2013年6月15日土曜日

体幹部から末端部へ連鎖的に

まず、この2人のパンチャータイプを見てほしい。

マーティン・プラド


アーロン・ヒル


2人の特徴としてヘッドの出が「早い(≠速い)」つまり、ヘッドを残してグリップから引っ張ってバットを出すような打ち方では無い。同じチームだからと言って真似しているわけでは無く、2人は元々全く別のチームでプレーしていた。

このヘッドの出が早いところにパンチャーの特徴が有る。

例えば左打者でパンチャーとスインガーを比較してみよう。

ハンク・コンガー(パンチャー)


ジョシュ・ハミルトン(スインガー)


ジョシュ・ハミルトンの方は体が回転してからヘッドが出て来る感じが有る。

体幹部から末端部の筋肉にかけて、連鎖的に収縮していくのはパンチャーもスインガーも同じで、つまり、まず腰が回り、次に肩が回り、最後に手が出る。そのために、筋肉には柔軟性が求められるし、しなやかなスイングが良いスイングなのは両タイプとも変わらない。

ただ、パンチャーは(メカニズム上=あくまでも無意識)トップハンドが主導となるため、ヘッドを残してグリップから引っ張り出す打ち方がやりにくい。そのため「最後に手が出る」ときに、ヘッドも一緒に出ている。「体幹部から末端部にかけて連鎖的に回転する」が終ると同時にインパクトを迎える。

一方、スインガーは(メカニズム上=あくまでも無意識)ボトムハンドが主導となるため、ヘッドを残してグリップから引っ張り出す打ち方がやりやすい。そのため「最後に手が出る」段階でも、まだヘッドが残っている。つまり「体幹部から末端部にかけて連鎖的に回転する」が終わった後に、ヌンチャクの先端が遅れて出て来るようにヘッドが出て来る。スポーツ科学的には「二重振り子」の原理を使っている。

例えば、体幹の回転をプラスチックの下敷きのしなりに例えると、下敷きのしなりが戻った瞬間にインパクトしているのがパンチャーで、下敷きのしなりが戻った瞬間はまだヘッドが残っていて、そこからヌンチャクの原理でヘッドが出て来るのがスインガーになる。

そしてまた、バットを振る時の意識もスインガーとパンチャーでは全く違う。意識が違うからメカニズムも当然違う。

パンチャーの場合は構えた位置からいきなりバットを出す事でメカニズムが成立する。下半身や体幹部での先行動作を必要としない。体を動かしてからバットを出すのではなく、いきなりバットから出す。そうするとつられて体も勝手に動く。

ホセ・カンセコのスイング。いきなりバットから出す。構えた状態から力任せにブン回している。上半身は力感たっぷり。


一方、スインガーの場合、まず体幹、下半身を動かし、重心を移動し、その力を利用してバットを出す。バットは自力で振るのでは無く、勝手に振られる感覚だ。腕は力を抜いておき、何もしないでも体の回転によって勝手に振られている感じが望ましい。

ベーブ・ルースのスイング。まず体を動かし、その力を利用してバットが「振られて」いる。上半身の力感を感じさせないスイング。(0.10以降)


今回の主題だが、つまり「体幹部から末端部にかけて連鎖的に運動に参加する」と言う現象は両タイプとも共通している。しかし、そこに至る意識と細かいメカニズムは大きく違っていると言う事。