2012年4月17日火曜日

ダルビッシュのメカニクス

ダルビッシュは振りかぶるのを止めました。そのせいもあってか前回よりはまとまっていたようです。(あのアングルでは球威など非常に解りにくいのですが。)

ただ、モーションのリズム的にはまだ振りかぶるリズムを引きずっていると言えるでしょう。そのせいか、日本でのベストパフォーマンスと比べるとまだまだ本調子では無いように見えます。

次回はタイガース戦で、タイガースと言えばプリンス•フィルダーとミゲール•カブレラの3.4番コンビと今期好調のオースチン•ジャクソンも見所で、これは楽しみですね。

今回は、ダルビッシュのメカニクスについて書いてみようと思います。丁度、連続写真も持っている事ですし。

http://baseballpl.p1.bindsite.jp/pg684.html

ところで、連続写真はクイックモーションになっていますが、ここでクイックモーションの基本について、書いておきます。つまり何を以てクイックかと言う事ですね。

どんなに前脚の挙げ方が小さくても、前脚を上げてから重心移動をするのは、クイックとは言えません。(ただ、クイックとは言えないと言うだけで悪い投げ方だと言う意味ではないですが。)前脚を上げながら重心移動が始まるからクイックなのです。

つまり、

セットポジション=前脚挙上の後に重心移動

クイックモーション=前脚挙上と重心移動が同時に始まる

と言う違いですね。

その意味では、ヘンリー•ロドリゲスのこの投球は厳密にはセットポジションに分類されるべきでしょう。(ただ、ここまで速ければ戦術的観点からはクイック扱いでも良いですが。)

http://www.youtube.com/watch?v=SOnDAZOsJkw&feature=fvsr

因にラボでは、ボストン•レッドソックスのクレイ•バックホルツをクイックモーションのお手本的モデルとして採用しています。

http://www.youtube.com/watch?v=x4hiD7Lwu8c&feature=fvsr

これは、モーションが速いからでは有りません。動作がスムーズで、きちんとした投球になっているからです。

勿論、阪神タイガースの久保康友も有名なように、クイックが速いですが、スムーズさと言う点で思い浮かぶ日本人のクイックの名手は野田浩司ですね。彼のクイックは素晴らしかった。

クイックモーションはギクシャクしない事です。スムーズで引っかかりの無いのが上手いクイックの証拠です。クイックが上手い人は速い以前にスムーズなのです。その意味では伊良部秀輝のクイックもスムーズでした。そういう意味では藤川球児のクイックも良いです。

久保康友も、モーションの速さを重視するクイックと、自分の投球を重視するクイックの2パターンを持っているように見えますが、クイックの原理が解ると、そういう使い分けも出来ます。

因にダルビッシュはかなり自分の投球を優先したスタイルだと言えるでしょう。今は少年野球の子供がクイックモーションをやっていて驚くのですが、特に子供に教える場合、投げ急ぐあまりに肩や肘を壊すと元も子も有りませんから、まずは自分優先のクイックを身につけたいところです。

速さと言う観点では無く、投球動作と言う観点から見ると、ダルビッシュのクイックはかなり上手いと言えるでしょう。ただ、バックホルツはパンチャータイプでダルビッシュはスインガータイプです。因に久保康友(パンチャー)野田浩司(パンチャー)伊良部秀輝(スインガー)藤川球児(スインガー)です。モーションの速さはどうしてもパンチャーに軍配が挙ります。

ただ、いずれにしても、特に子供にクイックを教える場合は、速さにとらわれたく無い所です。クイックモーションの条件(前脚挙上と重心移動が同時)さえ満たしていれば、モーションの速さにとらわれる必要は全く無いと思います。(条件を満たしていれば、そんなに遅くはなりません。)

クイックモーションをクイックモーションたらしめているのは、以下の二つの動作です。

「抜き」後ろ脚に体重を移動しないで前脚を挙げる事。それによって、二本の柱から一本の柱を抜いた状態になる。

「捻り」腰をバックスイング方向に捻る事で、後ろ脚股関節が打者方向に移動する。その結果、後ろ足の接地点と後ろ脚股関節の距離が開き、後ろ脚が斜めになる。棒は少しでも斜めになるとそのまま倒れて行く。

2012年4月10日火曜日

ダルビッシュ乱調の原因

まぎれも無く振りかぶった事が原因でしょう。ダルビッシュの場合、根本の部分で江夏式の昔型の流れを汲んでいるので、振りかぶると骨盤が後傾しやすいのです。江夏や村山等の時代の場合、ヒップファーストを大きく取りましたから、それでも力は発揮出来たのですが、ヒップファーストを強調しない現代の昔型は球は軽くて良く飛ぶ等、問題が多いのです。特にダルビッシュのように、その動きに(良い事ですが)馴染んでいない場合、今回のように制球が安定しない事も有るでしょう。

振りかぶる事で骨盤が後傾し、股関節がハマらなくなるので、軸が決まらず、制球が安定しなかったのです。右や高めに抜ける球が多かったのも、そのためでしょう。軸脚のハムストリングスが使えていなかったので、軸脚の力が使えず、ストレートの球威もさほど無かったのでしょう。日本で投げていた頃にように、ノーワインドかセットでの投球に戻さないと、エンゼルス等にはもっと打たれると思います。ダルビッシュに振りかぶるフォームは合わないのです。変化球が決まれば打たれない事は判明したので、後は制球が勝負だと言えますね。その意味でも、セットからの投球の方がダルビッシュには合っているでしょう。ワインドアップにしても振りかぶらない事です。

解説の与田氏は良い所に着目していました。「前半は着地するまでの間が取れなかったのでダメだった」 これはつまり、ハムストリングスの力が使えないので軸脚の膝がすぐに折れて重心移動の長さを稼げなかったのです。それはつまり下半身の力が使えていない事を表します。センターカメラから見ても、膝が折れるのが早いのが感じられたほどです。後半持ち直したのは、ランナーを背負ってクイックモーション等を多用したからかもしれません。

これほど原因がハッキリしている乱調も珍しいのですが、元々、良い選手ほど、全体のレベルが高いから逆に何が問題かという事がハッキリと解りやすいのです。おそらくすぐに修正して来るでしょう。ダルビッシュの場合、何パターンかフォームが有るのですが、脚を挙げた時にクッと一瞬止まるくらい、股関節にハメる感じが有る投げ方の方がダルビッシュには向いているでしょう。オリックスの平野や広島の前田健太のようなタイプのフォームです。2011年5月10日楽天戦15奪三振みたいな感じですね。

今回の登板で解った事としては「少しボールのクォリティが落ちた時のメジャーの打者の怖さ」「動く系の球が狙い通りに決まれば打たれない」「日本のように速球で力押しは出来ないので、制球が非常に重要になる」等でしょうね。

セットポジションからの投球にして、動く速球と変化球で丁寧にコースを付いて行けば、相当の勝ち星を挙げられるでしょう。後はそのスタイルにするかどうかの問題ですね。

余談ですが、もう一つダルビッシュ評で「さすが」と思ったのが、アメリカの投手コーチのトム•ハウス氏の評論でした。「リリースでグラブの位置が低いので力が逃げてパワーをロスしてる。そこを直せば160キロも夢ではない」さすがにダルビッシュ最大の欠点を一発でズバリと指摘しましたね。ただ、それを修正するためには根本的なメカニクスから変えて行かなければならないので今のダルビッシにはタイムリーな指摘では無いでしょう。

色々な人がフォーム的に細かい事を言うと思いますが、私の感想はもっと単純でざっくりと、振りかぶったのが裏目に出たと言う事だけだと思います。

2012年4月1日日曜日

MLB撮影



メジャーリーグ開幕戦の撮影は無事に終わりましたが、結論から言うと期待外れの結果と終わりました。立ち見席(指定席だと余程運が良く無いと良いアングルにありつけない。分析目的の場合、基本的にアングルが命。斜めからだと使いにくい。)からの望遠ではEX-F1の性能が発揮されず、普通のデジカメ並みの撮影ばかりとなりました。中でも残念だったのはセスペデスのホームラン。動画のように、前を横切る観客に遮られて、最大の見所の一つを失いました。こればかりは仕方が無いですね。私と、前を横切った人間と、セスペデス。前世でどのような関係に有ったのだろうか等と訳の分からない事を考えてしまう間の悪さですね。