この動画の0.10あたりからの、デンゼル•ワシントン(中央)の歩き方には黒人の特徴が良く出ています。特にアップになった時のグングン前に突き進んで行く感じは、ハムストリングスによる股関節伸展が使えている証拠でしょう。そして無理に背筋を伸ばしたり、胸を張ったりする様子は全く無く、むしろその逆のイメージが有ります。つまり脊柱のS字カーブが正しく形成され、胸椎は後湾しているわけです。そうすると腰椎が前湾するので骨盤が前傾し、ハムストリングスを引っぱり、その力を使いやすくしているわけです。この歩き方はそういう歩き方です。
さらに、最初の正面からのカットをよく見ると、ワシントンの手の平は後ろを向いています。こういう歩き方は白人や黒人にはよく見られる歩き方で、胸椎が後湾しているので肩甲骨が外転し、手の平が後ろを向くわけです。1994年頃、科学する野球と言う本で黒人の手の向きについての話を読み、無理矢理真似ていた頃が懐かしい限りです。無理矢理真似ても腕が疲れるだけで意味が無いのですが。
さらにオバマ大統領も、ワシントンと良く似た歩き方で、黒人の特徴を表しています。オバマの場合は、日本では猫背だと言われるくらいです。私から見ると単に正しく脊柱のS字カーブが描かれているようにしか見えないと言う人が日本では猫背だと言われているケースを何人か見てきました。
オバマがワシントン以上に特徴的なのは、上半身をグングンと前に押し込むようにして、突き進んで行く感じですね。これは片方の脚を前に出す時、腸腰筋による股関節屈曲の作用が生じるので、それによって脊柱に前屈の作用が働くからです。もう少しダウンタウン的な黒人になって来ると、そういう感じをもっとオーバーに表現してきます。上流階級系の場合は、あまり身体をスイングさせずに、胸椎が後湾した状態を保ち、上から見下ろす角度を保とうとします。オバマとワシントンの身のこなしは上流階級系黒人の特徴的なものです。
日本人の場合、胸を張って背筋を伸ばしてと言わないと、腰まで丸まってしまうのか、猫背と言う事に対する拒絶反応が有るようですが、そもそも胸椎は後湾しているのが自然であると言う事は解剖学の教科書に書いている事で、言うまでも無い事なのです。
このオバマの胸を張って背筋を伸ばしていないのに威風堂々とした歩き方を見てください。余談ですが、胸を張って背筋を伸ばしてと言うのは軍隊でも警察でも、部下が上官に対して敬礼する時の姿勢であり、ヒットラーや金正日やオサマ•ビン•ラディンのような人間は決して胸を張って背筋を伸ばす事はありません。そういう所からの体育教育が、そういうフレーズを生み出しているのかもしれませんね。