2012年4月10日火曜日

ダルビッシュ乱調の原因

まぎれも無く振りかぶった事が原因でしょう。ダルビッシュの場合、根本の部分で江夏式の昔型の流れを汲んでいるので、振りかぶると骨盤が後傾しやすいのです。江夏や村山等の時代の場合、ヒップファーストを大きく取りましたから、それでも力は発揮出来たのですが、ヒップファーストを強調しない現代の昔型は球は軽くて良く飛ぶ等、問題が多いのです。特にダルビッシュのように、その動きに(良い事ですが)馴染んでいない場合、今回のように制球が安定しない事も有るでしょう。

振りかぶる事で骨盤が後傾し、股関節がハマらなくなるので、軸が決まらず、制球が安定しなかったのです。右や高めに抜ける球が多かったのも、そのためでしょう。軸脚のハムストリングスが使えていなかったので、軸脚の力が使えず、ストレートの球威もさほど無かったのでしょう。日本で投げていた頃にように、ノーワインドかセットでの投球に戻さないと、エンゼルス等にはもっと打たれると思います。ダルビッシュに振りかぶるフォームは合わないのです。変化球が決まれば打たれない事は判明したので、後は制球が勝負だと言えますね。その意味でも、セットからの投球の方がダルビッシュには合っているでしょう。ワインドアップにしても振りかぶらない事です。

解説の与田氏は良い所に着目していました。「前半は着地するまでの間が取れなかったのでダメだった」 これはつまり、ハムストリングスの力が使えないので軸脚の膝がすぐに折れて重心移動の長さを稼げなかったのです。それはつまり下半身の力が使えていない事を表します。センターカメラから見ても、膝が折れるのが早いのが感じられたほどです。後半持ち直したのは、ランナーを背負ってクイックモーション等を多用したからかもしれません。

これほど原因がハッキリしている乱調も珍しいのですが、元々、良い選手ほど、全体のレベルが高いから逆に何が問題かという事がハッキリと解りやすいのです。おそらくすぐに修正して来るでしょう。ダルビッシュの場合、何パターンかフォームが有るのですが、脚を挙げた時にクッと一瞬止まるくらい、股関節にハメる感じが有る投げ方の方がダルビッシュには向いているでしょう。オリックスの平野や広島の前田健太のようなタイプのフォームです。2011年5月10日楽天戦15奪三振みたいな感じですね。

今回の登板で解った事としては「少しボールのクォリティが落ちた時のメジャーの打者の怖さ」「動く系の球が狙い通りに決まれば打たれない」「日本のように速球で力押しは出来ないので、制球が非常に重要になる」等でしょうね。

セットポジションからの投球にして、動く速球と変化球で丁寧にコースを付いて行けば、相当の勝ち星を挙げられるでしょう。後はそのスタイルにするかどうかの問題ですね。

余談ですが、もう一つダルビッシュ評で「さすが」と思ったのが、アメリカの投手コーチのトム•ハウス氏の評論でした。「リリースでグラブの位置が低いので力が逃げてパワーをロスしてる。そこを直せば160キロも夢ではない」さすがにダルビッシュ最大の欠点を一発でズバリと指摘しましたね。ただ、それを修正するためには根本的なメカニクスから変えて行かなければならないので今のダルビッシにはタイムリーな指摘では無いでしょう。

色々な人がフォーム的に細かい事を言うと思いますが、私の感想はもっと単純でざっくりと、振りかぶったのが裏目に出たと言う事だけだと思います。