2012年7月28日土曜日

江坂さん 3回目

本日はご来店有り難うございました。



まずは皆さんに見てもらいたいポイントですが、江坂さんの長所が、始動時に発揮される下半身の力(ハムストリングスによる股関節の伸展)が強い事です。ただ、上半身が少し硬いので、その力を充分に活かし切れていない所は有ります。ただ大腿四頭筋を緩めハムストリングスの力を使うと言う事に関しては、そのへんの野球部の選手よりは出来ています。

そこで江坂さんの腸腰筋その場ステップですが、これが実に見事です。この体操が上手いと言う事は腸腰筋とハムストリングスが使えている事を表します。もちろん、充分に合格レベルに達しています。成人部門では最高得点でしょう。



この腸腰筋その場ステップあっての、この始動時の力だと言う事です。

バッティング

初回から着実に成長している江坂さんです。

最初は身体全体が一気に回ってしまうような悪い意味での力任せ的なスイングだったのが、じょじょに身体の各部位の回転のタイムラグやステップする時の割れなど、身体の郭部に「ズレ」が作れるようになってきました。この結果、良い意味での「しなやかさ」が出てきました。これこそが正に野球がうまくなると言う事です。ラボ当日にグリップに焦点を当てたのも、グリップが鷲掴みだと、肘から先の部分がしなやかに使えず、そこに限界が出来てしまうからです。つまりグリップの形そのものと言うよりも、スイングの「しなやかさ」を向上させるためのグリップだと言う事を間違えないでください。

江坂さんの場合、生来的なパワーは充分に有ります。恐らくあまり鍛えないでもそこそこのパワーを発揮出来るタイプでしょう。しかし若い頃に小学〜中学〜高校と野球をやってきたような人と、そうで無い人の差として「身体の各部位の回転のタイムラグやステップする時の割れ」あるいは「しなやかさ」等の要素が中々出来て来ないのです。大人になっている場合はなおさらです。

その意味で、江坂さんのようなケースの場合、これからの取り組み方と言う点で考えると「この動きが良く無いからここをこうすれば」と言うようなピンポイント的なものでは無く「振り込む事によって得られる効果を如何に効率よく最短で得られるか」と言う事を考える必要が有ります。小学生や中学生が対象の場合、足し算的に考えて行けば良いのですが、江坂さんのような場合、むしろ引き算的、つまり固まった関節や筋肉を子供のような柔らかい状態に戻すと言う事を行う必要が有るのです。

ただ、江坂さんの場合、(今はやっていない)出張の折りに見せて頂いたバッティングセンターでの打撃を見ても、ボールを捉える感覚は充分に備わっている事が解ります。実際に良く打っていましたよね。その点が非常に希望の持てる点です。

そこでまず打撃について、いくつかの練習方法を提案しましょう。

(1) 素振り

何よりもまず数を振る事が重要です。この際、重量は落としても構いません。と言うより少し軽めのバットにして、そのぶん振る数を増やしてください。目安としては550g〜600g程度です。そして、時間を必要とする取り組みになる事を理解してください。1日2日でどうと言うものではありません。しかし、例えば1週間続けて、次の二日は都合で出来なかったとして、次の日にやってみた時などは、前よりも良くなっている事がわかるでしょう。そういう積み重ねで、半年、一年と続ければ確実に上手くなります。少しづつ「身体の各部位の回転のタイムラグやステップする時の割れ」あるいは「しなやかさ」といった要素が出て来ると言う事です。

具体的な方法ですが、バットは軽めでグリップもバレルも細めの方が良いでしょう。グリップが太いと、握力を使って握る事になるので、前腕の筋肉が緊張しやすく、リストターンがスムーズになりにくいからです。つまり極力細いグリップの方がスイングはしなやかになります。バレルも細い方が空気抵抗が小さくて良いです。面白いのがソフトボール用バットで2号用バットを使うのも面白いでしょう。

軽すぎる場合、ビニールテープを巻いて少し重くするのも良いでしょう。ただ、この場合、トップバランスになっても良いです。というより、その方が面白い効果が得られる可能性があります。ある程度なら、ヘッドが効いた方がリストターンが効きやすいからで、それは前腕部に良い捻りストレッチの効果が得られる事を意味しますから、江坂さんには向いています。「軽くて細いバットでややトップバランス」これを出来るだけ多く振ってください。グリップを良くする事にもつながります。

もちろん、軽いバットだけだと不安なので、例えば硬式バットを一日10回は振る等の習慣を付けると良いでしょう。江坂さんの場合はそれで充分です。

それに比べて、部屋など充分な広さが無い場所でも振れるための道具を用意しておき、思い立ったらいつでも振れる環境を作ってください。お奨めは100円ショップで打っている短いホウキで、これはグリップも細いのが良いです。いずれにしても、これからはどれだけ数を振れるかが勝負になると考えてください。

また、ラボでもやりましたが、インハイとアウトローを交互に振る練習もしてください。基本的にインハイ→アウトロー→インハイで1セットと考えると良いでしょう。

(2)シャドウピッチング

負荷がほとんど0に近いシャドーピッチングは、しなやかな身体の使い方を身につける上で有効です。特に右投げ右打ち、左投げ左打ちの選手には有効な練習法です。両方パンチャーだとメカニズムが同じなのでなおさらお奨めです。(投球の)オートマチックステップドリルなどもバッティングに近い感覚で出来るので良いでしょう。

(3)ストレッチング

腸腰筋その場ステップやリズム股関節伸展スクワット等は、黒人的な身体能力を高めるための重要な種目ですが、いずれも縦系、直線系の動きです。これらは非常に重要な事には変わり有りませんが、江坂さんのテーマである、スイングのしなやかさにおいては捻り系の種目が重要になります。

そのため、縦系に加えて捻り系も重視して行く必要が有ります。グリップを作るためのバットを使ったストレッチ等もそうですが、腕に関しては何より、シャドウピッチングが最高の捻りストレッチですから、理想は右左両方です。少なくとも右は行ってください。股関節に関しては、当然「割れ絞り体操」系が重要になります。


補足)

江坂さんのバッティングでもう一つ重要な点ですが、脊柱の柔らかさ、自然なS字カーブを作れるようにする事です。これはピッチングにも関係しており、これが出来れば、メジャー式の脚の挙げ方も、もっと形が良くなるでしょう。股割りの姿勢を鏡で見る等して、脊柱のS字カーブが正しく形成されるように練習してください。そうすると股を割る感覚、骨盤前傾の感覚ももっと良く解るようになります。

ピッチング

まず、やはり投球腕の回旋能力がまだまだです。これに関しては、投げる動作の中で腕を振り込んで行く以外にありません。ストレッチも有効ですが、あくまでも補助的なものです。地道な取り組みが必要になりますが、やれば向上します。シャドーピッチングが最適でしょう。ですので、まずはシャドー•グリップを使ったシャドーピッチングをどれだけやるかがポイントになってきます。

続きます。

また、脚を挙げた所でも腰椎が後湾し、胸椎が前湾する、いわゆる逆S字の形になってしまっています。これも胸椎が後湾した形を作れるように練習する必要が有ります。コータ君の形を参考にしてください。

ピッチングに関しては、投げるリズムは良いのと、力も充分に発揮出来ているのですが、前述の通り、肩が回っていないのと、脚の挙げ方が出来ていないですね。

脚の挙げ方は、まだ理論をなぞっている状態で「イメージ」が無いのだと思います。つまり多くのメジャーの投手を見て、自分の中でイメージを作って行く事がまず重要です。

その上でですが、メジャー式の脚挙げをする上でのコツを書きます。踵で足踏みすることや、後ろ脚で軽く踏むようにして前脚を挙げる事は当然ですが、それ以外にもまずは股関節を視点として、上半身を背中側に倒すと脚が挙ると言うメカニズムを利用します。(背中を倒す事で脚を挙げると言う意味では無く、背中を倒すのと脚を挙げるのを同時にやると言う事です。)
次に、その感覚を保ったまま、頭だけは背中側に倒さず、最初に位置に残しておくようにします。丁度ダルマ落としで真ん中を抜いても、上は真っすぐ落ちて来るのと同じです。

そうすると、脊柱を柔らかく湾曲させ、骨盤も後傾した状態を作れます。ここで一度骨盤が後傾する事で、始動ポジションでは前傾位を作れるのです。以下は、これらを動画で説明したものです。


ただ、この方法で注意するべき点は誇張しすぎると、反動で前脚を降ろす時に骨盤が大きく前傾し、ハムストリングスを引っ張るので、その張力が増して、股関節伸展(後ろ脚)が強く働き過ぎて、伸び上がります。上の動画でも前脚を降ろす時、やや伸び上がりが見られますが、少しなら良いのですが、あまり大きく伸び上がってしまうと、肝心の始動した時に股関節伸展の力が使いにくくなります。そうすると、肩に大きな負担がかかります。ですから「前脚を降ろす時に大きく伸び上がる」「肩に負担がかかる」と言う状態になった時は以下のように対応してください。(肩に痛みや違和感が出た場合は教えてください。)

1)前脚が降りる時、頭の位置が浮き上がらないように、目標に集中する。
2)前脚を挙げて、降ろして、骨盤が云々と言う動作では無く「脚を挙げてフッと力を抜いて、ガッと投げる」と言うリズムを意識する。
3)脚を挙げる時に、動画で前述した動作を誇張しすぎず、あくまでもバランス良く、自然な感じにまとめる。


以上のように、まずはシャドーで肩が良く回るようにしたうえで、脚の挙げ方を研究してください。シャドーは単位時間あたりに腕を振れる回数の多い、オートマチックステップドリルがお勧めですが、必ずしもと言うわけでは無く、とにかく腕が振れれば何でも(どの種類のシャドーでも)良いです。

投げ込む事によって、改善されて行けば良いと言うポイントは以下の通りです。

1)肩がもっと柔らかく回るようになる。
2)肩が柔らかく回るようになると、歩幅も広くなる。
3)全体的に動きがしなやかになる。
4)投げ終わった後、後ろ脚が前脚より一塁側に着地するようになる。
5)投げ終わった後、グラブ腕がもう少し体の前に残るようになる。

以上です。ではがんばってください。