2013年4月20日土曜日

アンドリュー・ジョーンズのここに注目



NPB史上、最高レベルの助っ人外国人であるアンドリュー・ジョーンズだが、そもそもどんな選手なのかということを、まずは私見ながら紹介しておきたい。

アンドリュー・ジョーンズ wiki

まず、鮮烈なデビューと早熟な才能。1996年に19歳でワールドシリーズに出場し、第一打席と第二打席で二打席連続ホームランを打っている。そして、メジャーでも最高レベルの外野守備。肩については他にもっと強い選手がいるが、俊足と運動神経の良さを活かした守備範囲が売りで、トカゲのように外野フェンスをよじ上ったファインプレーが印象に残っている。(10年連続ゴールドグラブ)

ワールドシリーズでの二打席連続ホームラン(見られない場合は文字部分をクリック)


2001年頃からこの打者に注目して来たが、その頃の印象ではバリー・ボンズやケン・グリフィーJrレベルの選手になると思っていた。時代を代表する外野手として、ボンズ、グリフィー、ジョーンズになるだろうと思っていたのだが、その後の成績に爆発力を欠く。2005年に51本塁打を打ち、タイトルを手にするが、打率も伸びず、ボンズやグリフィーの域には達していない。ボンズ、グリフィーに比べると守備がうますぎたのが裏目に出たのかもしれない。(グリフィーも、度重なるダイビングキャッチによる手首の怪我が、打撃成績に影を落とした事を考えると、守備の上手さが裏目に出た一人だろうが。)

打撃に関しては、デビュー当時はオートマチックステップだった。当時のスイングは右打者のスイングとしては最も好きな部類のスイングであり、一目見てファンになった事を憶えている。その後、ノーステップやオートマチックステップもどきに流れたりと、フォームも安定しなかった。スイングもデビュー当時は両手で振り抜いていたが、キャリア中盤では主に片手でフォローを取っていた。フォーム的には、オートマチックステップもどきやノーステップで片手フォローを取っていた時期が最悪だったが、現在では(オープンスタンスからではあるものの)オートマチックステップで、スイングも両手で振る機会が増えているので、今現在のフォームはアンドリュー・ジョーンズのキャリアの中でも、かなり良い部類に入る。

日本での見所

さて、本題だが、日本での印象を見ると、意外なまでに打席で落ち着きが有る。そして大事に行こうと言う意識が非常に強く、実際ボールを良く見ている。打席内で非常に高い集中力を発揮しているので、充実した状態で打席に臨めているのだろう。

見所としては(無駄の無い)オートマチックステップの打者が、打席内でこれだけの集中力を発揮してきた時の「雰囲気」。これは見物だろう。今のNPBの中で、最も雰囲気の有る打席を作る打者の一人だと思う。

個人的な印象では、アンドリュー・ジョーンズと言う選手は、早熟な選手の晩年にありがちな状態だが「燃え尽きた天才」であり、キャリア中盤以降に、ボンズやマグワイアが見せたようなガツガツしたものを感じなかった。実際に燃え尽きていたか否かは別だが、今の打席での姿を見ると、逆にその事がプラスに作用しているかのような印象さえ有る落ち着きようだ。

wikiを見て知ったのだが、スロースターターらしい。また35歳と年齢も決して若く無い。特にジョーンズのように10代からプロで活躍した選手であれば、なおさら、この年齢は若いと言えるものでは無い。こうした選手の場合、夏場にむけて、どれだけ体がキレてくるかがポイントになるだろう。それによって成績も決まって来る。

ただ、一つ注文と言うか疑問に思うのは、日本に来てからのジョーンズのコメントで「出塁する事を大事に考えてボールを良く選んでいる」と言うのが有った。しかし、ジョーンズの役割は明らかにポイントゲッターなので、それはどうか。また、選球眼を発揮するのが良いが、それが「四球を選ぶための選球眼」では無く「打つための選球眼」であってほしいと思う。特にプロレベルの野球になると、多少ボールくさいからと言って、打てる球を見逃していたのでは、打てる球が無くなってしまう。それに、打席内ではある程度バットを振って行かないと、筋肉が硬直してしまい、打ちに行った時にミスショットしてしまう可能性も強い。ジョーンズのようにバットを寝かせて構える打者にとっては特に重要な事だ。落合のような神主打法の打者だとまた少し事情も違って来るが。実際、落合には四球選びを目的とした選球眼で投手を苦しめる感じが似合うような気もする。だが、トップ型(トップの角度にバットを置く構え)で構える打者には、そのスタイルは似合わない。

ジョーンズの選球眼やボールを見る姿勢にはメジャーを感じるのだが、ジョーンズのようなタイプであれば、四球を選ぼうとするのでは無く、打てる球は打って言って、芯を外しても良いからヒットにするくらいの気持ちで行った方が、結果的にホームランも増えるだろう。集中力を発揮しているのは良いのだが、それが裏目に出ている面が有るのが、残念な部分だ。また、これも大事に行きたい意識が裏目に出ているのか、構えを作るのが若干早く、ややバットの重さで腕が緊張した状態でスイングする機会が多いのも気になる。

ただ、下の動画を見ると、構えるタイミングに対する戦略とか上手さ(どのタイミングで、どの姿勢を作り、どのタイミングで構えるか)がある事を感じる。もしかしたら、日本の投手の方がメジャーの投手よりも間が長いのかもしれない。


下の動画では、ジョーンズが構えを作ってから、ちょうどいい間で投手が投げてくれている。このタイミングでスイング出来ると、打者にとって有利になる。


しかし、一つ言えるのは、スイングもさることながら、ジョーンズの打席での雰囲気。ボールの見方やボールに対する反応。これこそメジャー級だ。オートマチックステップの打者が高い集中力を発揮した時に見せる打席での雰囲気に注目してほしい。

さて、折角なのでアンドリュー・ジョーンズの一年目の成績を予想しておきたい。打点は他の打者による影響が特に強いので打率と本塁打数だけで良いだろう。

予想 本塁打32本 打率2割8分5厘

根拠は、ここ数年のジョーンズとしては、かなり良いフォームで打てている事。この頃(2009年)のスイング(オートマチックステップもどき)に比べると、今(オートマチックステップ)の方が明らかに躍動感が有る。そして打席での集中力の高さ(つまり本気度の高さ)にある。そこから数々の不安要素から来るマイナス分を差し引き、さらに夏場に調子を挙げて来るのではないかと言う読み。体がキレて来る事に加えて、シーズン半ばになると相手投手にも慣れて来るだろう。投手もジョーンズに慣れて来るが、双方が慣れて来た状態は、特に目立つ穴の無く、打者の方が実力が有るケースだと、打者の方に有利に働くと考える。こうした計算から上記の数字を挙げた。