手首の背屈も深まり、腱固定効果が効いて来ます。こうなると「握る」力そのものも強くなる(力を入れるのでは無い)ので、前腕部などにかかる負担が軽減される。

ですから、こうした「感覚の消化」を行なうためには、重心が低く、捻りが深く入った構え(体幹部操作の深くかかった構え)を取る事が必要になります。これは、特に初期段階では重要です。この打ち方に慣れて来ると、比較的小さな動きの中で体幹部操作を深く効かせる事が出来るので、慣れて来たら、もっと楽に構える事が可能になります。

こうした意味でも、前回書きましたように、下の写真のようなキツい構えを取って振る練習が重要になるわけです。

長くなりましたが、大雑把にまとめると、以下の二つのステップが必要になると言う事です。

ステップ1)ボトムハンドで下から支え、トップハンドで上から掴むメカニズムを理解し、その感覚を掴む。

ステップ2)体幹部操作によって、その感覚を消失させて、全身に馴染ませる。


●グリップについてのワンポイント2つ

1)小指の重要性
基本的に、トップの角度でバットを構えると(バットを寝かせて構えると)バットにかかる回転力によって、小指はめくれやすくなります。

ここで、小指が効いていると、バットを適切な角度にキープ出来るので、やはり小指は重要になります。

ただ、小指に力を入れて握ってしまうと、背筋が効きやすくなって、ボトムハンドの引きが起こりやすい感覚が有ると思います。なので、あくまでも小指がめくれない事が重要と言うだけの話です。

2)前腕の三角形
前腕部の回内が効くと、二本の骨が交差する事によって、横から見たときに前腕部が三角形に見えるようになります。

良い打者は、前腕部の筋肉がほぐれており、前腕部の捻りが柔らかく、この三角形が綺麗に見える事が多いです。

グリップについては以上です。はじめの段階で良いグリップを身につけておけば、スイングに悪いクセがつかずに順調に成長していけると思います。この打ち方は基本的に始めから振り出し位置に構えておいて、そこから無駄な動き無しで一気に振り抜くのですが、そうした事を繰り返している限り、スイングにクセが着きにくいのが、この打ち方の長所です。アランさんのように身体が大きいと、それだけでも充分なアドバンテージになりますが、そうした打者がクセの無いインサイドアウトのスイングをすると、それだけで評価は高いものです。その意味でも先ずはグリップが重要になると思います。

※)練習では、ショートストロークスイングの素振りも重要です。この場合、体幹部操作はあまり効かせず、グリップは絞り気味、肘は挙げずに構えます。さらにバットを短く持ち、両手の感覚を僅かに開きます。この構えから一気に鋭く振り抜きます。インサイドアウトのスイングを作る練習です。

続きます。

3)前脚軸

次の課題ですが、素振りの時に、前脚軸が形成されていない事です。前脚軸とは、頭から前足を結ぶラインで、このラインが捕手側に傾いて一直線になるのが良いフォームです。

アランさんの場合、実打では出来ていますが、素振りでは出来ていません。前脚は伸びていますが、その上に腰が乗ってない状態です。これは後ろに体重が残っている事を意味します。

実は山下さんも、最初の頃はそうでした。同じように、実打では前脚軸が出来ていても、素振りでは前脚軸が出来ていません。(上段が素振り 下段が実打)

しかし、最近では素振りでも前脚軸が形成されるようになりました。そしてそのぶん、実打ではさらに良い形で前脚軸が形成されています。つまり体重移動が良くなって来たということです。

そして、アランさんと以前の山下さんには共通点があります。それは、素振りでは腕が動き出すのがタイミング的に早く、いわゆる腕で振りに行ってる状態になっている事です。それが、実際に打つとなると、腰の回転で上半身を引っ張ってバットを出すスイングが出来ています。

スイングの中で、腕が走り出すと腰の回転や体重移動にブレーキがかかりますから、そのぶん体重移動が不十分になり、腰の回転も小さくなります。それで、2人とも、素振りの中で前脚軸が形成されていないのです。

では何故、山下さんが、それが改善されたかと言う事ですが。。

その前に、下の写真を見て下さい。2人とも共通しているのは、やはり素振りの方が腕が走り出すのが早く、実打になると、腰の回転でバットを引っ張っている事です。そして、実打の方が前脚軸が形成されています。(共に、上段が素振り、下段が実打)



実は、この傾向(素振りと実打における体重移動の差)は多かれ少なかれ、誰にでも有るものです。そして、要は、その差を如何に埋めて行くかと言う事です。実際、素振りで前軸が形成されている人は、実打でもやはり前軸の形成が上手いです。そして素振りでは前軸が形成されていない人も、実打ではある程度、前軸が出来るのですが、やはり(素振りで出来ていないぶん)あまり、そのへんが上手くありません。例えば、右打者なら振り切らないうちに前脚の膝が割れたり、左打者なら、一塁側に走りながら打つ感じになったりします。

そこで、以下の2人を見て下さい。共に、小学生高学年から、塚口理論に取り組み始めた2人です。2人とも、素振りと実打の差が小さい事が解ります。


まず、一つの単純な原因として、基本的にラボでは実戦と同じ打ち方で素振りすることを徹底しているからです。そのぶんだけ、素振りと実打のフォームが似て来るわけです。ただ、この事はもう少し詳しく説明する必要が有ります。

結論から言うと、この打ち方の方法論に則って、素振りを重ねて行くと、アランさんも、山下さん同様、時間の経過と共に、素振りでも前軸が形成されるようになって来るはずです。しかし、そのためには抑えておきたいポイントや、練習方法なども有ります。

そこで、『(1)なぜ、素振りと実打でフォームが違って来るのか』『(2)どういうメカニズムで、それが改善されて行くのか』『(3)前軸が上手く形成出来るようになるポイントは何か』といった点について説明して行く事にします。

続きます。

(1)なぜ素振りと実打でフォームが違って来るのか

まず、最もありがちなのは、置きティーの顔の向きで振る素振りです。ですから、顔の向きに注意して振るだけでも、かなり実打に近いフォームになります。

次に「意識」です。下の動画は一般的な素振りの動画ですが、実際に打つ時の感覚とは全く違った感覚でバットを振ってるのは解りやすいと思います。


同じく、堂林のフリー打撃です。


実打では、ボールと言う解りやすいマトが有るので、それを打つ事を意識します。しかし、素振りでは打つべきマトが無いので、バッターは「何を意識したら良いのか」と言う事に(潜在意識の中で)非常にとまどいます。そこで、一般的には、腕の使い方とか、バットの軌道、或は下半身の使い方など、自分で「これが良いフォームだ」と思う動きを意識して、それを確認するようにバットを振ります。なので、素振りは「ポイントを確認する作業」のような感じになり、実打とはフォームが変わって来るわけです。

動画のラミレスのような素振りは、メジャーの選手に多い、典型的な「ポイント確認型の素振り」だと言えます。イチローの素振りも同じくポイント確認型ですし、高校野球とかで多い、極端なダウンスイングの素振りもポイント確認型でしょう。


話を堂林に戻しますが、彼の素振りと実打の違いは、多くの打者の素振りと実打の違いと共通しており、この問題を解りやすく表現しています。

素振りで多く見られる最大の間違いは、バットを「振ろうとする」と言う事です。素振りでは打つべきマトが無いので、とりあえず手に持った道具(バット)で何かしようとすると、それはもう「振る」しか思いつかないと言うのが当然だと思います。

この「振る」と言う運動は、グリップを中心としてヘッドを回す運動ですが、それをすると、手首が返ります。ですから「振る」と言う意識で素振りをすると、どうしても、いきなり腕でヘッドを出しながら、手首を返して行くようなスイングになりやすいのです。ですから、一般的には、素振りの方が腕を使ったスイングになりやすいのです。堂林の素振りも、その典型です。しかし、同じ堂林のフリー打撃を見ると、見事に「振る」意識が抜けています。ボールと言うマトが有るおかげで、余計な意識が飛んでくれたわけです。

因に、この「振る」意識の素振りをやろうとする人は、顔の向きが置きティーになる傾向が有ります。なぜなら、その顔の向きだと身体が回りにくいので腕を使って振りやすいからです。逆に投手方向を向いてしまうと、身体が先に回ってしまうので、「腕を使った振り」がやりにくくなります。「悪い意味での腕力」を使って振ろうとするならば、身体が回らない方が都合がよく、逆に身体が回ってしまうと「悪い意味での腕力」が使えなくなるということです。

では、素振りでは何を意識すれば良いのかと言う事ですが、前提として、ここからの話はパンチャー限定です。

この問題は、パンチャーの基本メカニズムを考える事がヒントになります。

つまり、まず、構えた状態から直接バットを加速しようと意識した瞬間に、上半身でサイレントピリオドが起こり、それと連動して下半身が力を発揮する所から、メカニズムが始まるわけです。

サイレントピリオドの筋電図

始動の瞬間に、上半身のサイレントピリオドと同時に下半身が力を発揮する。

この、下半身の力によって起きる重心移動を動力源として、パンチャータイプのメカニズムが連鎖的に引き起こされる。

つまり、全ての源は、始動時に発揮される下半身の力であり、そして、それは上半身のサイレントピリオドと連動して起こります。

始動時に、下半身が大きな力を発揮し、その時、上半身の筋肉が(サイレントピリオドによって無意識下で)弛緩している事が、良い動作を生み出すための条件と言えます。

そして、このサイレントピリオドは力発揮の意識が100%なら(理論上)100%の弛緩を引き起こしますが、力発揮の意識が80%なら80%の弛緩となり、20%の力みのようなものが残ります。

ですから、100%の力発揮を意識する事で、始動時に下半身の出力を100%にして、上半身の出力を0にしてやる事がポイントになります。

※)実は、そのため、今までは一瞬で速く振り抜く事に意識を集中させると言って来たのですが、これを変更します。何故かと言うと、これだと結局は「振る」意識になってしまうためです。そのため、潜在意識の中でバットをフィニッシュの位置まで回そうとする意識が働き、結果的に手首の返しが強くなります。(なので、自分自身も含めて、皆さんの素振りを見ていると、実打より手首の返しが強くなっていました。)

これを、これからは「100%の力で強く打つ意識で振る」に変更します。何を打つのかと言うとイメージするしか無いのですが(顔の向きが置きティーにならない位置に)スイカくらいの大雑把なマトで良いので、それをイメージして思い切り叩きに行く意識です。(イメージのマトが小さすぎると、難しいので、大雑把なマトで充分です。)

この方法のポイントは顔の向きが置きティーにならない事で、それさえ守られれば、バランスボールくらいの大雑把なマトの意でも良いです。(この事には根拠が有るのですが、冗長になるので書くのはやめます。ただ、簡単に言うと、スイングの動きはオートマチックなので、マトが大きかろうが小さかろうが、結局は同じ所をバットが通る事になるためで、そのバットの通り道は、構えのバランスと顔の向きが決めます。

このように、イメージしたマトを強く打つ意識で素振り(素打ち)する事によって、フィニッシュの位置までバットを回そうとする意識が消えるので、手首の返しが抑えられて、力がセンター方向に向くようになります。慣れて実感出来るまでは100スイングくらい必要かもしれませんが。

※)顔の向きについては、置きティーの向きは外角の向きに近いものが有ります。ですから、コース別に素振りをする中で置きティーの顔の向きになるのは良いのですが、置きティーの顔の向きで素振りをするのが習慣になるのが良く無いということです。

ですから、100%の力を発揮して仮想のマトを打ちに行く意識で素振してみてください。止まってる状態から100%の力を発揮しようとすると、おのずと瞬発的な力の発揮になります。

ここでのポイントは、意識を「強く打つ」ということに100%集中させる事です。つまり、図のような脳内円グラフの全てを「強く打つ」にする事によって、スイングの時の具体的な動きを意識する余地が無くなる事が重要です。そうする事によって身体が上手く動いてくれます。


続きます。

つまり、素振りの時の意識が実打と違って来る事や、顔の向きなどが原因で素振りと実打ではフォームが違って来るわけです。そして、素振りの時は基本的に腕で振りに行く場合が多いのです。

(2)どういうメカニズムで素振りと実打の差が無くなって来るのか

顔の向きに気を付ける事は重要です。

ただ、投手の方を向くのが必ずしも良いのかと言うと、そういう事もありません。特に実戦同様のリリースポイントを意識すると、アゴが挙ってしまうので、身体が開きやすくなります。ですから、ベストな顔の向きは、投手方向からやや、地面を向いた所と言えるでしょう。3m4m先の地面を向くくらいがベストだと思います。

つまり、実戦では100%、理想的な顔の向きで構える事が難しいということです。ただ、これは仕方の無い事です。野球と言うゲームがそういう仕組みになっているからです。実戦では素振りや、平地での打撃練習よりも、アゴが挙りやすくなります。ですから、練習よりも試合の方が身体が開きやすいのでしょう。

また、柔軟性が重要です。これは、正しい方向でバットを振り込んで行けば、自然に向上します。もちろん、実際にボールを打つ事が重要ですが、いずれにしろ、素振り、実打に関わらず、バットを振る数を増やして行く事で、スイングが柔軟になってきます。

そしてまた前軸が効いたスイングが出来るようになると、スイングの柔軟性が向上します。

こういった点が達成されると、より実打に近い素振りが出来るようになって来ます。まとめると以下の3点が重要です。

1)顔の向き
2)柔軟性の向上
3)前軸の形成

(3)前軸が上手く形成出来るようになるポイントは何か

まず、後ろ脚に体重が残ると、腕の筋力に頼ってスイングする事になります。こういう状態だと素振りと実打の間に違いが出やすくなります。

反対に踏み込んだ前脚に体重が乗り、前軸が上手く形成されると、体幹部の力を使ったスイングが出来ます。こういう人の場合は、素振りと実打の違いが小さい傾向が有ります。

基本的に前から飛んで来るボールを打つ場合、腕の筋肉に頼っていては当たりません。ですから、そういうスイングをする人でも、実打の中では腕の筋肉に頼らないで身体全体の力を使って振るようになります。これは、自然にそうなります。
ですので、素振りの中で腕の筋肉に頼ったスイングをしている人ほど、素振りと実打の違いが大きくなりやすいのです。そして、上達して素振りで腕の筋肉に頼らずに振れるようになると、素振りと実打の違いが小さくなります。コレは基本的な考え方として非常に重要な支点です。

上記のような理由で、前軸の効いたスイングを出来るようになる事が重要です。ここでは、そのためのポイントを挙げておきます。

1)踏み込んだ前脚に体重が乗る構え

ラボでやった内容です。捻って頭がやや前に来るバランスと、後ろ肩、前腰、前足の着地点が一直線に並ぶ構えを作る事が重要です。これらは捻りを入れる事でやりやすくなるので、少し捻りを強調して練習すると良いでしょう。


2)上半身がリラックス出来た状態で振る

上半身の筋肉が構えで緊張していると、スイングでも上半身の筋力に頼るようになります。そうなると体重移動が途中で止まって、前軸の形成が不十分になります。メールで送ってもらった素振りの動画にはややその傾向が有ります。ですから、素振りの中では無理に構えを長くしない方が良いでしょう。

3)ハムストリングスが効いた構えをとる

ハムストリングスが効いていると身体を前に押し出す力が強くなるので、踏み込みが強くなり、前脚に体重が乗りやすくなります。大腿四頭筋が効くと、その逆の事が起こります。簡単に言うと、クラウチングの構えだと前脚に体重が乗りやすく、脊柱を真っすぐ立てた日本人的な構えだと後ろ脚に体重が残りやすくなります。

以上の3点が前軸の効いたスイングをするためのポイントで、これらが出来ると自然にスイングもしなやかになり、フォロースルーも大きくなって来ます。アランさんにとっては重要なポイントです。

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以上です。

前軸を効かせる事、そのために捻る事、捻って後ろ脚股関節を割って後ろ脚を効かせる事。。このへんがポイントになります。

長くなりましたが、以上です。