2013年6月11日火曜日

林さん 進化の記録4



本日仰っていた「無駄な回転が無くなった」と言うその感じが、パンチャーにとっての良い感じです。全ての関節がハマる所にハマって来ると、自然と動作は全体的にタイトな感じになってきます。タイトな感じなのだけれど、力んでいるのでは無く、力が抜けている。。これが理想的です。そして、中心に「タイトな動作」が有った上で、そこに豪快さが加わって来るのが理想であって、中心に「タイトな動作」が無い豪快さは単なる大味なスイングです。これは「ショートストロークスイングが出来た上で豪快に振れるのが理想」と言う話とも繋がって来ます。

この「無駄な回転が無くなった」と言う事は「ボトムハンドのグリップもコックして、股関節を割る」という取り組みの中で出た一言でしたが、それによって「スイングの中で前脚股関節が締まる感じがする」と言う感想も有ったと思います。その感覚が出て来ると前脚がスイングの中で割れないので、なおさらそれが「タイトなスイング」につながってくるわけです。そして、この辺が林さんの一番の課題と言っても良いでしょう。

今回、一つ、新たに林さんのテーマを挙げます。それは、股関節の運動機能と言うか、もっと言うと脚全体を上手く使えるようにすると言う事です。そして、それによって脚が長く使えるようにすることも狙いです。打撃の構えでも、もう少しこの辺の感じが良くなると、もっと大きな構えになると思います。

つまり、仙腸関節から、脚が始まるということです。一般には脚の基点は下図bの股関節ですが、それがaの仙腸関節になると、そのぶんだけ脚が長く使えます。仙腸関節の可動域はミリ単位でかなり狭いですが、それはもちろん体の練度によって大きく違って来るでしょう。また右脚の基点が左の仙腸関節になり、左脚の基点が右の仙腸関節となると、それぞれの脚に「仙腸関節二つ分」の可動域が含まれる事にまりますから、そんなに小さな可動では無いと考えられます。
↑この図の右の模式図でオレンジが骨盤、青が脚だとすると、そのジョイント部分は股関節では無く仙腸関節になると言う事です。こうした意味で上手く仙腸関節が使えている打者の構えは、下図のような模式図で、その機能を表現出来ますし、実際、そういうふうに見えます。
マーク・マグワイアは、これが出来ている打者です。このイラストはまさにマーク・マグワイアを表現したものです。

そして、こういう脚の使い方が出来ると、脚を長く使う事が出来るというわけです。高岡英夫の本では、こうした体の使い方を「割れ腰」と表現していますが、割れ腰はバスケットボールのプレイヤーにもよく見られますので、その例を挙げます。


デレック・ジーターも割れ腰が出来ています。

もう少し簡単に割れ腰を説明すると、お尻を二つに割って使えているということです。つまり脚がお尻から始まっているわけです。逆に割れ腰ができておらず、股関節さえも上手く使えていない最悪な場合は、脚がズボンで言う「股下」の長さでしか使えません。

では、割れ腰が出来ている例を動画で見てみましょう。下の動画の黒いシャツのダンサーの動きは正に割れ腰そのもので、0.50からのソロは割れ腰をふんだんに使った動きで圧巻です。



股関節を割る動きも絞る動きも脚を腸骨から動かせている事が解ります。そういう事を意識してやっているのでは無く、そうした柔軟性が有るということです。ダンスによる動的ストレッチング効果で柔軟性が向上した可能性も高いでしょう。マイケル・ジョーダンの写真もそうですが、絞るときは大殿筋が前から見えそうなくらいですし、割るときは、股関節の斜めシワの一番上の部分から割れています。割れと絞りの連動では骨盤が畳まれ、中腰で歩く際は見事にお尻で歩けています。

割れ腰が出来た「股関節の割れた構え」

股関節を割った構えに関しても、割れ腰が出来ているか。つまり単に股関節の所で割っただけなのか、仙腸関節を使って骨盤から割っているのかによって違いが出て来ます。デビッド・オルティーズの下の写真は割れ腰による股関節の割れが出来た例です。

股関節の割りは骨盤の前傾を伴うわけですが、骨盤の前傾で仙骨が前傾するとき、仙腸関節の可動を伴って「仙骨のうなずき運動」が起きる事が知られています。そして、この際、下図(誇張して表現)のように腸骨が動き、骨盤は下部が開き、上部が閉じます。そしてこれによってさらに股関節が割れやすくなります。


そのため、割れ腰による股関節の割りが出来た構えでは、写真のように、股関節の斜めのラインが切り立ってくるわけです。

こうなると、脚が股関節の斜めシワの一番上のあたりから割れている事になります。(写真右)この場合、脚がその斜めシワの一番上から生えているように使えるので、脚を長く使えます。下図左のように、青のラインの場所から脚が使えているのと、赤のラインの場所から脚を使っているのとでは脚の長さが10㎝近く違ってくるわけです。


このように、股関節を割ると言っても、仙腸関節が使えているか否かで、そのレベルは大きく違ってくるわけです。

また、少し視点が違いますが、これも「股関節の割れ」の達成度を示すポイントとして、上手く股関節が割れている場合、写真のように外側広筋(大腿四頭筋の外側)が収縮します。もちろん、股関節を割ると言うのはハムストリングスを使うために重要なポイントの一つですから、基本はハムストリングス=収縮、大腿四頭筋=弛緩なのですが、大腿四頭筋(外側広筋、内側広筋、中間広筋、大腿直筋)の中でも、外側広筋だけは収縮するのです。

写真)股関節が割れて外側広筋にハリが出来ている例

これは、膝の自動回旋機能によるものです。膝の自動回旋機能とは膝の屈曲に伴い下腿部が回内し、伸展に伴い回外する機能の事でした。外側広筋は下図のような配列をしていますが、もちろん、膝の伸展筋ですから、まず第一に膝の屈曲に伴い、引き伸されています。そこに、下腿部の回内が加わると、図のような筋の付着位置、配列を持つ外側広筋がさらに引き伸される事が解ります。そして引き伸された筋肉は収縮しようとするので、外側広筋は膝の自動回旋を伴った屈曲では収縮する(張る)わけです。
その一方、反対側(大腿部内側)に付着する内側広筋は、下腿部の回内によって緩む事が解ります。ですから、膝の自動回旋を伴った(爪先の開きが小さい)股関節の割れでは外側広筋にハリが出来て、内側広筋は緩むのです。一方で、膝の自動回旋を使えていない爪先がガニ股状に開いた「股関節の割れ」では大腿四頭筋の全てがハリます。これは試してみると解ります。

ラボではよく言っている事ですが、股関節を割る時の両脚の内側に柔らかいボールを挟んでいるような感じは内側広筋の弛緩によって出来る感覚です。

この感覚は打撃の構え程度の割り方だとあくまでも弱い感覚ですが、リズム股割りスクワットで深く股関節を割ると強く感じる事が出来ます。脚の内側がたわむ感じですね。

こうした、仙腸関節を使った股関節の割り。膝の自動回旋を使った股関節の割りが出来るようになる事が重要です。では、問題はどうしたらそれが出来るようにするのかということですね。

基本的に、仙腸関節を動かすためには、割れ絞り系の体操で、左右の股関節を反対に動かす事です。(一方を割って一方を絞る)また、膝の自動回旋機能を使えるようにするためには、ラボでやっている「膝伸展と下腿部回外、膝屈曲と下腿部回内を組み合わせた体操」をすることです。柱や壁に手を掛けて、膝を曲げ伸ばしするやつですね。

基本的に林さんの場合、この辺がもっと極められると、もう一段上のレベルに到達出来ると思います。

では以下「割れ腰」を身につける効果がありそうな体操を紹介します。(まだ、それほど考えが固まっていないのですが)

1)座り割れ絞り体操 基本、左右の股関節を反対に動かす割れ絞り系は効果的です。これは間違い無いです。

2)バット割れ絞り体操 ミズノの青い短いバットくらいが(回数をこなすためには)妥当です。打撃のスイングに及ぼす影響を最小限にするためには(左打者の場合)右打ちのグリップにすることです。写真は顔が横を向いてますが、矢印の方向、つまり捻る方向とは逆に残す方が、効果的です。(腰の回転を小さくし、あくまでも股関節の捻りを引き出すため)ただでさえほとんど動かない仙腸関節を動かすためには出来るだけ深く沈み込む必要があります。(もちろん、そのぶん割れ絞りの連動も深くなる事が重要です。)

3)リズム股割りスクワット(動画) 股割りも重要です。当日お話したように、股関節の0ポジション的な意味を持つためです。
4)股割り鉄砲歩き(動画) 股を割った事によって股関節の0ポジションが形成されます。この状態で大殿筋の起始部分(仙腸関節をまたぐ)から脚として使う感覚で全身します。

5)寝て股関節絞り 図の左は当日林さんか山下さんがやっていたやつですね。この方が割れ絞り体操より絞り自体は強く行なえます。マイケル・ジョーダンの写真のように体の前から大殿筋が見えるくらいのイメージでやりましょう。図の右は両脚同時です。膝を少し浮かさないと無理でしょう。骨盤の前を閉じて後ろを開きます。
6)寝て股関節割り 寝た状態、あるいは両手をついて背中を起こした状態で股関節を割ります。絞りとは逆で、骨盤の後ろを閉じて前を開きます。
7)股割り突きパンチ(動画) 右腕と左腕を逆に動かす事により骨盤の運動にも左右でズレる感覚が生じます。

8)リズム割れ捻りorリズム割れ捻りステップ 動的ストレッチも関節可動域を広げる効果があります。

だいたいこんな感じですね。こうしたストレッチを(他の目的のためであれ)行なっていくうち、仙腸関節が使えるようになってくるはずです。

オルティーズとの違いを感じ取ってください。基本的に、股関節を割る感じがまだあまり掴めていない感じがします。そのへんに改善の余地、伸びしろが有ります。膝の自動回旋機能も含めて、脚を上手く使えるようになると、もう一段上の域に達するでしょう。


それと新しい動画ですが、やはり5月17日撮影の方が良いですね。

最新動画

5月17日撮影

新しい方は、林さんの悪い時の典型的な兆候が見られます。(もっとも悪い時と言っても、あくまで動作上の話ですが)

その兆候とは、前脚の膝が内に入るために、体が大きく回るときは前脚の膝が割れ、前軸がキープされるときはコンパクトな(回転が小さすぎる)スイングになると言うことです。

一方、5月17日の方は体が充分回転しながらも前軸がキープされています。そして前脚の膝も内に入ってません。これが林さんの良い時のフォームです。

この違いはまず、流れで打ちに行ってるか、止まってから打ってるかの違いでしょう。これは最初からずっと続いている問題なのですが(林さんの長所でもあるわけですが)基本的に流れの中で打ちに行こうとする傾向が強いと言う事です。そしてまた「股関節を割る」という事が安定して出来ているに至っていません。

形はかなり良くなって来ました。特に今回の動画(進化の記録4)の最初の素振りなどは素晴らしいものが有ります。しかし、まだ、ある意味、この打法の一番核心的な部分、そこの認識が弱いと言うか、捉え切れていない部分が有るのです。

端的に言うと、それは「止まってから打つ」と言う事なのですが、これだけだとほとんどの人が余計にパフォーマンスを悪化させるでしょう。止まってから打つ事を可能にするためには股関節を割ってハムストリングスで立つ事が高いレベルで実現されている事が必要になります。つまり、そうした事も含めて「止まってから打つ」と言うのがこの打法の一つの核心になるわけです。

止まってから打つ。つまり止まった状態からいきなりバットを振ろうとすると、多くの人が体の全部が一緒に回ってしまう状態をイメージしてしまうかもしれません。しかし、そうなったとしても、それは初期的な段階です。止まってから振る事を続けているうちに、体の各部の回転のタイムラグが形成出来るようになってくるのですが、それが上達すると言う事です。一方、流れの中で打つと言う事を続けているうちは何時までたっても、その上達する軌道に乗って行けないのです。

おそらくですが(外れてるかもしれませんが)5月17日の方は股関節のコンディションが良かったために止まってから打てていたのであり、新しい方はパワートレーニング等の影響も有り、上半身の筋肉がやや張った状態であるぶん、流れの中で打たないと良い感じで振れなかったのかなと思います。(違っているにしても、そういう事は起こりえます。)

なので、具体的には、股関節を割ってハムストリングスで立つということの再度の見直しと徹底に加えて、止まってから打つ事(時間は僅かで良いので、一度止まって地面に体重を落とす)の繰り返しにより、スイングフォームの改善(前脚の膝が内に入らないようにすることで、前軸をキープしたまま振り抜けるようになる)を計って下さい。

続きます。

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★打撃フォーム上の最大のテーマ

林さんの現在の最大の課題を挙げるとすると、それはフォーム上の問題ですが「パンチャーのオートマチックステップらしさ」が試合の中で出せていない(少なくとも甲子園の時点では)と言う事につきます。

つまり、ステップで前脚の膝が内に入り、フォローでスインガーのように体が一塁側に流れるので巻き戻しが弱く、そして、フォロースルーでの腕の動きに今ひとつタイトさが無い。と言う事です。左打者、特に右投げ左打ちと言う事が、この問題を大きくしているのでしょう。

フレディ・フリーマンやリード・ブリニアックのようなタイトなスイング、サム・フルドのような巻き戻してから走り出すようなフィニッシュ、そして、そうしたスイングを構えた状態からいきなりスパッとバットが出るような動きの中で実現出来なければ、この打法の真髄を極めたとは言えませんし、また「見た目」でアピールするための「芸術点」が挙って来ません。(構えは外国人だけどスイングが日本人と見られると、アピール度が普通の日本人の打ち方より、むしろ低くなってしまう辛さが有るのです。)

この、上記の太字の部分が、フォーム上での、これからの最大のテーマだと言えるでしょう。

まず、タイトなスイングについてですが下の写真のスイングでは、それが出来ていた事を思い出して下さい。この時、バットを寝かせただけのシンプルな構えから、ショートストロークスイングを行なうと、フィニッシュでの腕の形が良くなりました。二本の腕の前腕部が平行になっている良いフィニッシュです。そして、こうした構えの中で「無駄な回転が無くなった」感覚、つまりタイトなスイングの感覚が得られました。その感覚こそがパンチャーの基本です。

この感覚を崩さないで、構えを大きくしていく事が大切です。もちろん、上記の写真のようなスイングの練習も重要です。ただしあまりやり過ぎて、スイング全体が小さくならないように気を付けてください。

きたろうさんの構えとフィニッシュの関係を見て下さい。

ただ、担ぐようにバットを寝かせて構えると言うのは、いちばん腕に負担のかかる構え方です。そこで、捻りを入れてヘッドを投手方向に入れてやる必要が出て来るのです。下の写真は、やや入れ過ぎですが、イメージ的にはこのくらいヘッドを入れて良いのです。

いずれにしても、上記ショートストロークスイングの構え。この状態を基本として、そこから構えを大きくしていくと言う事を徹底してください。それが体幹部操作の本来の形です。全ての連動が決まり、関節が有るべきポジションにハマったので「遊び」が無くなり、スイングがタイトになったのです。そして、それが「無駄な回転が無くなった」と言う感想の意味です。

そして、そのために重要なポイントはもう一つあります。つまり下の写真のような形にならないようにすることです。

これはまず構えで両脚がガニ股状態になっている時、そしてそこから始動後に後ろへ体重が移動する時に起こります。そして、また流れを利用して打っている時にも起こります。ですからまず「股関節が割れた上で前の膝が内、後ろの膝が外のラインを作る」と言う事と「一度止まって、体重を地面に落とす間を取ってから始動する」と言うニ点を習慣付けて下さい。

それでは、林さんの最大の課題を克服するための取り組みのポイントを挙げます。実戦でも安定して巻き戻しが出現し、バットを最後まで振り切るまで前脚が開かないスイング。そして、フィニッシュではボトムハンドが上手く畳めて、巻き戻しでは手首が返る(戻る)ようになる事が目標です。そしてステップにかかる時間もより短くなり、もっと構えた状態からいきなり一瞬でバットが出るようになる事も重要です。

1)バットを寝かせただけのショートストロークスイングの時の構えを基本として、大きな構えを作って行く。もちろん、ショートストロークスイングの練習も必要。(「(42) グリップ横滑り前脚内旋防止スイング」も基本的には同じ意味)

2)両脚股関節が割れた上で、前の膝が内、後ろの膝が外のラインを作る。そのためには股関節の割れの感覚、割れ腰の感覚を磨く事も重要。

3)一度止まって、体重を地面に落とす間を取ってから始動する習慣を付ける。

とりあえず、この3点に取り組んでみてください。

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林さんの場合、実戦経験を積める状況に有るので、それは強みでしょう。ラボとして出来る事は(打撃の向上はもちろん)とにかく、スイングスピードの向上、肩の強化、走力の向上。この3点です。そして、やはりこの事が重要な課題になるでしょう。目標はNPBですが、目指す境地は黒人、ラテン系のレベルです。

打撃についても、まだもう一回り、バットを軽々と振れるようになる必要が有ります。まだまだバットが重そうに見えてしまう所が、一つの課題です。なんとか来年の今頃までには、ソフトボール3号バットでのティー打撃のような感じで硬式木製バットを振れるようになってください。

そして課題はやはりスローイング技術です。肩の強さと言う意味では既に充分なようですが、それにしても、もう一段、スローイングの技術を向上させる意識を持つ事で、外野守備それだけでも必要とされる戦力になれば、さらに安心して打撃に取り組めます。これ(守備力の向上)は、実戦経験を積める立場、高いレベルでチームに所属出来ていると言う状況の強みを活かすと言う意味でも、重視したいテーマです。

故障を防ぎながら強化すると言う意味も含めて「肩」の事については、スローイング技術(首の角度等のクセ)と同様、また話合う機会を持ちたいと思います。
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最後に、社会人野球の経験者の方にお聞きしたところ、映像や新聞の切り抜きを使って選手を売り込む事は(社会人球団を相手としても)普通に行なわれているようです。(東さん、その節はありがとうございました。)林さんも今、打撃練習などで調子が良いのであれば、どのくらい打球が飛んでいるか等も解る映像を残しておく事をおすすめします。例えば、場外にまで飛ばせているのなら、映像として残しておけば、いつか役に立つはずです。

以上です。