2012年11月11日日曜日

Who's Who(5)ホセ•バティスタ(Jose Bautista)

Long Haul Bombers in MLB



今期はケガで92試合しか出場出来ませんでしたが、2010年に54本塁打、2011年に43本塁打を記録しています。ブレイク前には阪神タイガースが獲得を検討していた事が有ると言うトリビアを持っています。

まずは、このド迫力のスイングを見てください。
http://www.youtube.com/watch?v=Uo6AEXkfZ0Y&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=T9ASvCc82Gs&feature=relmfu
http://www.youtube.com/watch?v=dWpaR4p7QYU&feature=plcp

今のメジャーリーグで、これだけゆったりとタイミングを取って、大きく重心移動を使い、飛ばしにかかっている打者は珍しく、右ではホセ•バティスタ、左ではジョシュ•ハミルトンと言ったところでしょうか。ブライス•ハーパーもその範疇だと思います。ただ、バティスタとハーパーはパンチャータイプ(puncher-type)でハミルトンはスインガータイプ(swinger-type)です。

ジョシュ•ハミルトン(スインガータイプ)
http://www.youtube.com/watch?v=DOq_cE1Tjo4&feature=plcp
ブライス•ハーパー(パンチャータイプ)
http://www.youtube.com/watch?v=VDO90w_kHU0&feature=plcp
ホセ•バティスタ(パンチャータイプ)
http://www.youtube.com/watch?v=0f3BhO42wP0&feature=plcp

ホセ•バティスタの脚の挙げ方はメジャーの脚上げ型に多く見られる二つのタイプのうち一つです。Aロッド型とマニー型と名付ける事にしましょう。ホセ•バティスタはマニー型です。まずは例を挙げます。

Aロッド型 (A-Rod Type)
アレックス•ロドリゲス
http://www.youtube.com/watch?v=bLF4940T-co&feature=plcp
ライアン•ジマーマン
http://www.youtube.com/watch?v=xZWf5xI8WY0&feature=channel_video_title
マット•ホリデイ
http://www.youtube.com/watch?v=XbvGwl0IJXM&feature=plcp
バスター•ポージー
http://www.youtube.com/watch?v=LigtdOFq8MY&feature=plcp
ジョーイ•ボット

マニー型 (Manny Type)
マニー•ラミレス
http://www.youtube.com/watch?v=tiO1m8C8Y8E&feature=plcp
デビッド•オルティーズ
http://www.youtube.com/watch?v=VdtzRsTfFsg&feature=relmfu
カルロス•サンタナ
http://www.youtube.com/watch?v=HXYRAEEKPdQ&feature=plcp
ホセ•バティスタ
http://www.youtube.com/watch?v=bxKWLEjPDg4&feature=plcp

後述しますがAロッド型やマニー型の前脚の挙げ方は、日本人には馴染みの無いと言うか比較的苦手とする動きです。それに比べると、以下に挙げるタイプ。腿挙げ型は、日本人の前脚の挙げ方とほとんど変わらないと言って良いでしょう。

腿挙げ型(High Knee Type)
ミゲール•カブレラ
http://www.youtube.com/watch?v=i1ZFODuBK84&feature=plcp
アダム•ジョーンズ
http://www.youtube.com/watch?v=IPZc8ypLfIc&feature=plcp
エイドリアン•ゴンザレス
http://www.youtube.com/watch?v=R20FdJrUDrU&feature=plcp

Aロッド型では、あまり後ろ脚への体重移動を伴わず、2本の柱で支えている物体から1本の柱を抜く感覚で前脚を挙げます。つまり、すり足打法とかクイックモーションで使われるメカニズムですね。このタイプの場合、後ろ脚に体重を乗せると言うより、単にうつための準備として前脚を挙げると言う感じで、後ろに脚を引かずにその場で真っすぐ挙げるのがコツです。ステップが素早く、始動のタイミングを遅めに設定出来るのがメリットですね。また、パンチャーで避けたい始動前に重心移動も(タイミングが合えば)起こりにくいメリットも有ります。

マニー型は、前脚を挙げる時に骨盤が少し持ち上げられるのが特徴です。構えた状態から斜め上後方に体重移動をする意識で、その体重移動を使って前脚を挙げます。脚を挙げる時に、前脚の大腿四頭筋に依存しない事が長所です。また後ろ脚に関しても骨盤を持ち上げる時に、自然と股関節伸展が働くので、後ろ脚の膝が背中側に動き「膝が潰れていないハムストリングスで立てる形」を作る事が出来ます。

始動前に骨盤を持ち上げられるので、始動後はハムストリングスの出力によって骨盤が持ち上げられる動作が目立たず、その後の落下によってタスキラインを大きく引き伸ばす事が特徴的です。

この動画(http://www.youtube.com/watch?v=tiO1m8C8Y8E&feature=plcp)の後半にマニー•ラミレスのフォームを横から映したシーンが有りますので、体重移動に先導された前脚の挙上、骨盤を持ち挙げる動き、落下を利用したタスキラインの引き伸ばしに注目してください。こちらの動画(http://www.youtube.com/watch?v=rAjAxv4O5gI&feature=plcp)にはデビッド•オルティーズの横映しスローモーションが有りますので、同じ動きに注目して見てください。

また、この下の動画の後半には、ラミレスとオルティーズの投手方向からのスローが有りますので、前脚を挙げる際の後ろ脚の膝の角度変化に注目してください。

マニー•ラミレス
http://www.youtube.com/watch?v=uQY2xazHHvE&feature=plcp
デビッド•オルティーズ
http://www.youtube.com/watch?v=TaJpQ0aVz9g&feature=plcp

以上のようなマニー型の特徴を踏まえて、再びバティスタのフォームを見てみましょう。投手方向からのアップと横映しのアップが後半に有る動画を見つけました。

横映し(http://www.youtube.com/watch?v=FWs9pPhtG3E&feature=plcp
投手方向から(http://www.youtube.com/watch?v=C88f2pQRyzg&feature=plcp

ラミレスやオルティーズと比べて、横への体重移動がメインになっているように見えます。その分、落下でタスキラインを引き伸ばすと言う感じは薄いものの、リズムを含めて、多くの共通点が見れられます。

マニー型は、タイミングの取り方的にゆったりした動きになりやすい傾向が有り、また後ろへの体重移動も含めて、始動前の体重移動が起こりやすいので、そのあたりがパンチャーのメカニズムとしてどうなのだろうかと言うのが気がかりです。ただ、ハムストリングスの力は使いやすく、ハマればパワーを発揮出来るでしょう。

腿挙げ型に関しては、特に説明が不要で、大腿四頭筋で普通に前脚を挙げて、後ろ脚に体重を乗せます。ほとんどの日本人打者はこのタイプの前脚の挙げ方をしますが、ハムストリングスの力が使いにくく、パワー発揮と言う面ではやや不利でしょう。

話をホセ•バティスタに戻します。

バティスタはテレビ等でも報道されたように、脚を挙げるタイミングを早くし、ゆったりと動き出すようにフォームを改造した事によって成功したと言われています。では、それ以前のフォームを見てみましょう。以下はバティスタが113試合に出場し、336打数で、打率0.235,13HR,40打点を記録した2009年のスイングです。

http://www.youtube.com/watch?v=msUp2-yODI0&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=d7n4ZNkuxHk&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=5OdwnOEsk6A&feature=plcp

確かに窮屈な感じがしますね。しかし、それはタイミングだけの問題では無く、このバットの構えかた(寝かせてヘッドを投手方向に入れない)は最も腕の筋肉が緊張する構えで、そうした事も窮屈な印象を生み出している一因です。ただ、スイングそのものはナチュラル&ストロングで、大器の片鱗を感じさせるものです。

問題は、こうした重心移動が小さく、両手で振り抜くタイプの選手が、大きく脚を挙げて、片手で振り抜くと言うモデルチェンジをした場合、最初は上手く行く事が多いのです。しかし、それを続けていく内に、そのデメリットがマッスルメモリーを書き換えてしまい、調子を落として行く可能性が有ります。バティスタも、そういう可能性が危惧されますね。果たして、このままの調子で打ち続けられるのかどうか、少し不安が残ると言う事です。

ただ、バティスタの場合、ホームランダービーの後半(http://www.youtube.com/watch?v=mBS99rcouYQ&feature=plcpでは両手で振り抜いていましたし、試合でも時折、両手で振り抜く事が有ります。(http://www.youtube.com/watch?v=XHG7xTjeoCA&feature=plcp)(http://www.youtube.com/watch?v=dWpaR4p7QYU&feature=plcpさらにマット•ケンプ(http://www.youtube.com/watch?v=AkZuZ3J-sqQ&feature=plcp)やアルバート•プホルズ(http://www.youtube.com/watch?v=jth6epn0Bpg&feature=plcp)のようにボトムハンドを伸ばして大きなフォローを取りたがるタイプでは無く、単に打ち終わった後に離しているだけなので、片手フォローの悪影響もまだ小さいでしょう。

このようなケースの場合、不振になった時には後ろ脚に体重を乗せた始動ポジション(重心が移動する前)の把握と、そこから強く打つ事に集中し、両手で振り抜く練習を重ねれば、修正出来るでしょう。それは「軸」を確認しうる作業になると思います。バラけてルーズになったスイングをタイトに引き締める作業ですね。そういう種類の調整法をバティスタが取っているとすれば、比較的長く調子を保てると思います。