2012年10月31日水曜日

天地無用


タマタマ英語の勉強をしていて初めて知ったのだが「天地無用」とは「天地逆さまにしてはいけない」と言う事らしい。今まで「天地どっとでも良い」と言う意味だと思っていた。今まで引っ越しのアルバイトを短期で何回かしたことが有るが、大丈夫だったのだろうか。「意味の解りにくい言葉のシールが貼ってあるから、とりあえず、このままの天地にしておこう」くらいの事は考えていた気がするが。

運送業の場合、間にいくつか倉庫等を通す事もあるだろうし、その中には学生のアルバイトや一日限りの派遣作業員もいるだろう。そういう中で「壊れ物注意」と書いてあっても不安なのに「天地無用」等と言うややこしいシールを貼る発送者や運送会社の気が知れない。というか開いた口が塞がらない。その点、英語の方が合理的「this side up」極めて解りやすい。

ところでワールドシリーズではセルジオ•ロモのスライダーが極めて有効に機能していた。この投手はシュート方向に曲がるツーシームも有るので、厄介である。

http://www.youtube.com/watch?v=kDcAPEBl8LE&feature=plcp

2012年10月29日月曜日

チワワさん個別分析

この記事はチワワさんの個別分析記事ですが、JHETTさんのフォームも引き合いに出しますのでJHETTさんも参考にしてください。



まずチワワさんに関しては、センスは有ると思います。西武の西口とか、イム•チャンヨン、ジェイク•ピービーみたいな感じのセンスを感じますね。球速の数字と言うよりも打ちにくい球を投げられそうな気がします。躍動感の有るフォームが自分の真骨頂だと思うと良いでしょう。それを犠牲にして(一般的な野球指導の観点から)フォームを綺麗にまとめようとすると持ち味が無くなるタイプですね。

フォーム的には、JHETTさんに比べると、骨で立つとかハムストリングスで立つとか言ったあたりの事が出来ていません。ラボでも腸腰筋をストレッチした後に股関節がクッと折れる感じがつかめていないようでした。そのせいか、投げた後に後ろ脚が出て来る動作が大人しい時も有りました。

いい点は、グラブとボールの割り方が非常に上手いです。テークバックで投球腕が内旋しつつ肘から挙る所までの動きは素晴らしいのですが、そこからの外旋が浅いのが惜しい所ですね。それからJHETTさんよりもしなやかに動けている反面、JHETTさんよりも、骨盤の前傾した状態を作れていない分、動きの中で芯が弱い感じがします。チワワさんのしなやかさにJHETTさんの芯の強い安定感が加わると素晴らしいのですが。

詳細分析

チワワさんの大きな長所は、体重移動を利用した見事なグラブとボールの割り方です。そして、ヒップファーストの角度も素晴らしく、下の写真でも3コマ目までの形は(後ろ脚股関節の割れがやや甘い点を除き)パーフェクトです。


ただ、残念なのは後ろ脚股関節の伸展が弱く、重心移動の過程で沈み込んでしまい、そこから先はJHETTさんと同じ問題を有していると言う点です。そしてチワワさんの場合、フィニッシュでのターン&倒れ込みが弱いケースが多い事が目立ちます。ただ、事前に頂いた動画ではそうでも無い事を思うと、チワワさんの身長に対してラボがやや狭い事も影響していたのかもしれません。ただ、いずれにせよ、股関節伸展が弱く、重心が沈み込むのは確かです。


そして、テークバックでの投球腕の内旋は見事なのですが、その後の外旋が小さいと言う事はラボでお話した通りです。この動画後半の動き(或は下の写真)を見ても解りますように、股関節の絞りと投球腕の外旋は連動しています。股関節の絞り=伸展ですが、股関節伸展の結果、胸を張る動きが肩関節の外旋を誘発するのだと考えられます。


つまり、肩関節の外旋が浅いのは関節可動域も有ると思いますが、動作によっても改善しうると言う事です。

下の写真のシーンで、もっと股関節伸展による体の反りを作らないと、肩関節が外旋しないということです。


この点についてはアロルディス•チャップマンが素晴らしいので、下の動画の冒頭の投球練習のシーンを見てください。
http://www.youtube.com/watch?v=cAlnLfkppm0&feature=plcp


チワワさんの場合、技術論と言うよりも、股関節の機能性を高める事が重要になります。特に「黒人的な」と言う観点から見るとまだ手つかずの状態に見えます。技術論的な事に関しては、現状でかなり良い線行っています。まず、以下の感覚を掴めるようになってください。

★腸腰筋をストレッチした後に骨盤が前傾してクッと股関節が折れる感覚。また、その際、骨で立つ感覚が得られ、大腿四頭筋が緩み、ハムストリングスの腿裏内側、膝のやや上あたりが締まっている感覚。また、骨盤が前傾した時、股関節が緩む感覚。

★ワインドアップの際、後ろ脚の踵でトントンと足踏みをして、骨で立つ感覚が確認出来る。

★ワインドアップで最初に前脚を後方に引く時、カクッと後ろ脚の膝が緩む感覚。

★後ろ脚の踵でトンッと踏むと前脚が挙りやすい感覚。

などです。腸腰筋その場ステップや腰を反るストレッチ等をかなり繰り返す事で、こういった感覚を磨き上げ、強化していってください。

下図のように腸腰筋をストレッチした後、股関節が屈曲する感覚。これが非常に重要です。この感覚を掴めるか否かが分かれ道になります。


そして、股関節周辺の靱帯の方向性を見ても解りますように、骨盤を前傾させると靱帯が緩みます。

これは骨盤が前傾する事で、股関節のハマりが深くなるから、靱帯のテンションで股関節を安定させる必要が無くなるため、そうした身体の作りになっているのでしょう。
この状態になると、股関節のボールが転がりやすくなるので、股関節の回旋能力を引き出す上で有利になるのです。
そして、骨盤が前傾すると、大腿四頭筋が緩み、ハムストリングスが引き伸ばされるので、ハムストリングスの力が使いやすくなります。

ハムストリングスによる股関節伸展の力は脛骨を通り、地面に伝わり、地面を押します。ですから、踵寄りに加重する事が重要なのです。

まずは、こうした基礎的な事項を徹底したストレッチの継続によって身体にしみ込ませる必要が有ります。それはもう肉体改造するくらいの意識が必要で、黒人の身体に肉体改造するくらいの意識が無いと貫徹出来ない事です。ただ、チワワさんにもしそれが出来ると、凄い事になるでしょう。(もちろん、肩関節の柔軟性も重要ですが)

下の写真を見る限り、骨格のアラインメントには恵まれたものがあるからです。これは先天的要素に加え、成長期が終わるまでの骨格の育ち方も重要な要素になります。もちろん、成長期を終えてからの鍛え方も重要で、それが欠けていると、せっかくの恵まれた骨格を運動に活かせないのです。


つまり「遺伝子に関わる先天的要素」「成長期が完了するまでの要素」「成長期が終わってからのトレーニングによって改善される要素」の3つの要素のうち、チワワさんの場合、最初の2つには恵まれているものの、3つ目の要素が欠けているのです。つまり、腸腰筋が効いて、骨盤が前傾し、ハムストリングスが力を発揮しやすい状態で動作すると言う、黒人的な身体の使い方を身につけるための取り組みが無いのです。(もちろん、それには単純にダッシュする事なども含まれます。)

観察経験上、チワワさんのようなケースは良く有りますが、そうしたケースの場合「成長期が終わってから努力した人」に比べて、実際の動作の中で、黒人的な身体の使い方が出来ない事が多いのです。それだけ、後天的な努力が重要になると言う事です。


まず、取り組みの第一段階として、チワワさんの場合、ヒマが有れば腰を反って腸腰筋をストレッチし、その後に股関節がクッと折れて、骨で立つ感覚になると言う事の確認を行うようにしてください。

これは、もちろん、大きく反ってしっかりやるべきなのですが、日常の色んな場所でも、10センチ程度の反りで充分出来るので、例えばポケットに手を突っ込んで普通に立っている感じのままでも出来る事です。(股関節を屈曲させる時、胸椎の後湾を意識すると、骨盤が前傾し、骨で立つ感覚が掴みやすくなります。)もちろん、小さな反りで感覚が掴めるためには、ある程度、習熟する必要が有るでしょう。

そして、まずは、練習の仕方として、シャドウでも実際にボールを投げる場合でも、まず腸腰筋をストレッチしてから、ワインドアップモーションで前脚を引きつつ、後ろ脚の膝をカクッと緩め、後ろ脚の踵でトントンと足踏み(後ろ脚の踵で地面を踏むと、前脚が挙りやすい。)してから、骨で立っている感覚を確認したうえで投げると言う事を繰り返してください。

要するに、チワワさんの場合、手塚理論風に言うと骨盤が滑っている状態なのです。JHETTさんのように、クッと地面を捉える感じが無く、ヌル〜ッと出て行ってしまい、重心が沈んでしまうと言うパターンです。

ですので、下の写真のシーンでは非常に良い形で投球腕が外旋していても、


下の写真の動作で、後ろ脚股関節の伸展が使えず、胸が張らないので、充分な外旋角度が作れないのです。もちろん、股関節伸展で身体を持ち上げる力が弱いので、直ぐに着地してしまうため、肩関節が外旋する時間的余裕が無いと言うというのも原因の一つです。


上の写真のシーンで、それ以前の良い形が台無しになってしまっています。そのため、着地後に前脚股関節の伸展が上手く使えません。また、投球腕の外旋角度が浅いので、下敷きのしなりも不十分です。このあたりに球速が向上する余地があります。

ただ、センスが有るなと感じるのは、下の写真です。投球腕の外旋が浅く、肘が伸びたままアウトサイドインに腕が振られて、回転半径が大きくなりスイングが鈍くなる所を、脊柱を1塁側に無意識に傾けて、回転軸から脊柱を外し、スイングの回転半径を小さくしています。

このあたりに、しなやかに身体が使えるチワワさんのセンスを感じます。センスが無い人だと、ここで脊柱が動かずに、回転半径が大きく鈍い腕の振りになってしまいます。もちろん、このシーンでここまで顔がそれるのは良く無いのですが、この腕の振りと言う条件の中では適切な対応であり、敢えて修正していくべきポイントでは無いと言う事です。腕の振りが修正される事で、自然に修正されるのが理想です。

また、フォロースルーに関して言うと、JHETTさんに比べ、前脚の膝が外に緩み、前脚股関節伸展の力が上手く使えていません。膝が緩むから股関節伸展が上手く使えないとも言えますが。


そのため、下の動画の最初の実速の映像で比較しても、JHETTさんに比べてチワワさんの方が過剰にターンしてしまっています。JHETTさんの場合は、前脚股関節伸展、つまり絞りに伴う内旋が生じ、それによって瞬間的に前脚に壁が出来ているからです。その壁によって一度、力が打者の方に向かった後でターンしているので適切なターンになるのですが、チワワさんの場合、前脚の膝が着地後に外に緩む上に、股関節伸展に伴う内旋が弱いので、勢いに負けてターンしてしまっているのです。


フォロースルーの問題は文章と写真では表現しにくいので、動画で説明します。

念のために、股関節伸展によって身体を前に運ぶ動きとは下図のように、一歩前に出した脚の股関節を伸展すると、地面を後ろに押す反作用で身体が前に運ぶと言う理屈によるものですね。ラボでお話しした事を思い出してください。膝伸展だと反対に後ろに下がるわけです。

前脚の角度にはJHETTさんもチワワさんもあまり差が無いので、基本的に股関節が使えているか否かと言う技術論以前の問題が大きいと思います。(もちろん、技術論以前とは言いながら、技術論以上に重要であり、あるいは技術論そのものとも言える問題でもあるのですが。)


前脚股関節伸展(絞り)に伴う内旋で一度前脚に壁を形成しつつ、そこから股関節伸展で身体を豪快に運ぶ。コレが理想的なターン&タンブルをもたらします。股関節の運動性を向上させる事で、なんとか理想的なターン&タンブルを身につけてください。

以下に、いくつか turn and tumble finish (ターン&タンブル フィニッシュ)の良い例を挙げておきます。

ジョナサン•パペルボン

ジョニー•クエト

ジェレッド•ウィーバー

レオ•ニュネス
http://www.youtube.com/watch?v=WFuUayMx9MI&feature=fvst

上記の投手ぐらい豪快なターン&タンブル フィニッシュになるのが理想的です。日本人の場合、最近の高校生などで、ターンが出来る投手は増えてきましたが、タンブル(倒れる)の力強さがまだまだ全然メジャーにかないません。それは股関節伸展で身体を前に運ぶ力が弱いからです。倒れ込みで着地した後ろ脚に体重が乗るタンブルが最高のフィニッシュです。これをアスファルトの上でやると膝が心配な事だけが気になる点ですね。

そしてまた、ターン&タンブルフィニッシュの成否は良い動作であったかどうかのバロメーターになります。これは誰にでも当てはまる事ですが、特にチワワさんの場合、ワインドアップモーションからの投球で、腸腰筋ストレッチ〜後ろ脚の膝カックン〜後ろ脚踵トントンで骨立ち〜後ろ脚踵で地面を踏みながら前脚を挙げる〜ターン&タンブルフィニッシュと言う流れを一球一球、身体にしみ込ませていってください。

続きます。

チワワさんの場合、とにかく黒人化と言う観点からのトレーニングの徹底が急務です。もちろん、これは全ての人に言える事なのですが、チワワさんの場合、特にです。そして、もう一つは肩関節の柔軟性を向上させる事ですね。この二つが出来れば、現状の感じで投げ続けるだけでかなりのレベルに到達出来ると思います。

また、上半身の筋力トレーニングとして、素振りも出来るだけ行ってください。素振りとシャドーの組み合わせは効果的な練習で、硬式用など、ある程度の重さのバットで素振りを5回くらいした後、シャドーをすると最初は腕の振りが硬くなっていますが、5球も投げるとしなやかさが戻ってきます。そして腕の振りも力強くなっている事がわかります。この繰り返しの練習は効果的です。

また、とにかく腕を多く振る事で投球腕の回旋能力を向上させる観点から考えると、オートマチックステップドリルは効果的ですね。腕を振ると、加速時に生じる慣性力等で外旋がかかりますが、その繰り返しで外旋可動域が広くなっていきます。無理の無い範囲(ボールと同じ重さまで)でシャドーボールに重りを入れて行くのも良い方法です。外旋させる負荷が強くなるためです。

なお、オートマチックステップは始動時の下半身の力が弱いと投球腕に負担がかかる事が予想されますから、何球かに一回、腰を反って腸腰筋をストレッチし、骨盤の前傾した構えから投げる事に注意してください。

以上です。ではがんばってください。

2012年10月28日日曜日

JHETTさん個別分析

この記事はJHETTさんの個別分析記事ですが、チワワさんのフォームも引き合いに出しますのでチワワさんも参考にしてください。JHETTさんの場合、脚を挙げる時の骨盤後傾と降ろす時の前傾を非常に上手く使えています。それに加えて、ラボでの練習において、腸腰筋をストレッチした後で股関節をクッと屈曲させるいい感じがつかめていたので、始動ポジションで上手くハムストリングスで立てている投球が何回かあります。ただ、打撃の構えも見ても思ったのですが、股関節を割る感覚がイマイチです。昔の動画だとそこそこいい感じで割れていたのですが。



後ろ脚股関節が割れた状態からニュ〜ッと絞り動作を起こしながら伸展する事で地面を押す動作が重要なのですが、この力があまり使えていません。これは以前から一環している問題です。JHETTさんのように股関節の割れが上手く作れず、始動時の下半身の力が弱い人をこれまで何人か見てきました。JHETTさんもそのタイプのように見えます。ですので、そのへんの研究と実践が非常に重要だと思ってください。

それからもう一点、グラブとボールを割る動きに少し力が入っているような感じがします。その辺はチワワさんが非常に上手いのですが、少しヒップファーストがキツすぎるのも原因かもしれません。チワワさんくらいのバランスで重心移動を行った方がクラブとボールが自然に割れます。

詳細分析

JHETTさんのフォームで気になる点として、グラブとボールを割る動きに力が入っているように見えると言うのが有り、その原因として、重心移動初期のヒップファーストの角度が大きすぎるのせはないかと書きました。さらにそれに付随して以下の点が気になります。「テークバックで肘が伸び気味に投球腕」「股関節が割れずに膝が内に折れる後ろ脚」「ややキツいヒップファーストの角度」この3つです。下の写真はその動作のメカニズムを表現しています。


これは、下図のように、ヒップファーストで上半身を捕手方向に倒す回転(オレンジのセグメントの回転)が、脚を斜めに倒す回転(黄緑のセグメントの回転)と腕を引き上げる回転(青のセグメントの回転)を引き起こすからです。
これは、3つのセグメントのうち、どのセグメントの運動が原因となっても起こりうる動作で、前にハンターさんの記事でも書きましたが、非常に良く見られる問題なのです。


特に問題なのが、後ろ脚の股関節が「割れ」では無く「外転」になる事で、そうなると、膝が内に折れやすくなります。結果的に膝が前に潰れ、大腿四頭筋が効いて、ハムストリングスが緩み、ハムストリングスの力が使えなくなってしまうのです。投球腕の動作についても肘が伸びたテークバックになりやすいのが問題です。

下の写真を見ても、膝が内に折れ、かつ前に潰れている事が解ります。こうなると、始動ポジションでハムストリングスを使って立てていても、その後の重心移動のシーンでハムストリングスの力を充分に使えません。 


そのため、重心移動のシーンで後ろ脚股関節の伸展で体を持ち上げる力が弱いので、前脚が着地した時の膝が曲がり過ぎてしまっています。

特に平地でのスローイングの場合、マウンド上に比べてヒップファーストの角度が浅くなるので、重心が高いフォームになりますから、その点を考慮すると、平地でのこの膝の角度は問題です。マウンドでも下の写真くらいの膝の角度で良いくらいです。


下の動画の冒頭にジョニー•クエトの投球練習が3球ありますが、前脚の角度を見てください。軽く投げているので全力投球に比べるとやや重心は高いと思いますが、この感じで良いんです。

http://www.youtube.com/watch?v=WbQI2INt49U&feature=plcp

この前脚が着地した状態から、パンチャータイプの場合、(無意識下で)前脚の股関節、膝関節を伸ばしながらパンチを放つのと同じメカニズムで腕を振ります。前脚を着地したトップの形を作り、そこからパンチを打つ実験をしてみると、前脚を伸ばす事によって強いパンチが打てるのが解ると思います。


ただ写真の投手(比嘉幹貴)の場合、少し前脚が伸びるタイミングが早すぎるかもしれません。その点、ラボ室内の動作ではJHETTさんのフォームも悪く無いのですが。。

ただ、JHETTさんの場合、基本的には重心移動のシーンで後ろ脚股関節の伸展の弱さから、重心が沈んでしまい、前脚の膝が深く曲がった状態で着地してしまうので、この前脚の伸展を上手く使えていない傾向が多分にあります。


そこで実験ですが、下の写真のポーズを作ってください。前脚が着地して、肩は45度くらい投手方向に回転した状態です。この状態からパンチを打つ実験を行ってください。


図a

図b

図aのように前脚の膝が90度くらいに曲がるまで重心を下げた状態から前脚を曲げたままパンチを打つ場合と、図bのような前脚の角度からパンチを打つと同時に前脚を伸ばす場合で、どちらが強くパンチを打てるのかと言うと、図bの場合だと思います。

前脚股関節、膝関節の伸展で地面を押す事によって発生する地面反力は、重心移動にブレーキをかけると同時に体幹の前屈のトルクを強化する事で、パンチを打つ力を強くする働きが有ります。(前脚の固定が弱く、重心が前方に流れながらの状態でパンチを打つと、パンチの押す力が上手く加わらないのはイメージしやすいと思います。)

そして、着地の時点で図aのように膝があまり深く曲がり過ぎていると、体重が着地した前脚にかかりにくく腰が落ちてしまうのですが、着地の時点で図bのような膝の角度になっていると、体重が着地した前脚に上手くかかってくれるのです。


前脚に体重がかかると、前脚股関節伸展の力も上手く使えます。ですから、図bくらいの前脚の角度で着地する事が重要なのです。

そしてJHETTさんの場合、後ろ脚股関節の伸展の力が上手く使えていないので、重心が低くなり過ぎ、前脚股関節の伸展を上手く使えていないと言う事です。

ただ、JHETTさんの場合、投げ終わった後のターン&倒れ込みは中々ダイナミックで良いものがあります。しかし2コマ目で前脚が浮いてジャンプしてしまうのは、理想的な倒れ込みの形では無いでしょう。これも、前脚の着地する角度が良くなると改善されると思います。恐らく、前脚股関節の伸展に伴う内旋が弱いので、前脚の壁が上手く機能せず、重心移動と回転に踏み堪えられないのだと思います。ただ、そのくらいの勢いがついているのは良い点です。


投げ終わった後のターン&倒れ込みで理想に近いのが体を捻るフォームにする前のジョニー•クエトですね。2010年のフォームを動画で見てください。特に動画後半の倒れ込み方は体がキレて来たのか素晴らしいものがあります。

http://www.youtube.com/watch?v=KwNqjBwcpQg&feature=plcp

前脚がきちんと伸びて、着地した前脚に体重が乗る、理想的なターン&倒れ込みです。この動きを目指してください。(クエトは体を捻るフォームを採用して大化けしたのですが、フォーム自体は捻らない頃の方が良かったのですがね。)

まず、ヒップファーストの角度がキツいと言う事ですね。その結果、後ろ脚股関節が割れにくく外転主体になり、膝が内に折れ、重心が下がって前脚が上手く使えないと言う悪循環です。

さらに、グラブとボールの割れ方がきごち無いのも、ヒップファーストがキツいからでしょう。もう少し自然に上半身の角度を保った方がグラブとボールが自然に割れてくれます。その辺はチワワさんが非常に上手いです。これ以上無いくらい理想的なヒップファーストの角度とグラブとボールの割れ方です。投球腕の肘が非常に良い角度に曲がっているのもそのためです。


体重移動との連動でグラブとボールを割る事が出来ていれば、本来、両腕がチワワさんのように重力で下がって肘が伸びるような形が瞬間的に形成されます。(グラブ腕の方は少し曲がったままになるようです。)

もう少し自然な上半身の角度で(ヒップファーストを意識せず)重心移動がスタート出来れば、グラブとボールももっと自然に割れてくれるはずです。

なお、良い点も勿論、多々あります。投げた後のダイナミックさも良いですが、グラブの残り方。これが素晴らしいです。これ以上無いくらい理想的なグラブの残し方が出来ています。


また、脚を挙げる時に後傾した骨盤が降ろす時に前傾する動作も素晴らしいですね。ただ、ここまで骨盤が前傾するまで始動を我慢してしまうと、始動ポジションで既に重心移動が始まり過ぎた状態になりやすく、そうなるとパンチャーとしての始動時の下半身の力の発揮が弱くなってしまう可能性があります。



また、骨盤が前傾する事によってハムストリングスが効いて来るので、頭の位置が伸び上がるようになってしまうのですが、この動作も強調され過ぎると、始動時の下半身の力の発揮が弱くなります。そのような場合、特に肩に負担がかかります。


伸び上がる動作に付いてはラボでの会話でも有ったと思うのですが、JHETTさんの場合、始動ポジションを形成するタイミングも課題ですね。伸び上がるシーンで押さえ込む意識と言う事も確かに以前に書きましたが、それ以上に、もう少し(と言ってもコンマ何秒ですが)早いタイミングで始動した方が良いのかなと思います。今の所、脚を降ろして、骨盤を前傾位に戻してからと言う意識が強いのでは無いでしょうか。それだと前述のように始動前に重心移動が起きている状態になりやすいです。

それよりも、前脚を挙げたと思ったら、フッと一瞬力を抜いて、すぐ始動するくらいのイメージの方が上手くいくと思います。

始動のタイミングと言う意味ではティム•ハドソンは参考になります。ワインドアップの方が解りやすいです。

http://www.youtube.com/watch?v=kY5dsxeudRg&feature=relmfu
http://www.youtube.com/watch?v=A-VgDLCX7ZA&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=9C5wN2Sj1fQ&feature=plcp

ティム•ハドソンは前脚を挙げる時に上半身が背中側に傾くのと、腕を大きく挙げるので、膝で体重を受け止めて、膝が潰れており、重心移動にダイナミックさが無いのが難点ですが、ラボでさいようしているメジャー式の前脚の挙げ型からの始動と言う意味においては参考になる一人ですが、もう少し遅くても良いですね。

ハビアー•バスケスくらいが理想でしょうか。ラボで採用している方向に最も近いと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=-nrLPz6I4kE&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=U_WEW-IXBHE&feature=plcp

始動ポジションの形成が早すぎると重心が沈み過ぎる傾向は有ると思います。骨盤が後傾した状態からの始動になるからでしょうか。ラモン•ラミレスはそのケースでしょう。

ラモン•ラミレス
http://www.youtube.com/watch?v=YEMelsFTueE&feature=plcp

始動するタイミングについては、試行錯誤が重要だと思いますが、最も力を発揮出来るタイミングと、そこに至るまでの動作を掴んでください。

だいたい、以上ですが、チワワさんの分を書く過程で少しだけ追加します。


JHETTさんの場合、やはり始動ポジションを形成するタイミングと言うのが重要なテーマだと思います。私自身でも、セット始動をしないと言う理論変更後、始動ポジション形成のタイミングについては試行錯誤を重ねています。どのように教えるのが普遍的かと言う事も考えています。

その結果「始動ポジションの形成が遅いと始動時の下半身の力が使えず、肩に負担がかかる」と言う事が解ってきました。そして「始動ポジションは動きではなくリズムで捉える」と言う事の重要性も解ってきました。

つまり「前脚を挙げたと思ったら、フッと一瞬力を抜いて、すぐ始動する」と言う事です。実際にはハビアー•バスケス(遅い)とティム•ハドソン(早い)の中間くらいでしょう。

2010年の捻るフォームにする前のジョニー•クエト(http://www.youtube.com/watch?v=KwNqjBwcpQg&feature=plcp)は、理想に近いです。(グラブとボールの割り方がワザとらしいですが。)そのため、フィニッシュが豪快になっているのでしょう。重要なポイントですが、骨盤が前傾位に戻り、骨で立つ感覚を確認してからの始動では始動が遅すぎます。始動しながらオートマチックに骨盤が前傾位に戻るようでなければばりません。ヤンキースのデビッド•ロバートソンの骨盤の動きは良いです。(http://www.youtube.com/watch?v=OVtX-pHZvf8&feature=plcp

最も力が発揮出来て、ターン&タンブルフィニッシュが豪快になる始動のタイミングを試行錯誤で掴んでください。


打撃


バッティングについては、主にピッチングとの関連と言う観点から書きます。まず、動画を見ると、骨で立つ感覚は非常に良く掴めているのですが、股関節を割る事が出来ていないのが解ります。(昔に頂いた動画ではもう少し割れていましたが。)その意味ではピッチングと傾向が同じですね。

最後のスローモーションを見ても、股関節が割れていないので始動時の力が弱い事が解ります。横にスライドするような重心移動になっていますが、これは放物線軌道の重心移動にならないとパワーが生まれません。(放物線軌道になるとタスキラインが充分に引き伸ばされ、また着地した前脚に体重が乗ります。)

なお、右で打つのが良いのか左で打つのが良いのかと言うご質問が有りましたが、少年野球の選手のようにこれからいくらでも時間がある訳でもなく、また、仕事等もある中での取り組みで時間が限られる事を考えると、右で打つ方が良いでしょう。右投げ右打ち、左投げ左打ちだと、打撃がピッチングのための筋力トレーニングになり、投球が打撃のための動的ストレッチング(肩廻りの筋肉をほぐす)になるためです。 一方、右投げ左打ちの利点は、両方方向の回転運動を行えるので、身体のバランスとか、肩を痛めたり等のケガをした時の保険として考えると有利な面が有ります。身体の動きとしてはより高い次元を追求出来ると思いますが、右投げ右打ち等に比べて、多くの練習時間が必要になるのが難点です。

以上です。それではまた、がんばってください。

2012年10月23日火曜日

ジョー•ケリー

面白い投手が出てきました。今期MLBデビューした1988年生まれの若手です。

Joe Kelly 成績

ややアーム式なので肘が心配ですが、そのへんも含めてペドロ直系のフォロワーです。フォーム、投げている球などが如何にもパンチャーらしい。見た所少なくとも黒人系では無いようですが、そうした投手がペドロ的なフォームで投げているあたり、当然と言えば当然ですがペドロ•マルティネスが米球界に与えた影響は大きいと言う事でしょう。さらにペドロのフォームが人種に根ざしたものでは無い事の証明でもあります。

動画1 (速い球が動く動く。これぞパンチャーの変化球ですね。)
http://www.youtube.com/watch?v=nR-K5QQuTmc&feature=plcp

動画2 (1球目。速球の軌道がペドロ的です。0.38からのライザーは圧巻。)
http://www.youtube.com/watch?v=rtEG9ygfODA&feature=plcp

動画3 (0.37から、81マイルのパンチャーカーブ。)
http://www.youtube.com/watch?v=211lsBEeO0I&feature=plcp

動画4 シュートするファストボールが低めに決まる。
http://www.youtube.com/watch?v=ZLVpIfLUqd8&feature=plcp


ファイブツールファストボーラーですね。肘だけが心配ですが。

こちらはペドロ•マルティネス。


投球技術そのものも凄いですが、時代を先取りしていると言う意味でも凄いですね。

2012年10月22日月曜日

マイク•ピアザ


マイク•ピアザの打撃はセンセーショナルでした。構えた状態からテークバック無しでいきなり打つ事をこれだけ明確に体現した打者はいないでしょう。バッティング理論の既成概念をブチ壊した男。それがマイク•ピアザだと思っています。彼がキャッチャーで無ければボンズの次に凄い打者になったでしょう。ボンズもピアザの打撃は認めていました。



ピアザが活躍した90年代初頭から2000年代初頭にかけてが、最もオートマチックステップの打者が多く見られた時代でしょう。特に大物打者に多かったのが今との違いです。

ジェイソン•ジアンビ


フレッド•マグリフ


ホセ•カンセコ


ジェフ•バグウェル


マーク•マグワイア


ケン•グリフィーJr

2012年10月21日日曜日

ジェイソン•ワース

ジェイソン•ワースはオートマチックステップで打つ打者で、2009年には打率0.268の36HRを記録し、2010年には打率0.296の27HRを記録しています。以前より注目している打者の一人です。

まずはスイングを見てみましょう。

http://www.youtube.com/watch?v=7yvYLXESALY&feature=relmfu
http://www.youtube.com/watch?v=RNfSn2hqRZk&feature=plcp

オートマチックステップなのだから当然と言えば当然ですがまず無駄が無い。その上でまずミートありきの両手振り抜き。如何にも勝負強そうな打者です。かつて阪神でオマリーと(私の中では)阪神最強助っ人コンビを組んでいたジェームズ•パチョレックを彷彿とさせます。

実際、Wikiによると、2008年のワールドシリーズでは本塁打を打ち、2009年のポストシーズンでは15試合で7本のホームランを打つなど、大舞台での強さを見せています。
また、1打席で何球投げさせたかを見る指標(pit/pa)においてはMLB通算を大きく上回り、2009年はMLB最高の数字を記録しています。

そのワースが、今年のポストシーズンで「らしさ」を見せてくれました。ナショナルズは既に敗退しましたが、カージナルスとのディビジョンシリーズ第4戦で、1対1の9回裏、今期18勝7敗を記録したカージナルスのランス•リンから13球粘ってサヨナラホームランを打ちました。

http://www.youtube.com/watch?v=OoJ2R308W3g&feature=plcp

まさに両手振り抜きのオートマチックステップの真骨頂とも言えるべきシーンです。2ストライク0ボールから粘っているのが凄いですね。

打席の映像を見ると、2ストライク取られてからはボール球に手を出さないように、出来るだけ長くボールを見ようと言う意識が感じられます。そしてファールはカットと言うよりも振り遅れのように見えますね。

どのような打法でも、引きつけようとすれば振り遅れが増えるのは当然ですが、そうなると、ファールも当然増えてきます。ですから、引きつける事が上手い打者ほど粘れるのでしょう。

この打席でのワースは、ボールをよく見ようとするあまり、体の回転が小さくなり、手だけで打ちに行っていますが、その事がファールの原因になっているのでしょう。これはカットとは違うと思います。そうやって粘っているうちに、前の球よりホンの少しだけ遅い球が真ん中より僅かに外より、しかもやや低めに来た。このコースだとむしろ腰の回転が小さい方が合いますし、1マイルの微妙な球速の遅さが、そのスイングにフィットしたのでしょう。タマタマとはさすがに言いませんが、そういう種々の条件が揃って、投げたボールと振ったバットがドンピシャで衝突した。そんな感じのホームランです。

こういう打者が自分が監督をしているチームに来たら。。打率2割8分のホームラン20本で良いから、安定して打ち続けてほしい。そして大事な所で打ってくれれば。そう思うでしょうね。ボンズの後の4番を打ってほしかった打者です。


2012年10月19日金曜日

JHETTさん&チワワさん1(二人に共通する問題)

本日はご来店有り難うございました。



日本人のピッチングを見慣れた目には、彼等のフォームは変則的なものに思えるかもしれません。しかし、ペドロ•マルティネスやジョニー•クエトを良くご存知の方なら、解ると思いますが、こういったフォームは今のMLBでも一つのトレンドと言えるべき、最先端のものなのです。そして、これこそがパンチャータイプのど真ん中を行くフォームです。もちろん、変則などではありません。それどころか、今後の主流ともなり得るフォームです。

今期19勝を記録したジョニー•クエトのフォームを見てください。この投手の投げ方を見て、それだけの投手だと看破出来る人は少なくとも日本には少ないと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=e8gBcNPEZTw&feature=plcp

その他、如何にもパンチャーと言ったフォームを挙げてみます。

フェルナンド•ロドニー 
今期48セーブ。脚の挙げ方が小さく、極めてセット始動に近い。
http://www.youtube.com/watch?v=iKHeAs8qOKw&feature=plcp

ジョナサン•パペルボン
通算257セーブ、今期42セーブを挙げた元レッドソックスのクローザー。マイケル中村を彷彿とさせる。
http://www.youtube.com/watch?v=ag3jtcp3dk4&feature=plcp

ナフタリ•フェリーズ
2010年に40セーブを挙げたが先発に転向した。ペドロの影響を色濃く感じさせるフォーム。
http://www.youtube.com/watch?v=XqzOqtkwZR8&feature=plcp

ジェイク•ピービー
ムービングファストボールの鬼。2007年には19勝でリーグ最多勝。実績充分のスターター。
http://www.youtube.com/watch?v=EgmRIPb9kcI&feature=plcp
かと思えば緩急の差も使える。
http://www.youtube.com/watch?v=p3KhiFXCNGs&feature=plcp

これらの投手は非常にパンチャーらしいです。

さて、JHETTさんとチワワさんですが。

前述しましたように、二人とも非常にパンチャーらしい、これぞパンチャーと言うフォームです。ここまでのパフォーマンスを発揮して頂いた事に感謝すら憶えるほどです。

と言うと、大袈裟な表現になりますが。それもあながちお世辞では無いのです。より大きな視点の「投球技術」と言う観点から見ると、二人ともまだ素晴らしいとは言えません。しかし、パンチャータイプと言う観点から見ると、芸術的とも言えます。

音楽で例えると、誰もが素晴らしいと認める名曲ではない物の、繰り返し聞く事でクセになるようなマニアックな楽曲のような良さが有るのです。実際、そういう動作の動画は見れば見る程、味が出て来て、何度も繰り返して見てしまいます。二人の動画もそういう動画です。

では、本題に入ります。

実は、二人ともメインとなる問題点は共通しているので、まずはそこから書きます。

まず、次の動画を見てください。ジェームズ•シールズと言うパンチャータイプの投手です。(ジェームズ•シールズ 成績

http://www.youtube.com/watch?NR=1&feature=endscreen&v=iherJtA9_Yk

特に0.19からのストレートを見ると、始動時の下半身の力が強い事が解ります。

次に0.28からの斜め横からのシーンを見てください。(この角度なので割れが強調されて見えますが)後ろ脚股関節が割れた状態から絞られる時、股関節伸展によって強力に地面を押している事が解ります。地面を押す力が強いので地面反力も強く、その力が重心移動のシーンで体を持ち上げるので、重心があまり低くなりません。

パンチャータイプの始動時に発揮される股関節伸展の力は非常に強力です。下の写真は、その状態を良く表現しています。(巨人 アルバラデホ)

下のイラストも、それを表現しています。

まず、JHETTさんもチワワさんも、この始動時の下半身の力が弱いです。そして、その理由の一つが、重心移動の初期に股関節の割れを充分に形成出来ていないからです。(写真)

そして、この後ろ脚股関節の割れは、投球腕のテークバックとも密接な関係が有ります。下の写真のように、投球腕が肘から挙る動作が割れ絞り体操の時の腕の振りのような役割を果たし、その結果、後ろ脚股関節に沿って捻りが生じて、後ろ脚股関節が割れるわけです。

それに加えて、重心移動は、その初期において、落下の成分を大きく含みますから、滑り台を滑り落ちるような軌道で重心移動が始まる時、その運動を受け止めて後ろ脚の股関節が割れるのです。


これら二つの要素が後ろ脚股関節の割れを形成する大きな要素です。滑り台を滑り落ちるような重心移動と、その重心移動と反対方向に引かれる投球腕のテークバックで、前の「足」から後ろの肩の対角線上に反りを形成するような動作が生じ、その結果、後ろ脚股関節に被さるように骨盤が前傾するので、後ろ脚股関節が割れるわれです。ただし、股関節が割れるシーンではまだ反りは生じていません。そういう方向に動いていると言う意味です。(股関節の割れと、骨盤前傾の関係 噛み合わせ)



この股関節の割れが形成出来てこそ、その後の股関節の絞り、つまり伸展によって強力に地面を押す動作が得られます。それについては動きでないと説明が難しいので、動画で説明します。


股関節伸展とは、体に反りを生じさせる動作ですから、それによって胸が張り、胸の張りが肩関節の外旋を助長します。また、重心移動の過程で良い意味で投球腕の肘が背中側に入り「肩が入る」状態も、股関節伸展に伴い、胸が張って来ると自然と形成されます。

このあたりの事がJHETTさんとチワワさんのフォームに欠けているのです。

つまり、このシーンで体の後ろサイドに力を発揮する準備が出来ているかどうかと言う問題なのです。もっとも写真は静止状態で作ったものなので、実際のフォームとは少し違いますが、要は重心移動の過程で後ろ脚股関節が割れるい形や、投球腕の肘が背中側に入り、胸が張る形などが出来ていれば、球速も挙ります。



そういう視点でクレイグ•キンブレルとアロルディス•チャップマンの両豪速球投手の動画を見てください。

クレイグ•キンブレル
http://www.youtube.com/watch?v=aWO9kaaltdc&feature=plcp
アロルディス•チャップマン
http://www.youtube.com/watch?v=cAlnLfkppm0&feature=plcp

特にチャップマンは後ろサイドの力が凄いですね。これが豪速球の秘密です。

このようなチャップマンやキンブレルのような形を作るには、以下の点が重要になります。

★まず前提として股関節の割れと絞りの動きをストレッチを通して磨く事。
★大腿四頭筋が緊張していると股関節が割れにくいので、踵でトントンする動作等により骨で立つ感覚を掴む。
★肩関節が柔軟で内旋、外旋の深い「肩の入った」テークバックが取れる事。そのために、腕回し等のストレッチやシャドウピッチングも必要。シャドウはオートマチックステップドリルが単位時間内に多く腕を振れるので効果的。
★バットを使った外旋ストレッチ等で、外旋の柔軟性を向上させておく事も「肩を入れる」ために重要。その後は内旋ストレッチや腕回し等の動的ストレッチ
★股関節を割った状態からの絞りはイコール股関節伸展なので、ハムストリングスの力を上手く使えるよう「リズム股関節伸展スクワット」や「腸腰筋その場ステップ」等の黒人化トレーニングを重点的に行う必要が有る。また、そういったトレーニングの中で、ハムストリングスが使えている感覚、使えている時の体の動きなどについて理解していく必要が有る。
★割れ絞り体操の応用で、タスキラインに沿ってパンチを打つ練習なども、割れた状態からの絞りを行えるので効果的。
★重心移動の初期に過度にヒップファーストを強調しない方が、後ろ脚股関節の割れを形成しやすい。


等がポイントですね。

基本的には、「肩肘の柔軟性を向上させつつ、股関節伸展能力の向上を伴いながら、割れと絞りのストレッチを重点的に行う」と言う路線で行くのが良いでしょう。加えて、フォーム的には「始動ポジションで骨立ちの状態を作れる」事が重要になります。

続きます。

次にこれまた、二人ともに共通する課題なのですが、腕の出所がやや低すぎると言う事です。もちろん、パンチャーはスリークォーターになるのが基本なのですが、それにしても少し低過ぎます。これはやはり肩関節の外旋が不十分だからで、外旋が充分だと、もう少し腕の出所は高くなります。

MLBのパンチャーの投手でもテークバックで内旋が深い投手は、その後の外旋も深くなるので、そうした投球腕の回旋運動を上手く使えている場合、腕の出所はもう少し高くなります。例で見てみましょう。

チャーリー•ファーブッシュ
http://www.youtube.com/watch?v=sqr9tAsdkb4&feature=plcp
クレイグ•キンブレル(特に最後の一球)
http://www.youtube.com/watch?v=p21AjwFJrx4&feature=plcp

それに比べると、ペドロは少し低いですが、それは少し自分の筋力でグラブとボールを割っている分、アーム気味になっているからで、肘を痛めたのもそのためでしょう。ペドロだから全てが理想的と言うわけでは有りません。因に投手の人なら、この割り方からの、この腕の振りを見て、自分の肘が痛くなりそうな鋭い感覚が欲しいものです。


ナフタリ•フェリーズもペドロ•マルティネスに非常に良く似た投手ですが、そのへんに関してはペドロよりも上手くやってますね。そのぶん腕の出所もペドロよりやや高くなっています。この腕の出所もパンチャーの理想に近いものが有ります。
http://www.youtube.com/watch?v=3DQ_iYuNd28&feature=plcp

二人の腕の振りを見ても(解りやすくするために、あえてカッコ悪いコマばかり集めました。)肩関節の外旋角度が小さく、肩が入っていない事が解ります。

例えは悪いですが、二人共、腕の振りがパンチと言うより、女性のビンタのようになっているのです。女性のビンタでは、手首を背屈させるので、前腕が回内気味になり、肩関節が外旋しにくいので、肩が入らず、力が加わらないのです。(下のイラストの4コマ目、肩関節が外旋し、ボールが隠れたカットが肩が入った状態を表します。)
尾崎行雄 昔のパンチャー豪速球投手

始動時の下半身の力を、上半身の加速に活かす際に、肩関節の外旋が重要になります。肩関節が外旋していると、そのぶんボールが後方にポジションし、胸が張るので、腕の振りに下敷きの原理を有効に活用出来るのです。



先行して体を回転させる事で、後発部位となるボールとの間に「下敷きのしなりを大きく」を作る事こそ、下半身動作の最終的な意味です。ところが、肩関節の外旋機能が低いと、せっかく下半身で大きな力を発揮しても、ボールを後方にポジショニング出来ないので、下敷きのしなりが小さくなってしまいます。これでは下半身の力を腕の加速に活かせません。これが二人に共通する問題です。

ただ、これは野球経験の浅い人には非常に多く見られる問題です。ある程度小さい頃から日常的に腕を加速する動作をしていないと、外旋角度を深く取る事は難しいのです。二人とも、野球部経験がゼロでこれだけのパフォーマンスを発揮出来るのは驚きなのですが、やはり、この辺に、そのマイナス面が出てしまっています。ただ、これだけ気持ちよく体が動いてくれているので、肩関節がもっと動くようになれば全然違うと思います。

野球部経験者の場合、投げた後に傾くなとか矯正を加えられている場合が多いので、実はあまり体が気持ちよく動かない場合が多いのです。その辺は趣味でやって来た人の方が自由に体を使えるので気持ちよく体が動くようです。

話を元に戻しますと、二人とも、この投球腕の外旋角度が足りずに、ボールを後方にポジショニング出来ないので「悪い意味で」体とボールが同時に出て来てしまっています。それは体幹部が下敷きでは無く、一枚の硬直した板のようになっている事を意味します。

「悪い意味で」と書いたのは、パンチャーはスインガーと違って停止慣性力でボールを後方に残すこと自体に意味が有るメカニズムではありませんので、パンチャーと比べると「体とボールが極めて同時に近いタイミングで出て来る」のです。これはパンチャーのバッティングでヘッドの出が早いのと同じ事です。

例えばジョニー•クエトのフォームでも藤川球児とかダルビッシュ有のフォームに比べると「体とボールが同時」の感じが強いでしょう。腕のしなりと言うより、体全体で押し出すように投げています。
http://www.youtube.com/watch?v=GSfJrwuAxUk&feature=plcp

ただ、そういうパンチャーの特性を差し引いても、JHETTさんもチワワさんも、もう少し肩が外旋して、ボールを後方にポジショニングする形を作れた方が良いと言う事です。

それにはまず、一にも二にも肩関節の可動域を広げて行く事です。これは地道で根気のいる作業になりますが、上達のためのど真ん中を行く取り組みだと考えてください。

腕回しでも、下の動画くらい、スムーズに肩が回るようになってください。


その他、バット外旋から始まる一連の肩ストレッチやシャドウボールを握ってのシャドウピッチングが効果的です。最も効果的なのは、シャドウピッチングや、実際のスローイングで腕を加速する事で、それが出来ない時にストレッチをやってください。前述しましたがオートマチックステップドリルも腕を多く振れるので良いでしょう。

継続してやると、少しづつ良くなっていきます。2日3日思い切りやって1日休んで次の日やってみると動きが良くなってるのが実感出来たりします。そういうふうにして、長期的に取り組んで行く事が大切です。

二人に共通する問題については以上です。

まとめると、後ろ脚股関節の割れから絞りの動作と、肩の柔軟性を向上させる事が重要だと言う事です。

次からは個別に分析していきます。