2013年4月2日火曜日

リュータ君 5回目(前編)

本日はご来場ありがとうございました。



やはりピッチングの方にセンスを感じます。私が監督の立場だとしても、やはりピッチャーにしたいと思うでしょうが、それは、その方がすぐに戦力になりそうだからです。一方、本人の立場で考えると、どうしたらプロになれるかを最優先するべきなので、バッティングもやっていった方が良いでしょう。

野手に絞るなら決断は早い方が良いと思いますが、それはやはりゴロ捕球や連係プレーなどの基本を身につけるには早い方が良いからです。ただ、薄々とでも投手に可能性を見出している場合、決断を早くしてしまうと、投手でダメだった場合に全く潰しが効かないということになりますから、決断が早い方が良いとは言えません。(圧倒的に投手としてズバ抜けた存在であるなら別ですが、現状では6:4で投手、あるいは7:3で投手の方が良いと言うくらいです。)

打撃に関しては3回目が一番良い出来でした。下の動画の最初のスイングは、この当時の時点ではラボの小学生部門では一番のスイングだったくらいです。ただ、今回は体の不調も有ったのかもしれません。なんとなく左膝をかばっているように見えなくも無いです。



ピッチングもバッティングもと言う二刀流で行く場合、ある程度時間をかけてプロを狙って行く姿勢になると言うか、そうならざるを得ないと思います。ただ、大谷や藤波のように並外れて手足が長くて体がしなるタイプでも無ければ、上半身の力もある程度重要になります。そうした事を考えると、打撃もやっていった方が体に力がつくと言うのも考え方の一つです。また、投手をやる場合、外野手もやると言う今のチームの方針はまだ幸いだと言えると思います。恐らく、そのチームの指導者の考えとして内野をやらせると投げ方が小さくなるので、大きく体全体を使って投げる外野をやらせたいのでしょう。その考えは解ります。

一つ言える事は、ピッチングについては現時点で見切りを付けて野手に専念すると言うのには、あまりに勿体ない出来だと言う事です。そうなると中学でセカンドショートに関わる事は出来ない訳で、そうした場合、やはり将来的にもセカンドショートは難しく、外野がメインになると思います。しかも外野がメインになった場合でも(中田翔のように)飛び抜けたパワーが有るタイプや、(巨人の松本のように)飛び抜けて俊足のタイプでは無いわけですから、そのチームの都合で、比較的ユーティリティー的な使われ方をしないと常時試合に出る事も難しくなります。なので、あと1ポジション、出来ればサードかファースト。その練習もしておいた方が良いでしょう。

プロを目指す場合、自分がどういうタイプの選手になるかをある程度イメージしておく必要があります。以下、私の見立てを書いてみます。

第一の目標 
投手。その場合でも、大学、長くて社会人と、ある程度時間をかけてプロ入りを目指すビジョンになります。野手を併用して練習して行く以上、投手としての完成度が高まるのに、ある程度時間がかかるからです。ただ、高校くらいで消耗してしまうよりはずっと良いと思います。

第二の目標
3割15本タイプの5番6番のポイントゲッターで、外野3ポジションとサード・ファーストをこなせるユーティリティープレーヤー。確実に3割前後の打率で15本が打てれば、絶対にどのチームでも必要とされます。ただ、ポジションが一つしか守れなかったりすると、助っ人外国人や、糸井やイチローのような選手がいるチームだとその影で控えに回される事になるので、このタイプの選手は複数ポジションを守れる必要があります。(レフトに30本打つ助っ人外国人、センターに守備の要、ライトに若手有望株の俊足巧打タイプとかの配置になると、多少打撃が良くても試合に出られなくなります。)

なので、内野外野両方守れるユーティリティーになる必要が有りますが、このタイプの選手の場合、重要になる事は一つのポジションが上手いということではなく、複数のポジションが守れると言う事です。なぜなら、攻撃面で安定した数字の見込める選手だと、チームとしては守備に多少目をつむっても、どこかで使いたい選手であるからです。ですので、何らかの形でゴロを捕球する練習は絶対にしておいた方が良いです。

また、打撃に関してはパワーももちろん重要ですが、では2割3分でも30本狙うか、逆に10本でも3割を狙うかと考えると、これは体格の事を考えると後者の方が良いです。例えばNPBの、とある球団に入ったとして、まず身長1m90センチ台の外国人が一人いて、そこに日本人のホームラン打者が一人いたとします。そうした場合、そこにもう一人「一発狙いの荒っぽい打者」を加えようと言う気にはなりにくいのです。また、もし一人加えようとする場合でも、そこには「荒削りの未完の大器的な若手」を入れたいと考えるのが常道です。こうなると多少パワーが有るくらいでは試合に出られません。

こうした場合、求められるのが「ポイントゲッター」と言う役割の選手です。つまりホームランで無くて良いので、2塁にいるランナーをホームに返せる打者です。実は、この役割はメジャーでは4番打者に求められています。バリー・ボンズが70本打った当時の四番であってジェフ・ケントや、ヤンキースの少し前の4番打者のバーニー・ウィリアムスも完全にポイントゲッタータイプの4番です。助っ人外国人では、パチョレック(大洋〜阪神)や、ローズ(横浜〜ロッテ)、シーツ(広島〜阪神)のようなタイプですね。

そして、ユーティリティーと言う時点で、特定のポジションの名手では無いわけですから、やはり打撃は重視されます。単に複数守れると言うだけだと、故障者が出た時の補充要因にしかなりません。そこで、打撃でも特徴のあるカラーを出して行く必要が有ります。(飛び抜けたパワーは無いが非力でもなく、脚力は並の)こうしたタイプのプレイヤーは比較的確実性が有り、勝負強く、頭脳を使った打撃が出来るタイプが求められます。要するに荒っぽい一発屋と俊足巧打タイプには無い特徴が求められるわけです。

頭脳を使うと言う点についてはハッタリでも良いので、打席で考えているような顔をしたり、投手の配球をベンチでメモする等の行為だけで充分効果が有ります。ベンチで他の選手と配球についての話をするだけでも(そこでフォームの確認をするようなタイプの選手とは)印象が違います。勝負強と言う点については、勝負所ではとにかくヒット狙いに徹する事です。そうすると、勝負所で振り回すよりも打率は出しやすいですし、そうした姿勢はベンチに「勝負強い」或は「勝負強そうだ」と言うイメージを与えます。まずはそれが第一歩です。究極的な所で勝負強いか、そうでないか。これには多少人間性みたいな物も絡んで来ますが、そんな高い次元での勝負強さはひとまず必要では無いのです。ここでのポイントは(プロで140試合)試合に出られるか否かですから、要はベンチの印象と言う話なのです。つまり必ずしも実質を伴っている必要は無いのです。

勝負強いと言うのはどういう事かということです。9回裏の3点差の満塁で、ホームランが打てれば確かにベストです。ただ、そこでヒットで2点返す事が出来る打者も、充分勝負強いと見なされます。例えその試合で、その後点が入らずに1点差で負けようとも、満塁でヒットが打てる打者は充分勝負強いと見なされます。

つまり、大事な所でヒットが一本打てる打者と「みなされる」必要が有る訳です。それにはまずはフォームです。無駄の多い派手なスイングで易しい球を飛ばして喜んでいるようなフォームだと、勝負強そうだとは見なされません。(例え実際には勝負強くても、「意外性」で片付けられるパターンがほとんどです。)ですから、無駄の無いフォームで、どんな難しい球にでもくらいついて行って、とにかく打ち取られないようにしようと言う姿勢。そういう姿勢の感じられるフォームがまず重要です。そして、そのためには挙動の小さいオートマチックステップが適しているのです。下の動画を見て下さい。



もちろん、現段階では下地として、豪快で大きなスイングを作って行かなければなりません。ただ、最終的にプロを視野に入れるとなると、前述のような考えが重要になって来ると言う事です。そして、野手として見た場合、リュータ君については、私の見立ては以下の通りです。

2割8分から3割1分で12本から22本。(3割20本タイプ)ポイントゲッタータイプなので脚は特別速い必要は無いが、頭脳を使った打撃、簡単には打ち取られない粘り強さや、勝負強さが必要とされる。守備は一つのポジションが特別に上手い必要は無いので、内野と外野の両方が守れる必要がある。

こんな感じでしょうか。現状でのリュータ君の身体条件でプロを目指すなら、このタイプが一番有利だと思います。そして、外野を守るとなると、肩の強さが求められますが、その意味では現状のスローイングセンスを考えると充分適任だと言えます。

ただ、このタイプの難しいのは、プロのスカウトにひっかかるかどうかということです。なぜなら、ある意味全ての分野で平均的なタイプなので目立ちにくいからです。そうした時に重要になるのは、やはり小手先の作戦では無く、基本的な能力です。つまり打撃ではまずスイングスピードが重要になり、そして肩の強さ。次に脚力とそれに伴う守備範囲の広さなどです。ですから投手をしながらでも特に「スイングスピード」「肩の強さ」「脚力」と言った点は特に重視して、取り組んで下さい。あくまで、そうした基礎能力が有った上で器用だとプロで活躍しやすいと言う事です。スイングスピードは重要で、飛ばすだけだとプロの速球に付いて来られるか解りませんが、スイングスピードが有ると、プロの速球に付いて来られると見なされるからです。飛距離よりもスイングスピードが重要と考えて下さい。そして、これらの能力は投手をしながらでも充分に鍛えられます。

『スイングスピード』については、ピッチングのための筋トレとしてバットスイングをするようにしてください。『脚力』についてはいわゆる投手がする「走り込み」を短距離ダッシュをメインにする事で磨いて下さい。速筋を若いうちに鍛えた方が良いです。『肩』についてはピッチングそのものですが、外野からのバックホームを利用して、体全体を使って投げる中で鍛えてください。

こうした「基礎的な"野球身体能力"」を磨いて行く中で、複数のポジションをこなせるような下地作りをしていくということが今の段階で重要な事です。

凄いアマチュアの動画を見つけたので貼っておきます。プロでも野手だとこのくらい綺麗に腕が振れる人は少ないです。22歳までにこのくらいのスローイング能力を身につけられると、プロにいけるでしょう。そういう意味での目標にしてください。




ただ、この人は骨格が良いですね。胸椎後彎の凸アーチが高い位置に形成されている黒人等に多い骨格です。そうした骨格だと運動する上で有利になると見本です。そのへんもリュータ君にとっては特に重要なポイントです。



皮肉な事に、高校野球まででは多くの場合、チームプレーが徹底して教え込まれますが、プロのスカウトが見るのは、個人的な技術の、それも基礎的な身体能力に近い部分です。そこがまず第一条件として見られます。ただ、そうした事を考えると、投手と言う立場はある意味有利かもしれません。投手と言う立場を上手く使えば、ひたすら個人的な資質を磨く事に時間を割けるからです。

基本的には野手を目指す場合、早いうちに野手に専念する事を決断した方が良いのですが、それはショートを目指し、理想的にはショート。ダメでもセカンドやサード、或は外野と言う野手の王道的な道を進む場合の話です。この場合、グラブさばきなどの個人技を速いうちに磨き、連係プレー等を高校野球の中で深く理解していくのが理想的です。ただ、ショートと言う内野、というより野手の中心を目指さない事を考えると、投手にも取り組みながらと言うのも良い方法だと思えてきました。それも野球選手の一つの有り方だと言えるでしょう。

因に日本ではプロ入後に投手から野手に転向して成功した選手(畠山や吉岡など)も多いですし、MLBでは11勝7敗の成績を出して投手として新人王争い2位になった後に、スローイングイップスから野手に転向し、打率0.264の25本塁打を打った選手もいます。リック・アンキールです。

リック・アンキール ホームラン 2011/08/01 Ankiel's second homer

やはり、強肩の外野手です。

リック・アンキール バックホーム
2011/09/13 Ankiel's great throw
2011/07/29 Ankiel throws out Bay
Ankiel's phenomenal throw


特にリュータ君にとっては、投手兼外野手と言う立場で個人技を磨いて行くと言うのは良い選択かもしれません。何故かと言うと、高いレベル(つまりプロ)に挑戦すると考えた時、リュータ君の場合は(技術ではなく)フィジカル的な面が一番の課題になると考えるからです。ただ、それはアマチュアレベルだと全く問題にはならないのです。これは私の多くの選手を観察して来た勘や、人間の骨格について研究している観点から言える事なのですが、リュータ君をプロのアスリートとしてみた場合、体格(身長や体重ではなく、骨格)に最も課題が有ると思えるのです。これは例えて言うなら、マンガの「巨人の星」で星飛雄馬の投げた雪球を受けた伴宙多が星の球質が「プロとしては軽い」と言う欠点に気が付いたと言うくらいの次元の話で、つまり、プロとしてはと言う事です。

野手に専念して、その中でノックを受けたり、バットを振ったり、連携プレー、走塁の練習をしたりと、技術事に没頭する状態になった場合、その方が、その段階(高校や大学)では、チームの中で必要とされ、上手く機能する存在になれます。ただ、それだと、それ以上のカテゴリー(つまりプロ)としては、身体能力的な面で通用しない選手になってしまう可能性が有るのです。

ですから、特に中学や高校のまだ成長期で骨格や肉付きの変化が望める時期に、少しでも身体能力を鍛えて、基礎力を向上させると言う方向で行った方が良いと思うわけです。例えば、前出の140キロを投げるアマチュアの人の他の動画を下に張りますが、こうした空中回し蹴りも出来ているわけです。あの骨格の良さでこれだけ体が動くと、やはりあのくらいの投球が出来ると言う事です。(このくらいの骨格だと、プロのアスリートとしても申し分有りません。)回し蹴りをするのが良いということではなく、やはり基礎的なアスリート能力も重要になるということで、投げたり打ったりとその場での反復運動が多い野球選手は特にその辺の能力が低い場合が多いのです。


ですので、個人的な能力を鍛えられる投手兼外野手と言う立場は、その意味ではリュータ君にとっては良いと言えるかもしれません。ただ、高校に進学した時に、投手に専念させられ、また長距離の走り込みをやらされるような高校だと厳しいですね。長距離を走り込むのは、時間を食う割りに身体能力としては向上にしくいからです。最近では投手に走り込みをさせない高校も有ります。こうしたあたりもチーム選びのポイントになるでしょう。骨格云々について後編でまた書きますが、大筋では当日お話しましたように、黒人の体に少しでも近づくということです。