2013年5月16日木曜日

よくあるフライングエルボーの誤解例

パンチャータイプのオートマチックステップは基本的に肘を張った構えになる(必ずしも必須と言うわけでは無い)が、肘を張った構えの事を「フライングエルボーの構え」と言う。ただ、このフライングエルボーの構えで誤解している例が非常に多いので、今回はその事について書いておきたい。

写真1) 間違ったフライングエルボーの構え(のイメージ)

このようなイメージ、腕使いで構える人が多い。ただこれだと体幹部操作も効いていないし、構造的にかなり筋肉の力に頼って構える事になる。また、バットもインサイドアウトに振りにくい。

写真2) 正しいフライングエルボーの構え(のイメージ)

これが正しいフライングエルボーの構え。こういうイメージで構えている人は非常に少ないと思う。(写真1のイメージでも写真2のイメージでも最終的に出来あがった構えの形はあまり変わらない。)

写真3)解りやすく言うと、写真2の構えは下の写真のような極めて「普通」な構えの延長線上に有る。この構えだと日本人選手にも結構いるだろう。そして、この構えから体幹部操作が効いて捻りが入り、さらに肘が挙った状態が、構えの完成した形にある。その完成した形は写真1の形とも似て来るが、根本的に体の使い方が違う。

そして、この構えからだとバットがインサイドアウトに最短距離を通って出て来る振り出しがイメージしやすいだろう。

今までの中で最もこの点がよく出来ていたのがきたろうさん。(下の写真)これが正しいフライングエルボーの構えの形である。

こうした構えを頭上から見ると、写真のように胸の前に空間が開くのが解ると思う。丁度、左右の肘とグリップを結ぶ二等辺三角形が出来る事になる。(前腕の長さが左右で等しいので二等辺三角形)

この腕の形からの振り出し(始動)だと、スイングまでの腕の動きも必然的に理想的な形になりやすい。動画で確認してほしい。(特に横から映したハイスピード動画に注目してほしい。)

そして、プリンス・フィルダーの構えにも、この感覚が有る事がわかる。フィルダーは重心が高く、構えではあまり捻っていない。そうした意味でもきたろうさんの構えに似ている。ただ、ここから捻りが入り、スタンスが広くなると、もう少し腕の形は変わって来る。

プリンス・フィルダー 動画1(後半横映しに注目)
プリンス・フィルダー 動画2(冒頭と後半横映しに注目)

なお、この構え方では前腕部の骨を利用してバットを支える事になる。支えると言うより、圧力を加えると言った方が良いかもしれない。

バットを支えると言うのは力学的には図のように倒れそうな柱を支えるのに等しいのだが。。

それを写真のような体勢で受け止める事になる。ただ「支える」感覚だと少しバットが寝過ぎる。なので、正確には斜め横から圧力を加える事によって支える感じになる。が、その圧力はもちろん手に力を入れて作るわけでは無い。

丁度、ドラゴンボール(マンガ)のカメハメハのような手の形になるが、その形は体幹部操作1のストレッチの中で作る事が出来る。スタートの状態ではグリップを絞っておく事がコツになる。(写真はだいぶ前に撮ったものなので、爪先を開き過ぎ等、細部に問題が有るが。)

体幹部操作で下の写真のように手の平を(相撲の鉄砲のようなイメージで)絞り出すような感覚が掴めると、前腕の骨格で支える(圧力を加える)グリップの感覚が解るだろう。もちろん、胸椎の後彎によって肩甲骨を外転させる必要がある。(それによって肘が前に押し出される肩甲骨の角度になる。)

前腕の骨格でバットを支える構造は下図の構造に似ている。バットが前腕の骨を意味し、ボールがバットの断面図に相当する。

ただ、捻りが入った構えができると、トップハンドに関してはむしろ上から掴む感覚になる。この辺の感覚が理解出来れば、かなり感覚が良い方だと思う。実際、自分で試しても左ではここに書いたような感覚が掴めない。

写真のように、トップハンドを上から掴む感覚が生まれる。(捻りを入れてヘッドが投手方向に入った構えでは。)トップハンドで上から掴む感覚が生まれて来ると、前腕部の骨で支える感覚は消えて来る。

ただ、捻りが入って来ると、最終的に腕の形は図のようになる。(きたろうさんの場合は捻りが浅いケース)この形は写真1で挙げた悪い例に似ている。しかし、上記のような内容を理解し、体感で来た上でのこの形であれば、それが出来ていないのとは全く筋肉の働き等が変わって来るだろう。

構え一つとっても非常に奥が深い。特に腕や手の使い方に関してはかなりの記述を必要とするほど、奥の深いものが有るし、また難しい。実際、そこにクセが出てしまうからメジャーリーグでも理想的なスイングが出来る打者はそうそういないということだ。「前腕部の骨格で支える(圧力を加える)感覚」「トップハンドで上から掴む感覚」こうした感覚を体幹部操作によってつかんでほしい。

練習方法としては、まず「重心が高くスタンスも狭めの構え」つまり体幹部操作が効いていない構えで腕の形を小さくしておき、その中でこの感覚「前腕の骨で支える」「トップハンドで上から掴む」を確認しておき(確認したら振る)、そこから段々と構えを大きくしていく(本来の形にする)と良い。(体幹部操作を効かせて行く。)