2013年3月31日日曜日

重いバット

テレビを見ていたら巨人の村田が重いバットを使っているそうだが、軽いバットを使った方が良い。動くボール全盛の時代にあっては、重いバットでヘッドを効かすイメージよりも軽いバットでスイングを速くして、そのぶん引きつける事で対応するイメージの方が結果が出やすいだろう。巨人にいたアレックス・ラミレスも統一球対策でバットを重くした事が有ったが、目立った結果は出ていなかったと思う。確か統一になって指がボールに引っ掛りやすく、ボールが曲がりやすくなったように聞いたが、それであればなおさら統一対策として、重いバットは相応しく無い事になる。

賛否両論有る統一球だが、個人的には大賛成だ。ボールの変化が大きくなると言うなら特に大きな価値がある。何故なら、素直な真っすぐを投げる投手が多い日本の野球では、そのくらいで丁度良いからだ。一方、アメリカはアメリカで空気が乾燥しているぶん、投手がボールにツバを付けたりする事に対して寛容であると聞いた事が有る。日本人の場合、ツバ=汚いと言う感覚が欧米人よりも強いし、湿度の高い気候のため、ツバを付ける必要も無い。なので、国内リーグだとなおさらボールは動きにくい環境にあるので、統一はなおさら必要だろう。

統一が導入される前は、日本のボールはメジャーのボールよりも一回り小さいと言われていた。そうした環境の中でホームラン30本だ40本だと言っていては世界に通用する打者が育たなくなる。そもそも今回のWBCでも敗退はしたものの、日本打線はキューバやオランダや台湾レベルの投手に対しては、非常に良く機能していた。打線を比較しても、それらの国の打線よりも良く繋がっていたが、これなどは統一の成果の一つだと見ていい。つまり、飛ばないボールに冷や水を浴びせられて鍛えられた日本の打者がミートする事に重点を置くようになった結果が、今回の打線の繋がりを産んだと言う事だろう。実際、長打を狙わずにボールに喰らいついて行こうと言う姿勢そのものは参加国の中でも一番良かったと言っていいくらいだ。ただ、惜しむらくは動くボールに対応する能力が鍛えられていなかったということだ。

話を村田に戻すが、村田は「重いバットを使って、バットを落とす感覚で打っている」と言っているそうだが、村田のメカニクスを考えると、そのような小洒落た事を言わずに、軽いバットを使って筋肉の力で思い切りボールをぶっ叩いてやれば良い。

打者のスイングが大きい事と言うか豪快に振る事は、とかく大振りと非難の対象になるが、重いバットを使う事は非難の対象になりにくい。しかし私の考えではスイングは豪快であるべきだが、バットは軽くするべきだ。スイングを小さくしようとするとメカニクスが悪くなるが、バットを軽くする事でメカニクスは悪くならないし、むしろ良くなる。であれば「正確性を高める」と言うテーマをバットを軽くする事によって追求した方が良い。スイングを小さくして当てに行くということは投球に例えると置きに行く事と同じであるから、本当にキレの有る球や速い球には対応出来ないだろう。だから無茶振りにならない程度に思い切り打って行った方が良いのだ。むしろ重いバットを(試合で)使う方が飛距離に拘っている事を意味するので、非難の対象になる。「そのリーグで最も速い球を投げる投手のインコース高めを打てるかどうか」がバット選びの基準になるべきだ。その球が打てないようなバットなら、その選手にとっては重すぎると考えた方が良い。結局は、そのカテゴリー(硬式、社会人、プロ、少年野球)の中では一番軽いランクのバットを使うのが賢明な選択と言えるだろう。それで体そのものの力とスイングスピードで飛ばしてやれば良いのだ。

ところで、同じ巨人の選手でもWBCに出場した阿部は、興味深い事を言っている。

http://hochi.yomiuri.co.jp/giants/news/20130328-OHT1T00290.htm

新フォームで東京Dでの最終調整を終えた4番は「バットを振り下ろすイメージだね。強く叩くことを意識している」と説明した。よりスピンのかかった打球が右翼席へと放り込まれた。WBC後から取り組んだ新打法は、威力が違った。キューバ、プエルトリコなど各国の強打者のスイングを見て学び、究極のダウンスイングを手に入れた。昨年、打率と打点の2冠を獲得した4番は「今年はホームランはあえて狙わない。狙うとろくなことがない」と無欲を強調しながらも、アーチ量産への下準備を整えていた。

ダウンスイングについてはさておき、中々正確な観察眼をしていると思った。ダウンスイングと言うのも、彼等の素振りを真近で見たためだろう。強く叩く事を意識していると言うのが良い。「ホームランを狙わず、強く叩く」一見、矛盾しているようだが、要するに動くボールに芯を外されてもヒットになるようにしようと言う事だ。

ただ、これで阿部に結果が出るとも限らない。何故なら、スインガータイプとダウンスイングは極めて相性が悪いからだ。しかし、阿部の取り組み自体は、極めてこれからの野球に適応しているものだと言える。そして、それでこそ国際試合に参加した意義が有ると言うものだ。

最後にもう一度村田だが、重いバット云々の彼の選択は非常に残念な所だ。村田なら3割20本のラインを狙って行けば、全盛期のジェイソン・ジアンビを右打者にしたような実に良い打者(そのNPB版と言う意味)になれると思うのだが。。