バッティングの技術指導で良く聞かれる「トップ」という言葉。しかし、それが打撃動作のどの瞬間の事を言っているのかという定義は曖昧で、人によって違います。プロ野球中継を見ていても、解説者によってトップの解釈が違う事が解ると思いますが、まずは様々なトップの解釈を見てみましょう。
画像1:ブライス•ハーパー
※)以下の番号(1)(2)(3)は画像1の番号に対応しています。
(1)後ろ脚に重心動した所
意外と元プロのコーチ、解説者に多いのですが、ココをトップと言う人がいます。「割れ」を重視する一般的な指導理論とは相容れないものが有りますが、ある意味、実践的な理論とも言えます。なぜなら、そこから前脚を踏み込んで行く時にグリップが後ろに残る動作(いわゆる割れ)はオートマチックな動作であり、意識的に強調すると良く無いからです。それよりも打者が意識するべきはその割れを生み出す重心移動。そう考えると後ろに重心移動した所をトップとする解釈もあながち間違いとは言い切れません。ただ、ココをトップと呼ぶ人の中には技術論に疎い人が多いのもまた事実です。
画像2:前に重心移動する時にグリップがバランスを取ろうとして後方に引かれる事で割れが形成される。
(2)前脚爪先が地面に着く瞬間、或は直前
ここをトップとするのが最も多数派であり、理論的にも無難であると思います。前脚を踏み出しながらグリップを後方に引いて「割れ」を作ってから、スイングが始まる。そういう技術論を重視した場合、ココ(画像3参照)がトップと言うのが最もシックリ来ます。ただ前述しましたように、割れというのはあくまでも重心移動の結果としてオートマチックに起きる動作です。ですから「割れてトップを作れ」という指導を強調し過ぎるのは良く有りません。ココをトップと呼ぶ方に気をつけてほしいのはその一点のみです。理論、実践指導の両面でバランスの取れた人はココをトップであると解釈する場合が多いと思います。
画像3:白枠のコマが(2)の解釈に基づく「トップ」
(3)前脚が踵まで完全に着地した瞬間
少数派ですが、画像4のように、前脚が完全着地した瞬間がトップであると考える人もいます。理論派に多い傾向があるかもしれません。ココをトップと考える人は「前脚が着地してからスイングが始まる」という事に強く拘っているのでしょう。別の言い方をすると「前脚が着地した時にグリップがトップの位置に残っている」という事を非常に重視しているわけです。ある意味、割れを重視する最右翼の人達だとも言えるでしょう。
画像4:前脚が完全着地した時、既に下半身は回転を始めている。
しかし、この段階では既に後ろ脚が内旋しており、下半身が回転を始めています。つまり、スイングの回転運動が既に始まっているのです。そのため打者の感覚としては、このシーンはスイングが始まった直後であり、テークバックからスイングに移行する折り返し地点ではありません。ですからココをトップとして意識させると実践的には不都合が生じます。ココをトップと考える方には理論には非常に詳しいけれど、実践指導となるとどうなのかなという疑問符が付きます。
では、どこをトップと呼べば良いのか?
私のオススメはやはり(2)です。「トップ」という言葉から何より重視したいのは「テークバックからフォワードスイングに切り替わる瞬間」という事です。ゴルフ流に言うと「切り返しの瞬間」です。この点を考えると(1)は論外(悪いとは思いません)、(3)では下半身が既に回転運動を始めているので不適合ということになるのです。スイングを全身の回転運動と捉えた場合、下半身の回転が始まる瞬間からスイングが始まると考えられます。その意味で、前脚の爪先が地面に触れる瞬間、ココをトップと考えるのが良いでしょう。もちろん、グリップが後方に引かれて適切な「割れ」の形を作っている事も重要です。画像5は(2)の解釈に基づく「トップ」の実例です。
画像5:「トップ」の実例
野球の技術指導に関わっていると「トップ」という言葉は良く使うと思います。しかしその解釈が曖昧であったり、選手とコーチとの間で認識にズレが有ったりすると意思疎通が上手くいきません。選手とコーチとの間で「トップ」という言葉について共通認識を築く事が大切です。
画像1:ブライス•ハーパー
※)以下の番号(1)(2)(3)は画像1の番号に対応しています。
(1)後ろ脚に重心動した所
意外と元プロのコーチ、解説者に多いのですが、ココをトップと言う人がいます。「割れ」を重視する一般的な指導理論とは相容れないものが有りますが、ある意味、実践的な理論とも言えます。なぜなら、そこから前脚を踏み込んで行く時にグリップが後ろに残る動作(いわゆる割れ)はオートマチックな動作であり、意識的に強調すると良く無いからです。それよりも打者が意識するべきはその割れを生み出す重心移動。そう考えると後ろに重心移動した所をトップとする解釈もあながち間違いとは言い切れません。ただ、ココをトップと呼ぶ人の中には技術論に疎い人が多いのもまた事実です。
画像2:前に重心移動する時にグリップがバランスを取ろうとして後方に引かれる事で割れが形成される。
(2)前脚爪先が地面に着く瞬間、或は直前
ここをトップとするのが最も多数派であり、理論的にも無難であると思います。前脚を踏み出しながらグリップを後方に引いて「割れ」を作ってから、スイングが始まる。そういう技術論を重視した場合、ココ(画像3参照)がトップと言うのが最もシックリ来ます。ただ前述しましたように、割れというのはあくまでも重心移動の結果としてオートマチックに起きる動作です。ですから「割れてトップを作れ」という指導を強調し過ぎるのは良く有りません。ココをトップと呼ぶ方に気をつけてほしいのはその一点のみです。理論、実践指導の両面でバランスの取れた人はココをトップであると解釈する場合が多いと思います。
画像3:白枠のコマが(2)の解釈に基づく「トップ」
(3)前脚が踵まで完全に着地した瞬間
少数派ですが、画像4のように、前脚が完全着地した瞬間がトップであると考える人もいます。理論派に多い傾向があるかもしれません。ココをトップと考える人は「前脚が着地してからスイングが始まる」という事に強く拘っているのでしょう。別の言い方をすると「前脚が着地した時にグリップがトップの位置に残っている」という事を非常に重視しているわけです。ある意味、割れを重視する最右翼の人達だとも言えるでしょう。
画像4:前脚が完全着地した時、既に下半身は回転を始めている。
しかし、この段階では既に後ろ脚が内旋しており、下半身が回転を始めています。つまり、スイングの回転運動が既に始まっているのです。そのため打者の感覚としては、このシーンはスイングが始まった直後であり、テークバックからスイングに移行する折り返し地点ではありません。ですからココをトップとして意識させると実践的には不都合が生じます。ココをトップと考える方には理論には非常に詳しいけれど、実践指導となるとどうなのかなという疑問符が付きます。
では、どこをトップと呼べば良いのか?
私のオススメはやはり(2)です。「トップ」という言葉から何より重視したいのは「テークバックからフォワードスイングに切り替わる瞬間」という事です。ゴルフ流に言うと「切り返しの瞬間」です。この点を考えると(1)は論外(悪いとは思いません)、(3)では下半身が既に回転運動を始めているので不適合ということになるのです。スイングを全身の回転運動と捉えた場合、下半身の回転が始まる瞬間からスイングが始まると考えられます。その意味で、前脚の爪先が地面に触れる瞬間、ココをトップと考えるのが良いでしょう。もちろん、グリップが後方に引かれて適切な「割れ」の形を作っている事も重要です。画像5は(2)の解釈に基づく「トップ」の実例です。
画像5:「トップ」の実例
野球の技術指導に関わっていると「トップ」という言葉は良く使うと思います。しかしその解釈が曖昧であったり、選手とコーチとの間で認識にズレが有ったりすると意思疎通が上手くいきません。選手とコーチとの間で「トップ」という言葉について共通認識を築く事が大切です。