2014年9月25日木曜日

ライオンさん 1回目



 まず、まだ後ろに重心移動しないと振れない感覚が有るようなので、一拍の間、息をはくくらいの間(実際にはく必要は無い)で止まってから振る習慣を付ける必要が有ります。止まった状態から力を発揮できるようになるためにはまだまだ股関節周辺のトレーニングが重要です。

 また、止まった状態から瞬発力を発揮する事に慣れていないようなので、軽いバットを使った瞬発力トレーニングも積む必要がありますし、ダッシュも盗塁のスタートで行なうと良いでしょう。現状としては、この動画で説明しているように取り組み始めた人の状態としては典型的なものです。(始動時の下肢出力が弱く腕で振っている)最後の林君のビフォーアフターを見てください。最初は皆、このビフォーの状態なのです。

 次に、やや手首を捏ねるスイングになっています。(手首の返しが強い)理由としては前後の重心移動によりボトムハンドの引きが強い事と、構えがヘッドを顔の前から投手方向に入れるタイプになっていた事が挙げられます。このクセを直すために必要な練習のポイントを以下に挙げておきます。

1)トップ型の構えで振る(ヘッド入れ型はヘッドが落ちるので反動で捏ねやすい)
2)止まってから振る
3)素振りでは投手方向の一点を最後まで見て振る(ホームベース方向に顔を向けると捏ねやすい)
4)左では軽いバットを中心にして素振りし、右で重いバットを振る(素振りは基本的に捏ねるクセがつきやすい。重いバットを振るとなおさらそうなる。)
5)左で重いバットを振る場合は短いバットの根元に重りをつけて振る(根元にバランスが有ると捏ねにくい)
6)実際に打つ場合にはトップバランスのバットは避ける
7)試合では構えで腕の筋肉が緊張しないように構えを作るタイミングなどに気をつける。また、見逃しが続いた場合はストレッチや軽い素振りを挟んで筋肉をほぐす
8)グリップに気をつける(後述)
9)ショートストロークスイングを取り入れる

その他、低めに難点が有るようですが、素振りの際に目印を低めに設定するのも一つの方法です。それだけでは万全とは言えませんが一助にはなるでしょう。

続く

前述の手首の形についてですが、元々がヘッド入れ型の構えであったため、手首を捏ねやすい下地が有ると言えそうです。ヘッド入れ型とトップ型の手首の使い方の違いは下の動画で内川が解りやすく表現しています。


この動画の5.00からです。(ヘッドが投手方向に入ると言う話題)「自分の感覚ではこういうイメージよりもこっちをこう使うイメージ」がその部分で「こういうイメージ」の時に顔の前でヘッドを倒すのがヘッド入れ型の手首の使い方で「こっちをこう使うイメージ」がトップ型の手首の使い方です。つまり、剣道の竹刀で面を打つ時の手首の使い方で、ゴルフで言うと「コック」「アンコック」の手首の使い方です。

※)内川の言葉を翻訳すると、自分には(中村ノリや金本のように)顔の前を通してヘッドを投手方向に入れる感覚は無い。それどころか(後頭部を通して)ヘッドを投手方向に入れている感覚すら無い。ただ、コックとアンコックの方向で手首を使う感覚でやっている。(その手首の使い方に上半身の捻りが加わる事で自ずとヘッドが投手方向に入る)

 この手首で構える事の意味が分かれば捏ねるスイングにはならないでしょう。そのための練習として(9)のショートストロークスイングというのが有ります。これはバットを極端に短く持ち、グリップをコックして(股割りしながらペンを持ってやったグリップの形)構えて鋭く一気に振り抜く練習です。この動画の冒頭や、この動画の終盤に実例が有ります。インサイドアウトのスイングを身につけ、腕がまっすぐ伸びるようにするためのドリルです。

 ただ、実際に打つ時は、揺らぎでバットの円運動が微妙に起こります。内川の場合、そうした動きが無いのでコックの感じのまま打っていますが、揺らぎが有れば、剣道のようなグリップの感じは無くなります。そこはドリルと実際の違いという事になります。このドリルでそうした体の使い方が出来るようになる事が重要であると言う意味です。

 剣道の竹刀で解りにくければ写真のように本を挟むようなイメージで構えるのも良いでしょう。この感覚は揺らぎによる円運動が加わると失われますが、根本的にはこの握り方になると言う事です。


 ひとまず最初の半年間でするべき事は以下の通りです。

1)止まった状態から瞬発的に力を発揮する「パンチャー、オートマチックステップ」のメカニズムを体に覚え込ませる。そのためには「その振り方」で数を振る必要がある。

2)股関節の基礎トレーニングを重点的に取り組む。

3)構えを作るための練習、揺らぎのための練習、揺らぎから打ちに行くまでの間の取り方などの練習と言った基礎的事項について、継続して取り組む事で習熟する。(これらは「基本」を意味するので、少しづつで良いのでよく調べながらおろそかにせず取り組んでください。)

4)振る力、瞬発力、またスイングのしなやかさ(軽いバットを振る)等のテーマでスイングを鍛える。

5)ボールへの柔軟な対応力をキープする。「素振りだけの期間」「トレーニングだけの期間」といったいわゆる「強化期」を作らず、積極的にバッセンなどを活用しボールを打つ。また、スイングの対応力をキープするため、左では出来るだけ重いバット(短いバットを除く)での素振りは避けた方が良い。そのぶん、右で重いバットを振る事でスイングのパワーをキープする。


 実際に打撃を見た感想は以下の通りです。

1)ハムストリングス、腸腰筋を使うと言うテーマについてはまだ「未着手」の状態で、その資源をこれから使えるようにしていく事で大きく変わる。

2)静止状態から瞬発的に力を発揮する事に全く慣れていない。恐らく今まで動きの中でヘッドスピードをMAXに持って行く打ち方をしていたためでしょう。「全力で振って」と言った時のスイングが傍から見て全然「全力には見え無い(実際の打撃のそれに比べて)」という状態です。なので、そこをもっと取り組んで行く必要が有る。なお、「静止状態から瞬発的」のためにはダッシュを含めた股関節トレーニングが重要。

3)(2)と関連して、股関節の「ハムストリングス、腸腰筋、斜め回転」と言ったテーマや「構えの作り方、揺らぎ」等の細部のテーマについて、自分で調べて研究してやって来た痕跡が感じられないので、本気でやるならPCの件など、そうした事が出来る環境を整えないと厳しい。(インターネットはまだしも、動画資料やPDF資料は常に見れる環境が必要です。)

4)基礎となるハンドワークは出来ている上、骨格の形態も比較的恵まれているので「素材」あるいは「スタート地点」としては比較的、恵まれている。

5)どちらかというと後ろ脚に体重が残りやすいタイプ。そのため試合などでは前脚の膝が割れる事が多いかもしれない。その辺は今後のテーマになるが先ずは基礎事項の習得が先決。

6)当日、少しハムストリングスを使って立つトレーニングなどを行なう事で、少しその感覚が芽生えているように見受けられる。(タオル打ちの動画の構えの感じ)

7)後ろに体重が残りやすい事とも関連して、ややスイングが一本調子になりやすい感じが見受けられる。(変化球を素振りのような感じで空振りする感じ)そのため、左の素振りでは重いバットを振る事を避けて、バッセンでは積極的に速度の違うレーンに入る事が大切。(奇麗に打って確認する練習を極力減らす)

8)全体的にボディバランスは優れている。見た目フォームを奇麗に纏める事には苦労しないだろう。

★やらない方が良い事

 ライオンさんの場合は、1キロとか、それなりの重さのバットで、中途半端なスイングスピードでいたずらにスイングの回数を重ねるような練習はしない方が良いでしょう。また、実打の中では易しい球を延々打ち続けるような練習もしない方が良いでしょう。
 ライオンさんの場合、良く言えばバランス感覚に優れているものの、その平均的な範囲の中で納まってしまいやすい傾向(※)が有るような気がします。こういうタイプの場合、定型的な練習の繰り返しは避けて、出来るだけ変化に富んだ取り組みをした方が良いと考えられます。
 素振りに関しては重いバットから塩ビパイプまでを用途に併せて使い分け、フリー打撃においては積極的に速度の違うボールに取り組んだりして、形を崩されにいく事が必要です。その崩れた形を素振りなどで修正すると言う考えで良いでしょう。とにかく同じ環境、同じ形で打つ練習は繰り返さない方が良いと言う事です。多少なりとも選手を見て来た経験上、実戦に強い打者になれる可能性は感じられます。そのためには、素振りと実打、そして試合は違う物だという事を強く意識して取り組んで行く必要が有ります。

※)その対局に有るのは中村紀洋やイチロー、西口文也のようなタイプで基本を逸脱しながらも自分の感性を頼りに打撃や投球の快感を追求していくタイプ。個性的なフォームを批判されながらも結果は出す。しかし基本的に自分本位なところが有るので「良いところで打つ」ようなタイプでは無い。

以上です。