2013年6月17日月曜日

バリーさん 3回目

 ご利用ありがとうございました。


目指すは4番サードでしょう。バッティングに関しては、形には良いものが有ります。しかし、色々なストレッチを試してもらって解った事として、体そのものがまだまだ使えていない部分が多々有ります。ただ腸腰筋その場ステップや、股関節の割りについてはやってもらっているからか、かなり良くなって来ました。

とりあえず中学現役の間は無理なパワーアップを計る必要は無いでしょう。(実戦に悪影響が出やすいので)少し重めのバットを振り込む事と、股関節、肩甲骨、肩のストレッチを行なっておけば充分です。そして、高校に入るまでの間に900gのバットを使いこなせるようにしておきましょう。

ただ、ある意味もっとも気になるのは、肩周辺の動きが悪い事です。肘が挙らない傾向が有るので、広背筋や大胸筋などが固まっているのかもしれません。小さい頃から野球をやって来た人には起こりうる事です。そのあたりは専門知識の有る人に見てもらった方が良いと思えるレベルです。ただ、いずれにしても肩甲骨や肩のストレッチはかなり重視して行なった方が良いと思います。

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投球編

(1)肩の可動域の問題

バリーさんの最大の問題は写真のように、テークバックで肘が挙って来ない事です。これは技術的な問題と言うよりも身体機能的な問題が大きいと思います。

普段の姿勢にしてもそうですが、大胸筋や広背筋などが縮こまって、腕を身体に締めつけるように引きつけたまま固まっているように見えるのです。ですからまず、普段から肩関節、肩甲骨のストレッチを徹底するようにしてください。その上で、一度、専門知識が有る人に見てもらった方が良いでしょう。整骨院、整体師、鍼灸院、そうした中で、筋肉を触診してコンディションが解る人がいいです。具体的にはネット等で調べてください。

(写真)恐らく(肩関節を内転させる筋肉である)大胸筋や広背筋が固まってるのだと思いますが、常に、腕が身体に引き寄せられるように縮こまっているように感じられます。

図)大胸筋と広背筋。これらの筋肉が収縮、あるいは固まったり縮こまってしまうと肩関節が内転(ワキを締める動き)します。

大胸筋と広背筋のストレッチはスローイングのトレーニング動画の中にも入っていますので、それも参考にしてください。youtubeにもアップしていたので、ここにもリンクを貼っておきます。

水平伸展&外旋 大胸筋ストレッチ
外旋&外転 広背筋ストレッチ 

その他、様々な本やネットなども参考にしてください。またスローイングトレーニング動画の肩のストレッチに関するものは特に重視して行なって下さい。

なかでも、この腕回しについては、後1年くらいの間に完璧に出来るようにしてください。


そして、下の写真のような肩甲骨を外転させる(脊柱から引き離す)ストレッチも重要です。肩甲骨が外転しなければ胸椎が後彎しないので、脊柱のS字カーブを作る事が出来ないからです。バリーさんの場合、普段の姿勢で背中が扁平な割には打撃の構えやストレッチの中では胸椎の後彎をしっかり作る事が出来ています。外転とセットで内転も行なって下さい。普段の姿勢から変えて行く事が目標です。まだ成長期途中なので、これからのトレーニングによって、骨格の形も変わる可能性が有ります。

2)後ろ脚の動作とフォロースルー

この動画の練習の時に、比較的体重の乗った「ターン&タンブルフィニッシュ」が出来ていた事を思い出して下さい。(スローは次の投球です。)

ポイントは「前脚を引く時の後ろ脚の膝カックン」「後ろ脚の踵での足踏み」「重心移動時の後ろ脚股関節の割れ」です。この3つが出来ると、フィニッシュも豪快になってきます。ただ、まだまだフィニッシュは豪快さが足りないです。


この練習の中では後ろ脚の股関節の割れが作られていたので、常にこれが出来るようにしておいてください。

また、バリーさんの場合、特に重要なのが、ワインドアップモーションでの「前脚を引く時の後ろ脚の膝カックン」「後ろ脚の踵での足踏み」です。当日、この二点だけは常に言っていましたが、この二つが出来なければ後ろ脚ハムストリングスを充分に使えませんので、投球動作の中で、この二点を最も重視してください。「カクッと緩めて、トンと踏む」と憶えて下さい。

なお山下さんはトンと踏む動きが上手く出来ているので、下の動画を参考にして下さい。前脚を挙げた時に後ろ脚のハムストリングスが効いているので、フォロースルーが豪快なのです。ココが最も球速に直結する動作の一つですから、何は無くとも、この動作(カクッと緩めて、トンと踏む)だけは、キャッチボールの中で忘れないように行なって下さい。感覚が鈍って来たら、腸腰筋をストレッチすると良いでしょう。そうするとカクッと緩めてトンと踏む感じが出しやすくなります。


また、下の動画でもカクッと緩めてトンと踏む動作が上手く出来ている例があるので参考にしてください。一番最初に出て来る投手は緩めるのも踏むのも両方上手く出来ていますね。


いずれにしても、このカクッと緩めてトンと踏む動作を一球一球投げる毎に行なうようにしてください。

この動画の後半に出て来る子供たち(7.19〜)もだいたいの子がカクッ緩めてトンと踏む動きが出来ていますね。


ではメジャーリーガーで出来ている例を見てみましょう。

ペドロ・マルティネス


CCサバシア


アロルディス・チャップマン



3)前脚の挙げ方

前脚の挙げ方についてはほとんど時間を取れなかったので、まだ出来ていません。引き続きピッチャーズハイキックを繰り返して感覚を掴んで下さい。


意識するポイントは以下の通りです。


ポイント1 骨盤ごと回転させ体幹からブラーンと振り上げるように前脚を挙げる。
ポイント2 後ろ脚でトンと踏むと、前脚がポンと挙る。
ポイント3 前脚をリラックスして振り上げると、膝は勝手に曲がる。
ポイント4 脊柱を背中側に倒すと脚が挙る。これを頭を残して(倒さず)行なう。

ポイント1〜4を同時に意識するのでは無く、ポイント1で5回やったら、次はポイント2で5回というようにやってください。

写真のような前脚の挙げ方が出来るようになってください。

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打撃編

では打撃編です。

まず、構えでは股関節がよく割れているように見えて、始動すると直ぐに膝が内に入ってしまう事が解ります。

これは形の上では割れているように見えても、本当の意味では割れていないからです。以下の点を意識してリズム股割りスクワットを繰り返して下さい。

1)爪先は開き過ぎない(指一本ぶん開く程度)
2)爪先体重にならないよう、踵寄りに体重を乗せる。
3)両「脚」の外側のラインで体重を受け、内側のラインがたわむ感覚。(内側のラインに定規が入っていて、体重を受けるとそれがたわむ)
4)体重は両「足」の外側のラインで受け止め、股関節が割れた時(スクワットダウンした時)は、内側が浮く。
5)太腿の前側で体重を受け止めない。
5)一回毎に膝を伸ばし切る。(弾むようにリズミカルに)

後ろ脚の膝が内に入る事によって、後ろ脚のハムストリングスによる股関節伸展が使えなくなります。そうすると後ろ脚で地面を押す力が弱くなるので、後ろ脚の膝が内に入ると同時に、後ろの腰と肩が沈んでしまいます。これも「バットが下から出る」原因の一つでしょう。

下の写真は後ろ脚股関節の伸展(ハムストリングスによる)が比較的上手く使えている例です。後ろ脚で地面を下に押す力が強いので、その地面反力が効き、後ろの腰、肩が沈んでいません。

続きます。

肘を挙げて構える事で、バットが下から出ると言うケースの多くは肘の上げ方に問題が有ると考えられます。

下の写真にように肘を背中側に引き込むように肘を挙げたり、或は体幹部の面に沿って肘を挙げたりすると、肘は高く挙りますが、トップハンド側の三角筋が緊張しやすく、広背筋や大胸筋も大きく引き伸されます。このような構えの場合、スイングに入ると後ろの肩が下がってバットが下から出る事が多くなります。ボールの下を擦ってポップフライを打ち上げる事も多くなるでしょう。

写真)三角筋を使ったフライングエルボーの構えによって、バットが下から出る典型的なイメージ。簡単に出来るので、特に取り組みの初期は、こうなる人が多い。(それによって肘を挙げるとバットが下から出ると言う理論が通説になる。)

一方、下の写真のように、トップハンドの肘を身体の前面に出すようにして、懐を大きく開けると、三角筋に負担もかかりません。また肩関節が内旋することになるので大胸筋や広背筋も過剰に引き伸される事にはなりません。この構えだと肘を挙げてもバットが下から出る事はありません。

写真)内旋の効いた正しい肘の上げ方から、正しい振り出しのイメージ。(あくまでもイメージ。実際に腰の回転が加わった時の形とは少し違う。)

現状の構えでは、それほど「典型的な悪い例」になっているわけでは無く、むしろ形としては良い例に近いのですが、それでも悪い例の成分が混じっており、ヘッドが過剰に投手方向に入っているので、これだと確かにバットが下から出て擦ったような当たりが多くなるでしょう。

写真)もう少し懐を開ける方が良いでしょう。

写真)赤線くらいの角度でバットを構えた方が良いでしょう。

ただ、懐を開けると言っても、顔の前を通ってヘッドが投手方向に入る「ヘッド入れ型」の構えにならない事が重要です。後頭部を通ってヘッドが投手方向に向くのが「トップ型」です。特にオートマチックステップの場合、あくまでもトップ型が理想的な構えです。

トップ型の構え(パンチャーの理想型だが、腕の筋肉には負担がかかる。)

バット立て型の構え(腕の筋肉には最も負担がかからないが、解剖学的、技術論的に問題が大きい。)

ヘッド入れ型の構え(腕の筋肉への負担は、トップ型よりも軽いが、バット立て型よりも負担がかかる。解剖学的、技術論的にはバット立て型よりは良いが、トップ型よりは悪い。3種類の構えの中間的存在。)

こうした構え(トップ型の構えで、懐を開ける)と、そのためのグリップについてはアランさんの記事にも書いてあるので、そちらも参考にしてください。ただ、バリーさんの場合、グリップを絞り過ぎる悪いクセが有るので、そこは特に注意してください。大雑把に言うと、下のような流れでグリップの感覚を掴めます。

1)両腕の前腕部の骨格で支える感覚を掴む。
2)捻りを入れて、ボトムハンドで下から支えトップハンドで上から掴む感覚を確認。
3)体幹部操作によって、グリップの感覚は全身に消化されて(ほとんど)消える。

続きます。

次に、構えで両脚がガニ股になっていますが、下の写真のように、前の膝が内に入ったラインを作る事が重要です。
これは、基本的には両脚股関節が割れた上で、その上で微妙な膝の向きの違いが出ている状態です。そして、この膝の向きの違いは身体を捻る事によって生じます。バリーさんの場合、身体の捻りはかなり深いのですが、そのわりには、両脚がガニ股になり過ぎています。

つまり、これだけ捻ると、本来はもう少し後ろ脚の股関節が割れが強調され、それと連動して前脚の膝が内に入るはずなのです。

そして、そうなっていないと言う事は、ある意味、後ろ脚は内に捻る力を発揮して、外に捻られるのを我慢している状態に近いと考えられます。その力が始動後に解放されることで、後ろ脚の内旋が早く起こってしまうとも考えられます。

そして、前脚に関しては、これだけ割ってしまっている事で、絞る力が強く発揮されるので、内に入るのでしょう。

ですから先ず、図のように、両脚股関節が割れた上で、前脚の膝が内、後ろ脚の膝が外に向いた構えを作る必要が有ります。

では、そのための練習方法ですが、

まず、股関節を割るストレッチによって、股関節を割る事が出来る身体を作って行く事が重要になります。両手を組む股割り体操と、リズム股割りスクワットが重要です。リズム股割りスクワットでは、「両足のアウトエッジ荷重」と「爪先を開き過ぎない事」「両脚の内側のラインのたわみ」等を意識して、アップダウンの運動をリズミカルに行なって下さい。

それが出来たら、次に、腸腰筋をストレッチし、写真のように、両手で8の字を描く「8の字揺らぎ体操」を行ないます。そして、その8の字揺らぎ体操から、体重を受け止めた時に起きる股関節の屈曲を利用して、踵でトントンしながら身体を沈めて行くと、自然に股関節が割れる事を確認します。

つまり、打撃で構えを作る時、揺らぎながら重心を下げると自然に股関節が割れるので股割り体操のように股関節を割る意識は必要ありません。しかし、前提として股関節の割れる身体が出来ていないと、揺らぎながら重心を下げた時に自然に股関節が割れてくれないので、まず股関節を割る基礎トレーニングが前提として重要になるわけです。

このように

1)「基礎として股関節を割れる身体を作る」
2)「踵でトントンしながら(左右に体重移動しながら)重心を下げると、自然に股関節が割れる感覚を掴む」

と言う上記2点を出来るようにすることが第一段階です。

その上で、次に行なうのが「構え作りリズムスクワット」です。


このトレーニングで、両脚股関節が割れたうえで、前の膝が内、後ろの膝が外を向く形を作れるようになりましょう。この時の両脚の微妙なラインは鏡で見るか、撮影して確かめておく事が大切です。捻りによって前の膝が内に入り過ぎるのを、前足のアウトエッジ荷重を保つ事で防ぎ、微妙なラインをつくり出すのです。

それが出来たら、揺らぎ構え作り体操で「揺らぎながら重心を下げると自然に股関節が割れる」「捻る事で、自然に両脚のライン(前の膝が内、後ろの膝が外)が出来る」の二点を確認します。


この写真のような状態になればOKです。

この一連の流れを繰り返す事によって、まずは「股関節を割れるようにする」「割れた上で、前の膝が内、後ろの膝が外のラインを作る」と言う2点を出来るようにすることが非常に重要です。

とにかくまず基礎練習が大切で、その基礎的な事の精度を挙げて行く事が大切になると言う事です。

続きます。

最後に、基本的(一番重要)な事として、まだまだ下半身の力を使うと言う事、そして、下半身で発生させた力を上半身に効率良く伝達させる事が出来ていません。ある意味、これが一番の問題です。

もちろん、パンチャータイプの場合、下半身の力は無意識で発揮されるわけですから、構えでその準備をしておかなければなりません。そして、その下半身で発生させた力を効率的に上半身に伝達させるためには、上半身のリラックスが重要になります。

バリーさんの場合、グリップが硬くて、上半身のリラックスが出来ていなかったので、それを包み込むようにバットを握る事で改善しましたが、あのバットに握り方を忘れないようにしてください。(下の写真)

その上で、必要な練習方法としては、まずスクワットダウンして下半身(ハムストリングス)が効いた状態から始動する事と、捻る事で後ろ脚股関節が割れた状態から始動する事を練習する事です。この2つの身体の使い方が出来るようにするために、スクワットダウンや捻りを強調した状態からの素振り、置きティーをすると良いでしょう。(なお、置きティーや斜めからトスされたボールを打つ場合は、その後にインコース高め寄りを素振りすることで動きを修正しておく事が重要です。)

1)スクワットダウンを強調した構えからのスイング(腰を反って腸腰筋をストレッチした後、踵でトントンしながら重心を下げてスイングする。)


2)捻りを強調した構えからスイングする 捻る事で後ろ脚股関節を割り、後ろ脚が効いた状態を作ってからスイングします。身体が捕手方向に傾き過ぎないように、捻り方に気をつける必要が有ります。後ろ足は出来るだけ3点支持(ただ、アウトエッジ〜踵が中心になる)を意識しましょう。また、この練習をするためには、巻き戻しを利用して構えを作る連続素振りも良いでしょう。この動画の0.30から重いバットでやってる練習法です。もちろん、普通のバットでも良い練習になります。ただ、構えで一度止まる事(流れを利用して振らない事)が重要です。

図)ただしい捻り方

図)3点支持

以上です。投球に関しては課題は多いものの、ボール自体はそこそこ速いと思います。打撃は、まだ身体の力を使い切れていませんが、基礎的な形(スイングの腕使い)にはかなり良いものが有ります。自分で思っている以上には、センスは有ると思います。ただ、もっと動作の躍動感を楽しんでプレーするような感じが出て来ないと、正直、厳しいと思います。あまりにもプレーが堅すぎると言う事です。それが出来るかどうかにかかっていると言っても良いでしょう。

長くなりましたが、以上です。高校でも野球をやるみたいなので、またがんばってください。