進化はゆっくりと起こっています。具体的にはヘッドがより体の前方で抜けるようになってきており、少しづつ「連鎖的に体の各部位が運動に参加して行く」と言う体の使い方が出来るようになって来ています。細かいフォーム上の問題も有り、それを改善していく手法も取って行く必要が有りますが「進化の本筋」は「ゆっくり起きている進化」であり、それはバットを振り込む事によって起きています。その「ゆっくり起きる進化」をサポートするものが「細かいフォームの改善」です。なお、スローイングについては予想を大幅に上回る進化の早さを見せています。
1)何が急務か。
とりあえず、差し当たって急務となる問題は何かと言う事ですが、打撃投球に共通する事として、これは「上半身の柔軟性を向上させる」事と「連鎖的に体の各部位が運動に参加して行く体の使い方を磨く=しなやかさの向上」の二点につきるでしょう。股関節の運動機能向上、パワーアップ、黒人化、そして振る力を付けるなども大切ですが、これらは今まで通り続けて貰えればひとまずは焦る必要は無いと思います。しかし、前述の二点については、今年中に大幅に能力を向上させる必要があります。特にそれによってスローイングでは肩腕の回旋を伴った綺麗な腕の回転を身につけることが大きなテーマです。また打撃においては胸椎が後彎してコックの効いた構えが作れるようにすると言う狙いも有ります。
テーマ1)上半身の柔軟性=主にストレッチ
上半身の柔軟性とは以下のように細分化して考える事が出来ます。各々のテーマに沿って、各種ストレッチを行なう事が基本となります。細分化して挙げると、重要な動きはざっと以下の通りですが、一日に全ては難しくても、それぞれ行なって行くと良いでしょう。
a)脊柱および体幹
反る 丸まる 捻る(腸腰筋その場ステップやバット腸腰筋その場ステップ、タオルを使った腸腰筋ストレッチなども反る運動になる。)
b)肩甲骨の可動域
内転 外転 下方回転 上方回転 挙上 下制
肩の捻り(外転と内転のセット) 肩甲骨ペア回転
c)肩関節
内旋 外旋(投球腕のテークバック動作や、打撃の肘のえぐり込みなど、内旋や外旋に付随して外転や内転、屈曲や伸展も起きる)
d)前腕部
回内に伴うグリップのコック(バット振り子前腕回内や前腕回内肘伸ばし等、尺骨と撓骨が交差して前腕部が捻られる動きが重要)
※)備考
総合的に柔軟性を向上させるための「動的ストレッチング」として、シャドーピッチングも効果的です。(やり方が良ければ、ある意味一番効果的とも言える)
テーマ2)連鎖的に体の各部位が運動に参加して行く体の使い方を磨く=負荷の軽い状態でのスイングを繰り返す
これについては今回のテーマである「打撃のパワートレーニング」で実施した重いバットを使った素振りを行なうからこそ可能になると言う部分が有ります。
実際、今までに見た山下さんの動画の中で、最もこの点について出来ていたのが下の写真の置きティーの時です。
これは、軽いバットを使う事で、上半身が緊張しない状態を作る事が出来たからです。それによって始動時の下半身の出力が大きくなりますし、始動時に下半身が大きな力を発揮するうえに、そのとき上半身の筋肉が弛緩出来ているので、体幹部の筋肉を柔軟なゴムのように引き伸せるから、しなやかなスイングが可能になっているわけです。そして「連鎖的に体の各部位が運動に参加して行く体の使い方を磨く」と言うポイントについては硬式木製で上記の動画くらいの感じになれば、ひとまず第一段階はクリアと言うかプロと言う事が考えられるレベルに乗って来ると思います。
なので、軽いバットを振る中で、上記置きティーのような体の使い方を繰り返して行く事が重要になります。(もちろん上記置きティーよりまだもっと向上出来ます。)またシャドーピッチングも有効な練習ですが、これらは重いバットを使った素振りとセットで行なうと良いでしょう。
実戦から離れている故に可能になる実験的な試みとしては、素振りの練習を重いバットと軽いバットの両極端のみにすると言うものです。もちろん実打で硬式木製バットを使って打つ際には多少アジャストに手こずるでしょうが、パワーアップのためには重いバットが有効ですし「連鎖的に体幹部の各部が〜」と言うテーマつまりしなやかさのためには軽いバットが有効になるから、基礎的な能力を向上させるためなら、この二種類のバットで充分事足りるからです。もちろん、硬式木製を全く振らないと言うわけでは有りませんが、その数を大幅に減らしてみる(馴らし程度)と言う事です。細部については急ぐ必要は無いものの「基礎的な能力向上」については「急ぐ」必要があるということを考えると、こうした大胆な取り組みも必要になって来ます。
そして「連鎖的に体幹部の各部が〜」と言う能力を向上させるには、重いバットを振るにしても軽いバットを振るにしても(連続素振りの場合でも)一瞬の間で良いので一度静止して「揺らいでから止まって地面に体重を落としてから振る練習」のように、一度地に足を付けて、体の芯、軸を感じてから一気に振り抜くと言う事が重要になります。そして、捻りを入れた構えを作りつつ投手方向を向く事も重要です。捻りが無いと、全身が一緒に回転するスイングになりやすいですし、顔が置きティーの向きだと、手が出るタイミングが早くなってしまうからです。つまり、ポイントは以下の3点です。
1)体の芯、軸を感じてから振る
(軽いバットでも突っ立って腕で振るのでは無く、下半身を効かせて振る。)
2)捻りを入れて構える
(捻りを入れる事によって、体の各部に回転の微妙なタイムラグを作りやすい。)
3)投手方向を向いて振る
(投手方向を向いて振る事でヘッドが体の前の方で抜けるようになる。)
特に「棍棒」を使った素振りでは巻き戻しを利用して捻る時、後ろ脚股関節が割れるので、それによって下半身の効いた状態からスイングする事が重要になります。今回の動画の感じだと、上半身の表面的な筋肉に頼ってしまっています。
いずれにしても、こうした取り組みによって少しでもヘッドの抜けが良いスイング(素振りで前の方で音が鳴るスイング)に近づいて行く必要が有ります。ある意味、山下さんの打撃については形の事よりもこれが一番大きなテーマでしょう。
以下、パンチャーでヘッドの抜けが良いスイングを集めてみたので、イメージの参考にしてください。
プリンス・フィルダー
ブライス・ハーパー
マーク・トロンボ
ジョージ・ベル
アンドリュー・ジョーンズ
トニ・ブランコ
ただ、こうしたスイングのためには、もちろん股関節の捻り、回旋能力やハムストリングスが使えて来る事も重要となりますが、その辺は今まで通りやっていって貰えるといいかなと思います。
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2)その他のポイント
前回も色々なポイントを挙げましたが、その他にも今回気が付いたポイントをいくつか挙げて行きます。
a)揺らぎ
当日見て、気が付いた事ですが、揺らぎ体操の達成度がまだまだです。その事が実際のバッティングに影響しているようです。ということは、ココの所にまだ伸びしろが有るということです。
揺らぎ体操をスムーズに粘っこく、股関節の円運動を使って出来るようになってください。ポイントを挙げておきます。
1)腸腰筋ストレッチ(骨盤前傾により股関節の靭帯が緩む)
2)8の字揺らぎ体操(まずはバットを持たずに両手で8の字を描く。足踏みは両方)
3)揺らぎ体操(重心は高く、スティックの回転と股関節の円運動を連動させる。足踏みは前足だけ。)
4)揺らぎ構え作り体操(揺らぎながら重心を降ろし、体幹部操作で構えを作る)
5)8の字揺らぎスクワットダウン(8の字揺らぎ体操の要領でスクワットダウン。股関節を割る)
※揺らぎ体操では体の芯、軸を感じて、その軸周りに円運動する意識が非常に重要です。
上記が出来た上で、次には揺らぎ〜打に行く間を意識して練習してください。これは実打の中で打つ時にやれば充分でしょう。「(23)揺らぎストップスイング」の要領ですね。
アンドリュー・ジョーンズのようなスムーズで粘っこい動きを身につけて下さい。
b)爪先の浮き、脊柱のS字カーブ
最近の山下さんを見ていると、構えで脊柱のS字カーブが作れておらず、後ろ足の爪先が浮いています。この二つは恐らく関係しているでしょう。
写真)背中が真っすぐで爪先がやや浮いている。前傾角度がやや大きすぎる。最近の傾向です。
下図のように脊柱のS字カーブが効くと、それほど体を前傾させずとも骨盤が前傾します。(図の角度よりもう少し前傾していた方が良いですが。特に日本人はそれくらいしないと骨盤が前傾してくれないので。日本人の弱みですね。)脊柱が真っすぐだと、体そのものを大きく前傾させないと、骨盤が前傾してくれません。骨盤が前傾しないと「ハムストリングス立ち」の感覚が得られないので、背骨を真っすぐのままハム立ちの感覚を探って行くうちに(山下さんの場合)前傾角度が大きくなったのでしょう。もう少し(僅かですが)前傾、つまりクラウチングの度合いを弱めた方が良いですが、それには脊柱のS字カーブを作る事です。
次に後ろ足爪先の浮きですが、現状の構えのまま爪先を着地させると下図のようにさらに前傾度合いが深まります。つまり、今の山下さんの構えは、本来は下図右くらいクラウチングしているということなのです。実際、始動時に爪先を着地させる動きが入ると、さらにクラウチング角度は深まります。スイング軌道(低い位置を振る)とも全く無関係では無いでしょう。つまり、ハム立ちの感覚を得ようとして前傾角度を深めていく内にかなり前傾角度が深くなってしまった結果として爪先を浮かせないとバランスが取れなくなってしまったのでしょう。
このへんの事が最近、上手くなったのが林さんです。構えで脊柱のS字カーブが効くようになった事によってクラウチングの度合いが適切な角度になりました。多少まだ爪先が浮いてますが、このくらいなら問題ないでしょう。この写真よりももっと上手くS字カーブが出来ている時が有ります。
ただ、山下さんを見ていると、下の写真のように、本来は脊柱のS字カーブが比較的クッキリ作れる体型をしています。ピッチングの楽な立ち姿でこのくらいクッキリS字が出るのは、少なくとも日本人の平均よりは良いはずです。この体型であれば、構えでももっと上手くS字カーブが作れるはずです。そうすると過剰にクラウチングする必要もなくなり、後ろ足の爪先も接地するでしょう。
練習法としては、腸腰筋ストレッチ後に、その戻りで(腸腰筋の反射的収縮で)脊柱のS字カーブが作れるようにしてください。また、肩甲骨の可動域が大きくなれば、そのぶんだけ胸椎が後彎した状態も作れるようになり、グリップにもコックがかかります。
端的に言うと、もう少しクラウチングを抑えて、胸椎の後彎を作るということです。そして、それはあくまでも外見だけではなく、腸腰筋が効いた結果である事が重要です。
C)体の芯からの力を使う。
鬼の棍棒素振りを私と林さんと山下さんで比較してください。山下さんの場合、特に始動時の下半身の力が出ていない事がわかります。ソフトボール3号バットでの置きティーは、今までにオートマチックステップ打法を実践した人達の中でも1,2を争う始動時の力の大きさが出ています。そして、2年ほど前のラボ一回目の動画を見ると、ほとんどと言って良いほど始動時の下半身の力が出ていません。出来るようにはなったもののまだブレが有るということでしょうね。重いバットを持つと、まだまだ上半身の筋肉に頼ってしまうのでしょうか。この事がソフトボールバットと硬式木製バットのパフォーマンスの差にもなっているのでしょう。重いバット、軽いバット、普通のバット、これら全てを例のソフトボールバットによる置きティーと同じ感じで振れるようになってください。そのためには、揺らぎ、揺らぎ〜打に行く間なども重要になりますから、他の課題とも被っています。体の各部位がハマるべき位置にピタッとハマるようになると、バットの重みが腕では無く、体幹部から地面にまんべんなく吸収されていきます。そうなった時に体の芯からの力が使えて、始動時の力も強く発揮されます。もちろん、既にこの辺の感覚もだいぶ掴めている事でしょう。ただ棍棒のような重いバットを振る際は特にその辺が重要になってくるわけです。これは他のマスコットや短いマスコット等も同じですが、重いバットを腕力だけで振ってしまうと、動きが悪くなってしまいます。重いバットを振る時はこの事を特に気を付けてください。つまり下半身が効いた状態を作り、体の芯を感じてから振ると言う事です。この打法の真髄はこの辺に有ります。
続きます
d)スイングの最大の問題
下の写真はラボ初回のスイングです。2年前の5月頃だったと思います。
この頃から大分進化していますが、ずっと変わらない問題が有ります。それは重々
理解している事と思いますが、スイング軌道がゴルフに近い事が一点と、そしてもうひとつは右肩が大きく起きてくる動きです。この連続写真でも最後のコマで右肩が大きく起き上がって来て、それが顔を押し出してしまっています。こうなると、フォロースルーで安定した軸をキープする事が難しくなるはずです。
スイング軌道もかなり改善されて来ましたが、まだまだ、2年前に近い軌道になる事もあります。(腰はだいぶ回るようになりましたが)
特にフォロースルーで右肩を起こす動作については、今でもかなり大きな問題になっています。スイング中に大きく息を吐く事とも関係があるように思えます。(右肩が起きて来るので息を吐いてしまう。)
この問題、つまり「スイング軌道」と「右肩を起こす動き」が山下さんのスイングの中で最大の問題であり、その二つは「体の回転が小さい」と言うテーマによって結びついていると思います。
つまり「体の回転を大きくする事によって、スイング軌道をもう少し高めにし、右肩が起き上がる動きを小さくする」と言うのが、最大のテーマだと言う事です。
では、どうして体の回転が小さいとスイング軌道がゴルフ状態になり、右肩が大きく起き上がるのかということについて説明します。
まず、パンチャーの基本メカニズムとして、トップからタスキラインでの筋収縮が起きると、それによって肩が垂直面回転を起こします。ここに、股関節の捻り、骨盤の回転が強く起きると、水平面回転の要素が加わるので、バットの軌道は丁度良い高さを通るようになるのですが、山下さんの場合、回転の力が弱い(回転が小さい)ので、垂直面回転が目立ってしまい、その結果、ゴルフのようなスイング軌道になっています。
このため、理想の形に比べると、肩の垂直面回転が大きくなるので、体幹の側屈も大きくなります。そうするとスイングの中でボトムハンド側の側体が大きく引き伸されます。具体的な筋肉名を挙げると、広背筋、大胸筋、外腹斜筋などが挙げられます。これらの筋肉がインパクトまでに引き伸され、フォロースルーではその反射で収縮します。
このため、下の写真のように、インパクトまでにボトムハンド側の側体が伸び、フォロースルーでは、その反射でボトムハンド側の側体が縮みます。
そして、反対側のトップハンド側ではインパクトまでに側体が縮み、フォロースルーでは伸びます。この動きがトップハンド側の肩が起きる動きになっているわけです。
これが山下さんのスイングにおける最大の問題点で、一番の原因は股関節を中心とした下半身、体幹の回転能力が低い事にあるのでは無いかと考えられます。これは、どういう所に原因が有るのかは難しい問題なのですが、自分が現役の頃(今の理論が出来る前)から見て来た選手の中にも、そういう特徴の選手は何人かいました。山下さんには特にその傾向を感じます。
練習法としては、やはり股関節の「リズム割れ絞り体操」等が重要になるでしょう。「バット割れ絞り体操」「リズム割れ絞り体操」「割れ絞りジャンプ」「割れ絞りタスキラインパンチ」「リズム割れ捻り体操」「割れ捻りステップ」等、股関節の割れ絞り系と素振りを組み合わせる練習が重要になると思います。そして、それらが骨盤が前傾した状態で出来る必要があるので「腸腰筋その場ステップ」も重要です。
具体的には、割れ絞り体操系〜腸腰筋系〜素振り の組み合わせによるメニューが良いでしょう。
さらに余裕が有れば、腹斜筋を使って体幹を捻るストレッチ、肩甲骨をスライドさせて肩を捻るストレッチ等も、回転運動に関わる種目として重視したい所です。が、まず重要なのはやはり股関節の回旋能力でしょう。スイング中の後ろ脚を見ても、爪先が返りきっていないので、やはりそこに最大の原因が有ると思われるからです。
続きます。
また、構えを改善する事によって回転能力を向上させる事も出来ます。写真は以前の構えと今の構えですが、どちらの構えでも、捻りが小さく、両脚が均等にハの字型に開いていますが、これでは内転筋に張りが出来てしまいます。
この脚の形でツルツルに滑る床の上に立っていると考えると解りやすいでしょう。上半身の重みによって、両足が滑り、股を割くように、股関節が外転してしまうはずです。ですから、それを避けようとして、この姿勢では内転筋が収縮しやすいのです。
そうすると、スイングも後ろ脚股関節の内転が主導になってしまいます。つまり、股関節の絞り動作(内転、内旋、伸展)のうち、内転が主導になってしまう事で、骨盤の回転が小さくなってしまうわけです。内旋や伸展が強くなると、骨盤の回転は大きくなります。
下の写真等は典型的ですが、後ろ脚股関節がほとんど内転しているだけで、両脚をハサミのように閉じる動きになっており、腰が回っていません。また、股関節の内転と連動するように右肩も下がっています。
このように、両脚をハの字型に開いた構えだと、腰が回りにくいので、捻りを入れて「両脚股関節が割れた上で、前脚の膝が内、後ろ脚の膝が外に向くライン」を作らなければなりません。このラインが出来ると、後ろ脚はさらに回転しやすくなります。
林さんの記事で書きましたが、股関節のゼロポジションとも関係があります。つまり、大殿筋やハムストリングスが下図のような配列になった状態で束になって捻りが入ると、それだけ股関節の回旋機能が働くと言うことです。
そして、そのためには後ろ脚は下の写真くらいの感じになっている(割れている)必要が有るのです。そして、そのためには体の捻りが必要になります。ただし、これらの写真は一部(投手方向が見えないほどに)捻りを強調してもらったものも有ります。(オープンスタンスにして捻りを強調すると確かに後ろ脚の力は使えるのですが、それをするとまた別の部分に問題が出て来るのでよく有りません。つまりスクエアの状態で如何に捻りを入れられるかが重要になるわけです。)
それでは、今までラボで撮影した中で「後ろ脚の膝が外、前脚の膝が内のライン」が最も上手く出来ている例を紹介しましょう。
これらは仙腸関節の稼働を伴った股関節の割りで、割れ腰が比較的出来ている例です。特にソルトさん(左端)の構えは凄い割れ腰です。ただ後ろ脚爪先と膝の向きが同調しているので後ろ脚はやや大腿部前面(外側広筋では無く)の筋肉が収縮しているように見えます。
後ろ脚股関節のラインの沿った捻りで、こうした両脚のラインが出来ると、股関節がゼロポジションに近い状態に入るので、股関節の回旋能力が高まります。では、そうした機能を向上させる割れ絞り系のエクササイズを3種目紹介します。ただ、特に目新しいものでは無く、既存の割れ絞り体操にアレンジを加えたものです。股関節をあまり閉じずに(内転を抑える)絞る事で、股関節のゼロポジションでの捻り、簡単に言えば大殿筋から捻られる感覚が掴めます。後半2種目では着地する時に踵〜大殿筋で体重を受け止める事がポイントになります。
もちろん、こうしたものを全てやる必要も無いのですが、全く同じ物をずっとやるよりは、メニューに変化を付ける(今日はこれ、明日はこれと言うように)事が出来るので、エクササイズの種目は多い方が良いでしょう。
まとめると、股関節の回旋機能を高め、山下さんのスイングの最大の問題点をクリアーするためには、素振りの際に以下のような取り組みをすると良いでしょう。(番号は順番を表します。)
(1)割れ絞り系トレーニング(トレーニングとしてある程度の回数)
(2)腸腰筋系トレーニング(スイングの準備体操として少しだけ)
(3)捻りを意識した構えから投手方向を向いてのスイング
直ぐに変化が出るような問題では無いですが、既に改善の兆しも出ているように、継続する事で少しづつ良くなって行くはずです。
こうした取り組みによって問題が改善された時、理想的には素振りの中で下の写真のようになかなか手首が返らず、腕が伸びて行くスイングが出来るようになるのが狙いです。トップハンドを捏ねないスイングですね。トップハンドが深く外旋し、肘がヘソの方にえぐり込まれながらも、手首を捏ねずに腕が伸びて行く、理想的なスイングです。
素振りではボールに当たらないためか、手首の返りが早くなるケースが多く、このようなスイングをするのは極めて難しいのですが、下のきたろうさんの写真のように出来ている例も有るので、不可能では無いのです。
ただ、ここまでのレベルを求めるのは「長期的な目標」と言って良いでしょう。とりあえず、短期的にはソルトさんやバリーさんくらいの(スイング軌道やフォロースルーでの)クセが無い感じを目標にしてください。
e)股関節の割り
進化2でも書きましたが、股関節を割るということについては、まだまだ不安定な部分が有りますし、もっと極めて行く必要が有ります。林さんの記事での「割れ腰」も参考にしてください。下の写真などはかなり割れ腰的な、しかも外側広筋にハリが出来た「良い股関節の割り方」が出来ています。なので、既に股関節が上手く割れる体は出来つつ有ると言えますが、まだ良くして行く余地が有るということです。
ただ、本当に上手く股関節を割るためには、仙腸関節の柔軟性、股関節の柔軟性に加えて、膝の自動回旋機能を上手く使う事と、その下腿部の回内と連動する足関節の動きも良くして行く必要があります。そうした意味で、膝の自動回旋ストレッチや,下腿部の回内回外と足関節を連動するストレッチも行なって行く必要が有ります。(もっとも休憩しながらでも出来る事ですが。)
写真のソルトさんの構えはかなり上手く股関節が割れていますので参考にしてください。
なお、股関節の割りと同時に、膝の自動回旋機能や、足関節の動きなどを総合的にトレーニング出来るエクササイズとしては「リズム股割りスクワット」が最適です。膝の自動回旋機能で膝屈曲に伴い下腿部が回内し、それと連動して足関節の内反が起きると、荷重は足の外枠部分に集まり、インエッジは浮きます。そして脚の内側のラインがたわむように内転筋がストレッチされます。太腿前面は緊張しませんが、外側広筋にはハリが出来るので、その部分で体重を受け止める感覚が生じます。こうした体の使い方をリズム股割りスクワットを上手くやれば総合的に磨く事が出来ます。
股関節を上手く割れるようになると、もっと骨盤も前傾し、脊柱のS字カーブもクッキリ作れるようになるでしょう。
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スローイング編
スローイングは予想を上回る進化を遂げてくれています。脚を挙げる時の後ろ脚で地面を捉える感覚も非常に良いし、ターン&タンブルフィニッシュもだいぶモノになってきました。今回は特に新しい内容は無いので、前回の内容やお渡しした資料を参考にして引き続き取り組んでおいてください。
なお、特に重視してほしいのはワインドアップモーションで前脚を引く時に後ろ脚の膝をカクッと緩める感じと、その膝を緩めた後ろ脚の踵で地面をトンと踏む感じです。これが出来ていると、後ろ脚のハムが効きますが、ある意味、これが最も重要な動作でもありますから、これだけは常に忘れないようにしてください。(ハムストリングスが使えるかどうかに関わって来るので)
その次に重視してほしいのは前脚を引く時に腕を浮かせて、挙げる時に逃がす、腕の動き。それから前脚の挙げ方です。さらに、テークバックで内旋して肘から挙るように、脚を挙げた時の姿勢も注意してください。(前回書きました。)
この辺がさらに磨かれるとフィニッシュも自然ともっと磨かれて来ます。
山下さんの場合、打撃はもちろん最優先されるべきテーマですが、肩の強さがその次に優先されるテーマになると思います。
守備力を買われて高いレベルの実戦を積み重ねて来た外野手がプロでセンターに入る事を考えると、センターと言う守備位置は現実的では無いと思います。
となるとレフトかライトですが、肩が強く無い場合、レフトしか守る場所が無くなってしまいますが、そうなるとかなり出場出来るチャンスが小さくなってしまいます。なので、レフトもライトも守れるようになるために肩の強さが非常に重要なテーマとなります。
ただ、こうして深く理論的な取り組みをしながら投手の投げ方を追求していけば、その辺については普通に外野手をしているだけの選手より可能性が大きいと思います。そのための「黒人化」を含めた私の理論でも有るので、それは大いに活用してください。
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技術的には以上です。
出来るかどうかは未知数ですが、秋頃、あるいは悪くても来年には、少なくとも130キロ台の速球を投げて緩急が付けられるレベルの投手と延々ゲーム形式の練習を繰り返すと言う事が出来ればと思っています。模試を繰り返して実戦力を挙げる目的です。一日30打席くらいで、それを週1回のペースで繰り返すような事が出来れば最高です。まだ「この打法」での実戦経験が少ないと言うネックが有るはずなので、そこを埋め合わせるための取り組みをしたいと考えています。(そしてそれを撮影して、その中のベストショットをプロモーションビデオとして、プロ球団に送りたいと思います。)
取りあえず、投球技術、打撃のパワートレーニング、フォーム上の課題など、かなりの情報量を伝えましたので、ひとまずはそれを消化すべく取り組んでみてください。そして疑問点等があれば、掲示板で質問してください。また時間が取れるようでしたらラボにも来て下さい。
目標はNPBですが、目指すのはあくまでも黒人、ラテン系のレベルです。
以上です。