この記事はチワワさんの個別分析記事ですが、JHETTさんのフォームも引き合いに出しますのでJHETTさんも参考にしてください。
まずチワワさんに関しては、センスは有ると思います。西武の西口とか、イム•チャンヨン、ジェイク•ピービーみたいな感じのセンスを感じますね。球速の数字と言うよりも打ちにくい球を投げられそうな気がします。躍動感の有るフォームが自分の真骨頂だと思うと良いでしょう。それを犠牲にして(一般的な野球指導の観点から)フォームを綺麗にまとめようとすると持ち味が無くなるタイプですね。
フォーム的には、JHETTさんに比べると、骨で立つとかハムストリングスで立つとか言ったあたりの事が出来ていません。ラボでも腸腰筋をストレッチした後に股関節がクッと折れる感じがつかめていないようでした。そのせいか、投げた後に後ろ脚が出て来る動作が大人しい時も有りました。
いい点は、グラブとボールの割り方が非常に上手いです。テークバックで投球腕が内旋しつつ肘から挙る所までの動きは素晴らしいのですが、そこからの外旋が浅いのが惜しい所ですね。それからJHETTさんよりもしなやかに動けている反面、JHETTさんよりも、骨盤の前傾した状態を作れていない分、動きの中で芯が弱い感じがします。チワワさんのしなやかさにJHETTさんの芯の強い安定感が加わると素晴らしいのですが。
詳細分析
チワワさんの大きな長所は、体重移動を利用した見事なグラブとボールの割り方です。そして、ヒップファーストの角度も素晴らしく、下の写真でも3コマ目までの形は(後ろ脚股関節の割れがやや甘い点を除き)パーフェクトです。
ただ、残念なのは後ろ脚股関節の伸展が弱く、重心移動の過程で沈み込んでしまい、そこから先はJHETTさんと同じ問題を有していると言う点です。そしてチワワさんの場合、フィニッシュでのターン&倒れ込みが弱いケースが多い事が目立ちます。ただ、事前に頂いた動画ではそうでも無い事を思うと、チワワさんの身長に対してラボがやや狭い事も影響していたのかもしれません。ただ、いずれにせよ、股関節伸展が弱く、重心が沈み込むのは確かです。
そして、テークバックでの投球腕の内旋は見事なのですが、その後の外旋が小さいと言う事はラボでお話した通りです。
この動画後半の動き(或は下の写真)を見ても解りますように、股関節の絞りと投球腕の外旋は連動しています。股関節の絞り=伸展ですが、股関節伸展の結果、胸を張る動きが肩関節の外旋を誘発するのだと考えられます。
つまり、肩関節の外旋が浅いのは関節可動域も有ると思いますが、動作によっても改善しうると言う事です。
下の写真のシーンで、もっと股関節伸展による体の反りを作らないと、肩関節が外旋しないということです。
この点についてはアロルディス•チャップマンが素晴らしいので、下の動画の冒頭の投球練習のシーンを見てください。
http://www.youtube.com/watch?v=cAlnLfkppm0&feature=plcp
チワワさんの場合、技術論と言うよりも、股関節の機能性を高める事が重要になります。特に「黒人的な」と言う観点から見るとまだ手つかずの状態に見えます。技術論的な事に関しては、現状でかなり良い線行っています。まず、以下の感覚を掴めるようになってください。
★腸腰筋をストレッチした後に骨盤が前傾してクッと股関節が折れる感覚。また、その際、骨で立つ感覚が得られ、大腿四頭筋が緩み、ハムストリングスの腿裏内側、膝のやや上あたりが締まっている感覚。また、骨盤が前傾した時、股関節が緩む感覚。
★ワインドアップの際、後ろ脚の踵でトントンと足踏みをして、骨で立つ感覚が確認出来る。
★ワインドアップで最初に前脚を後方に引く時、カクッと後ろ脚の膝が緩む感覚。
★後ろ脚の踵でトンッと踏むと前脚が挙りやすい感覚。
などです。腸腰筋その場ステップや腰を反るストレッチ等をかなり繰り返す事で、こういった感覚を磨き上げ、強化していってください。
下図のように腸腰筋をストレッチした後、股関節が屈曲する感覚。これが非常に重要です。この感覚を掴めるか否かが分かれ道になります。
そして、股関節周辺の靱帯の方向性を見ても解りますように、骨盤を前傾させると靱帯が緩みます。
これは骨盤が前傾する事で、股関節のハマりが深くなるから、靱帯のテンションで股関節を安定させる必要が無くなるため、そうした身体の作りになっているのでしょう。
この状態になると、股関節のボールが転がりやすくなるので、股関節の回旋能力を引き出す上で有利になるのです。
そして、骨盤が前傾すると、大腿四頭筋が緩み、ハムストリングスが引き伸ばされるので、ハムストリングスの力が使いやすくなります。
ハムストリングスによる股関節伸展の力は脛骨を通り、地面に伝わり、地面を押します。ですから、踵寄りに加重する事が重要なのです。
まずは、こうした基礎的な事項を徹底したストレッチの継続によって身体にしみ込ませる必要が有ります。それはもう肉体改造するくらいの意識が必要で、黒人の身体に肉体改造するくらいの意識が無いと貫徹出来ない事です。ただ、チワワさんにもしそれが出来ると、凄い事になるでしょう。(もちろん、肩関節の柔軟性も重要ですが)
下の写真を見る限り、骨格のアラインメントには恵まれたものがあるからです。これは先天的要素に加え、成長期が終わるまでの骨格の育ち方も重要な要素になります。もちろん、成長期を終えてからの鍛え方も重要で、それが欠けていると、せっかくの恵まれた骨格を運動に活かせないのです。
つまり「遺伝子に関わる先天的要素」「成長期が完了するまでの要素」「成長期が終わってからのトレーニングによって改善される要素」の3つの要素のうち、チワワさんの場合、最初の2つには恵まれているものの、3つ目の要素が欠けているのです。つまり、腸腰筋が効いて、骨盤が前傾し、ハムストリングスが力を発揮しやすい状態で動作すると言う、黒人的な身体の使い方を身につけるための取り組みが無いのです。(もちろん、それには単純にダッシュする事なども含まれます。)
観察経験上、チワワさんのようなケースは良く有りますが、そうしたケースの場合「成長期が終わってから努力した人」に比べて、実際の動作の中で、黒人的な身体の使い方が出来ない事が多いのです。それだけ、後天的な努力が重要になると言う事です。
まず、取り組みの第一段階として、チワワさんの場合、ヒマが有れば腰を反って腸腰筋をストレッチし、その後に股関節がクッと折れて、骨で立つ感覚になると言う事の確認を行うようにしてください。
これは、もちろん、大きく反ってしっかりやるべきなのですが、日常の色んな場所でも、10センチ程度の反りで充分出来るので、例えばポケットに手を突っ込んで普通に立っている感じのままでも出来る事です。(股関節を屈曲させる時、胸椎の後湾を意識すると、骨盤が前傾し、骨で立つ感覚が掴みやすくなります。)もちろん、小さな反りで感覚が掴めるためには、ある程度、習熟する必要が有るでしょう。
そして、まずは、練習の仕方として、シャドウでも実際にボールを投げる場合でも、まず腸腰筋をストレッチしてから、ワインドアップモーションで前脚を引きつつ、後ろ脚の膝をカクッと緩め、後ろ脚の踵でトントンと足踏み(後ろ脚の踵で地面を踏むと、前脚が挙りやすい。)してから、骨で立っている感覚を確認したうえで投げると言う事を繰り返してください。
要するに、チワワさんの場合、手塚理論風に言うと骨盤が滑っている状態なのです。JHETTさんのように、クッと地面を捉える感じが無く、ヌル〜ッと出て行ってしまい、重心が沈んでしまうと言うパターンです。
ですので、下の写真のシーンでは非常に良い形で投球腕が外旋していても、
下の写真の動作で、
後ろ脚股関節の伸展が使えず、胸が張らないので、充分な外旋角度が作れないのです。もちろん、
股関節伸展で身体を持ち上げる力が弱いので、直ぐに着地してしまうため、肩関節が外旋する時間的余裕が無いと言うというのも原因の一つです。
上の写真のシーンで、それ以前の良い形が台無しになってしまっています。そのため、着地後に前脚股関節の伸展が上手く使えません。また、投球腕の外旋角度が浅いので、下敷きのしなりも不十分です。このあたりに球速が向上する余地があります。
ただ、センスが有るなと感じるのは、下の写真です。投球腕の外旋が浅く、肘が伸びたままアウトサイドインに腕が振られて、回転半径が大きくなりスイングが鈍くなる所を、脊柱を1塁側に無意識に傾けて、回転軸から脊柱を外し、スイングの回転半径を小さくしています。
このあたりに、しなやかに身体が使えるチワワさんのセンスを感じます。センスが無い人だと、ここで脊柱が動かずに、回転半径が大きく鈍い腕の振りになってしまいます。もちろん、このシーンでここまで顔がそれるのは良く無いのですが、この腕の振りと言う条件の中では適切な対応であり、敢えて修正していくべきポイントでは無いと言う事です。腕の振りが修正される事で、自然に修正されるのが理想です。
また、フォロースルーに関して言うと、JHETTさんに比べ、前脚の膝が外に緩み、前脚股関節伸展の力が上手く使えていません。膝が緩むから股関節伸展が上手く使えないとも言えますが。
そのため、下の動画の最初の実速の映像で比較しても、JHETTさんに比べてチワワさんの方が過剰にターンしてしまっています。JHETTさんの場合は、前脚股関節伸展、つまり絞りに伴う内旋が生じ、それによって瞬間的に前脚に壁が出来ているからです。その壁によって一度、力が打者の方に向かった後でターンしているので適切なターンになるのですが、チワワさんの場合、前脚の膝が着地後に外に緩む上に、股関節伸展に伴う内旋が弱いので、勢いに負けてターンしてしまっているのです。
フォロースルーの問題は文章と写真では表現しにくいので、動画で説明します。
念のために、股関節伸展によって身体を前に運ぶ動きとは下図のように、一歩前に出した脚の股関節を伸展すると、地面を後ろに押す反作用で身体が前に運ぶと言う理屈によるものですね。ラボでお話しした事を思い出してください。膝伸展だと反対に後ろに下がるわけです。
前脚の角度にはJHETTさんもチワワさんもあまり差が無いので、基本的に股関節が使えているか否かと言う技術論以前の問題が大きいと思います。(もちろん、技術論以前とは言いながら、技術論以上に重要であり、あるいは技術論そのものとも言える問題でもあるのですが。)
前脚股関節伸展(絞り)に伴う内旋で一度前脚に壁を形成しつつ、そこから股関節伸展で身体を豪快に運ぶ。コレが理想的なターン&
タンブルをもたらします。股関節の運動性を向上させる事で、なんとか理想的なターン&タンブルを身につけてください。
以下に、いくつか turn and tumble finish (ターン&タンブル フィニッシュ)の良い例を挙げておきます。
ジョナサン•パペルボン
ジョニー•クエト
ジェレッド•ウィーバー
レオ•ニュネス
http://www.youtube.com/watch?v=WFuUayMx9MI&feature=fvst
上記の投手ぐらい豪快なターン&タンブル フィニッシュになるのが理想的です。日本人の場合、最近の高校生などで、ターンが出来る投手は増えてきましたが、タンブル(倒れる)の力強さがまだまだ全然メジャーにかないません。それは股関節伸展で身体を前に運ぶ力が弱いからです。倒れ込みで着地した後ろ脚に体重が乗るタンブルが最高のフィニッシュです。これをアスファルトの上でやると膝が心配な事だけが気になる点ですね。
そしてまた、ターン&タンブルフィニッシュの成否は良い動作であったかどうかのバロメーターになります。これは誰にでも当てはまる事ですが、特にチワワさんの場合、ワインドアップモーションからの投球で、
腸腰筋ストレッチ〜後ろ脚の膝カックン〜後ろ脚踵トントンで骨立ち〜後ろ脚踵で地面を踏みながら前脚を挙げる〜ターン&タンブルフィニッシュと言う流れを一球一球、身体にしみ込ませていってください。
続きます。
チワワさんの場合、とにかく黒人化と言う観点からのトレーニングの徹底が急務です。もちろん、これは全ての人に言える事なのですが、チワワさんの場合、特にです。そして、もう一つは肩関節の柔軟性を向上させる事ですね。この二つが出来れば、現状の感じで投げ続けるだけでかなりのレベルに到達出来ると思います。
また、上半身の筋力トレーニングとして、素振りも出来るだけ行ってください。素振りとシャドーの組み合わせは効果的な練習で、硬式用など、ある程度の重さのバットで素振りを5回くらいした後、シャドーをすると最初は腕の振りが硬くなっていますが、5球も投げるとしなやかさが戻ってきます。そして腕の振りも力強くなっている事がわかります。この繰り返しの練習は効果的です。
また、とにかく腕を多く振る事で投球腕の回旋能力を向上させる観点から考えると、オートマチックステップドリルは効果的ですね。腕を振ると、加速時に生じる慣性力等で外旋がかかりますが、その繰り返しで外旋可動域が広くなっていきます。無理の無い範囲(ボールと同じ重さまで)でシャドーボールに重りを入れて行くのも良い方法です。外旋させる負荷が強くなるためです。
なお、オートマチックステップは始動時の下半身の力が弱いと投球腕に負担がかかる事が予想されますから、何球かに一回、腰を反って腸腰筋をストレッチし、骨盤の前傾した構えから投げる事に注意してください。
以上です。ではがんばってください。