2013年8月18日日曜日

ポール・ゴールドシュミット 後ろパワー

ポール・ゴールドシュミットは、去年、打率0.286の本塁打20本の数字を残して頭角を表した打者だが、今年も派手な活躍が多く、注目を浴びている。今期は既にホームラン30本を打ち、打率0.296を記録している。(8月18日現在)

ただ、その打ち方は、典型的なオートマチックステップもどきだ。


ここで注目してほしいのは、顔の向き。インパクトの前後で、ほとんど置きティーのような顔の向きになるのがゴールド・シュミットの特徴である。おそらく置きティーで固めたフォームなのだろう。アメリカでは置きティーが日本の素振りみたいな感じで行なわれているようなので。

こういう顔の向きは良く無いと言って来たが。。

確かに、良く無いのは良く無い。

しかし、同時に実戦での顔の向きは必ずしも理想的かと言われれば、そんな事も無い。マウンドの上から投げるピッチャーのリリースポイントを見ようとすれば必然的にアゴがあがりやすい。そんな理由もあって、大多数の打者はフリー打撃より、実戦で身体が開く。

アゴが挙るのを避けようとして、目だけ見ようとすると、今度は首周りが緊張しやすい。おそらく、眼球を動かす筋肉との関係で解剖学的に説明される何かが有るのだろう。

そんなわけで、実は、実戦では理想的な形で打つ事は難しい。

じゃあ、練習でも、実戦同様の条件でバットを振るべきかと言えば、そんな事は無い。なぜなら、打撃と言うのは、まず身体の動きありきであって、野球と言うゲームありきで成り立つものでは無いからだ。つまり、実戦同様に投手のリリースポイントを意識して振り込んだ結果として、フォームを崩したのでは元も子も無い。あくまでも、実戦は練習の応用だと考えた方が良い。もちろん、実戦に適応させるための練習も必要だが、それは、いわゆる「調整」であって、日常的な「練習」では無い。

じゃあ、どの辺を見て振るのが一番良いのかと言うと、恐らく、方向は投手方向で、アゴが挙らないように、自分に数m先の地面を見たら良いだろう。あくまでも数mと言うのが重要で、あんまり近いと、これまた置きティーになってしまう。

そして、それよりも、外角寄りを見ると腰が回りにくいので手打ちになりやすく、内角寄りも見ると、腰が開きやすい。

ただ、常に真ん中を見て振れば良いのかと言うと、そんな事も無い。外角寄りを見て振ると、身体の後ろサイドの力(後ろパワー)が使いやすいし、内角寄りを見て振ると、身体の前サイドの力(前パワー)が使いやすい。そして、真ん中を見て振ると、全体のバランスが取れる。(真ん中パワー)

このように考えると、コース毎にスイングする練習は、身体の色々な部分の力を使って振る練習になる。だから素振りをするときは、少しで良いので、真ん中だけでは無く、内角寄りや外角寄りを振る練習もした方が良い。その意味は決して内角打ちの練習、外角打ちの練習と言うことだけでは無い。なお、前パワーはインコース高めで、後ろパワーはアウトコース低めで練習すると良い。前パワーの練習には素振りが適しているが、後ろパワーの練習には置きティーが適している。置きティーを使って、前パワーと後ろパワーを交互に練習するのも良いだろう。

なお、置きティーで後ろパワーの練習をするときは、身体の捻りを強調し、(投手方向を見る事を度外視する。)後ろ脚股関節の割りを強調した構えから打つと良い。

ゴールド・シュミットは典型的な後ろパワー優先の打者だが、真ん中パワーの打者、前パワーの打者の例も挙げておく。

エイドリアン・ベルトレイ(真ん中パワー的な打者)


ホセ・バティスタ(前パワー的な打者)


ポール・ゴールドシュミット(後ろパワー的な打者)


ハマった時のスイングを見ると、前パワー最強のように思いがちだが、崩されて打つ事が多いのがこのタイプの特徴なので、常にそういうスイングが出来る訳ではない。崩されたときの柔軟性があれば、打率は稼げるだろう。一方、後ろパワーの打者はバットの出方がコンパクトで鋭いのだが、腕力に頼りがちで意外と不振が長引く事もあり、必ずしも確実性は高く無い。やはり真ん中パワーが一番強い。しかし、後ろパワー、前パワーの練習もやっておいた方が良い。