2012年3月16日金曜日

コウタ君 3回目




投球編


これはお話し忘れた事ですが、ラボでは以下のような理由で野手の人にも「ピッチング」を教えています。

理由1「ピッチャーの投げ方が一番の基本で、それが出来れば野手の投げ方は学校の練習等の中で自然と応用で出来るようになる。ただ投手の投げ方は理論がバックグラウンドに無いと良い投げ方をする事が難しい部分が有る。」
理由2「高校野球などでは基本的にゲームを作れるピッチャーが不足している事が多い。その場合、野手であっても格下のチームとの試合に登板してゲームを作れる能力が有れば、それだけでベンチ入りの可能性が高まる。そうすると打席に立つチャンスも増える。その場合、クイックモーションも必要になる。」

と言う事です。ですから、コウタ君の場合は基本的に野手志望だと思いますが、そう考えるとピッチング練習もモチベーションを持って取り組めると思います。

今回、ピッチングについては、最も重要な部分である下半身の力を使えるようにすると言う観点で取り組みました。以前は始動ポジションで骨盤が後傾気味になり、足腰がグッと決まらず、ヌル〜というか、する〜というか、そういった感じのキレの無い重心移動になっていたのを、そこを修正しました。その結果、投げ終わった後、ポンッと小気味良く後ろ脚が前に出て来るようになったのは進歩です。

続きます。

ピッチングフォームで、大きく気になるのは二点です。

1)動き出しのカクカクした感じ。

ワインドアップをネットの裏から撮影した動画で、少しそういう感じが出ています。始動ポジションから前に出て行く最初のところで、カクッと膝が抜ける感じです。これは始動ポジションで膝が突っ張っている場合に起こりやすい現象です。ですから、膝を緩める事が重要になるのですが、緩め過ぎて「曲げる」になってしまうと、爪先に体重がかかり太腿前面の大腿四頭筋に負荷がかかります。こうなると股関節伸展(ハムストリングスによる)の力が使えません。その場合、投げ終わった後に、後ろ脚が勢い良く出てこなくなります。 ですから、そこだけ気を付けて見てあげてください。

膝を緩める感覚はワインドアップで打者に正対した状態から前脚を斜め後ろに引いたところで掴めます。また、腸腰筋その場ステップ等によって腸腰筋をストレッチした後に、少し腰を反り気味にして、身体を前傾させると、膝を緩める感覚が解ります。骨盤が前傾してハムストリングスが引き伸ばされるので、その張力で膝が曲がる(緩む)のです。この時、体重が踵寄りにかかり、骨で立っている感覚になる事が大切です。


ただ、膝の緩めに関しては、特に子供の場合、ストレートに受け止め過ぎると「曲げ」になる場合が多いと思います。上記の内容は、結構レベルの高い身体的感覚だと言えるかもしれません。そこでバロメータとして、投げ終わった後に後ろ脚が出て来る動きに注目してください。後ろ脚の力が使えて来ると、投げた後に後ろ脚が小気味良くポンッと出てきますし、力が使えていないと後ろで止まったり、キレが無くダラーンと前に出てきます。今回の動画ではそれが出来ていますので、そこを見てやると大丈夫でしょう。悪い意味の「曲げ」になってしまうと、重心移動が不十分になり後ろ脚が前に出てこなくなります。


2)肘の低さ

トップの位置で肘が低いのが気になります。肘が低いと肘を痛める原因になるからです。元々、スインガータイプに比べるとスリークォーター気味になるのがパンチャーの特徴ですが、それを踏まえた上でもやや低いです。


その原因はテークバックのところで投球腕の肘が背中側に入り過ぎる事に有ります。


では何故、肘が背中側に深く入るかと言うと、グラブとボールが割れる位置に問題が有るためです。

下図で左端が投捕間のラインです。中央がそれより少し傾いています。右端が大きく傾いています。理想的には、下図中央の少し傾いたラインに沿ってグラブとボールが割れれば良いのですが、コウタ君の場合、それが大きく傾いたラインに沿って割れてしまうので、投球腕が深く背中側に入り込んでしまうのです。

因に「少し傾く」のは前脚を挙げる時、後ろ脚に体重を乗せるために、前脚の膝を後ろ脚のラインに重ねるようにして挙げる事で、少しだけ身体を捻る事になるからです。ただ捻り過ぎてしまうと、上の図の右端のようにラインが傾き過ぎてしまうので良く有りません。コウタ君の場合、捻り過ぎとも見えないのですが、写真を見ると、脚を挙げたところでグラブをやや二塁側に引き過ぎているように見えます。

下の写真のように、中心寄りに置くと、適切なラインに沿って両手が割れます。(写真では脚を下ろしたところで始動ポジションを作ってますので、その点で今ラボで教えている投げ方とは少し違いますが。)



いずれにしても、始動ポジションから始動した後は、速い球を狙った所に投げる事だけに集中するべきであり、動作については無意識ですから、意識的に修正するのは、始動ポジションの形についてです。始動ポジションで体幹の面が、例の図の適切なラインに沿っていると、良い位置で割れるようになるでしょう。




ところで何故肘が背中側に入り過ぎるといけないかと言う事ですが、この事(肘が背中側に入るのは良く無い)は野球教室などで良く言われるのですが、左右対称性を保った上で、故意では無く、適切な範囲であればむしろ好ましい動作なのです。(鳥が羽ばたくような形)しかし、投球腕の肘だけが背中側に入るのは良く有りません。

下図のように肘が背中側に入ると大胸筋が大きく引き伸ばされます。

このため、その後に投球腕を切り返すシーンで大胸筋が強く働きます。大胸筋は肩関節を内転、つまりワキを締める働きが有る筋肉ですから、この筋肉がこのシーン(写真のシーン)で過剰に収縮してしまうと、肘が下がるのです。


スローモーション的に、この写真のシーンを再現してみると、1コマ目のところで肘を背中側に入れ過ぎると、2コマ目で肘が下がる事が解るはずです。なぜ肘が下がると危険なのかと言う事については次回お話します。

ただ「肘が背中側に入るのは良く無い」と言われる事が多いのですが、これは上記のように、「左右対称性が無い状態で投球腕の肘だけが背中側に入る場合」のみに当てはまる事だと考えてください。左右対称性が保てていれば、それはむしろ速球派投手の条件とも言える重要な動作なのです。実際にはむしろその部分の柔軟性が不足していてパワーを発揮出来ない場合の方が多いでしょう。

ピッチングにおいては上記の二点です。



打撃編


バッティングについては当日のメニューを振り返るとともに、セット内容を(あくまでも1例として)提示しておきます。

詳細な内容はプリントにある程度書きましたので、ここでは目安としてのセットメニューのつもりで簡潔に書きます。(回数は全くの目安です。)

★手首のコックを作るメニュー

●前腕を捻るストレッチ 徒手左右5回 
●前腕を捻るストレッチ バットを使って左右5回(肘を脇腹に付けない場合は、スイングをい大きくして遠心力を使えるメリットが有ります。)
●一度振って、巻き戻して握り変えずにもう一度振る素振り 3セット
●短く持ち、左右の手の間を僅かに開けて振る素振り 5回
●短い棒を身体の中心に持ち、股関節を割るストレッチ 5回
●立った状態で軽く股関節を絞る動きを行う。(割れの後のフォロー)
●股関節を割り、前傾し、グリップをコックさせて、スイング。3回
●通常の素振り (構え作りから巻き戻しまで)下半身のどっしり感とグリップの連動を意識しながら5回。

★一気に瞬発的に力を発揮する感覚を掴むメニュー(2種類の力の発生源を体感する)

●(A)股関節の割りを強調して、腕と手首はジャスティン モーノウの形で小さめに構えて、そこから鋭く一気にスイング。
●(B)体幹部操作2の捻りを強調する事で、後ろ脚股関節を割り、タスキラインを伸ばして、肘を挙げ、最初から弓を引いた状態を作り、そこから一気にスイング。

※)A 2回~B3回~A2回 

★地面を掴む感覚を憶えるメニュー

●(A)割れ絞り体操1回+パンチ1回 左右ともに2セット
●(B)後ろ足を平行にセッティングしてから捻って構えてスイング2回

※(A)+(B)を1セットとし、計2セット

★リズムを掴むメニュー

腸腰筋その場ステップ10回〜揺らぎ体操10回〜構え作りリズムスクワット5回〜揺らぎながら構え作る体操2回〜振る前に一度腰を反ってのスイング5回(踵着地後に体重を地面に落としてからスイング)

★前脚に体重が乗るバランスを掴むメニュー


スタンディング股関節の割れ絞り体操左右5回づつの後、下図の構えを作って(やや強調して)スイング(3回)前脚に体重が乗るので、前脚軸が効き、巻き戻しが力強くなります。


フォローとして、股関節の割れを強調し、上半身は小さめに構え、グリップのコックを強調した構えからの素振りを3回。

★スイング軌道を修正するメニュー

前回でかなり修正されましたが、それでもまだゴルフ的に傾きやすい傾向が有ります。そこで以下の素振りを行ってください。

股関節の割れを強調し、前傾を控えめにし、手首のコックを作り、グリップは後方に引きすぎずに、ジャスティン•モーノウの形を作る。この状態でバットは短めに持ち、両手の間を少し離す。そこからスイング。(3回)

フォローとして、以下の練習を行ってください。 腸腰筋その場ステップ5回〜胸椎の後湾、首の角度、踵体重を意識して、股関節で身体を折り畳む事を意識しながら構えを作ってスイング。(3回)


★重いバットと軽いバットのコンビネーションスイング

重いバットは短めで根元にバランスが有るものを使用してください。ホウキは面を顔の方に向けます。

重いバット2回〜軽いバット3回〜重いバット2回〜軽いバット3回





今回、バッティングについて一つだけ気になったのは、途中、バットの軌道の事をずいぶんと話していましたので、コウタ君の方でそれを聞いてダウンスイングのような事を意識していたと言う事は無いでしょうか。だとそればそのような事は意識してほしく無いのですが、子供の場合ストレートに受け止めてしまうので、そういうケースが良くあります。今回は以上です。