プロを目指してスタートを切った山下さんの進化の記録第一弾です。
私の見立てというか、山下さんに提示したい目標は「日本版セスペデス」です。
セスペデスホームラン動画
セスペデスの強肩動画
ところで、今回動画を編集していて、面白い事に気が付きました。(今日撮影して持って返ってもらった)ほとんどの動画で最初の方のスイング(4本なら1本目や2本目)の方がパフォーマンスが良いと言う事です。ということはやはり、筋肉のコンディションと言う条件が大きく関わっていると考えて良いと思います。つまり、3本目や4本目は筋肉の緊張や疲労からスイングが乱れているのだと思います。
もちろん、ラボでは試合より早いペースで振るので、実戦的には気にする必要は有りませんが、そこはやはりこの打法の数少ない弱点の一つとも言えるわけです。そうした意味でも重いバットを使用したパワートレーニングが重要である事が解ります。
↑この動画は今日一番のスイングです。バットが軽い(少年野球用)ですが、このくらいのパフォーマンスを硬式木製試合用バットで発揮出来れば、それこそ日本版セスペデスが現実味を帯びて来ます。その意味でもまずは振る力を付ける事が重要です。このスイングでは良い意味でポイントが前になっていて、そのぶんヘッドの抜けが良いです。つまり、体の回転とバットの回転のタイムラグが上手く作れたスイングだと言う事です。そのために、ヘッドが返るポイントが前になっているわけで、そうなるとヘッドの抜けが良くなります。少年野球用バットで撮影した3本目のスイングなので、1、2本目で筋肉がほぐれた効果が出たのだと思います。
下の写真には現状のフォーム上の問題がよく出ています。(それでもだいぶ良くなったのですが。)
まず、トップハンドの外旋が浅いです。そのため、肘が体の中心に向かってえぐり込んでいかずに、早い段階で手首でヘッドを前に振り出しています。ヘッドの回転が始まると、腰の回転と体重移動にブレーキがかかるので、腰の回転も浅くなりますし、前脚も伸びにくくなります。(前脚が伸びる途中で動きが止まっていると考えられる)結果的に後ろ脚もL字型にならずに、足の内側が地面に向いた形になります。
では次にきたろうさんのスイングを見て下さい。
山下さんのフォームで問題となっているポイントがクリアされている事が解ります。前脚の伸び、後ろ脚のL字型、フォロースルーでのトップハンドの掌屈(外旋するから掌屈する)なども出来ています。また、3コマ目から4コマ目にかけて、トップハンドの肘がえぐり込まれる動きも良いです。(トップハンドの外旋が深い)このトップハンドのえぐり込みによってヘッドが下がる事で素振りでのスイングプレーンが良い意味で水平に近づきます。まさに山下さんの問題点がクリアされた形を提示しているのが、この写真です。
そして、これら一連の問題は基本的に一言で表現すると「筋肉が硬い」と言う事に行着きます。まだ腕に頼っている割合が強いということです。
つまり、体の回転に対して、腕が出るタイミングが早いので、前脚が伸びず、腰の回転が浅く、後ろ脚がL字にならないのです。トップハンドの外旋が浅い原因は「体そのものの硬さに起因する部分」と「腕でヘッドを早く出してしまうのに起因する部分」の二つが有ると思いますが、いずれにしてもこれらは「硬い」と言う一言で表現出来ます。
一方、きたろうさんのフォームではヘッドの出が遅く、そのぶんトップハンドの外旋が深く、トップハンドの肘が体に向かって深くえぐり込まれます。ヘッドを出そうとすると、トップハンドは内旋に向かおうとするので、ヘッドの出が遅い方がトップハンドの外旋が浅くなるわけです。そして、基本的に、こうした事は素振りではやりにくいのです。このきたろうさんの写真が素晴らしいのは、素振りでそれが出来ていることにあります。ですからメジャーリーガーの連続写真では無く、きたろうさんの連続写真を例に出しているわけです。
そして、こうしたフォーム上の問題を解決していくために、現段階で山下さんにしてほしいのは、右肩を中心にした肩のストレッチとシャドーピッチング(もちろん、ボール投げも含む)です。
それはもちろん、肩の柔軟性を高めると言う事もありますが、それと同時に、負荷が軽いスローイング動作では、体幹部の回転と末端部の回転にタイムラグが作りやすいので、そうした動きを筋肉に馴染ませる効果もあるためです。さらにバットスイングでは両手が繋がっていますが、スローイングは両手が繋がっていないのも大きなポイントです。両手が繋がっていないから、右手(投球腕)を後方に大きく残す事が出来て、なおさら体幹部から末端部にかけての連鎖的な筋肉の収縮を引き起こしやすくなるのです。一方、バットスイングだと、負荷が大きいので、腕の筋肉が緊張し、いきなり腕が動き出すスイングになりやすく、また、両手が繋がっている分、手が捕手側に動きにくく(残しにくく)体幹部から末端部にかけての連鎖的な筋肉の収縮が引き起こしにくいのです。
ですから、スローイングも効果的なバッティング練習になるわけです。
ではスローイングで起きる、連鎖的な筋肉の収縮について説明します。
まず1コマ目から2コマ目にかけて、骨盤が回転し、肩が残るので体幹に捻りが生じます。3コマ目では、それを戻そうとして肩が回転しますが、手が後方に残されるため、右胸に張りが出来て筋肉が引き伸されます。4コマ目では、その右胸の筋肉が伸ばされた反射で収縮し、肘を前方に押し出しますが、まだ手が後方に残されているので、肘が折り畳まれた状態に保たれ、また右胸の張りも残されています。(肘が降り畳まれているので上腕三頭筋も伸ばされているでしょう。)ここから5コマ目と6コマ目にかけて、折り畳まれた肘が伸びつつ、腕も大きく前方に振り出されます。このように、スローイング動作では、体の回転のタイムラグが大きく形成され、連鎖的に体の各部の筋肉が収縮する現象も起こりやすいのです。
ですから、今の山下さんにもっともやってほしい練習が、素振りとシャドーの組み合わせです。振る力をつけるために重いバットを振って行く必要が有るので、シャドーはなおさら重要になります。軽いバットを振る事も重要ですが、シャドーも重要です。特に、単位時間あたりに数多く腕を振る事が出来るオートマチックステップスローがおススメです。(上の連続写真もオートマチックステップスローの写真です。)
やる事は多いですが、基本はシンプルです。まず負荷をかけてスイングし、パワーをつけて、次に負荷を軽くしてスイングし、しなやかさとスピードを磨くと言う事です。これをひたすら繰り返す事です。この二面作戦が重要です。当日お話しましたが、技術は30代を越えてもまだ挙りますが、まずはプロに入る必要があります。なので、そのためには時間がそれほど有る訳ではありません。なので、まずは素材として圧倒的なものを作り上げる必要がありますが、そのためにはパワーと柔軟性が重要になるのです。
続く。
フォーム的には、山下さんの足りない所はきたろうさんのフォームが見事に表現しています。ただ、きたろうさんの足りない所も山下さんが出来ているのです。要するに、これはタイプの問題でもあるのです。極一般的な表現を使うと「前軸タイプ」と「後ろ軸タイプ」の違いです。
例えば、この写真の人。
この動画の中に出て来ます。
この人も典型的な前軸タイプです。(バッセンで投手方向から撮影されている左打者も同じ人です。)こういう人の方が一般的には打撃が柔らかく、ヘッドの抜けが良いです。そして体の回転も大きいです。タイプの違いだからで終わるのでは無く、山下さんのフォームに如何に、前軸フォームの要素を取り込んで行くかですね。そこが目指すフォームだと思います。いろんな人にこの打法に取り組んでもらった結果として、典型的な前軸タイプになる人と、典型的な後ろ軸タイプになる人がいます。そして、だいたいそういう人の傾向も解って来ました。(因に私自身は前軸タイプです。体系的にも前軸型だと思います。)特にどちらかが優れているわけでは無いと思います。実際、後ろ軸タイプの方が体そのもののパワーのようなものを感じる事が多いです。
以下は右のオートマチックステップ系で、前軸系のフォームの打者の写真です。(上段左から、エイドリアン・ベルトレイ、ジョージ・ベル、カルロス・リー、ホルヘ・カントゥ、アンドリュー・ジョーンズ)
その他、気になった点をいくつか挙げておきます。
1)両足のフィット感
写真を見ると、少し爪先が浮いている事が解ります。オートマチックステップに取り組んで、こうなる人は割といます。自分自身もそうなのですが、この場合、バットを短く持ち、両手の感覚を離して握ってみてください。5本の指が全てバットにフィットすると、足裏も地面に上手くフィットして全体が着地する感じが出ると思います。もちろん、これは一種の練習法で実際打つ時は普通のグリップが良いです。ただ短く持ち、両手の間を僅か(遠目にはくっついてるように見えるくらい)に開けるのは良いです。
2)バットが背中にぶつかる
当日、バットが背中にぶつかる事が多かったのが気になりました。これは基本的にスイングのバランスが良く無い時に起こります。これはあくまでも勘ですが、もう少しウェートの筋肉が取れて来て、シャドーピッチング等で肩が柔らかくなり、リストターンがスムーズになると、バットが背中にぶつからなくなるでしょう。今は特に気にする事も無いですが、無くしていきたい現象です。
3)巻き戻し
巻き戻しがまだまだ、体全部が戻って来る感じになっています。もう少し体の各部がほぐれて来て、分割した状態で動いてくれるようになると、もっと前軸をキープしたまま、右脚とバットが引きつけ合うような巻き戻しになるはずです。こうした所にも体の柔軟性を向上させていく必要性を感じます。
4)構えでの捻り
基本的には、これまで構えでの捻りが不足する事が多かったです。上の写真では大きく捻りが入っていますが、捻りを入れると投手方向を向きにくくなる事が多いのだと思います。この場合、構える前にトップハンド側の肩甲骨を内転(脊柱に引きつける)させるストレッチと、首を左に捻る(首は捻ると痛めやすいので気を付けて下さい。)ストレッチをしてから構えてみると、少し楽に投手方向を向く事が出来るはずです。また、上の写真の時にはやっていた事ですが、捻り方もポイントですね。
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フォーム的には以上です。次回は、こちらで考えている事としては、この半年、一年くらいの山下さんが来ていない間に溜まった練習法等も含めて「パンチャータイプのオートマチックステップ全てのポイント」を「素振りの方法」と言う形にまとめて、お伝えしたいと思います。一部復習的な内容にもなりますが、どれも重要なポイントです。
そうする事の意味は、山下さん自身がハードだとすると、そこに「動きの情報」と言うソフトウェアをインストールすると言う点にあります。そうする事で山下さんの中で、時にそれは上達のヒントになったり、修正するための引き出しになったりするでしょう。ただ、行程的には次回は「バッティング基礎」ということになります。
もちろん、山下さんの方でテーマがあれば、それは教えて下さい。
また、投球についてですが、これはピッチングフォームを作り上げると言う方向で行きたいと思います。外野手だからピッチングは関係無いと思うかもしれませんが、そうする意味は、以下のように結構色々有るのです。
1)投球フォームが出来ていなければ、20mから30mでのミドルレンジのキャッチボールで中途半端な「キャッチボール投げ」をせざるを得ない。これだとあまり良い練習にならない。一方「ピッチング投げ」が出来ると、もっとも機会の多いミドルレンジでのキャッチボールが素晴らしいスローイングの練習になる。
2)常に半身になった状態から下半身の力を使って投げる「ピッチング投げ」の方が「キャッチボール投げ」に比べて(上手く出来れば)肩肘に負担がかからない。また、肩肘に負担がかからない腕の振りを身につけることが出来る。
3)ピッチング投げが出来ると、ピッチャーのフォームにも関心が向いたりして、投げる事が楽しくなるので、積極的に投げたいと思うようになる。それは肩を強くして行く上でも重要なポイントになる。
こうした理由から、ピッチングフォームを作り上げる方向性が良いと考えます。肩を強くする事は特に重要でしょう。なぜならセンターやライトを守る事が出来ないと出場するチャンスが少なくなるからです。もちろん、その意味では走力も重要なテーマです。
3回目はスローイングにしたいと思います。スローイングについても大きな課題であるグラブ腕の使い方など、練習法を考えています。これも2回目に少しお話したいと思います。
以上です。目標は大きく、林さんと共にWBCに送り出す事です。がんばりましょう。
最後に、重いバットを振る前は「腰」「手首」「前脚の膝」の3点に特に気を付けて準備体操をしてください。