まず技術的な点についての結論からザックリ書きます。まず(1)で捻りすぎています。捻ると後ろ股関節が打者方向に押し出されますが、その時頭は元の位置に残ろうとします。捻った事で体幹の面がセンター方向に向いてるのでこの動作がやりやすいのです。そのためヒップファーストが過剰になります。こうなると(3)あたりで後ろ脚股関節が割れた形は作りやすいのですが、結局はその後、過剰なヒップファーストの角度が災いして後ろ脚股関節が「つぶれる(外転が強く起きて膝が内に折れる)」ので、後ろ脚が効きにくく、(4)ではしっかりと地面を押し切れないまま、膝から崩れるように着地を迎えてしまっています。これはステップ幅を稼ぐ上でもマイナスですし、結果的に前脚の着地する形もやや悪くなり、前脚のハムストリングスが効きにくく、それがフィニッシュでの前足が引けるクセに繋がります。
さらに捻った結果、その捻り戻しで肩の開きが強くなるので、(5)(6)(7)では左肩が逃げてしまっています。これでは、横回転のサイドハンドのようになっていますね。また捻るとテークバックで投球腕の肘だけが深く背中側に入るので大胸筋が過剰にストレッチされます。大胸筋は肩の内旋筋なのでコレが過剰に働くと、その後の外旋を妨げるので外旋角度が不足するわけです。フィニッシュでもターン&タンブルの「ターン」がやや過剰ですが、これは単純に捻りを強調するから横回転が強く起きているのです。
要するに(1)で過剰に捻った事の悪影響がその後にかなり強く出ているのです。捻ると(2)(3)の段階では後ろ脚にしっかりタメれるように感じるのですが、結果的にその後、後ろ脚の形が悪くなるので、プラスマイナスで(タメた)効果は0になります。そして全体の形としてはむしろマイナスになります。ここに気がつかない投手が多いのです。
(1)球速アップのために
球速アップが主な目的のようですが、まず上記のフォーム改善を行った上で、以下の点を重視して鍛えると良いでしょう。
(a)後ろ脚の割れ〜絞りの強化
(b)投球腕の回旋可動域の向上(特に外旋)
(c)腸腰筋ハムストリングスのトレーニング
(e)素振りによる上半身のトレーニング
(a)後ろ脚の力を使い切れていない部分が有ります。当日、後ろ脚を割った状態から投げたりパンチを打つ練習をしましたが、ああした動きをトレーニングの中に取り入れる事で、後ろ脚のパワーを高めて行く必要が有ります。6回くらい腸腰筋その場ステップを挟むと良いでしょう。
(b)上半身に過剰に筋肉がついているせいか、投球腕の外旋可動域が狭かったので、そのためのストレッチ等を重視してください。動的ストレッチである腕回しも重要です。またシャドーピッチングも肩の柔軟性を高める効果的な方法です。筋トレの後はストレッチ→シャドーの順でルーティン化して行いましょう。
(c)いわゆる黒人力です。これについては力を強く使える素質が有るので、パワーアップのためには特に重視しましょう。なお立ち方の姿勢がやや力み気味というか過剰に胸を張って背筋を伸ばしてる感が有るので、その辺も腸腰筋その場ステップを通じて改善指定ってください。その場ステップについては50では少ないです。最低100回が基準で、出来れば200回。500回出来れば理想的です。
(e)投手の場合、素振りでは特に構えで腕の筋肉の緊張を防ぐ事が大切です。そのため、巻き戻し連続素振りや、完全肩乗せによる素振りをメインに行ってください。この際、重いバットを振るのですが、ウェートが根元にあるか、短いバットを使ってください。その方が体幹を鍛えられます。完全肩乗せは普通のバットでないと難しいですが。
鍛え方はだいたい以上です。ウェートが必要になるのは、最大強度の部分だけです。最大負荷(遅い)、中負荷(中速)、小負荷(高速)という分け方で行う事が重要です。筋トレと投げるだけだと真ん中が無い事になるので、中負荷のトレーニングのレパートリーを増やして行きましょう。重いバットの素振りなどです。この場合もあくまでも最大速度は求めて行きます。
(2)その他、気になった点、特に重要な点
(1)当日も指摘しましたが、ワインドアップモーションで後ろ脚をセットする時、フワッとなる感じ、ヒールアップ的な効果を発揮していますが、そこの動きが理想と違っていて完璧なライアン挙げを妨げています。下の写真の2人との違いを良く見てください。彼等の場合は、腸腰筋が使えているので、後ろ脚股関節屈曲をメインにして後ろ脚を引き上げた後、トンと置いてセットしているのですが、Aさんの場合はまだイマイチ使えていないので、身体全体をフワッと浮かせて後ろ脚を引き上げているのです。そのぶん、着地した時にハムがイマイチ使いにくくなるなどの悪影響が出て来て、ライアン挙げ含め、様々なポイントに響いて来ます。改善するためにはとにかく腸腰筋その場ステップ等の股関節トレーニングを積みながら、シャドーなどでライアン挙げの感覚を少しでも掴めるように試行錯誤を重ねる事です。
(2)やはりここでの外旋が不足しているのが怖いですね。肘に来るケースです。ウェートトレーニングを必要最小限のレベルにまで減らし、ストレッチ、素振りによるトレーニング、シャドー等を増やして行ってください。パンチャー式シャドーは全力を出すのでかなり良い運動になります。極限までスピードアップも目指す意識で行ってください。このシーンでもう少しボールが肘の後ろに隠れるようにしたい所です。
(3)捻り過ぎ。捻りという点についてはメジャーの一流投手を良く見てください。Aさんのイメージより捻ってないはずです。脚を挙げる時捻る意識はほぼ不要で、ただ、前脚を後ろ脚の方に寄せないと全体重が後ろ脚に載らないので、そのぶん前脚を「寄せる」必要が有るというだけです。目安としては前脚の膝が後ろ脚のライン上に来るくらいです。顔を横に向けるのも捻り過ぎと「始動の遅れ」に繋がるので、本来は止めた方が良いです。ただこれは絶対と言う訳ではありません。個人的には軸脚をセットして前脚を挙げ始める所くらいまでがベストだと思います。そこでの足の置き方、脚上げ初期のバランスを取る効果は期待出来ます。
(4)まとめ。球速アップのためには、とにかくパワートレーニング、スピードトレーニング、ストレッチ、フォーム改善が重要です。その中で、ウェートは負荷大のものだけを低回数、その他の部分は中負荷トレーニングに頼り、ストレッチ、シャドーの割合も増やして行く。さらに腸腰筋ハムのテーマを徹底して追求する事。
以上です。