2013年6月30日日曜日

山下さん 進化の記録5



始動した瞬間からスイングが始まるまでの時間が「良い意味で」長くなったのが今回の最大の収穫です。そして、その動きも良い意味で粘り気、スムーズさが出て来ました。(以前はもっと跳ねるような硬い動きだった)この感じは以前のソフトボールバットの動画では出ていましたが(山下さんのスイングで)硬式木製でここまで安定して始動時のパワーを発揮出来ている状態は今回、初めて見ました。そしてグリップを改善した事により、ヒッチの動きも良い意味で出て来ています。この調子で、アンドリュー・ジョーンズやジョージ・ベルの境地に少しでも近づいて行く事が一つの大きなテーマになるでしょう。





※)2人とも後ろ脚に体重移動しながらボールを待つタイプなので、動き出しからスイングが始まるまでが、過剰に長く見えます。その分は差し引いて見る必要が有ります。

彼等と比べるとまだまだパワーが足りませんが(バットが重そうに見える)パワートレーニングをする上での最大の課題は、弊害の出方を知り、その修正方法を自分の中で確立して行く事にあります。そうした意味でも出来るだけ早いうちにパワートレーニングとの付き合い方を掴んで行く必要が有ります。基本的に打者なら誰でもパワーアップを計りたいはずですが、実際にはそれを余りしない選手が多いのは弊害に対する対処が難しいからです。「このトレーニングをやればどういう反応が出るか」と言う事と「どうしたら弊害を修正出来るか」ということをテストして行く事が大切になります。そして「弊害」の最も代表的なものが「トップハンドが効き過ぎて手首の返しが早く、捏ねるようなスイングになる」と言う事です。これはバッターにとって最も避けたい事態なので、そういう所に弊害の出るパワートレーニングと言うのはやはり難しいものなのです。

続きます。

1)一段落がついた

今回の置きティーのスイング(下の動画のいちばん最初のスイング)をもって、動き作り、フォーム作りと言う観点から見ると、基本的なラインではひとまず完成したと言えます。もちろん、まだまだ磨きはかけていけると思いますが、ここでひとまず完成したと考えて、次の段階に移行した方が良いと言う事です。そして次の段階に移行しながら、同時進行で細部も磨きをかけて行けば良いでしょう。


前脚の膝が内に入るクセも修正出来るようになりましたし、硬式木製で理想的な感じのヒッチも出ていますし、始動してからスイングが始まるまでの力強さ、柔らかさも出ています。こういった以前よりの課題がひとまずクリアされ、必要とされる動作の全てが出そろったと言う意味で完成したと言う事です。

では次の段階とは何かと言うと、まずパワートレーニングです。パワートレーニングは単にパワーを付けるだけでは無く、パワートレーニングによって生じる弊害と修正法を試行錯誤しながら掴んで行くと言う作業を意味します。そして、その試行錯誤から、自分に合うパワートレーニングと合わないパワートレーニングを選り分けて行き、自分なりのトレーニング法をある完成させていく事が重要です。(何種類かのバットを使ったトレーニング法を紹介しましたが、その中から重点的に行ないたいものや、タマにやるくらいの方が良いもの等を選り分けて行ってください。)

あと2ヶ月くらいで、トレーニング法を完全に確立するのは難しいにしても、ある程度、合うトレーニングと合わないトレーニングを掴むのには(2ヶ月は)充分な期間だと思いますし、またスイングスピードにもう一段磨きをかけるのにも充分な期間だと思います。

そして、その次が、今年の秋から始めたいと考えている実戦対応能力に磨きをかける作業です。(この作業はフォームには関係ないように思えるかもしれませんが、実際には、この取り組みによって動きの質が一段挙ると思います。)

このようにして取り組んで行けば、来年のシーズンオフにはプロに売り込みをかけるレベルに到達すると思いますし、また実際にそうして行きたいと思います。実際、今の時点でも、今回制作したプロモをプロの選手に見せたら(スイングスピードはまだ自分達プロの方が速いと思われるでしょうが)ある程度のインパクトを与えられる域には達していると思います。これにさらに磨きをかけ、後一年で圧倒的なものを作り上げると言う気構えで取り組めば、プロ球団に「原石」として受け入れられる(認識される)レベルに達すると思います。

なお、細かい事ですが、今回の動画を見て感じたことは(今はまだ84センチで良いですが)最終的にプロの実戦に対応するためには83㎝のバットが必要になるだろうと言う事です。やはり2013年のドラフト候補に挙っている河合完治あたりと比べると、どうしても一段バットが長く見えてしまうからです。もともと、この打ち方は一般の日本人の打法よりもクラウチングで構える上にハムストリングスを効かせているので、外角には届きやすいはずですので、バットを1㎝短くしても、ベースにあまり近づかないで、普通の日本人打者と同じくらいは外角をカバー出来るようになるはずです。(また、そのための練習も重要になります。短いバットで外角を打つ事が、構えで負担が大きいこの打法の弱点をカバーする事に直結するからです。)

続きます。

このように、とりあえず「振り込み期間」から「実戦対応期間」に移行していきたいのですが、大雑把に見て、今年はまだ「振り込み期間」と考えて良いと思います。ただ、その今年の間にやっておきたい事としては「実戦対応練習」の方法を確立すると言う事です。

実戦対応練習の一つ目は「実戦形式の練習」です。これも、軌道に乗せるまでは2~3回は必要になると思います。ただ、この場合、方法と言っても、単なるレギュラーバッティングなので、特に目新しいものがあるわけでは有りません。ただ、これを1日25打席こなして、4回で100打席。プロ入りまでの準備としてなんとか1000打席をこなしていきたいと思うのです。週1のペースで1ヶ月で100打席こなせると考えると10ヶ月かかります。今年中になんとか200打席こなせるとして、来年に800打席。8ヶ月です。

そして実戦練習の二つ目は「対応力を磨く練習」です。これは例えばシャトル打ちやワンバウンドボール打ち、タオルボールと新聞紙等を使った緩急ドリルなどが挙げられます。この練習の考え方は具体的に「カーブ打ちの練習」等と考えるのでは無く、とにかく反射神経をフルに活用して打つ事によって、スイングの柔軟な対応力を磨く事にあります。ですから「これは何の練習?」と考える必要は無く、反射神経を使ったバッティングゲームが出来ればそれでいいわけです。こうした練習の方法を今年中に何とか確立していきたいと思います。

こうした二種類の実戦練習は「気持ちよく打てる練習では無い」と言う事を理解しておく事が重要になります。見逃したりバットを途中で止めるのもモチロン重要な練習です。また、打てなくても良いと言うか、むしろ「芯で捉えられたらオメデトウ」と言うくらいのボールを打つ事で、反射神経を磨きます。これは仮説に過ぎませんが、反射神経を使ったスイングを繰り返せば、スイングも筋肉の反射機能を使ったスイングになるはずです。そして、それによって動作に磨きをかける事こそが、ある意味で真の目的です。

(ただ、これは簡単では無いのです。ほとんど打球が気持ち良く飛ばない練習でストレスから「あ〜、ダメだ、もうヤメた!」とならないためには、まず自分の基本のスイングに自信がなければなりません。逆にそういう自信が有ると「打てない練習」がとても面白く感じるはずです。)

このように、振り込み期間で基礎を固めたフォームを実戦対応期間でさらに磨きをかけていくと言うスケジュールになります。そのための実戦対応練習です。もちろん打てるようになる事が第一の目的ですが、フォームを磨く事も大きな目的になっていると言うことです。

ある意味、思い通りのフォームで振るのは素振りだけにしておいて、ボールを打つ練習は基本的にほとんど気持ちよくは打てないのが当たり前と言う取り組みに来年くらいからはしていきたいものです。そのために、今年はまだ振り込んだり、打ちやすい球を気持ちよく打つ感じで良いと思いますが、今年の内に実戦練習の方法や手段(場所の確保等も含めて)を確立させておきたいということです。

続きます。

分析編

まず最近の山下さんのフォームで一番良くなった点は始動した瞬間、一見、上半身のヒッチから動き出しているように見えるくらい、上半身と下半身の連動が上手く行っている事です。グワッと上半身がヒッチを起こす所から始動しているように見えますが、実際にはまず下半身が地面を押しており、その地面反力を上半身が抑える動きになっているわけで、その動きの感じが「グワッ」になるわけです。ある意味、この始動の感じに、オートマチックステップの極意が有ると言っても過言ではありません。


この動作は、始動時に身体が浮かないように意識すると上手く出来やすいのですが、逆にその意識が強すぎると不自然かつ不必要な筋肉の収縮が起きてしまい躍動感が無くなるので、理想的には無意識でやりたい事です。意識するとしても「ボール大の一点を見つめる意識」で振る結果、必然的に身体が浮くのが抑えられたと言うくらいが良いでしょう。

ただ、いずれにしても、この始動の感じを常に忘れないようにしてください。一番最初の動きなので、そこが良ければ、その後も良い循環の中でスイング出来るからです。そして、この上半身の抑えが効いた始動が出来ると、前脚の挙り方も、地面にまとわりつくような粘りっけのある挙り方になります。「ヒッチが効いて、前脚が地面に粘るように挙る」この2点が常に出来るようになる事が重要です。

「良い循環」の一例を挙げると、前脚が挙る時に膝が内に入らなくなるので、前脚が良い形で着地出来ることです。そうなると前脚股関節の伸展が上手く使いやすいので、フォローでは前足から頭に綺麗な一本のラインが通っています。ここまでの形は今までに無かったものであり、また今まで一番苦手としていた動きでもあるので、素振りでここまでの形が作れるようになった事の価値は大きいと思います。(この前脚の動きは素振りでは出来なくても実際に打つ時には出来る人が多いです。山下さんにもそういう所が有りました。)

さらにもう一つ、注目したいのが手首の返し方です。基本的に重いバットを振った弊害は手首の返しに出るので、その状態は常に気をつけて見て来たのですが、下の写真を見る限り、予想以上に弊害は無いと言うか、むしろこれは普通に見て良い手首の返し方なので、その点では安心しました。

ただ、今後、重いバットを振り込んで行く中で、そういう弊害が出て来る可能性も有ります。その時は、身体が手首の返しを憶えてしまう感じで、何回振っても、早いタイミングで勝手に手首が返ってしまうので、振っていてストレスを感じるようになります。ただ、その感じが2~3日で消失してくれるなら良いのです。もう少し力がつくと消失するサイクルも早くなるでしょう。ただ、1週間、1ヶ月と続くようなら問題で、一時的には、その重さのバット(トレーニング用のバット)は諦めた方が良いと言う事になります。そうしたあたりの見極めと試行錯誤、さらに修正方法の確立を今のうちにやっておいた方が良いということです。「フォームに磨きをかける事」「振る力を付けるパワートレーニング」「パワートレーニングの方法と修正法の確立」といった3つの事を同時進行的にやっていく必要が有ります。これらの事が今年中の取り組みの中では最大のテーマになるでしょう。

続きます。

このブログに、こうして分析記事を書いているのは、そうした記録の積み重ねがある事で、後々になって見直した時に、とても参考になるからです。(来る前日などに見ると、当日の予定が立てやすいし、記録をつけておかないと、蓄積して積み重なるものが無くなる。)そうした意味では必ずしも緊急の課題ではなくとも、取りあえず思った事は書いておく事で後々の参考になるわけです。次の内容は、そういう意味では緊急の課題と言うわけでは無いのですが。。

最近の傾向で気になるのは、少し構えが小さくなっている事です。

つまり、膝を少し曲げ過ぎで、そのぶん重心が低すぎる状態です。ただ、これも良し悪しで、重心を低くする事でハムストリングスを効かせようと言う事は重要なので、特に取り組み始めた初期の場合だと、逆に低く構えようと言う意識が有る人の方が「解っているな」と思えます。

上の写真ですが、構えが低くなっているので、撮影するアングルが通常より上からのアングルになり、そのぶん頭が大きく見える事が、さらに構えを小さく見せています。(これは単なる見え方の話ですが。)

最終的に目指したい構えとしては、もう少し重心が高い方が良いということです。ただ、そういう構えが身に付いても、その時のコンディションによってハムストリングスをもっと効かせたいと思ったときは、腰を反って腸腰筋をストレッチしたうえで、(1)「クラウチングを大きくする」(2)「重心を低くする」(3)「首の角度、胸椎の後彎を意識する」などの対処法が有るわけで、「理想の構え」が身に付いても、コンディション次第では、上の写真くらいの低さで構えるケースも出て来ると思います。ですが、このくらい重心が低いのは少なくとも理想的では無いと言うことです。

今までの山下さんの構えでは下の写真くらいが丁度良いですね。

最終的には、下の写真のような感じで、最近の山下さんの構えと比較すると、もう少し「スタンスが広く」「膝の屈曲が小さく」「捻りが深い」構えを目指してほしいと思います。そういう構えの方が大きく見える利点もあります。(身長の割りに打席で大きく見える人と言うのは、だいたい、大きく見えるような構えをしています。)

そこで、山下さんの股関節の割り方を見た時に気になるのが、下の写真のように両脚の内股に出来る曲線的なハリの感じを保とうとする意識、感覚(以前、バランスボールのような大きなゴムボールを挟む感覚と表現しました。)が少し強すぎるのかなと思います。

この感覚が強すぎるので、前脚の膝が内に向いた形にならず、そうなるとスタンスを広げにくくなります。(この写真では狭いとは言いませんが)上の写真の感じで(均等に割った構えだと)スタンスを広げると内転筋が緊張しやすいからです。(アイススケートリンクの上で股が割けるようになる例え)

そこで、以下の写真を見て下さい。

これらの例では、前の膝が内に入る事で、両脚の内側のアーチの感覚、ゴムボールの感覚が消失しているように見えます。しかし、この膝の角度でも前足の荷重位置をややアウトエッジ寄りに保っておく事で、何とか、ゴムボールの感覚が保てます。ただ、そこから前足の荷重位置を拇指球側に少しズラすとゴムボールの感覚は潰れます。そうなると、既に股関節は割れていません。(割れが潰れている。)この微妙な感覚、ある意味、ギリギリの感覚でも有るのですが。。そして、この膝の角度を作る事によって、捻りが楽に作れると思います。

表現的には「前足の荷重位置をアウトエッジ寄りに保ったまま、前脚の膝を両脚の間に落とす。」と言えば、良いと思います。そうすると「両脚股関節が割れた上で前の膝が内、後ろに膝が外を向く角度を作る。」事が出来ます。そして、その構えでは両脚の間に出来るアーチの感覚が形成されます。ただ、まぁ、この辺も意識し過ぎると(神経を使い過ぎて)打てたものでは無いので、自然にやってほしいのですが。。

因みに「前脚の荷重をアウトエッジ寄りに保ったまま、前脚の膝を両脚の間に落とす事で、両脚股関節が割れたまま、前の膝が内に向き、後ろの膝が外に向く角度を作り、両脚の間に出来るアーチの感覚を保つ。」の状態を写真に線を入れて表現してみました。

ちなみに、上記3人で一番、この点が上手く出来ているのが、ホセレイエスJr君です。(因に、このときのテーマが正に”両脚のライン”を作るでした。)ソルトさん(中段)の場合、後ろの爪先が少し開き過ぎているので、後ろ脚の大腿四頭筋がやや効いています。ただ、前脚の膝の落とし方は一番上手いです。オゴさんの場合は、少し前足の荷重位置が拇指球側にズレており、そのため、両脚の間のアーチがやや潰れ気味(割れが潰れ気味)です。(といってもホンの僅かですが。)また、後ろ脚の割り方は非常に上手いです。(爪先を開かずに割れている。)

このように書くと、物凄く細かい見方をしているようですが、実際には感覚で憶えてしまうと、そんなに細かい形の話ではありません。

山下さんの構えでも、この感覚が加わると、もう少し捻りを入れる事が出来ると思います。また、こうすると(前の膝が内に入ると)スタンスを広げやすいので、より股関節が割れて、そんなに膝を曲げないでもハムストリングスを効かせられると思います。そうなると、前述した「スタンスが広く」「捻りが深く」「膝の屈曲が小さい」と言うポイントがクリア出来るでしょう。

なお、股関節が割れるのは、揺らぎながら重心を下げると自然に割れますし、捻りが入ると前脚の膝も自然に落とせます。そうした事を考えると、最終的にはシンプルに「両足の荷重位置をアウトエッジ寄りに保ったまま、捻る」と言う意識で良いでしょう。

では、次に、この技術(前足の荷重位置をアウトエッジ寄りに保ったまま、前脚の膝を両脚の間に落とす。)をモノにするためのトドメの一撃となるワンポイントを紹介します。

ところで、股関節を割った構えがある程度、出来るようになって来た時に生じる「インエッジの過剰なめくれ」と言う厄介な問題ですが。。

下の写真でもインエッジが過剰にめくれてしまっています。

山下さんの構えでも、後ろ足のインエッジと爪先のめくれが良く見られます。

このように過剰に後ろ足の荷重位置がアウトエッジ側に寄って、インエッジがめくれるほどになってしまうと、重心が捕手側に寄り過ぎるので、逆に前足側のアウトエッジ荷重を保つ事が難しくなります。

そこで、どうやって、この問題を解消するかですが。。

まず、下の構えのような間違った捻り方をすると、あまりに重心が踵寄りに来るので、爪先とインエッジがめくれやすくなります。

そこで、下の写真のように、懐を開くような捻り方をすると、少し重心を爪先側に映す事が出来ます。これがまず一点です。

次に、下図の捻り方が出来ると、やや重心が投手側に寄るので、重心をインエッジ側に寄せる事が出来ます。これが二点目です。

つまり、後ろ足のインエッジ、爪先のめくれを解消するためには、以下の2つのポイントを抑えることが重要になるわけです。

これらによって後ろ足の荷重位置が適切な位置に補正されると、前足の荷重位置をアウトエッジ寄りに保つ事が楽になります。

そうする事によって、バランス良く両脚股関節の割れた構えを作る事が出来ます。

また、山下さんの最初からの課題として、この捻り方とバランスがイマイチ作れず、肩が地面と平行な構えになり、後ろ脚に体重が残りやすいというのが有ります。

最近では素振りでは出来ている場合が多いですが、実打ではその辺が甘くなるのは、やはりボールをみようとするためだと思います。


図)捻りによって脊柱に彎曲(赤線)が出来て、頭が中心軸(青線)よりも前に来るバランスの構え。

ちなみに、肘を挙げて構える事で脇腹が引き伸され、赤のラインが作りやすいからか、外国人の打者は、日本人よりも、このバランスを作るのが圧倒的に上手いです。日本人の場合、このバランスが出来ない事も、後ろ脚に体重が残りやすく、結果的に前脚がフォロースルーで割れやすい原因になっています。

写真)このバランスが出来ている例。

ただ、若干、このバランスはアングルによって見え方が変わります。例えば、下の写真のように、同じ打者(ソリアノ)のフォームもアングルによってこれだけ見え方が違って来る訳です。ただ、外国人の打者が日本人に比べて、このバランスを作るのが上手いのは間違いありません。

ただ、この話をすると、必ず、脊柱の側屈を使って頭を前に持って来る人が出て来るのですが、それだと単に突っ込んだ構えになります。山下さんの場合、何回も会って話をしているので大丈夫だと思いますが。
割れ絞り体操などで、このバランスを身体に憶えさせるのも、出来るようになる良い方法になるでしょう。一点を見つめながら腕を振り上げて身体を捻って行き、頭の重みを使って脊柱に彎曲を作る方法ですね。

これが出来ると、構えの極意の内容もやりやすくなります。

この構えのバランスを作るポイントやメリットを挙げておきます。

●強調し過ぎると、構えがキツくなる。
●脊柱の側屈を使わない。
●ボトムハンドの肘が視界から消えて、インハイと低めが見やすい。
●着地した前脚に体重が乗りやすい。
●バットが身体の捕手側に入りにくい。(投手側のエリアで振れる)
●高めに対して被せるようにバットを出しやすい。
●低めを拾うように打ちやすい。

基本的に日本人は頭が後ろすぎるのです。そのへんは向こうの打者を横から見る機会が増えると、良く解ると思います。グリエルも捻りが強く、頭が投手寄りにあります。


もう少し続きます。

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ところで、この前の素振りを見ると、バットが(通常のイメージとは逆方向に)凄くしなっている事が解ります。これはカメラの特性もあるのかもしれませんが。。(その辺は良く解りません。)

このしなりはゴルフでは「逆しなり」と言われています。

ただ、それはインパクト直前の話で、その前は順しなりと言って、ヘッドが遅れるようなしなり方をするわけです。それは野球の打撃でも同じで、パンチャーでもしなりが映っている場合、下の写真のようにまず順しなりが起き、次に真っすぐになり、最後に逆しなりが起こります。

おそらくですが、逆しなりは手でグリップに力を加えてバットを回転させようとする時、バットの真ん中部分が遅れる事で出来るのではと思います。つまり逆しなりが起きているということは、手でバットに力を加えてるのでは無いかと思うわけです。そして順しなりは身体でバットを引っ張ってるフェーズで起こると思います。

そういう考えで山下さんの素振りを見ると、手でバットに力を加えるタイミングが早いのではと思うわけです。このへんがもっと良くなって来る必要があります。

ただ、この事はアランさんの記事でも書こうと思うのですが「素振りと実打の違い」に通じる問題です。ここでもザッと書いておきますが、あまり一カ所の記事に書き過ぎるとページが重くなるのと、時間的に引っ張り過ぎているので、本格的にはアランさんの方で書きます。

素振りは(普通の素振りだと)だいたいの人が、バットを「ブンッ」と振ろうとします。しかし、試合で空振した時の音は「ヒュウゥーン」と言う感じでヘリコプターの音に似ています。

腰が回ってから、身体の前で手首が返る振り方だと「ブンッ」とはならないはずなのです。ブンッとならすためには、置きティーの顔の向きで、肩を回さず、腕で振ると良い事が解ると思います。これが一般的な「野球部的素振り」です。

スイングは最終的には、全てオートマチックな筋肉の反射で起きるので、その動きをイメージするのが難しいのです。恐らく「振ろう」と言う意識が有るとブンッとなるのだと思います。そして、振ろうとする意識には置きティーの顔の向きがフィットします。

ブンッと振ろうとするのでは無く、一瞬でスイングを完了させるイメージと言うか、「一瞬で振り抜く意識」ですね。身体の動きを意識する余地が無くなるほど速く振り抜く事に集中するわけです。そうなると、もうそのスイングの時の意識は、擬音とか、一瞬で火花が飛び散るようなイメージとか、そういう感覚でしか表現出来ないものです。ただ、打つ時は、自然に、そういう身体の使い方が出来ているのだと思います。

ややこしい話になってしまいましたが。。

要は、瞬発的に大きな力を発揮して、バットと言う物体を動かそうとした結果、上半身でサイレントピリオドが起きて、後は、筋肉の反射によって、最後まで無意識の筋収縮によって、スイングが完了してしまうのです。

つまり、力を発揮しようと意識した結果、身体がオートマチックに動いて、勝手に力を発揮してしまう。。だから「動き」は意識するべきでは無いんです。「振る意識」と言うのは「動き」を意識している事になり、それは腕の動きを意味します。なので「振る意識」で素振りすると、腕で振ってしまいやすいんです。

「一瞬で振り抜く意識」で、その「一瞬」を極限まで速くしていくようにすると、擬音とか一瞬の火花のようなイメージでしか表現出来ない世界になるはずです。身体の動きを意識する余地が無いくらい、速く振り抜く事に集中する事で、身体の動きから意識を抜いて無心で振り抜く事が出来るようになります。

そして、その時「どうやって振ってるの?」と聞かれると「パッと振ってる」くらいにしか答えられないと思いますし、その意識と言うか感覚だけで振れてしまうのがオートマチックステップの面白い所です。

そして、それが出来るためには、構えた時に、榎本喜八流に言うと「五体を結ぶ」と言う事が出来てなければなりません。つまり、上半身と下半身がバラバラで腕の筋肉でバットを受け止めてしまうと、どうしても「ブンッ」と振る感覚になりやすいのです。

もちろん、山下さんもすでに、大方、こういう世界になってるとは思う(オートマチックステップでの素振りだと、そうなりやすい)のですが、傍から見る限り、どうしても、素振りの中で「ブンッ振る意識」を引きずってるように見えるのです。もし、そうだとすると、その辺の感覚が掴めれば、もう少し素振りが違って来るはずです。

少し難解な話になってしまった感が有りますが、根本的には、凄く単純な意識、感覚で振れると言う話なので、考え込まないようにしてください。

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それから最近の実打の動画で思うのは、外角に飛びつくように打つ時にハムストリングスが使えていると言うのを感じます。また、低めは相変わらず上手いですね。体勢が崩れるような打ち方も有りますが、体勢を崩しても打つと言うのが正に対応力なので、それは逆に良い事だと思います。

長くなりましたが、以上です。

だいぶ振れて来ているので、逆に毎日重いバットを振り過ぎて疲労で痛めないように、ストレッチ優先の日とかを挟んで行くと良いと思います。

2013年6月29日土曜日

小峯さん 1回目

ご来場ありがとうございました。


ジャパニーズ・プロスペクトリーグにおける記念すべきピッチング・プロスペクトの第一号が誕生です。

ラボの方針として、追求するスタイルは当然ながら、速球派の本格派右腕です。そして、身体の力を使い切って豪速球を投げ込む事を目標とするのが幹となる取り組みです。しかし26歳と言う年齢とキャリアを考えると実際問題として、そこだけを目指してプロで居場所を確保するのは難しいでしょう。なので、セットアッパーとして機能出来る技術を磨く事が重要になります。そのためには、モーションで揺さぶるための多様なクイックモーションを身につける事がポイントになります。日本人打者はほぼ全ての選手が脚を挙げる打ち方ですから、モーションによる揺さぶりが非常に有効になるでしょう。(私の方でも7色の変化球ならぬ七色のクイックモーションを目標に考えて行きます。)またフォーム的にも横から腕が出るタイプなので(実際にはそうでは無いにしても)スカウトや首脳陣の目には技巧派、軟投派的に映ると思います。となると活躍の場はやはり中継ぎと言う可能性が高くなるでしょう。投げ方的に縦に割れるカーブは難しいと思いますが、ある程度のカーブや縦スラ等の落ちる系の球種を磨いて行く事も重要になります。それに加えて、スライダーとシュートで左右に揺さぶる。そして得意としているチェンジアップですね。確かに身体ごと打者に向かって行く感じの豪快な重心移動のフォームなのでチェンジアップが効きそうだと思います。

いずれにしても「技巧派」「軟投派」の皮を被りながら、根幹部分では本格派の豪速球投手を目指す取り組みをする。。これがミソです。つまり、解説者に「小峯の場合はフォームやリズムを変えて目先を変えて来る変則的なスタイルをとっているが、本質的には基本的なフォームがしっかりしててストレートを大事にしているから、良いんだ。彼のような例を若い選手が安易に外見だけ真似るべきでは無い。」と言わせたら勝ちです。

そこで、当面の練習方法として挙げた(肩の柔軟性を磨き、腕の振りを速くするための)オートマチックステップによる「振り込み」ですが、これによって脚を挙げないフォーム(クイックモーション)からの出力を向上させていく事が当面のテーマになります。その上で脚を挙げるフォームも磨いて行かなければなりません。

※)ただ、現状の腕の振りで、脚を挙げないフォームからの投球を行なった時、怖いのは肩や肘を痛める事です。そのため、今の段階では、そうした投げ方はシャドーで行なうのが良いでしょう。まだ実際にボールを投げるときはワインドアップをメインにした方が良いです。

いずれにしても、年齢的には「何もかも」と言うのは難しいでしょう。そこで何かを捨てなければならないのですが、むしろ「何をやるか」以前に「何を捨てるのか」を先に考えた方が良いと思います。まず第一には、これはもう言わずもがなで「打撃」でしょう。ただ筋トレとして素振りを導入するので「全くダメ」と言う感じにはならないと思いますが、基本捨てる考えでいかなければならないと思います。セットアッパーならそれで通用するでしょう。そして、もう一つ「走り込み」です。一般の投手がやるような走り込みは捨てて、短距離ダッシュや運動能力を向上させるトレーニングの中で持久力を付けてもらう事を考えています。「つまり、持久力を付ける練習は常に他の目的(技術練習)とセットで行なう。例えばシャドーで投げ込んで持久力を付ける等」次に「細かい制球力」。これも今から追求しているヒマは無いので、狙った所に投げる事よりも、逆球を投げても良いので安定した割合でストライクゾーンにボールを集められる能力を向上させる。つまりコントロールではなく安定感を身につけることを考えた方が良いです。そしてむしろ球が散るタイプ。動くボールがどこに来るか解らない「的を絞りにくいタイプ」を目指して行くと良いでしょう。ただ、そのためには球種を増やして行く事が必要になります。ジェイク・ピービーのレパートリーを参考にすると良いでしょう。そして、もうひとつが「変化球の質と精度」です。これも追求している余裕は有りません。一つの球種を磨くくらいなら別の球種を投げられるようにした方が得策だと思います。もちろん良い変化球が投げられるならそれに超した事は有りませんが、一度身に付けたとしても、ちょっとした調子の変化で質が落ちたりするものであれば、最初から無理をしてまで追求しようとする必要は有りません。あくまでも身体の力を使い切る動作を追求する事を本筋とした方が得策でしょう。変化球の質を磨こうとして、その本筋を追求する時間を削っている余裕は無いと言う事です。

続きます。

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今回はまず、最初のスタートダッシュとして、何から手を付けて行けば良いのかと言うテーマで書きます。最も重視してほしいポイントは以下の3点に絞られます。

1)シャドーピッチングを利用した「投げ込み」で振れる身体を作って行く。
2)肩関連のストレッチや腕回しを行い、腕の振りを良くしていく。
3)股関節の割れ絞り、腸腰筋、ハムストリングスをテーマとした基礎的なストレッチ

特に最初の2~3ヶ月はこの3点を重視してトレーニングしていくだけで、ポテンシャルが挙って行くと思います。では、それぞれのテーマについて、もう少し細かく書きます。

1)シャドーによる投げ込み
シャドーピッチングは、腕を振り込む目的ならオートマチックステップ投げが適しており、ピッチングフォームを作る目的ならワインドアップモーションが適しています。特にオートマチックステップ投げの場合、まず北を向いて投げたら、着地した所から次に投げる時は南を向いて投げ、また北を向いて投げる。。と繰り返すと、短い時間でかなりの数が振れます。オートマチックステップ投げのメリットは肘から挙るテークバックの形が出来やすい事ですが、ハムストリングスが使えてなければ腕力投げになってしまうのが難しい点なので、投げる前に一度腰を反って腸腰筋をストレッチし、ハムストリングスで立っている感覚を掴んでから投げるのがコツです。

また、オートマチックステップ投げは、下の写真のように肘から挙るコンパクトなテークバックの動きを作りやすいのが長所です。
そして、その際のポイントは、この写真のように、肘を貼らずに、手を肘より上に置く事です。オバマ大統領の動画で説明しましたが、後彎した胸椎の上に肩甲骨を被せて腕を組み、その状態から手をセットの位置に持ち込むと、このような形になります。小峯さんの場合、こうしたテークバックの形を身につけることが最重要課題の一つですので、オートマチックステップ投げの練習は重要になるでしょう。

ただ、シャドーはボールを投げるのに比べて負荷が小さい分、力がつきにくいので間に連続素振りを挟んで行く事がポイントですが、あくまでも投げる方が優先になるのは当然なのでシャドー20回に対して重めのバット5スイングくらいが良いでしょう。

2)肩関連のストレッチ
前述のように、肘から挙るテークバックを作る事や、肩が外旋して肘に負担がかからないスイングを身につけることが最大の課題になります。下の写真はキンブレルですが、こうした腕の振りを身につけることが目標になります。

そのために、肩のストレッチが重要になります。肩関節の内旋系、外旋系のストレッチや、肩甲骨を動かすストレッチはかなりの数がありますので、それらをヒマな時にやる事で、少しでも肩を柔らかくして行く事が大切です。そして、腕回しですね。腕回しは内旋〜外旋の動きが入り、投球腕のスイングに似ているので、シャドーもする時間、場所が取れない時の「振り込み」の代用にもなります。

3)股関節のストレッチ
まずは「腸腰筋その場ステップ」「座り割れ絞り体操」「リズム割れ絞り体操」「リズム股割りスクワット」など、基礎的な種目を重点的に行なって下さい。腸腰筋その場ステップは、一般的に日本人が使えていない筋肉を鍛えられるので、最初の段階では特に重要になる種目です。また、行程5で行なった「骨で立つ感覚」「ハムストリングスの効いたスクワットダウンの感覚」を掴む練習も非常に重要です。

バッティングの場合は道具を使いますが、ピッチングの場合はボールは道具と言うには軽すぎるし、途中で投げて手から離してしまうので、ある意味で道具では有りません。そのため、バッティングの場合「道具を扱う技術論」が重要になりますが、ピッチングの場合はもっと「身体そのものの使い方」がポイントになるので、股関節や肩甲骨等を上手く使うストレッチ、トレーニングの比重が高くなります。一度、そうしたテーマでラボでの練習も行ないたいですし、メニューもかなり豊富にあります。

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以上、3点がスタートダッシュとして重要なテーマになります。少なくとも次回までは、それだけで充分だと思います。

続きます。

分析編

やはり、最大の問題は投球腕のテークバックの動きです。そして、それに付随して他の問題も起きています。ただ、この点については今までにも良く見て来た一つの典型的なケースですので、他の人の例も挙げながら説明します。

このような腕が伸び切った状態でのテークバックでは、下図のようなメカニズムが発生します。
この3つの部分(腕、体幹、後ろ脚)が同時に動くのですが。。つまり、青の部分が矢印の方向に動く時、オレンジの部分もバランスを取ろうとして矢印の方向に動く。。これが自然な身体の動きです。下の写真も、その一例です。

つまり、こういうことです。同時に起きている動作を因果関係の順番で説明する事になりますが。。まず、腕が後ろに引かれるために、骨盤が前に流れます。そうすると必然的に後ろ脚股関節が外転します。本来、骨盤は後ろ脚で押し出して前に移動させたいのですが、この場合、骨盤の方が先に前に移動する事で、結果的に股関節が外転しているのが問題です。

例えば、下図のようにアイススケートリンクの上に段ボールの重い荷物が置いてあったとして、これを後ろから腕で押し出して、滑らせようとしているとします。(ベクトルa)このとき、押そうとする瞬間に前から誰かが荷物を引っ張る(ベクトルb)と、押す力は加わりません。

これと同じように、骨盤が先に前に流れてしまうと、後ろ脚で骨盤を押す事が出来ない(後ろ脚の力が使えない)のです。

一方、下の写真はアロルディス・チャップマンですが、腕を畳んで肘から挙がるテークバックが出来ているので、骨盤が前に流れず、後ろ脚の力が有効に活用出来ている事が解ります。後ろ脚股関節の割れと絞りが上手く使え、ステップ幅も広いです。

一方、骨盤が前に流れてしまうと、後ろ脚股関節の動きが「割れ」では無く「外転」になってしまいます。その結果、膝が内側に折れるのが早くなりますが、こうなると後ろ脚で地面を押す事が出来なくなります。ですからステップ幅も狭くなるのです。

逆に、腕を畳んで肘から挙るテークバックが出来ていると、下の写真、動画(割れ絞り内旋肘挙げ)のように後ろ脚股関節のラインに沿って捻りを入れる動作が生じるので、それによって後ろ脚股関節が割れやすくなります。


ですから、内旋して肘から挙るテークバックが取れていると、後ろ脚股関節が割れやすくなり、またそうすると股関節の絞りも使いやすくなります。この割れた状態からの絞り、つまり股関節の伸展が上手く使えると、後ろ脚で強く(長く、粘り強く)地面を押す事が出来るので、ステップ幅も広く取れるようになります。

写真)キンブレルとチャップマン

下の写真も肘から挙るテークバックが出来ているので後ろ脚股関節が割れている例です。

続きます。

このケース(テークバックで腕が伸びたままになる)のもう一つの問題点が、肘の位置が低くなる事です。

まず写真右のように肩を内旋して肘から挙げた形を作ると大胸筋が緩みます。この時、広背筋を触ってみると、広背筋も緩んでいる事が解ります。一方、左のように内旋しないでボールを正面に向けたまま腕を挙げると、大胸筋、広背筋が張る事が解ります。(内旋した時よりも収縮して硬くなる。)

広背筋と大胸筋の働きは、以下の点で共通しています。

1)広背筋も大胸筋も肩関節を内旋させる。
2)広背筋も大胸筋も肩関節を内転させる。(ワキを締める)

筋肉は引っ張られるとゴムヒモのように張力を発揮するため、硬くなります。逆に緩むと力は発揮出来なくなります。

ですから、テークバックで投球腕の内旋が出来ていないと、大胸筋や広背筋が引っ張られて張力が強くなるので、テークバックからの切り返しでは、その力で肩関節の内転が強く起きてワキを締めようとするので、肘が下がってしまうのです。


一方、内旋し、肘から挙る形が出来ていると、テークバックの切り返しで肩関節の内転が起こりにくいので、肘の位置も高くなります。


ですから、小峯さんの場合も、テークバックで投球腕が内旋して肘から挙る形が作れるようになると、腕の出所がもう少し高くなるはずです。パンチャーは基本的に腕の出所が低いフォームになるのですが、それにしても現状では少し低すぎます。

 今の状態が下の写真の通りですが。。

これを何とか、下の写真くらいまでにすることが目標になります。

なお、現状では肩の外旋角度が浅い事も肘の位置が低い一つの原因です。(肩が外旋すると肘の位置は高くなります。)ただ、バットを使った外旋のストレッチを行なった結果は、むしろ柔らかい方でしたので、外旋可動域が小さい事が原因では無いでしょう。

大胸筋や広背筋は肩関節の内旋筋でも有るので、テークバックでこれらの筋肉が引っ張られていると、そこからの切り返しでは大胸筋や広背筋の内旋の作用が強く働くので、肩関節の外旋を妨げるのです。

少しややこしいかもしれないですが、以下のように考えて下さい。

意識的に内旋させる(×)大胸筋や広背筋の働き(収縮)で内旋させる事になるので、切り返しでも、これらの筋肉の収縮によって肩が外旋しにくい。

内旋しないテークバック(×)内旋しないで肩関節が外転すると、大胸筋や広背筋が引き伸されるので、収縮しようとする力が働き、切り返しで肩が外旋しにくい。

自然に内旋するテークバック(○)筋肉の力で内旋していない(ボールの重さでボールが下に残る事で、自然に内旋する。)ので、大胸筋、広背筋が緩むので、切り返しでこれらの筋肉の力が働きにくく、肩が外旋しやすい。

つまり、下の写真の形を自然に(投球動作中に意識しないで、無意識に)出来るようになる必要があるわけです。

ある意味でピッチングフォームの中で最も難しい部分でもありますが、これが出来るようになると連鎖的に他の動きも良くなると言う意味では非常に重要な動作です。

さらにもう一つ、このケース(テークバックで腕が伸びたままになる)で見られる特徴的な問題は、後ろ脚の膝が内に入り、膝が沈むので前脚の着地が早くなる事です。(タイミング的に早くなる。)こうなると、重心移動の距離(ステップ幅)が稼げません。

その結果どうなるかと言う事を上の写真が表しているのですが、もちろん重心移動が小さくなる事も問題です。それに加えて、後ろ脚が沈む事によって、重心移動が終わっていない段階で着地してしまう事が問題になります。そのため、着地した後に前脚の膝が身体の勢いに押されて曲がって行きます。この事による問題は以下の2点となります。

1)前脚がクッションになり重心移動の勢いを吸収してしまう。これではスポンジの上に着地しているようなもので、力がそこで吸収されてしまい、ロスが生じる。

2)前脚の膝がグニャッと曲がる事で大腿四頭筋が引き伸され、伸張反射で収縮する。さらに膝が曲がり過ぎる事でハムストリングスが緩み、力を発揮しにくくなる。このため、着地後のフェーズで大腿四頭筋が強く働き、ハムストリングスの力を使いにくくなる。

フォーム的に解りやすいのは(2)の問題です。前脚股関節伸展はフォロースルーで以下の二つの重要な動作を起こします。

a)股関節伸展の身体を前方に運ぶ作用によって、フォロースルーでの重心移動が大きくなる。(身体を大きく打者方向に運ぶ)

b)股関節伸展に伴う、股関節の絞り動作によって骨盤を回転させると共に、前脚を内に絞る事で前脚側に壁を作る。この壁によって一度力が打者方向に向かった後で、フィニッシュでは身体が一塁方向に向かう。

写真の山下さんも小峯さんと同様、テークバックで腕が伸びたままになる問題を抱えていますが、それでもこうした下半身動作が上手く出来ているのは、股関節のトレーニングを相当数積んでいるからです。(もちろん、こうした問題解決のためには、フォーム改善と同時にトレーニングが重要になると言う事です。)

小峯さんのフォームを見ると、山下さんと比べると、骨盤の移動距離が小さく、前脚が内に絞れていない事が解ります。


ただ、それでもターン&タンブルフィニッシュが上手く出来ているあたりは長所であると言えます。しかし、冒頭の動画を見ると(身体に勢いがつく)ワインドアップモーションではフィニッシュの勢いが有るものの、クイックモーション系ではフィニッシュに勢いが無くなるようです。前脚股関節の伸展が上手く使えるようになると、クイックモーション系でもフィニッシュに勢いが出て来るはずです。そして、そのためにはテークバックでの腕の動きを改善し、後ろ脚股関節の割れ〜絞りを上手く使えるようにすることで、後ろ脚の蹴りが効くようになり、後ろ脚の膝が内に折れて重心が沈まないようにする必要があります。

前脚の着地する角度、着地する動作は下の写真(チャップマン)くらいが理想的です。

後ろ脚股関節の割れ〜絞り、つまり股関節の伸展が上手く使えているので、後ろ脚の蹴りが効き、重心移動が大きくなります。また、股関節伸展は地面を押す動作なので、その地面反力で身体を長く持ち上げている事が可能になるので、重心移動(並進運動)が終わってから着地する事が可能になります。そのため、着地後に膝が曲がりません。

特にプロ入りを目指すとなると、実際問題として中継ぎでの起用でランナーを背負った場面で力が発揮出来る(むしろそこが長所になる)必要が有ります。つまり、ワインドアップモーションのように勢いを利用するのでは無く、クイック的なフォームの中で力を発揮出来るようにならなけれなならないと言う事です。そして、そのためのキーになるのが、ハムストリングスを如何に使えるかと言う事です。幸いにして私の理論では、そこを重視しているので、それを活用してもらえれば、この点はクリア出来ると思います。つまり、「黒人の身体機能に近づくためのトレーニングを積む事で、脚を挙げないフォームからの出力を向上させる」と言う事です。

●まとめ

小峯さんのフォームの最大の問題は、テークバックで腕が伸びたままになる事から派生して、連鎖的に様々な問題が生じている事です。

「テークバックで腕が伸びたままになる」「後ろ脚股関節の割れ〜絞りが使えず、股関節伸展による蹴りが効かないのでステップ幅が狭くなる」「肩が内旋しなで外転するので、大胸筋や広背筋を引き伸ばし、結果的に切り返しで肘が下がる。また肩の外旋を妨げる」「後ろ脚の膝が内に折れて重心が沈むので、着地後の前脚股関節伸展の力が使えない」

上記のポイントを改善していく事が、フォーム改善の最大のテーマとなります。

その中でも、特に動作の初期の段階で発生する問題である以下の2点は特に重要な課題です。この二点が改善されれば、続く問題も連鎖的に改善されるでしょう。

(1)「テークバックで腕が伸びたままになる」
(2)「後ろ脚股関節の割れ〜絞りが使えず、股関節伸展による蹴りが効かないのでステップ幅が狭くなる」

そのための対策は細かい方法論を挙げて行くと膨大な内容になってしまうので、詳しくはこれからの練習でお伝えするとして、ここでは大雑把な方針を備忘録的な意味で挙げておきます。

(1)「テークバックで腕が伸びたままになる」についての対策

これについては、肩関節のストレッチ始動ポジションの形(特にオートマチックステップでの)を考える事、それからオートマチックステップでの練習(主にシャドー)を積む事が重要になります。

肩関節のストレッチについてはおいおい方法を伝えて行きますが、とりあえず腕回しは重要になります。

その上で、セット始動が可能になるオートマチックステップ投げが最も肘から挙るテークバックの形を作りやすいので、腕の動きを作る基礎練習としてオートマチックステップ投げを重視してください。

その際のセットポジションの形は写真のように、肩甲骨を胸郭に被せ、そこから上腕骨がぶら下がっている事と、手が肘より上に位置している事が重要になります。

オートマチックステップ投げで肘から挙るテークバックが出来ている人は、だいたいこの二点がクリアされています。なお、肩甲骨を胸郭の上に被せるためには胸椎が後彎していた方が良いので、事前に腰を反って腸腰筋をストレッチし、脊柱のS字カーブの効いた構えが作れるようにすることもポイントです。


(2)「後ろ脚股関節の割れ〜絞りが使えず、股関節伸展による蹴りが効かないのでステップ幅が狭くなる」についての対策

まず、これは(1)の問題が原因で生じている問題なので(1)がクリアされる事が重要になります。その上で、後ろ脚股関節の(割れ絞りの)ストレッチも重要です。さらに大腿四頭筋が効いていると股関節が割れにくくなるので、ハムストリングスを使って立つ感覚を磨く事もポイントで、そのために「カクッと緩めてトンと踏む動作」の習熟が重要になります。

割れ絞り系のストレッチについては下の写真のような動きで、股関節の割れと絞りを繰り返すのですが、この体操で特に重要なのは、身体の捻りと股関節の割れの連動を憶える事です。つまり、股関節のラインに沿って身体を捻ると、股関節が割れるということです。

トンと踏む動作については、後ろ脚の膝を緩めた時に、写真のように下腿部が地面に真っすぐになる角度を作る事が重要です。

なぜなら、それによって下図のメカニズムが上手く機能するからです。つまり下腿部が垂直に立っているので、股関節伸展の力が頸骨を通じて地面に効率良く伝わるわけです。

一方、小峯さんの場合、このトンと踏む動作でやや膝がつぶれ過ぎています。

こうなると、トンと踏む動作で、後ろ脚のハムストリングスを効かせにくくなりますし、膝が曲がる事で大腿四頭筋が優位に働いてしまうので、その後の動作で後ろ脚のハムストリングスの力を使いにくくなります。

写真)ペドロ・マルティネスの後ろ脚踵の足踏み〜脚挙げ

ペドロも下腿部を真っすぐ立てて後ろ脚をプレートに踏み込む事が出来ています。このためのコツは前脚を後方に引く時、出来るだけ頭を後ろに引かないようにして後ろ脚に対して前傾軸を作る事です。頭を後ろに引き過ぎると、そこから前脚を挙げつつ後ろ脚の上に体重を乗せて行く時に後ろ脚の膝が折れやすくなります。

また、この時、あまり大きく前脚を後ろに引き過ぎると身体が斜めになりすぎるので、こうしたステップはある程度小さなエリアの中で行なう事がコツ(安定したフォームで投げるコツ)です。

このように「カクッと緩めてトンと踏む」動作を習熟、改善していけば、もっと後ろ脚の動きも良くなり、割れ〜絞りの力が使え、重心移動も大きくなるでしょう。

また、写真が示すように後ろ脚の蹴りと投球腕のテークバックは相互に連動している(肘から挙る形が作れると後ろ脚の動きも良くなるし、後ろ脚の動きが良くなると肘から挙る形も作れる)ので、後ろ脚股関節を上手く使えるようになる事でテークバックの動きも改善が期待出来ます。

以上で、小峯さんのフォームの最大の問題点と、その改善策について、総合的に書きました。これからも細かい部分は書いて行くと思いますが、今回の内容がこれからの取り組みの中で一番大きな柱になるものであり、この点がどれだけ改善されるかが、どのレベルまで上達出来るかに直結してくると思います。

そういう意味で、最後にビジュアルで、どのようなフォームになれば良いのかをもう一度簡単に整理しておきます。

1)肩関節が内旋し、肘から挙るテークバックが出来るようになる。

2)後ろ脚股関節の割れ〜絞りが上手く使えるようになり、ステップ幅が大きくなる。

3)内旋し肘から挙るテークバックが出来るようになる事で、大胸筋や広背筋が緩み、切り返しで肘が下がらず、腕の出所がもう少し高くなる。

4)重心移動の距離が長くなる事で、前脚の膝が着地後に潰れず、前脚股関節の伸展とそれにともなう絞り動作が上手く使えるようになる。それによってフォロースルーの躍動感が向上する。

以上です。この4点をどれだけ改善出来るかが、これから技術を向上させていく取り組みの中での最大のテーマになります。そして、そのためには特に動作初期に起きる問題である(1)のテークバックの課題(2)の後ろ脚の課題を改善して行く事が最優勢されます。

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技術的な事については、今回は以上です。ただ、改善したいポイントや身につけた技術を挙げるとキリが有りませんが、それらは「プロに入るための短期的な目標」と「プロ入後も追求していきたい長期的な目標」にわけられる事を理解してください。(何を捨てるのかを考える必要があると言うのも、特に短期的な目標を達成するための話です。)

有る意味、一度プロに入ってしまえば、そこでまた2年くらいのの余裕が与えられ、その2~3年で球団側の期待する伸びを見せれば、またそこから2年くらいの余裕が与えられるので、本当に大成するのは32歳くらいと考えても良いでしょう。ただ、その節目節目で一定の基準に達して行く事が重要になるわけです。

というわけで、短期的な目標と、プロに売り込むための対策は、以下のような感じが良いかと思います。

1)躍動感のある日本人離れしたフォーム
これは絶対出来ると思います。そのための黒人化を含めた塚口理論なので、ここは問題無いでしょう。今の所、小峯さんのようなフォーム(メジャー式の脚挙げ、腕が横から出て、一塁側に着地する)はNPBには存在しないわけで「外国人の投げ方」と思われているわけですから、これでまずはインパクトを与えたいと思います。

2)豪速球
どこまで球速が挙げられるかは解りませんが、やはり、ここが一番私の関与出来る部分になるので、これは追求していきたいですし、少なくとも145キロは出せるようになる必要が有ります。細かい技術が(他のプロと比べて)完成に持って行きにくいので、原石として認められるためにはどうしても球速が必要になるためです。地肩の強さをピッチングフォームからの投球に反映出来るようにし、そこにトレーニングを上澄みしていけば充分可能でしょう。

3)中継ぎでの起用に適した、クイックの上手さ、多様性、器用さ
現実問題として、先発完投型だけを目指してプロに売り込むのは厳しいと思います。そこで中継ぎ等でのランナーを背負った場面での投球術が一つのポイントになるでしょう。そこで、前述しましたように多様なクイックモーションを身につけることで(投げ方は正当派ですが)アンダーハンドの牧田のような変則スタイルと認識される事が、年齢が高く、また社会人などでの実績も無い選手がプロに入れるためには重要になると思います。そして、クイックモーションのような脚を挙げないフォームからの出力を高めるためにはハムストリングスの力(下半身の力)を使える事が重要になりますから、これも黒人化と言う理論を使えば、長所とすることが可能です。しかもパンチャーのメカニズムを理解して実践していけば、自然と、反動の小さいフォームからの出力は高くなるはずです。なのでコレを強みにしていかない手は無いでしょう。

また、球種についても、一つを磨いている時間は無いので、とりあえず精度は低くて良いので、出来るだけ球種のバリエーションを増やす事で「球種が多い」と認識される必要が有ります。

●まとめ

このように「中南米系のようなフォームから145キロを超す速球を投げる投手で、クイックモーションが多彩で球種も多く、打者を様々な方法で揺さぶれる。」と言う方向で売り込む事がプロ入りを可能にする方法になると思います。クイックモーションは現時点で8種類考えています。(オートマチックステップの構え4種+セットポジションの構え4種)脚を挙げてタイミングをとる打者が大多数である日本野球では、効果的な戦術になると思います。

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以上です。次回は、これらの課題を克服していくための練習方法がメインテーマとなります。